--- 総説 ---

69 日本海の漁業資源(総説)



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表1. 新潟県沖合水域における底生生物群集構造(尾形 1980)

表1

太字下線は各区分を特徴づける生物


図1

図1. 日本海の概要(長沼 1992)


図2

図2. 日本海の日韓暫定水域

http://www.pref.tottori.lg.jp/44943.htm(最終アクセス日2020年1月28日)

日本海は太平洋の縁海であり、隣接する海とは対馬、津軽、宗谷及び間宮の4海峡で接続している。これらの海峡はいずれも水深50〜140 m程度と比較的浅くて狭い。日本海の表面積は105.9万km2、全容積は168.2万km3である。最深部の水深は3,700 mを超え、平均深度は1,588 mで広さの割にはかなり深い海である。

隣接する海から日本海に流入する海水は、対馬海峡を通じて流入する対馬暖流が殆どであり、津軽、宗谷及び間宮海峡から流入する海水は微々たるものであると言われている。隣接する海と接続する海峡の水深が浅いために海水交換は表層に限られ、流入する暖流水は表層に薄く分布し、その下層の約300 m以深には海域内で生成された日本海固有水と呼ばれる水温0〜1℃・塩分34.1程度のほぼ均質な海水が全容積の85%を占める形で分布している。

海底地形は南北両半域で著しく異なり、北半域の朝鮮半島北部及び沿海州に沿った水域では、狭くて単調な陸棚で縁取られ、陸棚に続く海底地形も概して変化に乏しい。これに対して南半域の中央部から本州にかけては、多数の堆、礁、島々が分布し、起伏に富んだ複雑な地形をしている。この地形的な特徴は底魚漁場としての意義だけでなく、表層の海況や漁況にも重要な影響を及ぼしている。また、沿岸漁場として有用な200 mより浅い陸棚の面積は27.2万km2で、日本海全体の約4分の1を占めている(図1)。(以上、長沼(2000)、気象庁HP(https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/db/mar_env/knowledge /koyusui/koyusui.html、最終アクセス日2019年9月30日)から引用)


日本海の漁業資源と漁業

地形的な特徴と制約を受けて日本海の生物相は成立しているが、その生物相は種数の面から貧弱であると言われている。魚類について見ると、日本海に分布する種数は全体で500種余であるが、西部の山陰沿岸海域で多く、北部で少ない傾向がある。

日本海の主な漁獲対象魚種は、マイワシ、マサバ、マアジ、ブリ、スルメイカ等の浮魚類、ヒラメ、マダイ、かれい類、スケトウダラ、マダラ、ハタハタ、ズワイガニ、ベニズワイガニ、ホッコクアカエビ等の底魚類が挙げられる。日本海の底魚類は、水深200 mをおよその境界として、浅海域の「おか場」と深海域の「たら場」に区分され、それぞれに生息する魚種が特徴付けられる。すなわち、「おか場」には対馬暖流の影響下にある種類が、「たら場」には日本海固有水の影響下にある種類が分布している(表1)。日本海には、1999年に発効した日韓漁業協定において定められた「日韓暫定水域」が設定されている(図2)。





日本海の浮魚類主要種の生物学的特徴と資源動向

図3

図3. マイワシの分布(対馬暖流系群)


図4

図4. マイワシの漁獲量(対馬暖流系群)

【マイワシ】

日本海で漁獲対象となっているマイワシは対馬暖流系群であり、九州鹿児島から北海道日本海側の沿岸から沖合にかけて分布する(図3)。産卵場は九州西岸から能登半島にかけての沿岸域に形成されるが、1980年代の資源の高水準期には九州北部や韓国南方の沖など西方や北方に広がって形成されていた。産卵期は1〜6月、寿命は7歳程度である。成熟開始年齢は環境や資源水準により変化することが知られており、2018年時点では1歳の25%、2歳の100%が成熟すると推定されている。

本系群は、日本海を含む対馬暖流域において我が国と韓国に漁獲されている。我が国では主にまき網により漁獲され、漁獲量は、1983〜1991年には100万トン以上で推移したが、その後は急速に減少し、2001年には1千トンまで落ち込んだ(図4)。2004年以降は増加し、2011年以降は、2014年の0.9万トンを除き、4万〜9万トンで推移しており、2018年は7.1万トンであった。韓国の漁獲量は近年少なく、2018年は7千トンであった。

本系群の資源量は、1988年に1,000万トンを超えたが、2001年には1万トンを下回った。2004年以降は増加し、2018年の資源量は36.7万トンであった。2018年の資源水準は中位、動向は増加と判断された。








図5

図5. マアジの分布(対馬暖流系群)


図6

図6. マアジの漁獲量(対馬暖流系群)

