--- 詳細版 ---

40 アオザメ 大西洋

Shortfin Mako, Isurus oxyrinchus


PIC

[HOME] [詳細版PDF] [要約版PDF] [要約版html] [戻る]

最近の動き

2019年5月に行われた大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)さめ類作業部会において、統合モデル(SS:Stock Synthesis Model)による北大西洋系群の将来予測と複数の管理勧告の有効性の評価が行われた。将来予測の中で4つの管理方策(TAC・サイズ規制・生存個体の放流・努力量(F)の削減)の効果(各方策あるいは各方策を組み合わせて実施した場合の親魚メス資源の回復状態)を確認し、各管理措置の有効性を議論した。

2019年8月にスイス(ジュネーブ)にて開催されたワシントン条約(CITES)第18 回締約国会議(CoP18)において、本種およびバケアオザメ(類似種規定による)を附属書IIに掲載する提案が採択され、2019年11月26日から国際取引の規制が発効した。我が国は、アオザメは科学的に附属書II掲載基準を満たしておらず、FAO(国際連合食糧農業機関)専門家パネルにおいても、その旨結論付けられていることからこれを留保している。


利用・用途

肉はソテーやみそ漬け、練り物原料として、鰭はフカヒレ、脊椎骨は医薬・食品原料、皮は革製品として利用される。肉質が良いため、さめ類の中でも商品価値が高い。


図1a
図1b

図1. 北大西洋(上)及び南大西洋(下)におけるアオザメ水揚量とはえ縄漁業による水揚げが全体を占める割合

ICCAT事務局の資料に基づき作成。棒グラフは各国による水揚げ量(単位:千トン)を、折れ線グラフ(単位:%)ははえ縄漁業による水揚げが全体を占める割合を示す。はえ縄以外の漁法はその他の表層漁業が占めている。


図2

図2. アオザメの分布(Compagno 2001)

色の濃い部分は信用できる情報に基づく既存の分布あるいは確かに分布していると思われるエリア、薄い部分は分布が推定されるもしくは不確実な情報に基づく分布エリアを示す。


図3a
図3b

図3. 大西洋で報告されているアオザメの年齢と成長(尾鰭前長)


図4

図4. 大西洋におけるアオザメの標準化CPUEと漁獲量の年トレンド(a:北資源、b:南資源)(ICCAT 2017)

黒線は上下とも漁獲量を示す。CPUEを示す線は、北大西洋ではオレンジが米国(ログブック)、紫が米国(オブザーバーデータ)、赤が日本、緑が台湾、水色がポルトガルのはえ縄データを基に相対化した値で、南大西洋では青がウルグアイ、草色がウルグアイ(オブザーバーデータ)、赤が日本、紺(細線)がブラジル、緑が台湾のはえ縄データを基に計算した値を意味する。


図5

図5. BSP2-JAGSによって推定されたa) 北大西洋系群とb) 南大西洋系群の資源量(青線)と漁獲強度(赤線)の年変化

資源量については、各年の資源量とMSY水準の資源量の比を示し、1未満であれば資源量水準が低いことを示す。漁獲強度については、各年の漁獲強度とMSY水準時の漁獲強度の比を示し、1より大きければ漁獲強度が適正水準よりも高いことを示す。ICCAT(2017)より引用。


図6

図6. 大西洋のアオザメにおいてBSP2-JAGSによって推定された資源量(黒実線)と各国の提出したCPUE(実線とマーカー)の年変化(a:北大西洋系群、b:南大西洋系群)(ICCAT 2017)

CPUEを示すマーカーは、北大西洋系群では黒(○)が米国、青(×)がスペイン、赤(△)が米国(オブザーバーデータ)、紫(▽)が日本、緑(+)がポルトガル、水色(◇)が台湾、南大西洋系群では緑(+)がブラジル、黒(○)がウルグアイ、水色(◇)がスペイン、赤(△)が日本、青(×)がウルグアイ(オブザーバーデータ)、紫 (▽)が台湾を示す。いずれも1971年を開始年とし、CPUEに国別の重み付けをしていない。


