--- 詳細版 ---

31 カツオ 中西部太平洋

Skipjack, Katsuwonus pelamis


PIC

[HOME] [詳細版PDF] [要約版PDF] [要約版html] [戻る]

最近の動き

2019年に、中西部太平洋における本種の資源評価が、太平洋共同体事務局(SPC)の専門家グループにより3年ぶりに行われた。今回の資源評価での主な変更点は、@海域区分が5海域から8海域に変更、A成熟体長の変更、B日本の標識放流再捕データの更新であった。資源評価結果は不確実性を考慮した54モデルから推定された結果に基づき示された。その結果、近年(2014〜2017年)の漁獲圧はMSYを下回っており、かつ産卵資源量はMSYレベルを上回っているが、産卵資源量は減少傾向を示し、歴史的最低水準にあることが留意されたほか、漁獲圧も増加傾向を示した。また、暫定的な目標管理基準値を過去10年間にわたって下回っていることから、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)科学小委員会は、暫定的な目標管理基準値を達成するための適切な管理措置の導入を勧告した。2019年12月のWCPFC第16回年次会合では、カツオの暫定目標管理基準値及びメバチ・キハダ・カツオの保存管理措置の見直しについて議論されたが、合意には至らず、2020年の年次会合で再度議論することとなった。現行の保存管理措置の主な内容は、まき網漁業によるEEZ内、公海域FAD禁漁期間はそれぞれ3ヶ月と5ヶ月、公海操業日数制限は先進国に加え、島嶼国がチャーターする船にも適用、FAD数制限を1隻あたり常時350基以下とすること等である。また、近年のWCPFCにおいては、長期的な管理枠組みとしての管理戦略評価の導入の議論が進んでいる。


利用・用途

缶詰や節原料のほか、刺身・たたきで生食される。


表1. 中西部太平洋における竿釣り及びまき網の主要漁獲国によるカツオの漁獲量(WCPFC 2019より集計)(単位:千トン)

表1

 

表2. 資源評価モデルの考慮したパラメータの重み付け

スティープネスは親仔関係に関するパラメータ(1に近づくほど親仔関係は無い)

表2

 

図1

図1. 中西部太平洋におけるカツオの漁法別漁獲分布(1990〜2018年:Williams and Reid 2019)

赤:竿釣り、青:まき網、黄:その他。海区区分番号は資源評価で使用した区分番号と同じ。


図2

図2. 2018年中西部太平洋におけるカツオの漁法別サイズ別漁獲量(Williams and Reid 2019)

赤:竿釣り、黄:フィリピン・インドネシアの漁業、水色:まき網付き物操業、濃い青:まき網素群れ操業。


図3

図3. 中西部太平洋におけるカツオの主要漁法別漁獲量の経年変化(WCPFC 2019より集計)


図4

図4. 中西部太平洋におけるカツオの国別漁獲量年変化(WCPFC 2019より集計)


図5

図5. 太平洋におけるカツオの分布域、産卵域及び漁場


図6

図6. 中西部太平洋のカツオの成長パターン(嘉山ほか 2003、Tanabe et al. 2003より作成)


図7

図7. 海域別成熟体長(Ohashi et al. 2019)


図8

図8. 推定カツオ北上経路と黒潮、黒潮続流、北赤道海流


図9

図9. アーカイバルタグから推定されたカツオ北上移動経路、海底地形と水平・鉛直的な生息限界水温分布(Kiyofuji et al. 2019a)


図10

図10. 資源評価に適用された海域区分

上:2016年資源評価(McKechnie et al. 2016)、下:2019年資源評価(Kiyofuji et al. 2019b、Vincent et al. 2019)。


図11

図11. 年齢(四半期)毎の成熟魚の割合(Vincent et al. 2019)

赤:2019年資源評価に適用された成熟率、紫:2016年資源評価、黒線と緑線は遅い成長と早い成長を考慮した場合。


図12

図12. 各海域における資源量推定値

(a) 総資源量、(b) 産卵資源量、(c) 加入量の経年変化(Vincent et al. 2019)。各海域は図10bを参照。


図13

図13. 推定された海区別漁獲係数(F)(Vincent et al. 2019)


