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36 ヨシキリザメ インド洋

Blue Shark, Prionace glauca


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最近の動き

2017年にインド洋系群の資源評価が行われた。2019年は、資源評価は行われなかった。


利用・用途

肉はすり身等、鰭はふかひれ、皮は工芸品や医薬・食品原料、脊椎骨は医薬・食品原料等に利用されている。


表1. 日本のヨシキリザメ水揚量(1994〜2018年)(データ:IOTC 2019)

表1

 

表2. ヨシキリザメの年齢ごとの推定体長(尾叉長:cm)(Andrare et al. 2019)

表2

 

図1

図1. 日本のヨシキリザメ(インド洋系群)水揚量(1994〜2018年)(IOTC 2019)


図2

図2. ヨシキリザメの分布域(Compagno 1984より)


図3

図3. ヨシキリザメの年齢と成長(Andrare et al. 2019)


図4

図4. インド洋の資源評価のために推定されたヨシキリザメの漁獲量(1950〜2015年)(IOTC 2017を改変)

Estimated-EUPOA/ratios(赤)はEUの各エリアや年の漁獲量割合から推定した漁獲量、Estimated-GAM(緑)は資源評価でベースケースとして用いられた漁獲量、Estimated-Trade(水色)はさめ類の貿易データから推定した漁獲量、IOTC Nominal(紫)は各国の水揚量の合計値。


図5b

図5. 資源評価で用いられたインド洋におけるヨシキリザメの標準化CPUE(1992〜2015年)(IOTC 2017を改変)

縦軸は、CPUEを平均値で割ることで1にスケール化したCPUE。各線はそれぞれEUフランスのはえ縄(赤)、EUポルトガルのはえ縄(緑)日本のはえ縄(青)、を示す。


図6

図6. 統合モデル(SS)で示された神戸プロット(IOTC 2017)

青丸及び実線はインド洋におけるヨシキリザメの相対資源量及び相対漁獲死亡係数の時系列変化。グレーの丸はMCMCによる不確実性の範囲を示す。

漁業の概要

ヨシキリザメは全大洋の熱帯域から温帯域にかけて広く分布し、外洋性さめ類の中で最も資源豊度が高いと考えられている(Compagno 1984)。本種はまぐろはえ縄漁業で数多く漁獲されており、基本的には混獲種であるが、大規模なはえ縄漁業やまき網漁業を含まない準産業型の漁業や零細漁業によりしばしばターゲット種として漁獲されている(IOTC 2018)。本種は1990年代以降世界的に商業価値が増加したため、はえ縄漁船(まぐろ・かじき表層はえ縄漁業)によりしばしばターゲットとして漁獲された(Mejuto and Garcia-Cortés 2005)。一般的に、はえ縄漁業は180〜240 cm(尾叉長)あるいは30〜52 kgの本種を多く漁獲する(Compagno 1984)。他の大洋と異なり、本種やアオザメに対するスポーツフィッシングはインド洋では一般的ではない(IOTC 2018)。また、混獲や放流によりダメージを受ける個体の割合は明確でないが、メカジキをターゲット種にしているはえ縄漁業によって混獲される本種のうち、縄を引き上げる際に起こった死亡についての暫定的な推定値は24.7%であった(Coelho et al. 2011)。体長の違いは死亡率に影響を及ぼす重要な要因であり、より大きな個体は生残率が高かった(Coelho et al. 2011)。

インド洋まぐろ類委員会(IOTC)に報告された本種の漁獲量は非常に不確実性が高い(IOTC 2018)。16の締約国(オーストラリア、ベリーズ、中国、EU:フランス・スペイン・ポルトガル・英国、インド、インドネシア、イラン、日本、韓国、マダガスカル、モルディブ、モーリシャス、フィリピン、セーシェル、南アフリカ、スリランカ)が決議15/01にリストされている主要なさめ類に対する漁獲量(水揚量)データを報告した。全締約国のメカジキをターゲットにしている漁業の総漁獲量のうち本種の漁獲量が68%を占めた。さめ類に対する漁獲量データは、低い報告率や製品重量の問題により、非常に不完全であると考えられた。2017年の資源評価では19の国がIOTC海域で漁獲された本種の漁獲量を報告したが、不確実性を考慮して事務局により3つの方法により漁獲量の補正が行われた(IOTC 2018)。