図7

図7. 統合モデルによって推定された北大西洋系群の資源状態

上の図は、MSY水準の親魚量に対する各年の親魚量、下の図はMSY水準の漁獲強度に対する各年の漁獲強度(漁獲死亡係数)を示す。線の色は3つの異なる設定についての計算結果を示し、赤線がベースケースの結果を示す。点線は、MSY水準を示す。


図8

図8. 統合モデル(モデル1:上、モデル3:下)に基づき、TACを100トン刻みで変えた場合の親魚資源量の相対値の変化(将来予測期間:2016〜2070年)

モデル1は親子関係式がべバートンホルト・自然死亡が雌雄で大きく異なる仮定をおいたモデルで、モデル3は親子関係式がLFSR(さめ類のように産仔数が少ない資源に適した関係式)・自然死亡が雌雄で同じ仮定をおいたモデル。実線は中央値、色のついた区間は各漁獲量に対する推定値の95%信頼区間を示す。

漁業の概要

メキシコ湾、カリブ海を含む大西洋において、本種を含む外洋性さめ類ははえ縄、流し網、遊漁を含むその他の漁業(手釣り、底びき網、rod and reelを含むひき縄、突きん棒等)で混獲されているが、混獲量の大部分はまぐろ・かじき類を対象としたはえ縄漁業が占めている(ICCAT 2005)。米国、カナダ、英国やアイルランドでは遊漁の対象ともなっている(ICCAT 2005)。

大西洋における我が国はえ縄漁業は、1957年頃より、キハダ、ビンナガ等の缶詰材料魚種を主対象とする基地操業形態のはえ縄船団によって開始されたが、その後刺身材料としてのメバチ、クロマグロを対象とした本土操業形態に転向した(久米 1976)。現在では、北米沖(ニューヨークからカナダのニューファンドランド沖合)及びアイスランドやフェロー諸島付近にて大西洋クロマグロを、熱帯域(特に西アフリカ沖)にてメバチやキハダを主対象とした操業を展開している。一連のまぐろはえ縄操業において、アオザメは主に混獲物として利用されてきた。

ICCAT事務局が公表している漁獲統計資料によれば、北大西洋におけるアオザメの水揚量は1980年以前は1,000トン以下とされているが、その後1985年にかけて約3,800トンまで急増したのち1989年に約2,200トンまで減少した。その後、1990年代中盤にかけて約5,300トンまで増加した。その後はおよそ2,600〜4,800トンの範囲で推移していたが、2010年以降は減少傾向にある。2018年の水揚量(2,359トン)は前年の3,111トンから752トン減少しており、この減少が2017年の管理勧告によるものか資源の減少によるものかは検討されていないが、各国の放流・投棄量のデータが揃えば今後検証が可能と考えられる。漁法別にみると、統計資料が整備され始めた1950〜1980年までは水揚量の100%がはえ縄漁業によるとされていたが、1980年代前半は、はえ縄漁業以外の表層漁業による水揚量が増加しほぼ同程度となった。1986年頃から再びはえ縄による水揚量が増え始め、1990年中盤以降はほぼ90%以上がはえ縄による水揚げとなっている(図1上)。国別では、1980年以前の記録はスペイン・日本によるものであったが、1981年から米国の水揚量が、1990年からはポルトガルの水揚量が増え始め、2000年代中盤まではスペイン・米国・ポルトガルの水揚量が北大西洋全体の90%を占めるに至った(図1上)。2000年代中盤からはモロッコの水揚量が増加し、2015〜2016年には全体の30%を占めたが、2017年の水揚量は前年の半分以下に減少した(北大西洋全体の15%)。2018年には主要漁業国の水揚量が減少したが、モロッコの水揚量は前年より144トン増加した(北大西洋全体の30%)。