図14

図14. 産卵親魚の減耗率(親魚量の推定値/漁業が無いと仮定した場合の親魚量)

赤:限界管理基準値、緑:暫定目標管理基準値。


図15

図15. 資源状態を記述するために使用される漁獲係数と産卵親魚量の関係図

左:MSYを基準とした漁獲係数の相対値(F / FMSY)と産卵親魚量の相対値(SB / SBMSY)の経年変化(Vincent et al. 2019);縦軸及び横軸の1.0はMSYを示す。
右:MSYを基準とした漁獲係数の相対値(F / FMSY)と漁獲の有無による資源量の相対値(SB / SBF=0)の経年変化(Vincent et al. 2019);縦軸の1.0はMSY、横軸の0.2は漁獲がないと仮定して推定した現在の産卵資源量の20%を意味し、限界管理基準値として合意されている;緑直線は、2015年WCPFC年次会合で合意された暫定的な目標管理基準値を意味する(漁獲が無いと仮定して推定した現在の産卵資源量の50%)。

漁業の概要

中西部太平洋におけるカツオの大部分は熱帯域で漁獲され、残りのほとんどが日本近海で季節的に漁獲されている(図1)。西部熱帯域では、インドネシアやフィリピンの近海漁業による漁獲が主要な部分を占める。中部熱帯域では、遠洋漁業国及び島嶼国のまき網漁業の漁獲が卓越している。中西部太平洋で漁獲されるカツオの尾叉長は概ね40〜60 cmが主体であるが、20〜40 cmの個体の大部分はインドネシア、フィリピン水域で漁獲される(図2)。

中西部太平洋におけるカツオの漁獲は、主に日本により行われてきた。竿釣りは江戸時代から始まり、大正初期に漁船の動力化が始まると漁場は急速に広がり、台湾北西部や小笠原諸島近海まで出漁するようになった。さらに、南洋諸島が日本の委任統治領となると、サイパン、トラック、ポナペ等を基地とした現地操業も始まった。昭和に入ると冷凍魚も扱われるようになり、漁場は日本の東北沖では沖合600マイル、南方ではマリアナ諸島、スルー海まで広がり、日本近海での季節的操業に限定されず、近海から遠洋までほぼ周年にわたって操業するものも増え、戦前のピーク時には10万トンを超える漁獲量に至った。戦後まもなく大戦による落ち込みから回復し、1952年にマッカーサーラインが撤廃されると、漁獲量は1960年前後には10万〜17万トン、1970年には20万トンを超え、1970年代後半には30万トンを超えた。この間の漁獲の伸びは主に竿釣りが中心であったが、漁場の拡大に伴う活餌保持の問題と燃油高騰等の経済的要因から、遠洋竿釣り漁船数は減少し、漁獲量の伸びは停滞した。1980年代には各国のまき網船による熱帯水域漁場の開発も始まり漁獲量の急増期に入った。中西部太平洋における漁獲量は1970年代まで40万トン台であったが、1990年代には100万トン前後に増大、さらに2009年には180万トン近くに達し、2011年にかけて減少した後、再び増加に転じ、2014年には約200万トンに達し、2017年まで減少傾向を示したが、2018年は約180万トンとなり、再び増加した(WCPFC 2019)(図3)。この間、竿釣り・まき網両漁業ともに、漁具の改良に加え、操業機器の開発・改良(低温活餌槽、海鳥レーダー、ソナー、集魚装置(FAD)等)と情報収集能力(衛星情報、インターネット利用)が向上した。

2018年の漁法別漁獲量(暫定値)は、まき網が約145.9万トンで79.4%、竿釣りが約17.2万トンで9.4%、その他の漁業が約20.6万トンで全体の11.2%であった(図3)。まき網については米国、韓国、台湾及び日本の遠洋漁業国が近年の漁獲量の5〜6割を占め、他はインドネシア、フィリピンが多い。2018年については、特に韓国、パプアニューギニアが多く漁獲し、それぞれ22.2万トン、21.7万トンで、台湾(15.6万トン)、米国(15.5万トン)、キリバス(15.5万トン)、日本(13.3万トン)の順であった。竿釣りについては2005年頃まで日本が約6割を占めていたが、次第に減少し、2006年以降はインドネシアが最も漁獲量が多くなり、日本は近年4〜5割ほどになっている(表1)。