【マアジ】

日本海で漁獲対象となっているマアジは対馬暖流系群であり、東シナ海南部から九州、山陰、日本海の北部に至る沿岸に広く分布する(図5)。産卵期は1〜6月で、南の海域ほど早く、盛期は3〜5月である。主な産卵場は東シナ海にあるが、日本海にも形成される。寿命は5歳前後で、1歳で半数の個体が成熟を開始し、2歳でほぼ全ての個体が成熟する。

本系群は我が国と韓国、中国に漁獲されている。対馬暖流域での我が国の漁獲量は、主にまき網により、1970年代半ばは10万トン以上であったが、後半に減少し、1980年に4.1万トンまで落ち込んだ(図6)。その後1980〜1990年代にかけて増加し、1993〜1998年には20万トンを超える高い水準となり、1997年に24万トンに達したが、1999年以降は10万トン台に減少した。2006年以降は12万トン前後でほぼ横ばいで推移し、2018年はやや減少して9.7万トンであった。韓国は、ほとんどマアジと推定されるあじ類を毎年数万トン漁獲しており、2018年は2.7万トンであった。中国の漁獲量は、2009年以降は2万〜4万トンで推移し、2017年は4万トンであった。

本系群の資源量は、1970年代後半には10万トン台と低水準だったが、1980〜1990年代前半にかけて増加し、1990年代半ばには50万トン以上に達した。2000年代以降はやや減少し、2005年以降は40万トン前後で推移している。2018年はやや増加して49万トンであった。2018年の資源水準は中位、動向は増加と判断された。






図7

図7. ブリの分布


図8

図8. ブリの漁獲量

【ブリ】

日本海では、九州から北海道に至る沿岸各地に来遊するブリが漁獲対象となっている。ブリの産卵期は1〜7月であり、東シナ海の陸棚縁辺部を中心に、九州から能登半島周辺以西及び伊豆諸島以西の沿岸各海域で産卵する(図7)。寿命は7歳前後である。2歳で半数の個体が成熟を開始し、3歳で全ての個体が成熟する。

本種は我が国と韓国に漁獲されている。我が国の漁獲量は、1950〜1970年代半ばは主に定置網により3.8万〜5.5万トンであった(図8)。1970年代後半〜1980年代にやや減少したが1990〜2000年代にはまき網の増加により5万トン程度から7万トン以上に増加し、2010年代は10万トン前後で推移しており、2018年は10.0万トンであった。韓国の2018年の漁獲量は1.3万トンであった。

本種の日本周辺全域における資源量は、2018年は24.6万トンであった。2018年の資源水準は高位、動向は減少と判断された。











図9

図9. スルメイカの分布(秋季発生系群)


図10

図10. スルメイカの漁獲量(秋季発生系群)

【スルメイカ】

スルメイカは、日本の周辺に広く分布し、産卵期の違いにより秋季発生系群と冬季発生系群とに分けて評価している。日本海で主に漁獲対象となっているのは秋季発生系群であり、夏〜秋季の漁獲が多い。秋季発生系群の産卵場は、北陸沿岸から山陰、東シナ海にかけての海域である(図9)。産卵期は10〜12月で、産卵場から成長しながら日本海を北上する。寿命は約1年である。なお、冬季(12〜3月)には、東シナ海に産卵場を形成する冬季発生系群の漁獲が主体となる。

秋季発生系群は、我が国のほか、韓国、中国、北朝鮮およびロシアに漁獲されている。我が国では主にいか釣りで漁獲され、漁獲量は、1970年代半ばの30万トン前後から1980年代にはいって減少し、1986年に5.4万トンとなった(図10)。その後増加し、1990年代は11万〜18万トンで推移した。2000年代以降は減少し、2018年は2.4万トンであった。韓国の2018年の漁獲量は3.3万トンであった。中国の漁獲量は、2004年以降増加して2010年代には20万トン前後あったと見積もる報告もあるが(Lee et al. 2000)、正確な情報が不足している。

冬季発生系群は、我が国では主に太平洋側で漁獲されており、2018年度(4月〜翌年3月)の漁獲量は2.3万トンであった。韓国の主に日本海周辺での操業によると想定される2018年の漁獲量は2.2万トンであった。

秋季発生系群の資源量は、1990年代に100万トン以上に増加し、1997年には200万トンに達した。2000年代は84万〜160万トンで推移したが、2010年代に入って減少しており、2019年は63万トンと推定された。2019年の資源水準は中位、動向は減少と判断された。冬季発生系群の資源量は2015年以降顕著に減少しており、2019年度は14万トンであった。2019年の資源水準は低位、動向は減少と判断された。