南大西洋においては、1970〜1980年代中盤までのアオザメの水揚量は1,000トン以下の範囲で緩やかに増加し、その後は増減を繰り返しながら1995年の約3,000トンまで急激に増加した。それ以降は増減を繰り返しながらおよそ1,600〜3,300トンの範囲で推移していたが、2014年以降は減少傾向にある。漁法別には、大部分の水揚量(94%以上)がはえ縄によるもので、国別には1970〜1980年代終盤までの水揚量の大部分は日本、ブラジルによる報告であったが、その後はスペインの水揚量が増え始め、1988年以降は南大西洋の全体水揚量の約40%(1988〜2018年のスペインの水揚量割合の平均)を占めている。ナミビアは2002年から水揚量が増え始め、2005〜2007年には南大西洋全体水揚量の約40%を占めたが、2008年以降の全体に占める水揚量割合は平均すると15%程度となっている(図1下)。日本の水揚量は、1980年代終盤〜1995年頃までは南大西洋全体の40〜60%を占めていたが、以降急激に減少し2010年以降は5%(2010年以降の日本の水揚量の割合の平均値)程度を推移している。

日本のはえ縄の漁獲成績報告書の報告率で選別したデータに基づく分析から、大西洋全域において、1994〜2010年の期間に3,340〜11,120個体(平均5,730個体)、150〜500トン(平均260トン)のアオザメが日本のはえ縄漁船によって漁獲されたと推定されている(Semba and Yokawa 2012)。


生物学的特性

まぐろ類の地域漁業管理機関(Tuna-RFMO)では、本種の系群は南太平洋・北太平洋・インド洋・南大西洋・北大西洋の5つからなるという仮定のもと、資源評価が行われている。しかしながら、生物学的特性値の多くは、個々の系群毎に明らかにされていないため、一部は大西洋以外の系群の断片的な情報を統合したものを示す。


【分布】

本種は全世界の熱帯及び温帯の沿岸から外洋まで広く分布するが、水温16℃以下の環境での出現はまれである(図2、Compagno 2001)。鉛直方向には、表層から深度500 mまでの深度帯に分布することが知られている。系群構造については、ミトコンドリアDNAを用いた解析が行われ、北大西洋の系群は、その他の海域(南大西洋、北太平洋、南太平洋)の系群とは異なる遺伝組成であることが示された(Heist et al. 1996)。また、北大西洋、北インド洋、南半球の個体群は遺伝的に異なる集団である可能性が高いものの、インド洋南東部と太平洋南西部といった南半球内の個体群間には遺伝的交流があることが推定されている(Corrigan et al. 2018)。Nohara et al.(2019)は、南北大西洋をカバーする個体のミトコンドリアDNAの部分塩基配列情報とCorrigan et al.(2018)が報告した情報を組み合わせて集団構造を分析し、南大西洋の個体群も南インド洋および南太平洋の個体群と遺伝的に交流がある可能性を示唆した。分布域全体をカバーしたより詳細な系群構造については現在研究が行われているところである。

また、本種は成長段階や性による棲み分けを示すことが示唆されているが(中野 1996、Mucientes et al. 2009)、成熟個体の分布に関する知見が少ないこともあり、詳細な分布様式の把握のためには今後の調査における知見の収集が必要である。


【産卵・回遊】

本種の繁殖様式は卵食型の非胎盤型胎生であり(Wourms 1977)、産仔数の範囲は4〜16、出生時の全長は約70 cm(Stevens 1983、Mollet et al. 2000)である。本種の繁殖サイクルは、妊娠期間とともに休止期間を伴うと推定されているが、妊娠期間については研究によって推定値の幅が15〜25ヶ月と大きく、休止期間の推定値は得られていないため、繁殖周期は2年もしくは3年と考えられている(Mollet et al. 2000、Joung and Hsu 2005、Semba et al. 2011)。北大西洋で行われた標識放流調査の結果によると、本種の適水温は17〜22℃(Casey and Kohler 1992)であること、電子標識を用いた調査では、22〜27℃の水温帯に多くの時間滞在していることが明らかとなり(Vaudo et al. 2016)、適水温に従って環境水温の変化に伴い季節回遊を行うことが示唆されている。北太平洋においては、幼魚は亜寒帯境界付近を生育場にすると推測されているが(中野 1996)、成長段階を通じた性別の移動の詳細は不明である。近年は、北大西洋を中心にPSAT(ポップアップアーカイバルタグ)を用いた移動・回遊の研究が盛んに行われており(Loefer et al. 2005、Vaudo et al. 2016、Vaudo et al. 2017)、Vaudo et al.(2017)は主要分布域は大陸棚上であるものの、移動パターンの個体差が大きいこと、一部の個体は季節移動を行うことを報告している。この研究では、米国メリーランド沖とメキシコのユカタン半島沖から計26個体のアオザメに電子標識が装着され、放流されたが、2つの海域で放流された個体の移動は重複することなく、前者は大陸棚を超えて外洋域まで長距離の移動を行ったのに対し、後者は大陸棚に留まり、周年カンペチェバンク周辺に分布していたことが報告されている。

