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29 クロカジキ 大西洋

Blue Marlin, Makaira nigricans


PIC

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最近の動き

最新の資源評価は2018年に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の科学委員会(SCRS)によって実施された。資源評価の結果、2011年の資源評価結果と同様に、本種は資源量が乱獲状態であり、漁獲も過剰漁獲状態であることが示された。ICCATでは、スポーツフィッシングや沿岸漁業を含めた全ての漁業を対象とする管理方策を策定している。資源評価における将来予測では、さらなるTACの引き下げの必要性が勧告されたが、2019年のICCAT年次会合では、2020年以降の陸揚げ限度量を1,670トンとすることが合意された。


利用・用途

刺身、寿司で生食される他、切り身はステーキやソテーにされる。


表1. 近年の国別漁獲量(トン)(データ:ICCAT 2019a)

表1

その他の漁獲には、スペイン、フランス、ポルトガル等が含まれる。


図1

図1. 大西洋におけるクロカジキの国別漁獲量(データ:ICCAT 2019a)

2018年は暫定値。


図2

図2. 大西洋におけるクロカジキの漁法別漁獲量(データ:ICCAT 2019a)

2018年は暫定値。


図3

図3. クロカジキ(大西洋)の分布


図4

図4. 1956〜2000年の四半期別の平均漁獲重量分布(ICCAT 2004)

赤丸:はえ縄の漁獲量、黄緑丸:はえ縄以外の漁業の漁獲量。この図は、本種の季節別分布状況を良く表している。


図5

図5. データ準備会合において選ばれた10種の漁業による資源量指数(ICCAT 2018b)


図6

図6. JABBA及びSS3による2016年の神戸プロット(ICCAT 2018b)

資源状態と管理勧告はJABBAとSS3の結果によって決定された。赤丸はSS3の結果、青丸はJABBAの結果である。


図7

図7. JABBAとSS3による将来予測結果(ICCAT 2018b)

将来予測は、JABBAとSS3でそれぞれ行い、結果を合わせた。TACを0〜3,500トンに固定した時の将来予測結果。結果はB / BMSYで示してある。予測の開始は2016年とし、2017年及び2018年の漁獲量は2,036トンと仮定している。

漁業の概要

本資源を主対象としている漁業は米国、ベネズエラ、バハマ、ブラジル等のスポーツフィッシングとカリブ海諸国やアフリカ西岸諸国、ブラジル等の沿岸零細漁業であるが、近年の漁獲の多くは、日本や台湾等のまぐろ類を対象としたはえ縄漁業の混獲及びカリブ海諸国やアフリカ西岸諸国の沿岸漁業によるものである(図1、図2)。本資源の漁獲量は1979〜1998年に増加傾向を示した後、2000年代中旬まで減少し、その後再び増加したが、2009年以降は減少傾向を示している。1990年代半ば〜2000年代半ばには便宜置籍船によるはえ縄等の漁獲等が増加した。また、1996年以降からはガーナ、コートジボワールといった沿岸零細漁業国がまとまった漁獲を揚げる等、近年は新しい漁業国による漁獲が増えている。2018年の漁獲量は暫定で1,436トンであった(図1)。日本の漁獲量は、2001年以降増加の傾向を示し2008年に1,000トンを上回った。その後、漁獲量は減少しつつも2018年は293トンを記録し、漁獲量は国別で最多となっている(表1)。また、本種の総漁獲量のトレンドは、おおよそはえ縄の漁獲量のトレンドと一致していたが、近年はそれ以外の漁業による漁獲が無視できない量となっている(図2)。


生物学的特性

本資源の分布域は大西洋の熱帯域を中心に温帯域まで広がる。大西洋の西側ではカナダ沖〜アルゼンチン沖、東側ではアゾレス諸島〜南アフリカ沖で漁獲されている(図3、4)。分布域は広大で、大西洋の東西を横断したり、南北を縦断するような回遊を行う個体も存在する。一方、その分布形態は、群泳するサバ科魚類等と異なり、個々の個体は薄く広く存在している(Jones and Prince 1998)。

本資源は、平均重量が100〜175 kgに達する大型魚類で、海洋生態系における上位捕食者であり、最大で雄は下顎叉長2.8 m(体重200 kg)、雌は下顎叉長3.8 m(体重500 kg)に達する。若齢個体の成長は硬骨魚類の中でも最も早いものの一つであると考えられており、1歳で30〜45 kgに達する。雌は雄よりも成長が早く、最大体長も大きい。本資源は2〜4歳で成熟し、熱帯及び亜熱帯水域で夏から秋にかけて産卵し、夏には水温の低い温帯域にも出現し、索餌行動を取る。本資源の産卵域としては、カリブ海中部〜北部域及びバハマの北側域が知られているが、コートジボワール沿岸域でも産卵している可能性が報告されている。成長や産卵生態に関しては、十分な情報はまだ得られていない。

本資源はニシマカジキ同様、外洋の表層域を主たる分布域としているが、定期的に水深300 m前後まで潜水を行うことが知られている。分布水深帯は、夜間はごく表層付近に留まることが多く、昼間は40〜100+ mと夜間に比べてやや深い場所に多く分布することが多い。なお、本資源の鉛直分布パターンは個体差が大きく、また水温や溶存酸素量といった海洋環境要因の影響を受けることも報告されている。本資源は熱帯〜温帯の外洋域で浅縄を用いてまぐろ類を狙うはえ縄によって最も多く漁獲されている一方で、外洋域で夜縄を用いてメカジキを漁獲したり、深縄を用いてメバチを漁獲するはえ縄によってもまとまった量が漁獲されている。