国別漁獲量は、2009年を除き2010年までは日本が最大であったが、2011年には24万トンに減少した。2018年の国別漁獲量は、インドネシアが29万トンで最大で、韓国22万トン、パプアニューギニア21万トン、日本20万と続き、台湾、米国は近年それぞれ15万〜25万トンほど漁獲している(図4)。

日本近海は本種の分布縁辺部にあたり(図5)、漁獲は資源量と北上回遊・漁場形成に係わる海洋環境に影響される。日本近海の漁獲量は、1970年代以降9万〜21万トン(北緯20度以北)で推移している。常磐・三陸沖漁場が中心的漁場となっているが、漁獲量の変動が激しく、1970年代以降では2万〜14万トン(北緯35度以北の竿釣りとまき網の合計)である。この漁場では、竿釣りに加え、まき網操業が1980年代後半から増加している。2018年の常磐・三陸沖漁場の漁獲量は、近海竿釣り約2.5万トン、北部まき網0.95万トンであり、2008〜2017年の10年平均値(竿釣り2.6万トン、北部まき網1.9万トン)に比べて竿釣りは同程度、まき網は下回った。日本沿岸域のひき縄による2018年の漁獲量は470.8トンであり、2017年の漁獲量658.2トンと過去10年の平均漁獲量1,268.2トン(2009〜2018年)を下回った。なお、近年で沿岸域での大不漁となった2014年(458トン)と同程度であった。


生物学的特性

【分類・系群】

カツオ(Katsuwonus pelamis)はスズキ目サバ科カツオ属1属1種で、3大洋全ての熱帯〜温帯水域、概ね表面水温15℃以上の水域に広く分布している。これら3大洋の系群は別系群と考えられているが、太平洋内については単一系群とする説と複数系群とする説がある。歴史的に系群構造の推定は生化学的分析(1960〜1980年代)とDNA分析(1980年代〜現在)とに大別できる。血清蛋白を用いた集団遺伝学的研究では、太平洋には西部に1系群、中部及び東部に1つ以上の系群が存在するとしたが(Fujino 1996)、遺伝子頻度の差が遺伝的な隔離による確証はない。一方、DNA分析では、研究結果により遺伝的な差異が有意な場合とそうでない結果が示されており、この原因究明が今後の課題である。このため、系群構造に関しては確固たる結論が得られていない(鈴木 2010)。資源管理は、漁業の分布にあわせて東部太平洋と中西部太平洋に分けて行われている。


【成長・成熟】

ふ化直後は全長2.6 mm程度であるが、その後の成長は早く1.5ヶ月後には10 cmを超え、6ヶ月で約30 cmに成長する。その後、満1歳で尾叉長44 cm、満2歳で62 cmに達すると示唆されている(嘉山ほか 2003、Tanabe et al. 2003)(図6)。80 cmを超える大型魚は、はえ縄等でわずかに漁獲されることがあり、最大体長は100 cmに達するとされ、これらの大型魚は6歳以上と考えられている。水産研究・教育機構では、カツオの成長を生物学的に吟味した成長式の導出を目的とした耳石輪紋の処理方法と計数方法について検討を重ねている(Tanaka et al. 2017)。

中西部太平洋における成熟に関する研究は、生殖腺重量や局所的に採集された生殖腺の組織学的な観察に関する研究が主であった。Ohashi et al.(2019)は、2003年〜2016年までに熱帯域から日本近海で漁業によって収集された雌4,701個体の生殖腺サンプルの組織学的観察結果に基づき、成熟体長と産卵規模は熱帯ほど小さく、温帯域ほど大きくなることを示した。熱帯域、亜熱帯域、温帯域における成熟体長は、それぞれ50.1 cm、53.7 cm、55.9 cmとなり、徐々に大きくなる(図7)。また、熱帯域・亜熱帯域では周年産卵していることが示唆されたが、日本近海では夏季に限定されることが明らかとなった。日本近海での産卵期が夏季に限定され、成熟体長が大きくなるのは、季節的な昇温とともに来遊したカツオは、日本近海の水温が熱帯域・亜熱帯域よりも低いため、エネルギー収支の観点から、摂取エネルギーが成熟よりも成長に利用されることが示唆された(Ohashi et al. 2019)。今後の問題として、サンプルは漁業によって収集されたため時空間的に偏りが生じていること、体長毎の雌雄サンプルに偏りがあることが挙げられた。現在は、生殖腺サンプル保存方法の違いによる観察結果の違いを明確にすることや観察結果を迅速にデータ化する方法を検討中である。