交尾期、交尾場、出産場等についての知見は乏しいが、いずれの海域においても、出産期は晩冬から盛夏にかけてと推測されている(Compagno 2001)。


【成長・成熟】

脊椎骨に形成される輪紋から年齢が推定されており、北大西洋の個体群については、Pratt and Casey(1983)、Natanson et al.(2006)、Rosa et al.(2017)、南大西洋の個体群については、Dono et al.(2015)、から成長式が報告されている。図3はこれまでに報告されている成長式の比較を行ったものである。研究により推定結果に違いが見られるが、これには高齢個体の標本の不足や技術的な問題(年齢査定法・モデル式等)に加えて輪紋周期性の仮定の差(年に2本か1本か)が関与していると考えられる。

50%成熟体長に関して、北大西洋の個体群では、雄は163〜167 cm(Natanson et al. 2006、Maia et al. 2007)、雌は190〜263 cm(Mollet et al. 2000、Natanson et al. 2006、Maia et al. 2007)、南半球の雌については、224 cm (Mollet et al. 2000)と推定されており(いずれも尾叉長または全長の推定値を尾鰭前長に換算した値)、年齢では雄は8歳、雌は18歳(北大西洋;Natanson et al. 2006)と推定されている。寿命については定義や推定方法によって推定値が異なるが、雄は20〜30歳、雌は30〜40歳と推定されている(北大西洋;Natanson et al. 2006)。


【生産力(内的自然増加率)】

主に南北大西洋系群に対して報告されている複数の成長式、成熟や再生産(成熟体長、産仔数、繁殖周期等)、自然死亡率等の情報をもとに生産力(rmax:資源の最大生産力)及び親子関係のパラメータ(h:スティープネス)値が推定された(Cortés 2017)。その結果、北大西洋系群については、rmax = 0.031〜0.06 (year-1)、h = 0.34〜0.52、南大西洋系群については、rmax = 0.066〜0.123 (year-1)、h = 0.44〜0.72となり、南大西洋系群の方が、生産力が高いことが示された。南北の違いは、生物パラメータ等の違いが反映されている。生産力に関するパラメータは資源評価結果に大きな影響を及ぼすことから、今後生物パラメータの推定精度向上が望まれる。


【食性・捕食者】

主としてまぐろ・かつお類を含む魚類やいか類を捕食する(川崎ほか 1962、谷内 1984、Strasburg 1958、Preti et al. 2012)。DNAを用いた分析によって、マイルカの捕食も確認されている(Porsmoguer et al. 2015)。海域、成長段階等によって異なった物を摂餌しており、特に選択的ではなく、生息域に豊富に分布している利用しやすい餌生物を食べる日和見食者と考えられている。成魚に対する捕食者は知られていないが、幼魚はホホジロザメによる捕食が報告されている(Compagno 2001)。


