--- 総説 ---

34 さめ類の漁業と資源調査(総説)



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世界のさめ類の漁獲状況

世界のさめ・えい類の漁獲量は、FAO漁獲統計資料によると1950年代前半の20万トン台から2000年のおよそ90万トンまで増加し続け、その後減少に転じたものの2005年以降は75万トン前後で横ばいであったが、2017年の漁獲量は約65万トンであった(図1)。

近年、海域によっては、まぐろ類地域漁業管理機関(tRFMO)の保存管理措置により保持が禁止されている種がある;ヨゴレ:2011年(大西洋まぐろ類保存国際委員会:ICCAT)、2012年(全米熱帯まぐろ類委員会:IATTC)、2013年(中西部太平洋まぐろ類委員会:WCPFC、インド洋まぐろ類委員会:IOTC)、クロトガリザメ:2012年(ICCAT)、2014年(WCPFC)、2017年(IATTC:まき網混獲物のみ)、ハチワレ:2010年(ICCAT)、オナガザメ類(ニタリ・ハチワレ・マオナガ):2010年(IOTC)、シュモクザメ類:2011年(ICCAT)、ニシネズミザメ:2015年(ICCAT)、アオザメ:2017年(ICCAT)、イトマキエイ属:2015年(IATTC)、2019年(IOTC)、2021年(WCPFC)。また、一部のさめ類(ジンベエザメ、ウバザメ、ホホジロザメ、ヨゴレ、ニシネズミザメ、シュモクザメ類、クロトガリザメ、オナガザメ類、イトマキエイ属、アオザメ、バケアオザメ)はワシントン条約(CITES)附属書に掲載され、国際取引が規制されている。なお我が国は、イトマキエイ属を除くさめ類を含む商業漁業対象種の資源については、持続的利用の観点から漁業管理主体であるRFMO又は沿岸国が適切に管理していくべきとの立場であり、これらのさめ類については、この理由等から留保を付している。


表1. 主要港におけるさめ類種別水揚量(単位:トン)

水産庁調査委託事業により収集されたデータに基づく(水産庁 1993-1997、1998-2001、水産総合研究センター 2002-2006、2007、2008-2011、2012-2016、水産研究・教育機構 2017-2018、2019)。

表1

 

表2. 各地域漁業管理機関におけるさめ類の規制の一覧

表2

*1 メキシコの沿岸小型船は、110尾を上限として漁獲を許可。

*2 途上国の沿岸漁業は、国内消費に限り、またTask Iデータを提出することを条件に漁獲を許可。

*3 EEZ内で操業する沿岸零細漁業は現地消費に限り漁獲を許可。

*4 2017-2019年の3年間の管理勧告。

*5 例外措置としては、@オブザーバー乗船時に種々のデータ収集を行えば捕獲時死亡個体のみ採捕可能とする措置や、A一定のサイズ以上の個体であれば生死にかかわらず採捕可能とする措置、等がある。


図1

図1. 世界のさめ・えい類漁獲量(1950〜2017年)


図2

図2. 日本の漁業種類別さめ類漁獲量(1986〜2018年)

農林水産省統計情報部(1986-2003)、農林水産省統計部(2004-2019)をもとに作成。


図3

図3. 主要港における外洋性さめ類の種別水揚量(1992〜2018年)


図4

図4. 日本のはえ縄漁獲努力量の経年変化(1952〜2018年)


図5

図5. 中西部太平洋漁業国全体のはえ縄努力量(1950〜2016年)

中西部太平洋の努力量はWCPFC Public domainデータより引用。

日本におけるさめ類の漁獲状況

日本のさめ・えい類の漁獲量は1940年代から年々減少し、近年は2万〜4万トンで推移している。これは、主に底びき網で漁獲される底生性さめ・えい類の漁獲量の減少が原因である(Taniuchi 1990)。農林水産省が編集している漁獲統計によれば(農林水産省統計情報部1986-2003、農林水産省統計部2004-2019)、はえ縄によるさめ類の漁獲量は、1980年代の2万トン台から1990年代の1.5万〜2万トン台へと減少したが、2000年代に入って2万トン台に回復した。2005年以降は3万トン前後で推移していたが、2011年には東日本大震災の影響で漁獲量は2.5万トン弱に落ち込んだ。翌年(2012年)には3万トンまで回復し、その後は2.5〜3.5万トン前後で推移している(図2)。2018年の漁獲量(はえ縄)は2.6万トンであった。さめ類の漁獲量のうち、はえ縄による漁獲が占める割合は1995年以降80〜90%である。

日本の主要港における外洋性さめ類の種別水揚量を表1及び図3に示す(水産研究・教育機構 2019)。水揚量は2011年には震災の影響で特に少なかったものの(7,700トン)、2012年以降は2010年の水準近くにまで回復し1.2万〜1.3万トンで推移している。日本における水揚量が多いのは、外洋性のヨシキリザメ、ネズミザメ、アオザメ及び沿岸性のアブラツノザメである。

