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33 カツオ 大西洋

Skipjack, Katsuwonus pelamis


PIC

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最近の動き

2019年9〜10月に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の科学委員会(SCRS)が開かれ、漁獲統計の更新が行われた。大西洋における2018年の総漁獲量は30.5万トンであった(ICCAT 2019)。2019年のICCAT年次会合において、FAD禁漁を含む新たな管理措置が決定された。


利用・用途

主に缶詰等の加工品の原料として利用される。


表1. 大西洋におけるカツオの主要国別漁獲量(過去25年分・トン、ICCAT 2019を改変)

表1

 

図1

図1. 東部及び西部大西洋におけるカツオ漁獲量の年変化(ICCAT 2019を改変)


図2

図2. 大西洋におけるカツオの漁法別漁獲量の年変化(ICCAT 2019を改変)


図3

図3. 東部大西洋におけるまき網によるカツオ漁獲率(1操業あたり漁獲量)の経年変化(ICCAT 2019 改変)

France FADs:フランスのまき網船・FAD操業、Spain FADs:スペイン・その他のまき網によるFAD操業、Free schools all PS:まき網による素群れ操業。


図4

図4. 大西洋のカツオの分布域、産卵場及び主な漁場


図5

図5. 大西洋のカツオの年齢と体長の関係(ICCAT 2004 一部改変)

A〜Gの曲線は各海域で報告されたカツオの成長を示す。


図6

図6. 東部大西洋(上)及び西部大西洋(下)におけるカツオCPUEの経年変化(ICCAT 2019)

Azores BB:アゾレス諸島の竿釣り、Brazil BB:ブラジルの竿釣り、Canary BB:カナリア諸島の竿釣り、Dakar BB:セネガルの竿釣り、Larvae GOM:メキシコ湾における仔魚採集データ、PS EU Dak Free:ダカールに水揚げされたヨーロッパまき網船の素群れ操業、PS Free+FAD:まき網(素群れ+FAD操業)、PSVEN:ベネズエラのまき網、US LL:米国のはえ縄。


図7

図7. Schaefer型のASPICから推定された西部大西洋のカツオにおけるB / BMSYとF / FMSYの歴史的推移(ICCAT 2019)

漁業の概要

大西洋のカツオの漁場は東西に分かれ、両大陸側に接してそれぞれ分布している。主な漁場は、アフリカ大陸西岸中央部〜北西岸沖(北緯40度〜南緯20度、西経30度〜東経15度、まき網)とブラジル南東岸沖(竿釣り)、ベネズエラ北岸沖(まき網)である。東部大西洋の漁獲量は西部大西洋よりも多く、1990年代以降はおよそ80%が東部大西洋で漁獲されている(図1)。主要な漁業国(主要な漁法)は、東部大西洋ではスペイン(まき網・竿釣り)、ガーナ(竿釣り・まき網)、フランス(まき網・竿釣り)、パナマ(まき網)、ポルトガル(竿釣り)、西部太平洋ではブラジル(竿釣り)、ベネズエラ(まき網)である(表1、図2)。両海域ではひき縄やはえ縄でもわずかながら漁獲される。

大西洋でのカツオの年間総漁獲量は、1950年代から1961年までは6,000トン未満であったが、1962年に初めて1万トンを超えた。その後1960代後半には2.3万〜4.8万トン、1970年代には5.0万〜11.7万トン、1980年代には11.1万〜15.6万トンと年代とともに増加した(図1)。東部大西洋のまき網による人工浮き漁礁(FAD)操業の本格化と漁場の西側への拡大に伴って、1991年以降漁獲量が急増し、1991年には22万トン、1993年には20.9万トンを記録した。その後は、主としてまき網の漁獲量が減少し、大西洋での漁獲量は1990年代後半から2000年代にかけて12.3万〜18.2万トンで推移した。2010年以降に漁獲量は大きく増加し、近年5年平均では26.1万トン、2018年は過去最高の30.5万トンと歴史的に高い状態にある。これは、2008年以降のカツオの浜値が上昇傾向にあり、まき網船がカツオを対象とした操業を行っているためである(Anon. (ICCAT) 2014)。タイのバンコクにおける2013年のカツオの相場は、キハダと同等の価値で取引されており、東部大西洋のまき網によるFAD操業での漁獲量は近年増加傾向を示している(図3)。

小型魚の投棄は、2001〜2005年に東部大西洋で操業するまき網船のFAD操業において、カツオの水揚量1トン当たり42 kgと推定されている。コートジボワールのアビジャンに水揚げされるfaux-poisson(カツオ、メバチ、キハダ等を含む小型魚複数種の混獲物として水揚げされる漁獲物)1トンあたり小型カツオ(平均尾叉長37 cm)が235 kg、2005〜2014年に東部大西洋で操業するまき網船では、10,000トン/年がfaux-poissonであると推定された。