【食性・被食】

餌生物は魚類、甲殻類、頭足類で、餌生物に対する選択性は弱く、その水域にいる最も多いものや捕食しやすいものを食べていると考えられている。捕食者は、カツオ自身を含め、まぐろ類・かじき類、カマスサワラ、ウシサワラ、さめ類、海鳥が挙げられる。これらの胃中に発見されたカツオのサイズは3〜70 cmに及ぶが、20 cm以下が最も多く観察されている。


【仔稚魚期の生態】

稚魚期の餌は魚類仔魚であるが、キハダ等のマグロ属の稚魚よりは魚食性は弱く、カイアシ類、オキアミ類や頭足類も捕食する。摂餌活動は昼間行われ、視覚捕食者である。成長に伴い捕食する魚類・甲殻類・頭足類のサイズは大型化するが、胃内容物には動物プランクトン等も引き続き出現する。餌の選択性は弱く、周りの餌環境と遊泳能力・口の大きさ等で決まると考えられている。仔魚は朝から夕方にかけて摂餌活動を行い、夜間には摂餌を行わない典型的な視覚捕食者であると考えられている(田邊 2002)。稚魚期においても仔魚期同様、夜間には摂餌を行わない。

仔稚魚期の鉛直分布は表層混合層下部から水温躍層が中心で、まぐろ類より深い。時間帯別の採集結果から、夜になると表層近くへ浮上する日周鉛直移動を行っていると考えられている。また、発生直後は水温躍層よりも浅い水深に分布するが、成長に伴ってより深い水深帯にも分布するようになる。


【分布・回遊】

太平洋におけるカツオの分布域は、適水温帯の分布にあわせて西側で南北に広く東側では狭くなる(図5)。大型魚ほど熱帯水域のみに分布する傾向があり、若齢ほど南北方向の分布範囲が広い。したがって、熱帯水域には仔稚魚から60 cm以上の魚まで全てのサイズが分布しているが、分布の縁辺部である温帯域には1歳魚の摂餌回遊群が季節的に分布する。本種は大洋の沖合域に広く分布し、標識放流からは西部太平洋と中部太平洋の交流及び東部太平洋から中部太平洋への移動が確認されており、フィリピン群島付近も中西部太平洋の魚群の移動範囲に含まれる。また、熱帯域におけるカツオ漁場は、ENSO(El-Niño and Southern Oscillation:エルニーニョ・南方振動)に伴う西部太平洋の暖水(warm pool)に強く影響されていることが明らかになっている(Lehodey et al. 1997)。

これまでに実施されてきた標識放流の結果から、日本近海への主要な来遊ルートは、黒潮沿い、紀南・伊豆諸島沿い、伊豆諸島東沖があると考えられ、三陸沖漁場では沖合から現れる魚群もあり、天皇海山漁場まで含めた東沖からの来遊も示唆されている(浅野 1984、田代・内田 1989、川合 1991)(図8)。日本近海へは、主に尾叉長30 cm台後半(1歳弱)以降の魚が来遊する。これらの中で特に重要なのは伊豆諸島沿いと伊豆諸島東沖を北上するルートで、日本近海の主要漁場である常磐・三陸沖へと来遊してくる。三陸沖へ来遊する魚群は、9月頃に北緯41度付近まで達した後、南下することが明らかとなっている(渡辺ほか 1995)。