我が国の漁船は熱帯域でメバチマグロを対象とした深縄操業、温帯域でミナミマグロを対象とした浅縄操業により本種を混獲している。はえ縄漁業に対する漁獲成績報告書から集計された我が国の本種に対する漁獲量(1994-2018年)は、330〜2,700トンの範囲で推移しており、近年(2014-2018年)の水揚量は減少傾向である(表1、図1、平均742トン)(IOTC 2019)。


生物学的特性

【分布】

本種はインド洋の熱帯域から温帯域にかけて広く分布し(図2)、インド洋の熱帯域では水温12〜25度、水深80〜220 mに多く生息する(Compagno 1984)。本種の分布や移動は水温の季節的な変動や繁殖の状態、餌の利用度によって大きく影響を受ける。南緯20度以南の亜熱帯域や温帯域は未成魚の養育場であり、55〜311 cm(尾叉長)の幅広いサイズの個体が生息していることが報告されており、成魚は赤道付近の沖合域に多く分布していることが報告されている(Coelho et al. 2018)。系群についての情報はないが、インド洋に生息する本種を1系群として資源評価および管理が行われている(IOTC 2018)。


【繁殖・回遊】

本種の繁殖様式は胎盤型胎生であり、9〜12か月の妊娠期間を経て全長40〜51 cmの子供を出産する(Compagno 1984)。産仔数は4〜135個体であるが(Gubanov and Grigor’yev 1975)、平均産仔数は38個体、平均世代時間は8〜10年とされている(IOTC 2018)。インド洋における本種の繁殖周期は分かっていない。

長距離の移動が観察されており、オーストラリアからジャワ島への移動(Heard et al. 2017)、南アフリカまで移動する渡洋回遊も含まれている(IOTC 2018)。明瞭な日周鉛直移動が確認されており、表層から最大807 mまでの潜水行動が記録されている(Heard et al. 2017)。また、妊娠した雌は北緯2度から南緯6度の海域でその年のほとんどの期間を過ごすとされる(IOTC 2018)。


【成長・成熟】

観測された最大体長(尾叉長)は約380 cmである。インド洋海域のヨシキリザメに対する放射性炭素年代測定法により、尾叉長270 cmの雄は25〜27歳であることがわかっている(Romanov and Campana 2011)。また脊椎骨椎体に形成される輪紋から推定された最大年齢は雄で25歳、雌で20歳である(Andrade et al. 2019)。50%成熟体長(全長)は雄が201 cm、雌が194 cmであり、成熟年齢は雄で4〜7歳、雌で5〜7歳である(Jolly et al. 2013)。以下にインド洋で求められた成長式を示す。

            Andrade et al.(2019):尾叉長(表2、図3)
                         雌:Lt = 290.6 - (290.6 - 39.5) e-0.130t
                         雄:Lt = 283.8 - (283.8 - 39.5) e-0.150t

雌雄込みの体長-体重関係は、

                         TW = 0.159×10-4×FL2.84554

ここでTWは1個体の全重量(kg)、FLは尾叉長(cm)である(Romanov and Romanova 2009)。


【食性・捕食者】

魚類や頭足類が主な餌料である(Compagno 1984)。海域、成長段階等によって異なった餌生物を摂餌しており、特に選択的ではなく、生息域に豊富にいる利用しやすい動物を食べる日和見的捕食者とみなされている。成魚の捕食者は知られていないが、幼魚は大型さめ類や海産哺乳類に捕食されている可能性がある(Nakano and Seki 2003)。


資源状態

2017年のIOTC混獲・生態系作業部会会合において、漁獲量及びCPUEのデータ等を使用し、キャッチオンリーモデル(SRA:Stock Reduction Analysis)、ベイジアンサープラスプロダクションモデル(BSP:Bayesian Surplus Production Model)及び統合モデル(SS:Stock Synthesis)の3つのモデルにより1950-2015年の期間で資源評価が行われた(IOTC 2017)。ヨシキリザメの生物学的なデータ及び漁業データの質と量を考慮してこれら3つのモデルから、SSの結果をベースケースとすることが決まった。前回(2015年)の資源評価の設定と大きく異なる点は、生物学的なパラメータの更新(成長・成熟・再生産・自然死亡係数等の更新)に伴って、生産力を決定する親子関係の強さを表すパラメータ(スティープネス:0.2〜1の範囲で表し0.2に近いほど親子関係は正比例関係)が変化したことである(スティープネスが0.5から0.79に増加)。また、漁業データについては、漁獲量の過小報告が問題であるため、4つの漁獲量(1:漁獲量(水揚量)、2:各エリアや年別の割合から推定した漁獲量、3:一般化加法モデル(GAM)から推定した漁獲量、4:さめ鰭の貿易から推定した漁獲量)が考慮されたが、最も信頼性が高い3がベースケースとして用いられた(図4)。CPUEについては、各フリート(漁業主体)間での増減のトレンドが一致しないことが大きな問題となったため、階層構造を用いたクラスター解析をもとに各フリートを6つ(1:EU-ポルトガル・EU-フランス、2:EU-ポルトガル・EU-フランス・日本後期、3:EU-スペイン・インドネシア・日本後期、4:日本前期・EU-ポルトガル・EU-フランス、5:日本前期・EU-ポルトガル・EU-フランス・日本後期、6:日本前期・EU-スペイン・インドネシア・日本後期)にグルーピングし、CPUEデータの信頼性・代表性等を考慮して2のEU-ポルトガル・EU-フランス・日本後期のCPUEをベースケースとして用いることが決まった(図5)。日本後期のCPUEの年変動は大きいが、トレンドは比較的安定していた(Semba and Kai 2017)。