日本海の底魚類主要種の生物学的特徴と資源動向

日本海の底魚資源を対象にした漁業は、底びき網、船びき網、刺網、はえ縄、一本釣り、かご網、定置網等の多種類にわたっているが、中でも底びき網が基幹漁業である。底びき網は、沖合底びき網漁業と小型底びき網漁業に区分される。底びき網の漁獲物の主要なものは、スケトウダラ、ホッケ、ハタハタ、アカガレイ、ソウハチ、ムシガレイ、ニギス、ズワイガニ、ホッコクアカエビ等である。


図11

図11. ズワイガニの分布(日本海系群)


図12

図12. ズワイガニの漁獲量(日本海系群)

【ズワイガニ】

ズワイガニ日本海系群は、本州沿岸から朝鮮半島東岸の大陸棚斜面(水深200〜500 m)に分布する(図11)。初産雌は夏から秋、経産雌は2〜3月に産卵抱卵し、初産雌の卵は1年半余り後、経産雌の卵は1年後の2〜3月に孵化する。寿命は10歳以上であり、成熟開始年齢は脱皮齢期で雌雄とも11齢であり、ふ化から7〜8年と考えられている。

本系群は我が国と韓国に漁獲されている。我が国では主に底びき網により漁獲され、かご網、刺網でも漁獲される。漁獲量は、1950〜1970年代初めは1万トン前後から1.5万トンに達したが、1970年代後半には5千トン程度に減少し、1980年代は2千〜4千トンで推移した(図12)。1990年代初めには2千トン以下に減少したが、その後増加して2000年代は4千〜5千トンで推移し、2007年には5.2千トンに達した。2010年代はやや減少しており、2018年は3.4千トンであった。日韓暫定水域の漁獲を含む韓国の漁獲量は2007年をピークに減少し、2018年は2.2千トンであった。

本系群の資源量は、富山県以西のA海域では、2000年代初めの1.3万トン前後から、2003年以降増加し、2007年には3.0万トンに達した。以後はやや減少して2万トン前後で推移し、2019年は2.1万トンであった。2019年の資源水準は中位、動向は増加と判断された。新潟県以北のB海域では、2000年代は3.0千〜4.6千トン、2010年代は2.3千〜5.1千トンで推移しており、2018年は2.6千トンであった。2018年の資源水準は高位、動向は横ばいと判断された。





図13

図13. ベニズワイガニの漁場(日本海系群)


図14

図14. ベニズワイガニの漁獲量(日本海系群)

【ベニズワイガニ】

ベニズワイガニ日本海系群は、日本海の沖合域の水深500〜2,700 mに広く分布する(図13)。主産卵期は2〜4月であり、隔年産卵で抱卵期間は約2年である。寿命は10年以上である。

本系群は我が国と韓国に主にかご網により漁獲されている。我が国の漁獲量は、1980年代に増加し、1984年に5.4万トンに達したが、その後1990年代から2000年代初めにかけて減少した(図14)。2000年代後半以降は1.5万トン程度で推移していたが、最近はやや減少しており、2018年は1.2万トンであった。2018年の資源水準は中位、動向は減少と判断された。日韓暫定水域の漁獲を含む韓国の2018年の漁獲量は2.0万トンであった。















図15

図15. ホッコクアカエビの分布(日本海系群)


図16

図16. ホッコクアカエビの漁獲量

【ホッコクアカエビ】

ホッコクアカエビ日本海系群は、北海道から鳥取県の沿岸の水深200〜600 mに分布し、底びき網、かご網で漁獲される(図15)。日本海中央部の大和堆にも分布し、底びき網で漁獲される。産卵期は2〜4月であり、雄性先熟の雌雄同体で雄から雌に性転換し、雌の成熟は6歳とされる。寿命は11歳と推測される。

本系群の漁獲量は1982年の4,155トンをピークに減少し、1991年に1,404トンと最低となったが、以降は緩やかに回復して2000年代以降は概ね2千トン前後で推移し、2018年は2,574トンであった(図16)。2018年の資源水準は高位、動向は横ばいと判断された。
















図17

図17. アカガレイの分布(日本海系群)


図18

図18. アカガレイの漁獲量(日本海系群)

【アカガレイ】

アカガレイ日本海系群は、隠岐東方、若狭湾及び加賀沖を主とする、島根県から青森県の沿岸の水深150〜900 mに分布する(図17)。産卵場は若狭湾、経ヶ岬周辺、赤崎沖を中心とする隠岐諸島周辺及び粟島北方に形成される。産卵期は2〜4月であり、6〜7歳程度の雌は25 cm、雄は17 cmで半数が成熟する。寿命はおよそ20歳と考えられる。