水産研究・教育機構では、亜熱帯海域からのカツオ北上来遊経路を明らかにするために、2011年から電子標識放流を実施してきた。主な放流海域は、与那国島周辺、沖ノ鳥島周辺、硫黄島周辺海域での3海域である。放流の対象としたカツオのサイズは、春先に日本近海で漁獲対象となるサイズを考慮し、尾叉長40 cm前後とした。与那国周辺で放流したカツオは太平洋側に出ていくことなく北東方向に進み、夏から秋にかけてトカラ列島周辺海域に留まった。沖ノ鳥島周辺で放したカツオは一直線に北緯28度付近まで北上し、北西方向に向きを変えた後、足摺岬周辺でおそらく黒潮にぶつかり、東へ転進した。硫黄島周辺で放流したカツオも北上した後、北緯30度付近で留まる傾向を示した。これらの結果から、南から日本近海へのカツオの来遊経路は大まかに、@東シナ海黒潮沿い経路(トカラ周辺海域止まり)、A九州・パラオ海嶺経路、B伊豆・小笠原列島沿い経路の3経路があるとの結論に達した。タグに記録されていた水温も95%が18℃以上であったことから、日本近海へのカツオの来遊に影響する要因の一つとして水温18℃が限界生息水温と考えられ、水平的にも鉛直的にもこの水温によって分布範囲が制限されていることが示唆された(図9;Kiyofuji et al. 2019a)。

また、仔稚魚分布とともに漁業の対象とならない20〜35 cm程度のカツオ幼魚分布を明らかにすること、耳石輪紋間隔に基づいた成長式推定のためのサンプル採集調査を2015年度より開始した。2017年は、インドネシア海洋漁業センターとの共同研究として、インドネシア群島水域内での調査を実施した。


【行動】

カツオの遊泳行動を明らかにするために記録型標識による行動研究が行われてきた(Schaefer and Fuller 2007、Kiyofuji et al. 2019a)。東部熱帯域で記録型アーカイバルタグを取り付けた体長60 cm前後の大型のカツオ5匹の鉛直行動は、夜間の98.6%が水温躍層(44 m)より浅い深度を、昼間は37.7%が水温躍層より深い深度を遊泳し、この昼夜の遊泳深度は、深海音響散乱層(Deep-scattering layer:DSL)の日周変動と良く一致したので、索餌行動に起因する行動であると示唆された(Schaefer and Fuller 2007)。40 cm前後の比較的小型のカツオに取り付けたアーカイバルタグデータに基づくと、95%以上が23.8℃以上の表層(120 m以浅)に分布していたことが明らかとなった(岡本ほか 2013)。また、観察事例は少ないが、カツオは昼間70%近くの時間は潜っており、浮上してきた僅かな時間がカツオと漁業との接点になっていること(岡本ほか 2013、Kiyofuji et al. 2019a)、黒潮周辺域・東北沖では遊泳深度は約30 mよりも浅いことが明らかとなっている(Kiyofuji et al. 2019a)。


資源状態

中西部太平洋のカツオの前回の資源評価は、2016年にSPCの専門家グループにより実施された(McKechnie et al. 2016)が、モデルの設定に問題があることから資源状態について合意できていなかった。最新の資源評価は2019年に行われ、統合モデルのMultifan-CLを用いて実施された。評価期間は1972〜2018年とし、漁獲量データ、努力量データ、体長組成データ、標識放流再捕データを入力して行われた。2016年からの主な更新と変更は、@海域区分を5海域から8海域に変更(図10)、A成熟体長の変更(図11)、B日本のデータ(沿岸漁獲量、サイズ、標識放流再捕)の更新、Cモデル設定(成長式をモデル内で推定、再捕された標識個体の分布に関する前提条件、データ間の重み付け)の変更、Dこれまで一つの結果を参照モデル結果(reference case)とした示し方を54の異なるモデル設定の中央値を代表値として示した。なお、モデル設定の重み付けは科学委員会で議論され、表2に示される重み付けにより中央値を算出した。なお、日本からは7篇の作業文書と参考文書が提出され、それぞれ海域区分の提案(Kiyofuji et al. 2019b)、中西部太平洋カツオ繁殖特性値について(Ohashi et al. 2019)、成熟体長の変更に伴う資源評価結果推定値への影響分析(Aoki et al. 2019a)、日本の竿釣りデータに基づいたカツオ資源豊度指数の更新(Kinoshita et al. 2019)、海域区分に伴う沿岸漁獲量データの整備(Fujioka and Kiyofuji 2019)、サイズデータの更新(Kiyofuji et al. 2019c)とカツオ回遊モデルを利用した熱帯域での漁獲が日本近海の漁獲量に与える影響評価(Aoki et al. 2019b)についてであり、カツオ資源評価精度向上に大きく寄与した。