東部大西洋では、スペイン、フランス、ガーナによるまき網が主要な漁業である(表1)。2004年以降、パナマによる漁獲が急激に増加し、ポルトガルと同等または多い漁獲量を示すようになり、2011年以降はポルトガルの漁獲量を上回っている。ガーナの漁獲量は統計の不備について精査が行われ、歴史的な漁獲量が修正された(Anon. (ICCAT) 2016)。東部大西洋における2018年の漁獲量は28.2万トンであり、スペイン及びガーナによる漁獲が総漁獲量の42%を占めている。

西部大西洋では、ブラジルによる竿釣りが漁獲の大半を占め、漁獲量第2位のベネズエラ(主な漁法はまき網)を大きく引き離している(表1)。2018年までの西部大西洋における年間漁獲量は、2.1万〜3.5万トン(過去25年間)で推移している。2018年の西部大西洋の総漁獲量は約2.3万トンであり、過去5年平均と同等(11%減少)となった。

大西洋において、カツオを主対象とした日本の漁業は現在行われておらず、はえ縄にて大型のカツオがわずかに混獲されるのみである。過去においては、1990年代前半まで東部大西洋で現地水揚げの竿釣りが行われ、1976〜1981年のピーク時における年間漁獲量は1.2万〜1.7万トンを記録した。


生物学的特性

本種は熱帯から亜熱帯にかけて幅広く分布する(図4)。産卵場は表面水温24℃以上の海域で、アフリカ大陸西岸中央部沖(ギニア湾〜東経30度)及びブラジル沖の赤道を中心とした熱帯・亜熱帯域に広く分布する(仔魚の分布からの推定)。産卵活動は水温24℃以上の海域で一年中広範囲に行われ、赤道から高緯度海域に向かって産卵期間が短くなると考えられる。成熟開始年齢は満1〜2歳で、成熟開始時の体長は東部大西洋では雄45 cm、雌42 cmであるが、西部大西洋では雄52 cm、雌51 cmと東部よりも大きく、この違いが海域差かその他の要因によるものかは明らかではない。成長は季節や海域により異なることが報告されており(図5)、東部大西洋における標識・再捕結果より推定されたカツオの成長は、熱帯域より亜熱帯域の方が早い(Fonteneau 2015)。本種は最大で尾叉長100 cm、15 kgに成長し、寿命は少なくとも6歳以上と考えられる。大西洋でのカツオの索餌場は熱帯から温帯域と広範囲であり、主要な餌生物は魚類、甲殻類、頭足類で、朝から夕方にかけて日中に摂餌活動を行う。捕食者としてはまぐろ・かじき類のほか、カマスサワラ、外洋性のさめ類、海鳥類が知られている。


資源状態

【CPUEの動向】

近年の東部大西洋のまき網(FAD及び素群れ操業を含む)のCPUEは1991年以降ほぼ横ばいの傾向を示している(図6)。また、東部大西洋のセネガル・モーリタニア沖における素群れを対象としたまき網のCPUEは1990年代にかけて上昇し、2000年の前半には減少傾向に転じている。セネガル竿釣りのCPUEは長期的な傾向は増加を示し、カナリア諸島・アゾレス海の竿釣CPUEには明瞭な傾向は見られていない(図6)。西部大西洋の主要な漁業であるブラジルの竿釣り及びベネズエラのまき網のCPUEのうち、ブラジルの竿釣りについては2007年に増加したものの概ね安定している(図6)。


【資源評価】

ICCATにおける最新のカツオの資源評価は2014年6月のカツオ資源評価会合にて実施された(Anon. (ICCAT) 2014)。大西洋における本種の漁業・生物学的な特徴より東部・西部大西洋の2海域に区分して資源評価が行われた。資源水準は、相対資源量(B2013 / BMSY)が東部大西洋及び西部大西洋で1をやや上回る可能性が高いことから中位、資源動向は1990年代からの相対資源量の推移を基に横ばいと判断した。

東部大西洋については、2種類のプロダクションモデル(BSP:Bayesian Surplus Production Model、ASPIC:A Stock-Production Model Incorporating Covariates)及びその他の2種類のモデル(漁獲量のみを用いる資源評価モデル(Gedamke and Hoenig model))を用いて解析を試みた。これらのモデルからは信頼性のあるMSYが得られなかった。ただ、漁獲量のみを用いる資源評価モデルからはMSYは近年増加傾向であり、現在の漁獲量はMSY程度もしくはMSYを超えておらず、漁獲量及び平均体重は近年減少していないと判断された。また、ICCAT SCRSは、漁獲量・努力量は2012〜2013年レベルを超過しない程度にするように勧告している(ICCAT 2019)。