資源状態

南北大西洋系群については、2017年6月にICCATのさめ類作業部会において資源評価が行われた。日本、米国(北系群のみ)、スペイン、台湾、ポルトガル(北系群のみ)、ウルグアイ(南系群のみ)、ブラジル(南系群のみ)のまぐろはえ縄の漁獲量及び標準化CPUEが資源評価の入力データとして用いられた(ICCAT 2017)。各国が提出した(平均値で基準化した)CPUEは北大西洋系群についてはいずれも1996年頃から2010年頃まで増加傾向を示したが、その後2015年まで減少傾向を示した(図4a)。南大西洋系群については、国によって変動はあるものの2015年まで概ね増加傾向を示した(図4b)。資源評価モデルは、北大西洋系群についてはベイジアンサープラスプロダクションモデル(BSPM:Bayesian Surplus Production Model)及びSSが用いられた。BSPMについてはBSP2-JAGS及びJABBAが用いられた。JABBAはBSP2-JAGSより機能が充実しており、特徴としてはプロセス誤差や観測誤差に対して柔軟なモデリングが可能であることや自動的に複数の資源量指数データにあてはめることが可能なこと等が挙げられる。南大西洋系群についてはBSPM(BSP2-JAGS、JABBA、CMSY)が用いられた。CMSYはCPUEを使わずに漁獲量及び生産力からMSY管理基準値を計算する手法である。北大西洋系群について、BSP2-JAGSの結果では、現在(2015年)の資源量はMSY水準を下回り(B2015 / BMSY = 0.66〜0.85)、漁獲強度はMSY水準を上回る(H2015 / HMSY = 2.97〜3.58)結果となった(図5a)。推定された資源量の年トレンドは、各国のCPUEの年トレンドと比較的よく合致した(図6a)。一方、SSの結果(ベースケース)では、漁獲強度は1980年代中旬からMSY水準を超え、親魚量も1990年代から減少傾向を示しており、現在の資源量はMSY水準付近にあるが、乱獲状態にあり、過剰漁獲が行われていることが示唆された(図7)。2つの資源評価モデルの結果を統合して推定した資源状態は、B2015 / BMSY = 0.57〜0.95、F2015 / FMSY = 1.93〜4.38であった。BSP2-JAGSによる将来予測の結果、現在の漁獲量水準を維持した場合、資源量は減少を続けること、減少を食い止めるには漁獲量を1,000トン以下にする必要があることが推定された。BSP2-JAGSから推定された資源量及びSSから推定された親魚量や加入量が減少傾向にあることから、北大西洋系群の資源動向は減少傾向にあると推定される。

南大西洋系群について、BSP2-JAGSの結果では、現在(2015年)の資源量はMSY水準を上回っており(B2015 / BMSY = 1.69〜1.75)、漁獲強度についてはMSY水準を上回っている可能性がある(H2015 / HMSY = 0.86〜1.07)ことから(図5b)、資源量は乱獲状態にないが、過剰漁獲が起こっている可能性があると考えられた。また、CPUEの不確実性を考慮して実施したCMSYによる資源評価結果によれば、南大西洋系群は乱獲状態の可能性があり(B2015 / BMSY = 0.65〜1.12)、過剰漁獲が起こっている可能性がある(F2015 / FMSY = 1.02〜3.67)と考えられた。しかし、推定された資源量の年トレンドと各国のCPUEの年トレンドが合致しないこと(図6b)、推定された資源量、漁獲強度の年トレンドが非現実的な変化を示すこと、漁獲量とCPUEがともに増加傾向を示しモデルの設定に合わないこと等を総合的に考え、南大西洋系群の評価結果は不確実性が高く、信頼性が低い(すなわち正確な資源動向は不明)とされた。2つの資源評価モデルの結果を統合して推定した資源状態は、B2015 / BMSY = 0.65〜1.75、F2015 / FMSY = 0.86〜3.67であった。これらの結果に基づき、科学委員会は、北大西洋系群については、乱獲を止め資源を回復させるには年間漁獲量を500トン以下にすること(2040年までに資源が回復する確率は35%)、目標とする資源回復プランによっては船上保持禁止が最も有効な緊急措置であること(2040年までに資源が回復する確率は54%)、資源の回復をモニターするためのデータ収集体制を強化することを勧告した。南大西洋系群については、資源状態・漁獲量の不確実性・本系群の脆弱性と北大西洋系群の悪化した資源状態を考慮して、不確実性が低減されるまでは、年間漁獲量が過去5年の最低値を超えないようにすることを勧告した。前回(2012年)の資源評価結果(南北大西洋系群ともに乱獲状態の可能性は低く、現状の漁獲は持続可能なレベル)と大きく異なる評価になった理由としては、@資源評価モデルが変更されたこと(BSPMについてプロセス誤差を考慮したこと)、A近年の各国のCPUEの年トレンドが2010年以降減少傾向を示したこと(北大西洋系群)、B成長式を中心とする生物パラメータが更新され、内的自然増加率が前回の設定の約半分になったこと(北大西洋系群)等が考えられる。本系群の資源評価を更新するに当たり、前回と比べて使用するデータの質、量は向上したものの、更新された成長式や自然死亡率の検証が不十分なこと、統合モデルによる評価が不完全であること、沿岸漁業による漁獲量や投棄・放流量の推定値等の解析に必要なデータが十分な精度で得ることができない等の問題は依然としてあるため(特に南大西洋系群)、引き続き資源評価の精度を高めるための取り組みが必要である。