資源評価の結果、中西部太平洋全域において推定されたカツオの総資源量は1980年代中頃から2000年代中頃まで横ばいで、その後減少傾向を示した(図12a)。また、産卵親魚量は減少傾向を示し、最近年(2014〜2018年)の産卵親魚量は歴史的最低値水準にあることが留意された(図12b)。推定された加入量は、1972年から2000年頃まで増加した後、横ばいで推移した(図12c)。推定された漁獲係数は成魚、未成魚ともに増加傾向を示し、2018年は最大に達した(図13)。現在(2018年)の産卵資源量は漁獲がなかったと仮定して推定された産卵親魚量の約44%であった(図14、図15右)。近年(2014〜2017年)の漁獲圧はMSYを下回っており(Frecent / FMSY:0.44)、かつ産卵資源量はMSYレベル(229万トン)を上回っている(SBrecent / SBMSY:2.57)(図15左)が、暫定的な目標管理基準値(漁業がないと仮定して推定した現在の産卵資源量の50%)を過去10年間にわたって下回っていることから、WCPFC科学小委員会は、暫定的な目標管理基準値を達成するための適切な管理措置の導入を勧告した。

また、WCPFC科学小委員会は、今後の調査研究として、@まき網漁業データとFADに取り付けられた音響装置から得られた情報に基づく資源量指数を算出するための研究の継続、A漁業から独立した資源量指数を算出するための調査研究、B標識放流調査の継続、C成長のための調査研究を勧告した。


管理方策

2015年WCPFC第12回年次会合において、カツオの長期管理目標として、@漁業がないと仮定して推定した現在の産卵資源量の50%を暫定的な目標とすること、Aこの管理目標値は遅くとも2019年に見直され、それ以降も適宜見直されること、B見直しに際しては、日本沿岸域への来遊状況等に関する科学委員会の勧告が考慮されること、が合意された。2019年12月のWCPFC第16回年次会合では暫定的な目標管理基準値の見直しについて議論されたが、合意に至らず、2020年の年次会合で再度議論することとなった。また、SPCと科学小委員会に対して、@見かけ上の努力量の増加を考慮した将来予測の実施、A目標管理基準値の候補として、42%、44%、46%、48%、50%について追加の将来予測、Bメバチ・キハダでも同様の計算を実施し、情報提供することが要請された。この他、以下のメバチ・キハダ・カツオの保存管理措置の見直しについても、2020年の年次会合で再度議論することとなった。

まき網(熱帯水域)

  • FAD操業禁止3ヶ月(7〜9月)+ 公海FAD操業禁止追加2ヶ月(4〜5月もしくは11〜12月)
  • FAD操業禁止は、本船以外の船(tender vessel等)にも適用される
  • 公海操業日数制限は、先進国に加え島嶼国がチャーターする船にも適用
  • FAD数規制(1隻あたり常時350基以下):全条約水域に適用
  • 公海操業日数の制限
  • 島嶼国以外のメンバーの大型船隻数制限

はえ縄

  • メバチの漁獲量制限(我が国の漁獲枠は18,265トン)

現在、WCPFCにおいては、管理戦略評価の導入に向けた議論が活発になってきており、WCPFCを含む近年のまぐろ類RFMOにおけるMSEの進捗状況についてはNakatsuka(2017)が詳しく、MSE概論は、国際漁業資源の現況の「4. まぐろ類RFMOにおける管理方策(総説)」(中塚 2020)を参照のこと。


