--- 要約版 ---

56 イワシクジラ 北西太平洋

Sei Whale, Balaenoptera borealis


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図2

北西太平洋におけるイワシクジラの夏季の分布域(青)


図1

北太平洋におけるイワシクジラの国別捕獲頭数の推移(1910〜2019年)

日本の捕獲には調査によるものも含む。


北西太平洋におけるイワシクジラ捕獲頭数(2002〜2019年)

表1

イワシクジラ(北西太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
なし(IWCによる商業捕鯨モラトリアムが継続中)
我が国の漁獲量
(近年5年間)
年間90〜134頭 *1
最近(2019)年:25頭 *2
管理目標 100年後の資源水準の目標として、IWC提示の値(初期資源量の60-72%)を維持
資源評価の方法 船舶による目視調査から推定した最新の資源量推定値
資源の状態 北太平洋全域における資源量
34,718頭(CV = 0.214)
管理措置 *3 ・農林水産大臣による許可制(許可隻数:母船式捕鯨業1船団(母船1隻、独航船3隻)
・年間捕獲枠の設定(25頭(2019年))
・監督員による捕獲頭数管理
・衛星を利用した船舶位置の確認
最新の資源評価年 2019年
次回の資源評価年 遅くとも2025年までに実施予定

*1 2015-2018年、捕獲調査による。

*2 再開された母船式捕鯨業による。

*3 2019年7月からの管理措置を記載。


管理・関係機関
農林水産省、国際捕鯨委員会(IWC)

生物学的特性
  • 体長・体重:雄14.8 m、雌15.9 m(上顎先端から尾びれ分岐点)・雄24.4トン、雌31.0トン
  • 寿命:60歳(最高年齢)
  • 成熟開始年齢:7歳(1960年)〜10歳(1925年)
  • 繁殖期・繁殖場:11月、亜熱帯・温帯の外洋海域
  • 索餌期・索餌場:夏季、亜寒帯水域
  • 食性:魚類(カタクチイワシ、マイワシ、キュウリエソ、サンマ、マサバ、ハダカイワシ類等)、いか類(スルメイカ、テカギイカ等)、動物プランクトン(オキアミ類、カイアシ類)
  • 捕食者:シャチ

利用・用途
鯨肉は刺身、大和煮(缶詰)、鯨かつ、鍋物材料、内臓はゆで物として利用される。ヒゲ板は工芸品の材料として利用される。鯨油はかつて工業原料等に用いられた。

漁業の特徴
北西太平洋における本種の捕獲は、1890年代末に我が国の基地式の近代捕鯨(捕鯨砲を使った捕獲)により開始された。その後、これに加えて、1940年には本種も対象とする我が国の母船式捕鯨が操業を開始した。北太平洋においては、我が国の他には、1919年以降、旧ソ連、米国及びカナダが本種を捕獲した。1969年以後、日本、米国、カナダ、旧ソ連の4か国による規制措置がとられ捕獲割当量が定められるようになり、1970年からIWCにより北太平洋の本種の捕獲枠が設定されるようになった。その後IWCの規制が厳しくなり、1976年から北太平洋全域で商業捕獲は停止されていた。我が国のIWC脱退にともない、2019年7月から我が国の領海・EEZ内で母船式捕鯨業が再開された。

漁獲の動向
1910年代から1955年まで全漁業国により年間500頭程度が継続して捕獲されたがその後、捕獲が急激に伸び1967年には過去最高の6,095頭に達した。1969年以降は捕獲割当量の設定により、1975年の508頭まで漸減した。1976年以降はIWCの規制により商業捕獲は停止されていた。なお、我が国では1911年に捕鯨統計が整備されたが、当時はイワシクジラ(本種)とニタリクジラは分類されず、両種とも統計上イワシクジラとして記録された。日本の捕鯨統計で両種が区別されたのは1955年からである。IWCによる国際捕鯨統計において、両種が区別されて記録されるようになったのは1968年からである。商業捕鯨以外では、我が国は、第二期北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPN II)により2002、2003年はそれぞれ39、50頭、2004〜2016年は90〜100頭、2017年から開始された新北西太平洋鯨類科学調査計画(NEWREP- NP)により、2017年、2018年はそれぞれ134頭を採集し生物学的情報を収集した。なお、我が国のIWC脱退にともない2019年6月末をもって本調査は終了したため、2019年は本調査に基づく捕獲はなかった。2019年7月から再開された商業捕鯨では、我が国の領海・EEZ内において母船式捕鯨業により25頭が捕獲された。

資源状態
IWCで1975年に行われたCPUEと発見率指数にもとづく資源評価では、北太平洋における本種の初期資源量は42,000頭で1975年時点の資源量は9,000頭とMSYレベル(23,000頭)の40%であるとされたため、当時の管理方式(NMP)にもとづき保護資源と分類された。このため、1976年度から北太平洋全域で本種の捕獲が停止された。その後、目視調査と遺伝解析の結果に、過去の捕獲・標識再捕情報も加えた総合的な系群識別解析が2015年のIWC科学委員会年次会合で報告され、北太平洋に広く分布する本種は同一系群であることが示されている。
北西太平洋における資源量は2008年の調査結果から我が国の調査海域で5,086頭と推定された。また、中央〜東部北太平洋における資源についても、2010年に開始されたIWC・日本共同の北太平洋鯨類目視調査プログラムで得られた情報をもとに資源量推定が行われ、29,632頭との推定値が得られている。両調査海域は重複していないことから、合算すると北太平洋全域における資源量推定値は34,718頭(CV = 0.214)となる。一方、過去の商業捕鯨およびJARPN IIのサンプルをもとにした生物学的パラメータの解析結果から、1976年の捕獲停止以降、本種資源が回復傾向にあることが示された。これら解析結果から、現在の本系群の資源状態は中位で資源は増加傾向にあるものと考えられる。

管理方策
IWCの管轄種である本種について、1976年以降、北太平洋での商業捕獲は停止されていたが、我が国のIWC脱退にともない、農林水産大臣許可の母船式捕鯨業による漁業が、2019年7月から我が国の領海・EEZ内で再開された。2019年の捕獲枠は25頭であり、この値はIWCが開発し100年間捕獲を継続しても資源に悪影響を与えないと認めた極めて保守的な改訂管理方式(RMP)の運用のもと、多数のシミュレーションを通して算出され、海外有識者によるレビューを受けた捕獲可能量にもとづいている。操業監視と資源状態のモニタリングのため、全操業期間を通して母船に水産庁から監督員と調査員が派遣され、操業の監視と全ての捕獲個体に対する漁獲物調査が行われた。本種の資源評価と捕獲可能量の定期的な見直しのため、目視調査等による資源量推定値の更新、漁獲物資試料の収集と解析を積極的に行い、科学的根拠に基づく資源管理が行われるよう、継続的モニタリングを行っていく必要がある。