2019年の作業部会において、統合モデルによる北大西洋アオザメの将来予測(2016〜2070年)を行うとともに、将来予測の中で4つの管理方策(TAC・サイズ規制・生存個体の放流・努力量(F)の削減)の効果(各方策あるいは各方策を組み合わせた場合の親魚メス資源の回復状態)を確認し、各規制の効果を議論した(図8)。解析の結果、TAC = 0で2050年までにMSYまで回復する確率は60%、サイズ規制は回復の速度を速める事、生存放流のレベルに関わらず資源は2035年まで減少すること、漁獲圧が0の場合MSYを達成するレベルまで資源が回復するには2070年までかかることが推測された。


管理方策

全てのまぐろ類地域漁業管理機関において、漁獲されたさめ類の完全利用(頭部、内臓及び皮を除く全ての部位を最初の水揚げ又は転載まで船上で保持すること)及び漁獲データ提出が義務付けられている。

また、ICCATの年次会合では、2017年の資源評価の結果を受けて、北大西洋系群について原則所持禁止とするが、オブザーバーが乗船し生存放流・死亡投棄個体数等のデータを収集する条件で死亡個体の保持を認める、或いは生死に限らず一定サイズ以上の個体については保持を認める等の例外措置を盛り込んだ管理勧告が採択された。

2019年にICCAT科学委員会で行われた、管理勧告に記載された管理方策の効果検証を踏まえて、2019年の年次会合において北資源の管理勧告の見直しに向けた議論が行われたが合意に至らず、2020年に開催されるパネル4会合にて、さらに議論がなされる予定である。

2019年8月に開催されたCITES COP18において、本種及びバケアオザメ(類似種規定による)の附属書IIへの掲載が提案され、投票の結果採択された。附属書II掲載は2019年11月26日から発効し、本種の魚体、鰭などを含む一切の派生物を貿易する際は、輸出国による輸出許可書の発給が必要となり、公海域で採捕し自国に持ち帰る行為についても証明書の事前発給が義務付けられる(海からの持込み)。我が国は、アオザメは科学的に附属書II掲載基準を満たしておらず、FAO専門家パネルにおいても、その旨結論付けられていることから、本種及びバケアオザメの附属書II掲載について留保している。このため、本種を締約国に輸出する場合には輸出許可書が必要となるものの、自国への海からの持込みについての証明書の発給は不要となっている。


アオザメ(大西洋)の資源の現況(要約表)

海域 北大西洋 南大西洋
資源水準 低位 調査中
資源動向 減少 不明
世界の漁獲量
(最近5年間)
2,359〜3,339トン(水揚量)
最近(2018)年:2,359トン
平均:2,920トン(2014〜2018年)
2, 175〜3,272トン(水揚量)
最近(2018)年:2,175トン
平均:2,752トン(2014〜2018年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
20〜89トン(水揚量)
最近(2018)年:20トン
平均:60トン(2014〜2018年)
77〜182トン(水揚量)
最近(2018)年:93トン
平均:112トン(2014〜2018年)
管理目標 MSY MSY
資源評価の方法 BSPM(BSP2-JAGS、JABBA)及びSS BSPM(BSP2-JAGS、JABBA、CMSY)
資源の状態 B2015/BMSY:0.57〜0.95
F2015/FMSY:1.93〜4.38
B2015/BMSY:0.65〜1.75
F2015/FMSY:0.86〜3.67
管理措置 漁獲物の完全利用等
原則所持禁止(例外措置として、@オブザーバー乗船時に種々のデータ収集を行えば捕獲時死亡個体のみ採捕可能とする措置や、A一定のサイズ以上の個体であれば生死によらず採捕可能とする措置等がある。)
漁獲物の完全利用等
管理機関・関係機関 ICCAT、CITES ICCAT、CITES
最新の資源評価年 2019年(統合モデルアップデート) 2017年
次回の資源評価年 未定 未定