本資源は様々な魚類及び頭足類を捕食するが、サバ科魚類を好んで食べることが知られている。


資源状態

資源評価は2018年6月にICCATの科学委員会(SCRS)によって実施された(ICCAT 2018a)。資源評価には、プロダクションモデルのJABBA(Just Another Bayesian Biomass Assessment)とASPIC(A Stock-Production Model Incorporating Covariates)及び統合モデルのSS3(Stock Synthesis 3)が用いられ、最終的にJABBAとSS3の結果が採用された。これらの資源評価モデルには、データ準備会合で選定された10種の漁業の資源量指数が適用された(図5)。また、総漁獲量は公式統計のTASK1(図1)に未分類のかじき類の漁獲量を考慮したものを用いた。2つの資源評価モデルの結果を合わせると、53.7%の確率で資源量は乱獲状態であり、漁獲も過剰漁獲状態であることを示した(図6)。本項では、資源量指数は1960年代から急激に減少していること、50%以上の確率で過剰漁獲状態であることから、資源水準は低位、資源動向は減少とした。さらに、SCRSは、JABBAとSS3の結果をもとに将来予測も行い、2028年に50%以上の確率で資源をMSYレベルにするためのTAC(1,750トン)を算出した(図7)。これらの結果を受け、SCRSは、2011年の資源評価結果で決定した2,000トンのTACを上回る漁獲が続いたため、資源量は回復しなかったと結論づけた(ICCAT 2011、2018b)。なお、SCRSは、この結果に対し、本資源の漁獲量と生産性について不確実性があることを明記している(ICCAT 2018b)。


管理方策

2018年に行われた資源評価結果は、現行のTACを引き下げる必要性を勧告したが、これを受け2019年のICCAT年次会合では、大西洋のクロカジキ資源に対して、2020年以降の陸揚げ限度量を1,670トンとすることが合意され、以前と同様に、放流後の死亡率を最小化するよう取り組むことが勧告された(ICCAT 2012、2015、2018c、ICCAT 2019b)。なお、日本の割当量は年間328.1トンである。生きて漁獲された個体をできるだけ放流後の生存率が高くなるように放流することが勧告された。また、資源解析・評価の実施に当たって問題となった生存放流及び死亡投棄個体数の各国推定方法のSCRSによる検証、スポーツフィッシングについてはオブザーバーの乗船(カバー率5%)、サイズ規制と売買の禁止が勧告されている。


クロカジキ(大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
1,436〜2,689トン
最近(2018)年:1,436トン
平均:2,042トン(2014〜2018年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
280〜430トン
最近(2018)年:293トン
平均:318トン(2014〜2018年)
管理目標 MSY:目標値3,056(2,384〜3,536)トン
資源評価の方法 JABBA及びSS3
資源の状態 現在の資源量は乱獲状態であり、漁獲も過剰漁獲状態である。
管理措置 ・2020年以降の陸揚げ限度量を1,670トンとする(日本の割当量は328.1トン)
・スポーツフィッシングについてオブザーバー乗船(5%)、サイズ規制、漁獲物の売買禁止
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2018年
次回の資源評価年 未定

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際資源水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

井嶋 浩貴


参考文献

  1. ICCAT. 2004. 8. Executive summaries on species. 8.6 BUM - Blue marlin. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain - 4-8 October 2004). 99-015 pp.
  2. ICCAT. 2011. Report of the 2011 Blue marlin stock assessment and white marlin data preparatory meeting (Madrid, Spain, April 25 to 29, 2011). 71 pp. http://www.iccat.es/Documents/Meetings/Docs/2011_BUM_ASSESS_ENG.pdf (2012年1月20日)
  3. ICCAT. 2012. Report of the standing committee on research and statistics (SCRS). PLE-104/2012. 303 pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/SCRS2012/2012_SCRS_REP_EN.pdf (2012年12月27日)
  4. ICCAT. 2015. Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, 28 September to 2 October 2015). 351 pp. https://www.iccat.int/Documents/Meetings/SCRS2015/SCRS_PROV_ENG.pdf (2016年11月21日)
  5. ICCAT. 2018a. Report of the 2018 ICCAT blue marlin stock assessment meeting. (Miami, United States, 18-22 June 2018). 45 pp.(2018年11月25)
  6. ICCAT. 2018b. Report of the standing committee on resertch and statistics (SCRS). (Madrid, Spain, 1 to 5 October 2018). 129-138 pp.(2018年11月25)
  7. ICCAT. 2018c. Compendium management recommendations and resolutions adopted by ICCAT for the conservation of Atlantic tunas and tuna-like species. 378 pp. https://iccat.int/Documents/Recs/COMPENDIUM_ACTIVE_ENG.pdf(2019年2月8日)
  8. ICCAT. 2019a. ICCAT statistical databases. Nominal Catch Information. https://www.iccat.int/Data/t1nc_20191104.7z(2019年11月26日)
  9. ICCAT. 2019b. Recommendation by ICCAT to establish rebuilding programs for blue marlin and white marlin/roundascale spearfish. (Recommendation 19-05)
  10. Jones, C.D., and Prince, E.D. 1998. The cooperative tagging center mark recapture database for Istiophoridae (1954-1995), with an analysis of the West Atlantic ICCAT billfish tagging program. SCRS/1996/096. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 47: 311-321. http://www.iccat.es/Documents/CVSP/CV047_1998/CV047000311.pdf(2005年12月9日)