西部大西洋については、プロダクションモデル(ASPIC)による解析の結果、MSYは30,000〜32,000トンと推定され、B2013 / BMSYはおよそ1.3付近、F2013 / FMSYはおよそ0.7付近とされ、西部大西洋では資源は乱獲状態には陥っていないと判断された(図7)。ICCAT SCRSは東部大西洋の資源について、乱獲状態の証拠はないものの、努力量と漁獲量は最近年の漁獲レベルを超過しない程度にするよう勧告している。西部大西洋については特段の管理勧告はない。


管理方策

2014年11月のICCAT年次会合において、既存の熱帯まぐろ保存管理措置に含める形で、管理方策が初めて設定されることとなった。それによりカツオを漁獲する漁船のICCATへの登録、FAD操業の禁漁区・禁漁期等が設定されることとなった(ICCAT 2014b)。FAD操業の禁漁区・禁漁期は新たなものが2015年に決定、2016年に発行され、2017年より適用され1〜2月においてアフリカ沿岸域〜西経20度、南緯4〜5度の範囲となっている(ICCAT 2015)。2019年のICCAT年次会合において、熱帯まぐろ保存管理措置が改定され、2020年には1〜2月の2ヶ月間、2021年には1〜3月の3ヶ月間、大西洋全体においてFAD操業の禁止を決定した。FAD数は、1隻当たり一度に350基(2020年)及び300基(2021年)までとなった。2022年以降の措置は今後決定される予定である。


カツオ(大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位*(西部)
資源動向 横ばい*(西部)
世界の漁獲量
(最近の5年間)
23.2万〜30.5万トン
最近(2018)年:30.5万トン
平均:26.1万トン(2014〜2018年)
我が国の漁獲量
(最近の5年間)
1〜4トン
最近(2018)年:3トン
平均:2トン(2014〜2018年)
管理目標 MSY(3.0-3.2万トン(西部))
資源評価の方法 プロダクションモデル(BSP、ASPIC)等
資源の現状 悪化の兆候は認められない
管理措置 漁船登録
FAD操業の禁漁区・禁漁期、FAD数制限
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2014年
次回の資源評価年 2021年

* 2014年資源評価の資源状態及び過去5年の漁獲量の動向に基づく


執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

藤岡 紘

国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部

松本 隆之


参考文献

  1. Anon. (ICCAT) 2013. Executive summaries on species. Skipjack tuna. In ICCAT (ed.), Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain September 30-October 4, 2013). 344 pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2013-SCRS-REP_ENG.pdf(2013年10月24日)
  2. Anon. (ICCAT) 2014. Executive summaries on species. Skipjack tuna. In ICCAT (ed.), Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain September 29-October 3, 2014). 355 pp. https://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2014-SCRS-REP_ENG.pdf(2014年12月1日)
  3. Anon. (ICCAT) 2016. Executive summaries on species. SKJ-skipjack tuna. In ICCAT (ed.), Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain, 3-7 October, 2016). 429 pp. http://www.iccat.org/Documents/Meetings/Docs/2016_SCRS_ENG.pdf(2016年11月3日)
  4. Fonteneau, A. 2015. An overview of skipjack growth in the Atlantic knowledge and uncertainties. Collect. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 71(1): 221-229.
  5. ICCAT. 2004. Report of the 2004 meeting of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain 4-8 October 2004). ICCAT, Madrid, Spain. 189 pp. http://www.iccat.es/Documents/SCRS/SCRS 2004 ENG.pdf(2004年12月9日)
  6. ICCAT. 2014a. Report of the 2014 ICCAT east and west Atlantic skipjack stock assessment meeting. https://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2014_SKJ_ASSESS_ENG.pdf(2014年12月1日)
  7. ICCAT. 2014b. Recommendation and resolution adopted at the 19th special meeting of the commission. https://www.iccat.int/Documents/Recs/7312-14_ENG.PDF(2015年3月9日)
  8. ICCAT. 2015. Recommendation and resolutions adopted at the 24th regular meeting of the commission. https://www.iccat.int/Documents/08240-15_ENG.PDF(2015年12月22日)
  9. ICCAT. 2019. Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain 30 September-4 October 2019). ICCAT, Madrid, Spain. 459 pp. https://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2019/REPORTS/2019_SCRS_ENG.pdf(2018年11月29日)