2018年の値は暫定値。


執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

仙波 靖子・甲斐 幹彦


参考文献

  1. Casey, J.G., and Kohler, N.E. 1992. Tagging studies on the shortfin mako shark (Isurus oxyrinchus) in the western North Atlantic. Aust. J. Mar. Freshwater Res., 43: 45-60.
  2. Compagno, L.J.V. 2001. FAO species catalog, Vol.4: Sharks of the world; Part 2 - Bullhead, mackerel and carpet sharks. Food and Agricultural Organization of the United Nations. Rome, Italy. 269 pp.
  3. Corrigan, S., Lowther, A.D., Beheregaray, L.B., Bruce, B.D., Cliff, G., Duffy, C.A., Foulis, A., Francis, M.P., Goldsworthy, S.D., Hyde, J.R., Jabado, R.W., Kacev, D., Marshall, L., Mucientes, G.R., Naylor, G.J.P., Pepperell, J.G., Queiroz, N., White, W.T., Wintner, S.P., and Rogers, P.J. 2018. Population connectivity of the highly migratory shortfin mako (Isurus oxyrinchus Rafinesque 1810) and implications for management in the Southern Hemisphere. Front. Ecol. Evol., 6: 187.
  4. Cortés, E. 2017. Estimates of maximum population growth rate and steepness for shortfin makos in the north and south Atlantic Ocean. SCRS/2017/126.
  5. Doño, F., Montealegre-Quijano, S., Domingo, A., and Kinas, P.G. 2015. Bayesian age and growth analysis of the shortfin mako shark Isurus oxyrinchus in the Western South Atlantic Ocean using a flexible model. Environ. Biol. Fishes., 98: 517-533.
  6. Heist, E.J., Musick, J.A., and Graves, J.E. 1996. Genetic population structure of the shortfin mako (Isurus oxyrinchus) inferred from restriction fragment length polymorphism analysis of mitochondrial DNA. Can. J. Fish Aquat. Sci., 53: 583-588.
  7. ICCAT. 2005. Report of the 2004 Inter-sessional meeting of the ICCAT Sub-Committee on by-catches: shark stock assessment. https://www.iccat.int/Documents/CVSP/CV058_2005/n_3/CV058030799.pdf(2020年1月21日)
  8. ICCAT. 2017. Report of the 2017 ICCAT shortfin mako assessment meeting (Madrid, Spain 12-16 June 2017). https://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2017_SMA_ASS_REP_ENG.pdf(2020年1月21日)
  9. Joung, S.J., and Hsu, H.H. 2005. Reproduction and Embryonic Development of the Shortfin Mako, Isurus oxyrinchus Rafinesque, 1810, in the Northwestern Pacific. Zool. Stud., 44: 487-496.
  10. 川崎 健・八百正和・安楽守哉・永沼 章・浅野政宏. 1962. 東北海区に分布する表層性魚食性魚類群集体の構造とその変動機構にについて. 第1報. 東北区水産研究所報告, 22: 1-44.
  11. 久米 漸. 1976. 2.大西洋マグロ類の保存国際委員会の活動. 水産海洋研究29号, 44-45.
  12. Loefer, J.K., Sedberry, G.R., and McGovern, J.C. 2005. Vertical movements of a shortfin mako in the western North Atlantic as determined by pop-up satellite tagging. Southeast. Nat., 4: 237-246.
  13. Maia, A., Queiroz, N.C., Cabral, H.N., dos Santos, A.M., and Correia, J.P.S. 2007. Reproductive biology and population dynamics of the shortfin mako, Isurus oxyrinchus Rafinesque, 1810, off the southwest Portuguese coast, eastern North Atlantic. J. Appl. Ichthyol., 23(3): 246-251.
  14. Mollet, H.F., Cliff, G., Pratt, H.L.Jr., and Stevens, J.D. 2000. Reproductive biology of the female shortfin mako, Isurus oxyrinchus Rafinesque, 1810, with comments on the embryonic development of lamnoids. Fish Bull., 98: 299-318.