ヨシキリザメは、まぐろはえ縄によって数多く漁獲されており、その主要港における水揚量は2000〜2018年において0.5〜1.6万トンで、2001年に1.6万トンのピークを示した後、漁獲努力量の減少等により、2010年まで水揚量の減少傾向が見られ、それ以後は7〜8千トンの範囲で推移している(2011年を除く;表1、図3)。外洋性さめ類の水揚量全体に占める本種の割合は、60〜75%であるが、近年は60%前後を推移している。アオザメは肉質が良いので商品価値が高く、はえ縄船は漁獲物として船内保持する場合が多い。アオザメの主要港における水揚量は、2000〜2018年において550〜1,100トンで、近年は800〜900トンの間を推移している。外洋性さめ類の水揚量全体に占める本種水揚量の割合は4.3〜7.6%であるが、近年は6〜7%の間を推移している(表1、図3)。ネズミザメはその多くが宮城県気仙沼を中心とした東北地方に水揚げされている。肉質が良いため商品価値が高く、肉、鰭や皮が食用や工芸用に利用されている。2000〜2018年のネズミザメの主要港における水揚量は、はえ縄と流し網の合計で1,100〜4,400トンで、近年は一部の年を除き3,000〜3,500トンの間を推移している。外洋性さめ類の水揚量全体に占める本種水揚量の割合は14〜30%であるが、近年は一部の年を除き20〜30%の間を推移している(表1、図3)。

その他の外洋性のさめ類のうち、ミズワニは商業的には利用されていない。ニシネズミザメについては、日本は年間数トンから数十トンを漁獲していたが、2015年のICCATによる保存管理措置の採択を受け、現在は漁獲されていない。ハチワレを含むオナガザメ類の漁獲量は2000〜2018年において20〜540トンと報告されている。オナガザメ類に関しては、IOTCやICCATにおける船上保持禁止措置やCITESによる国際取引規制等の影響(我が国は留保の立場)により、近年はほぼ日本近海における漁獲・水揚げのみとなっている。クロトガリザメは、種別統計が整備され、コンスタントに水揚量が記録されるようになった2006年以降、1〜12トンが水揚げされていたが(水産庁・水産総合研究センター 2000-2016)、WCPFCによる本種の船上保持禁止措置が2014年に導入されて以降、水揚量は大きく減少し、2018年の報告値は0トンとなっている(水産研究・教育機構 2019)。

ジンベエザメ、ウバザメ、ホホジロザメの大型さめ類3種に関しては、1960年代にウバザメを対象とした突きん棒が存在したが、現在本種を対象とした漁業はなく、いずれの種についても偶発的な混入による混獲のみである。

また、沿岸魚種としては北海道、東北地方を中心としてアブラツノザメが底びき網や底はえ縄によって、1990年以降年間2,900〜4,600トン漁獲されている。


資源管理

外洋性さめ類を漁獲する日本のはえ縄の漁獲努力量は近年減少傾向にあり、特に太平洋で顕著である(図4)。しかしながら、漁業国全体の努力量の増減を見ると、例えば、中西部太平洋では1980〜1990年代後半までは努力量は比較的大きな増加・減少傾向を示したものの、その後は増減しながらも一貫した増加傾向にある(図5)。当該海域において、2004年や2013年には若干の減少傾向が見られるが、特に1990年代後半以降、漁業国全体の漁獲努力量の増加が著しい一方で(図5)、太平洋全体では日本の漁獲努力量は1992年以降大きく減少した後、2010年以降も一貫して緩やかな減少傾向にある(図4)。このことは、日本が漁獲努力量を減らす一方で、その他の国が漁獲努力量を増やしており、全体として漁獲努力量が増加し、外洋性さめ類にかかる漁獲圧も増加する傾向にあることを示唆している。

現在、全てのまぐろ類RFMOにおいて、漁獲したさめ類の完全利用(頭部、内臓及び皮を除く全ての部位を最初の水揚げ又は転載まで船上に保持すること)が義務付けられており、2019年のWCPFCでは、2020年11月以降、(ア)水揚げまでヒレを胴体から切り離さない、又は、(イ)船上では切り離したヒレと胴体を同じ袋に保管する等の代替措置を講じる、ことが合意された。加えて、資源評価の結果、危険な状態にあるとされたさめ類については保持禁止が導入されている(表2)。また、WCPFCでは、2014年の第11回年次会合において、@まぐろ・かじき類を対象とするはえ縄漁業は、ワイヤーリーダー(ワイヤー製の枝縄及びはりす)又はシャークライン(浮き玉又は浮縄に接続された枝縄)のいずれかを使用しないこと(ワイヤーリーダーやシャークラインの詳細については、用語集を参照のこと)、Aさめ類を対象とするはえ縄漁業は、漁獲を適切な水準に制限するための措置等を含む管理計画を策定すること、が合意されている。このAを受けて、気仙沼漁港を基地とする近海はえ縄漁船について、ヨシキリザメとアオザメの年間水揚量の上限(ヨシキリザメ:7,000トン、アオザメ:600トン)の設定を骨子とする計画が2015年に策定され、2016年1月1日発効した。本自主管理計画は、発効日から5年間にわたって実施される予定であり、2018年に集計された水揚量は、ヨシキリザメ4,527トン、アオザメ420トン、ネズミザメ144トンであった(JAPAN 2019)。