本系群は主に底びき網により漁獲される。漁獲量は、1990年代以降では、1992年の2,281トンを最低とし、その後増加して2007〜2010年は5,500トン前後で推移し、2011年は増加して近年最多の6,158トンとなった(図18)。その後はやや減少しており、2018年は4,185トンであった。2018年の資源水準は中位、動向は減少と判断された。














図19

図19. ハタハタの分布(上:日本海北部系群、下:日本海西部系群)


図20

図20. ハタハタの漁獲量(日本海北部系群)


図21

図21. ハタハタの漁獲量(日本海西部系群)

【ハタハタ】

日本海に分布するハタハタは、秋田県の産卵場を中心として能登半島の東から津軽海峡にかけて分布する日本海北部系群と、能登半島以西、山陰から朝鮮半島東岸にかけて分布する日本海西部系群とに分けて評価している(図19)。日本海西部の我が国沿岸の分布域の多くは成育場となっており、大規模な産卵場はなく、日本海西部系群は朝鮮半島東岸生まれ群と秋田県沿岸生まれ群で主に構成されると考えられている。産卵期は主に12月、寿命はおよそ5歳であり、成熟は、雄は1歳、雌は2歳から始まる。

日本海北部系群は、冬季の産卵・接岸時には定置網、底建網、刺網により、それ以外の時期には底びき網により漁獲される。漁獲量は、2万トン程度あった1970年代前半から1980年代にかけて急激に減少し、1991〜1994年は200トン未満となった(図20)。1995年から徐々に増加し、2004年には5,106トンに達したが、その後は減少し、2018年には1,519トンであった。2018年の資源水準は中位、動向は増加と判断された。

日本海西部系群は底びき網により漁獲される。漁獲量は、1970年代から1980年代半ばに5千〜9千トン程度と多かったが、1990年代前半は概ね3千トン前後と少なくなった(図21)。その後増加し、2003年に過去最高の9,475トンとなるも1〜2年での半減倍増を繰り返した。2009年以降は概ね4千トン前後で推移していたが、2018年はやや減少して2,860トンであった。2018年の資源水準は高位、動向は減少と判断された。


























大和堆の漁業資源

図22

図22. 大和堆の地形(海洋水産資源開発センター 1989、1992)


図23

図23. 大和堆のホッコクアカエビの沖合底びき網による漁獲量

大和堆は日本海のほぼ中央に位置し、北緯39度20分、東経135度を中心として、全体的に東北東−西南西の方向に、長さ約230 km、中央部の幅は約55 kmの長い紡錘状の形を呈している(図22)。水深400 m付近から頂部に平坦面がみられ、最浅部は246 mに達する。水深1,000 m以浅の地域の面積は約7,900 km2である(海洋水産資源開発センター 1992)。

大和堆では、いか釣り漁業によるスルメイカ、かご漁業によるベニズワイガニ及び沖合底びき網漁業によるホッコクアカエビの漁獲が多い。この海域では、ズワイガニは全面的に禁漁とされている。

大和堆におけるホッコクアカエビの漁獲は、底びき網により夏季を中心に行われている。1996〜2003年での大和堆におけるホッコクアカエビの推定資源量はほぼ横ばいであった。近年は本州沿岸でホッコクアカエビが好漁であるために、2001年以降大和堆への出漁が減少し、その結果、大和堆での漁獲量は低い水準にとどまっており2018年は100トンであった(図23)。


執筆者

東アジアユニット
日本海区水産研究所 資源管理部

川端 淳


参考文献

  1. 海洋水産資源開発センター. 1989. 昭和63年度沖合漁場総合整備開発基礎調査日本海大和堆海域報告書(本文編) . 海洋水産資源開発センター, 東京. (2) + 4 + 269 pp.
  2. 海洋水産資源開発センター. 1992. 平成3年度沖合漁場総合整備開発基礎調査報告書(総括編)日本海大和堆海域. (3 + 5) + 125 pp.
  3. Lee, J.-S., Ryu, J.-G., and Kee, H.-K. 2017. A study on the status of Chinese fishing in the East Sea off North Korea and Directions for Countermeasures. J. Fish. Bus. Admin., 48(3): 61-74. (In Korean with English abstract)
  4. 長沼光亮. 1992. 日本海の成り立ちと海況. In 新潟大学放送公開講座実行委員会(編), 新潟の生物誌-海から山まで. 新潟大学放送公開講座実行委員会, 新潟. 1-13 pp.
  5. 長沼光亮. 2000. 生物の生息環境としての日本海. 日本海区水産研究所研究報告, 50: 1-42.
  6. 尾形哲男. 1980. 日本海海域底魚資源. In 青山恒雄(編), 底魚資源. 恒星社厚生閣, 東京. 229-244 pp.