カツオ(中西部太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
162.5万〜200.7万トン
最近(2018)年:183.8万トン
平均:181.2万トン(2014〜2018年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
19.3万〜26.6万トン
最近(2018)年:20.2万トン
平均:20.9万トン(2014〜2018年)
管理目標 暫定的に漁業がないと仮定して推定した現在の資源量の50%とすることが2015年のWCPFC年次会合で合意されている。
資源評価の方法 統合モデル(Multifan-CL)
資源の状態 最近年(2014-2018)の産卵親魚量は、漁業が無いと仮定した場合の約44%程度である。資源は適度に利用されているが、産卵親魚量は過去最低値付近にあること、漁獲圧は増加傾向にある。
管理措置 ・メバチ・キハダ・カツオの保存管理措置は、2019年・2020年の2年間の措置として、まき網漁業によるEEZ内、公海域FAD禁漁期間がそれぞれ3ヶ月と5ヶ月、公海操業日数制限は先進国に加え、島嶼国がチャーターする船にも適用、FAD数制限を1隻あたり常時350基以下とすることが決まった。
管理機関・関係機関 WCPFC、SPC
最新の資源評価年 2019年
次回の資源評価年 2022年

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

清藤 秀理


参考文献

  1. Aoki, Y., Masujima, M., and Kiyofuji, H. 2019b. Impacts of distribution of adult skipjack in tropical areas on the abundance of recruited juveniles in the water around Japan inferred from the framework of Individual Based Model based on Dynamic Energy Budget Model. WCPFC-SC15-2019/SA-IP-12.
  2. Aoki, Y., Ohashi, S., and Kiyofuji, H. 2019a. Evaluation of changes in model settings focusing on the maturity schedule in the reference case model of the 2016 skipjack stock assessment. WCPFC-SC15-2019/SA-WP-12.
  3. 浅野政宏. 1984. 標識放流からみた東北海区のカツオの移動. 昭和59年度カツオ研究協議会会議報告. 15-20 pp.
  4. Fujino, K. 1996. Genetically distinct skipjack tuna subpopulations appeared in the central and the western Pacific Ocean. Fish. Sci., 62(2): 189-195.
  5. Fujioka, K., and Kiyofuji, H. 2019. Quarterly catch data of skipjack caught by coastal troll and coastal pole-and-line fisheries in the Japanese coastal waters. WCPFC-SC15-2019/SA-IP-11.
  6. 川合英夫. 1991. 黒潮系での総観スケールの構造と水産生物に及ぼす影響. In 川合英夫(編), 流れと生物と−水産海洋学特論−. 京都大学学術出版会, 京都. 18-34 pp.
  7. 嘉山定晃・渡辺良朗・田邉智唯. 2003. 日本周辺海域と太平洋熱帯域におけるカツオの成長. In 遠洋水産研究所(編), 平成14年カツオ資源会議報告. 遠洋水産研究所, 静岡. 95-98 pp.
  8. Kinoshita, J., Aoki, Y., Ducharme-Barth, N., and Kiyofuji, H. 2019. Standardized catch per unit effort (CPUE) of skipjack tuna of the Japanese pole-and-line fisheries in the WCPO from 1972 to 2018. WCPFC-SC15-2019/SA-WP-10.
  9. Kiyofuji, H., Aoki, Y., Kinoshita, J., Okamoto, S., Masujima, M., Matsumoto, T., Fujioka, K., Ogata, R., Nakao, T., Sugimoto, N., and Kitagawa, T. 2019a. Northward migration dynamics of skipjack tuna (Katsuwonus pelamis) associated with the lower thermal limit in the western Pacific Ocean. Prog. Oceanogr., 175: 55-67.
  10. Kiyofuji, H., Aoki, Y., Kinoshita, J., Ohashi, S., and Fujioka, K. 2019b. A conceptual model of skipjack tuna in the western and central Pacific Ocean (WCPO) for the spatial structure configuration. WCPFC-SC15-2019/SA-WP-11.
  11. Kiyofuji, H., Ohashi, S., Kinoshita, J., and Aoki, Y. 2019c. Overview of historical skipjack length and weight data collected by the Japanese pole-and-line fisheries both of commercial and research vessel (R/V) from 1953 to 2017. WCPFC-SC15-2019/SA-IP-12.