また、1999年に採択された「FAOサメ類保存管理のための国際行動計画」に基づき、さめ類の適切な保存及び管理を行うため、日本の漁業によるさめ類資源への影響を客観的、科学的に解析し、国際的に合意された実施規範を勘案した、「さめ類の保護・管理のための日本の国内行動計画」を2001年に策定した。その後改訂を重ねており、最近では平成28年3月に改訂を行った。この計画の下で、国内専門家からなる専門家グループにより、さめ類の資源状態の評価を行うための会合が定期的に開かれている。また、これに必要な情報を充実させるために、各種のデータ収集及び調査を継続的に実施している。

水産庁は漁業者に対し、近年、遠洋かつお・まぐろ漁業、近海かつお・まぐろ漁業における操業日誌により、15種類(ヨシキリザメ、ネズミザメ、アオザメ、メジロザメ類、ヨゴレ、クロトガリザメ、オナガザメ類、ニタリ、ハチワレ、マオナガ、シュモクザメ類、インドシュモクザメ、ヒラシュモクザメ、シロシュモクザメ、その他のさめ類)のさめ類の漁獲尾数及び漁獲重量ならびに放流・投棄尾数を記録・報告させるようにしているとともに、保存管理措置等に基づきまぐろ類RFMOへの魚種別漁獲量の報告を行っている。しかし、流し網、まき網、定置網等、はえ縄以外によるさめ類の漁獲については十分に把握されているとは言えず、また、農林水産統計においてもさめ類の漁獲は魚種別には分類されていない。さらに、RFMOやCITESの結果を受けた規制により漁業者によるさめ類の保持が減少していることに加え、太平洋島嶼国等の一部の沿岸国が独自にさめ類に関連する法律を整備して、当該沿岸国EEZに入漁・通過する漁船がさめ類を保持しないようにする動きも見られ、漁獲量や資源量指数の推定に必要な漁獲統計の情報量が減少しており、規制対象種の資源評価の不確実性が大きくなることが懸念されている。この様な状況において、今後は規制種を中心に放流個体数やそれに基づく死亡投棄量等のデータを種別に整備していくとともに、データが不十分な状況下で資源状態を推定する手法を検討していく必要性が高まっていくと考えられる。また、現在、多くの種についてRFMOにおけるさめ類の資源管理が行われているが、これらの効果を検証する動きが広がりを見せている。まぐろ類を漁獲する主要漁業国である我が国としては、引き続き正確な魚種別のさめ類漁獲統計の収集・編纂を行っていくことが望まれる。


現在・将来の問題点

  • 各種の規制により、漁獲量や資源量指数の推定に必要な漁獲統計の情報量が減少しており、規制対象種の資源評価の不確実性が大きくなることが懸念される。
  • さめ類の資源管理について、研究・行政等国内の対応体制を引き続き維持していく必要がある。
  • 精度の高い資源評価を行うため、放流個体数やそれに基づく死亡投棄量等を含めた漁獲統計資料を魚種別に整備していく必要がある。
  • 種数が多く、種判別も難しいため、漁船から漁獲情報を収集する場合、種の誤査定を考慮した収集体制を検討する必要がある。
  • 外洋性さめ類は高度回遊性資源なので、資源解析には関係漁業国の協力が不可欠である。
  • 資源評価において、RFMOやCITES等による規制が漁獲統計に及ぼす影響を検討・評価する必要がある。
  • 漁獲統計を補完するために、オブザーバープログラムをはじめとする調査データの質・量を維持する必要がある。

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

仙波 靖子


参考文献

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  2. JAPAN. 2019. Management Plan for Longline Fisheries Targeting Sharks. WCPFC-SC15-2019/EB-IP-06. https://www.wcpfc.int/node/43534(2019年11月18日)
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  7. 水産総合研究センター(編). 2002-2006. 平成13年度−平成17年度 日本周辺高度回遊性魚類資源対策調査委託事業報告書. 水産総合研究センター, 横浜.
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  9. 水産総合研究センター(編). 2008-2011. 平成19年度−平成22年度 日本周辺国際魚類資源調査報告書. 水産総合研究センター, 横浜.
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