MSYを管理基準値とした場合、どのモデルも現在の資源状態は乱獲状態になく過剰漁獲行為も行われていない結果となった(図6)。SSによる現在の資源及び漁獲の状態は、F2015 / FMSY(80%信頼区間)= 0.304(0.298 - 0.311)及びB2015 / BMSY(80%信頼区間)= 1.50(1.32 - 1.68)であった(図6)。ベースケースモデルの不確実性をマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)により計算した結果、74.6%はグリーンゾーン(乱獲状態になく過剰漁獲行為も行われていない状態)、25.4%はオレンジのゾーン(乱獲状態にないが過剰漁獲行為が行われている状態)にあることがわかった。しかし、近年の資源量及び漁獲死亡係数ともにMSY水準に近付いており、漁獲量を増加させないことが勧告された(IOTC 2017)。


管理方策

全てのまぐろ類地域漁業管理機関において、漁獲されたさめ類の完全利用(頭部、内臓及び皮を除く全ての部位を最初の水揚げ又は転載まで船上で保持すること)及び漁獲データ提出が義務付けられている。これに関連して、インド洋のヨシキリザメに対しては、IOTCのコミッションにより4つの保存管理措置が採択されている (IOTC 2018)。

●決議11/04:地域のオブザーバー事業に関連して、オブザーバーは、漁獲物の(種)組成を特定し、投棄量・混獲量・サイズ組成をモニターするために、できるだけ監視を行うと共に漁獲量を推定すること。

●決議15/01:IOTCが管轄する海域にいる漁船(まき網・はえ縄・刺網・竿釣り・ひき縄を行う全長が24 mを超える漁船及びIOTC海域の国に所属しその国のEEZ以外で操業する全長が24 m以下の漁船)の漁獲量と努力量の記録について、漁獲成績報告書を作成すること。これについて、保持・投棄を含む全てのさめ類の漁獲量を報告しなければならない。

●決議15/02:IOTCの締約国と協力的な非締約国に対する義務的な統計の報告要求は、まぐろやまぐろ類似種に適用できる規定をさめ類に適用する。

●決議17/05:IOTCによって管理されている漁業で漁獲されたさめ類の保全に関して、@冷凍物については、さめ鰭を船上のさめ全重量の5%を超えて保持しないこと及びさめ鰭と魚体を同時に陸揚げしない場合は、5%を超えて保持しないことを確保するため必要な措置を取ること、A生鮮物については、さめ鰭の切り離しを禁止する。


ヨシキリザメ(インド洋)の資源の現況(要約表)

資源水準*1 中位〜高位
資源動向*2 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
2.7万〜3.2万トン
最近(2017)年:2.7万トン
平均:3.0万トン(2013〜2017年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
455〜974トン
最近(2018)年:455トン
平均:742トン(2014〜2018年)
管理目標 検討中
資源評価の方法 SS、BSP、Catch-only model
資源の状態 SB2015/SBMSY:0.83〜1.75
管理措置 漁獲物の完全利用等
管理機関・関係機関 IOTC
最新の資源評価年 2017年
次回の資源評価年 2021年

*1 中位〜高位にある理由としては、管理基準値であるMSY水準の資源量と比較した場合に、現在の資源量が多いあるいはMSY水準の周辺にあるためにそのように判断した。

*2 推定された資源量の変動あるいはそれを表す指標であるCPUEの増減を基に判断した。


執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

甲斐 幹彦・藤波 裕樹


参考文献

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