  12. Lehodey, P., Bwetignac, M., Hampton, A., Lewis, A., and Picaut, J. 1997. El-Nino Southern Oscillation and tuna in the western Pacific. Nature, 385: 715-718.
  13. Matsumoto, W.M., Skillman, R.A., and Dizon, A.E. 1984. Synopsis of biological data on skipjack tuna, Katsuwonus pelamis. NOAA Tech. Rep. NMFS Circ., 451: 1-92.
  14. McKechnie, S., Hampton, J., Pilling, G.M., and Davies, N. 2016 Stock assessment of skipjack tuna in the western and central Pacific Ocean. WCPFC-SC12-SA-WP-04. 120 pp.
  15. Nakatsuka, S. 2017. Management strategy evaluation in regional management organizations - How to promote robust fisheries management in international settings. Fish. Res., 187: 127-138.
  16. 中塚周哉. 2020. まぐろ類RFMOにおける管理方策(総説). 令和元年度国際漁業資源の現況. 水産庁・水産研究・教育機構. http://kokushi.fra.go.jp/R01/R01_04_RFMO-R.pdf(2020年3月31日)
  17. Ohashi, S., Aoki, Y., Tanaka, F., Aoki, A., and Kiyofuji, H. 2019. Reproductive traits of female skipjack tuna Katsuwonus pelamis in the western central Pacific Ocean (WCPO). WCPFC-SC15-2019/SA-WP-10.
  18. 岡本 俊・清藤秀理・竹井光広. 2013. アーカイバルタグデータに基づいた冬季北太平洋亜熱帯海域でのカツオ当歳魚の鉛直遊泳行動と生息環境. 水産海洋研究, 77(3): 155-163.
  19. Schaefer, K.M., and Fuller, D.W. 2007. Vertical movement patterns of skipjack tuna (Katsuwonus pelamis) in the eastern equatorial Pacific Ocean, as revealed with archival tags. Fish. Bull., 105: 379-389.
  20. 鈴木伸明. 2010. カツオ系群構造研究−系群構造に関しては現段階で確固たる結論は無い−. 遠洋水産研究所リサーチ&トピックス.
  21. 田邉智唯. 2002. 西部北太平洋熱帯域におけるカツオの初期生態に関する研究. 水産総合研究センター研究報告, 3: 67-136. http://www.fra.affrc.go.jp/buelltin/bull/bull03/3-5.pdf(2007年1月5日)
  22. Tanabe, T., Kayama, S., Ogura, M., and Tanaka, S. 2003. Daily increment formation in otoliths of juvenile skipjack Katsuwonus pelamis. Fish. Sci., 69: 731-737.
  23. Tanaka, F., Ohashi, S., Aoki, Y., and Kiyofuji, H. 2017. Reconsideration of skipjack otolith microstructural analysis for age and growth estimates in the WCPO. WCPFC-SC13-2017/SA-IP-08. 33 pp.
  24. 田代一洋・内田為彦. 1989. 標識放流結果からみた薩南海域へ来遊するカツオの移動. 宮崎県水産試験場研究報告, 4: 1-34.
  25. 上柳昭治・西川康夫・松岡玳良. 1973. カツオの人工ふ化と仔魚の形態. 遠洋水産研究所研究報告, 10: 179-188. http://www.enyo.affrc.go.jp/bulletin/kenpoupdf/kenpou10-179.pdf(2007年1月5日)
  26. Vincent, M.T., Pilling, G.M., and Hampton, J. 2019. Stock assessment of skipjack tuna in the western and central Pacific Ocean. WCPFC-SC15-2019/SA-WP-05-Rev2. 148 pp.
  27. 渡辺 洋・小倉末基・田邊智唯. 1995. 標識放流からみたカツオの回遊について−南下期を過ぎてからの移動経路−. 東北水研研報, 57: 31-60.
  28. WCPFC. 2019. WCPFC Tuna Fishery Yearbook 2018. https://www.wcpfc.int/doc/wcpfc-tuna-fishery-yearbook-2018-excel-files(2019年11月29日)
  29. Williams, P., and Reid, C. 2019. Overview of tuna fisheries in the western and central Pacific Ocean, including economic conditions - 2018. WCPFC-SC15-2019/GN-WP-01. 65 pp.