  15. Mucientes, G.R., Queiroz, N., Sousa, L.L., Tarroso, P., and Sims, D.W. 2009. Sexual segregation of pelagic sharks and the potential threat from fisheries. Biol. Lett., 5: 156-159.
  16. 中野秀樹. 1996. 北太平洋における外洋性板鰓類の分布. 月刊海洋, 28: 407-415.
  17. Natanson, L.J., Kohler, N.E., Ardizzone, D., Cailliet, G.M., Wintner, S.P., and Mollet, H.F. 2006. Validated age and growth estimates for the shortfin mako, Isurus oxyrinchus, in the North Atlantic Ocean. Environ. Biol. Fishes., 77: 367-383.
  18. Nohara, K., Takeshima, H., Noda, S., Coelho, R., Santos, M.N., Cortés, E., Domingo, A., de Urbina, J.O., and Semba, Y. 2019. Progress report of genetic stock structure of shortfin mako (Isurus oxyrinchus) in the Atlantic Ocean. SCRS/2019/173.
  19. Porsmoguer, S.B., B?naru, D., Boudouresque, C.F., Dekeyser, I., Viricel, A., and Merchán, M. 2015. DNA evidence of the consumption of short-beaked common dolphin Delphinus delphis by the shortfin mako shark Isurus oxyrinchus. Mar. Ecol. Prog. Ser., 532: 177-183.
  20. Pratt, H.L.Jr., and Casey, J.G. 1983. Age and growth of the shortfin mako, Isurus oxyrinchus, using four methods. Can. J. Fish. Aquat. Sci., 40: 1944-1957.
  21. Preti, A., Soykan, C.U., Dewar, H., Wells, R.J.D., Spear, N., and Kohin, S. 2012. Comparative feeding ecology of shortfin mako, blue and thresher sharks in the California Current. Envion. Biol. Fish., 95: 127-146.
  22. Rosa, D., Mas, F., Mathers, A., Natanson, L.J., Domingo, A., Carlson, J., and Coelho, R. 2017. Age and growth of shortfin mako in the north Atlantic, with revised parameters for consideration to use in the stock assessment. SCRS/2017/111. 22 pp.
  23. Semba, Y., Aoki, I., and Yokawa, K. 2011. Size at maturity and reproductive traits of shortfin mako, Isurus oxyrinchus, in the western and central North Pacific. Mar. Freshwater Res., 62: 1-10.
  24. Semba, Y., and Yokawa, K. 2012. Estimation of catches for shortfin mako (Isurus oxyrinchus) by the Japanese tuna longline fishery in the Atlantic Ocean from 1994 to 2010. SCRS/2012/075.
  25. Stevens, J.D. 1983. Observation on reproduction in the shortfin mako Isurus oxyrinchus. Copeia, 1983: 126-130.
  26. Strasburg, D.W. 1958. Distribution, abundance, and habitats of pelagic sharks in the central Pacific Ocean. Fish. Bull. U.S. Fish. Wildlife Serv., 58: 335-361.
  27. 谷内 透. 1984. 漁業との関わり. In 谷内 透・須山三千三(編), 資源生物としてのサメ・エイ類. 恒星社厚生閣, 東京. 35-45 pp.
  28. Vaudo, J.J., Wetherbee, B.M., Wood, A.D., Weng, K., Howey-Jordan, L.A., Harvey, G.M., and Shivji, M.S. 2016. Vertical movements of shortfin mako sharks Isurus oxyrinchus in the western North Atlantic Ocean are strongly influenced by temperature. Mar. Ecol. Prog. Ser., 532: 177-183.
  29. Vaudo, J.J., Bryne, M.E., Wetherbee, B.M., Harvey, G.M., and Shivji, M.S. 2017. Lond-term satellite tracking reveals region-specific movements of a large pelagic predator, the shortfin mako shark, in the western North Atlantic Ocean. J. Appl. Ecol., 54: 1765-1775.
  30. Wourms, J.P. 1977. Reproduction and development in chondrichthyan fishes. Amer. Zool., 17: 379-410.