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27 ニシマカジキ 大西洋

White Marlin, Tetrapturus albidus


PIC

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最近の動き

2019年6月に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の科学委員会(SCRS)によって資源評価が実施され、2017年時点において資源は乱獲状態ではあるが、現在は漁獲圧も減少し、近年は乱獲は進行しておらず、ゆっくりとした回復の傾向も確認された。しかしSCRSは、近年の漁獲量がTAC(400トン)を上回っていることを、問題視した。また、投棄された量について正確な情報が得られるような措置を取る必要があることが明記された。この結果を基に、ICCAT年次会合では、2020年以降の陸揚げ限度量を引き続き355トンとした。本管理方策には、スポーツフィッシングや沿岸漁業を含めた全ての漁業を対象にするものも含まれている。


利用・用途

刺身、寿司、切り身(ステーキ)、マリネ等で消費される。


表1. 近年の国別漁獲量(ICCAT 2019c)

漁獲量には、いずれもラウンドスケールスピアフィッシュが混入していると考えられる。

表1

 

表2. 将来予測の結果:神戸IIマトリックス(ICCAT 2019a)

将来予測は漁獲が0〜1,600トンの範囲で実施されることを仮定した。それぞれの表は(a)FMSYを下回っている(乱獲は発生していない)、(b)BMSYを上回っている(乱獲されていない)、(c)BMSYを上回ってFMSYを下回っている確率を示す。推定された確率は、JABBAとSS3の予測結果を組み合わせたものに基づいている。

表2

 

図1

図1. ニシマカジキの国別漁獲量(ICCAT 2019c)


図2

図2. ニシマカジキの海域別・漁法別漁獲量(ICCAT 2019c)


図3

図3. 2000-2009年(左)及び2010-2014年(右)の漁法別漁獲量分布図(ICCAT 2014)

青色:はえ縄漁業、灰色:その他の表層漁業による漁獲量を示す。円の大きさは漁獲量の相対的な比を表す。凡例の丸は上から1,000トン、2,000トン。


図4

図4. ニシマカジキの分布


図5

図5. 資源評価で用いられた漁業別資源量指数(ICCAT 2019a)

EUスペインのはえ縄の指標(紫色実線)は、感度解析のみに使用された。また、JABBAのベースケースモデル(モデルS3)は、1959-1961の日本のはえ縄CPUEを使用していない。


図6

図6. 資源評価結果(神戸プロット)(ICCAT 2019a)

資源評価の結果として、JABBAのS3モデル(1959年から1974年までの日本のはえ縄CPUEを使用していないモデル)とSS3のモデル6(投棄した漁獲をモデル内で推定した結果)及びモデル7(投棄した漁獲を推定していない結果)が合意された。

漁業の概要

本資源を主対象として漁獲している漁業は米国、ベネズエラ、バハマ、ブラジル等のスポーツフィッシングとカリブ海諸国やアフリカ西岸諸国の沿岸零細漁業であるが、漁獲量の大部分は台湾、日本、ブラジル等のはえ縄漁業の混獲によるものである。近年、ベネズエラ、トリニダード・トバゴ等のカリブ海諸国やブラジルの零細漁業の漁獲の割合が多い(図1、表1)。日本の漁獲量は、1990年代前半までは100トンを上回っていたが、それ以降減少を続け、近年の漁獲量は6〜10トンとなっている(表1)。

最近本種に外見が極めてよく似たラウンドスケールスピアフィッシュ(Roundscale Spearfish, Tetrapturus georgii)という新種の存在が確認され、ニシマカジキの報告漁獲量の中に本種の漁獲が含まれていることがわかった(ICCAT 2012)。今後はニシマカジキとラウンドスケールスピアフィッシュの漁獲を分けて報告することがICCATで奨励されている。しかしながら、ICCATの漁獲統計は現在までのところこの2種を一緒に計上している。

本資源の総漁獲量は1960年代に約5,000トンまで達した後、1970年代に2,000トン前後に急減し、2000年までの間に1,000〜2,000トンの間で推移した。その後総漁獲量は緩やかな減少傾向を示し、2009年までは700トン前後で推移していたが、2010年以降再び減少し、2018年は暫定値で304トンと報告されている(表1)。1980年代半ば以降は南大西洋での漁獲が北大西洋を上回っていたが、2010年からは北大西洋の漁獲量がやや多くなっている(図2)。


生物学的特性

本資源は主として西大西洋の熱帯・亜熱帯域及びそれに隣接する水域に広く分布している(図3、図4)。また、本種はインド洋・太平洋に分布しているマカジキとは外部形態が明確に異なっており、平均漁獲サイズは20〜30 kgでマカジキよりも小型であり、最大で下顎叉長200 cm、体重44 kg程度になる。本種の小型個体は大型歯鯨類、まぐろ・かじき類等に捕食されている場合がある。大西洋の熱帯・亜熱帯域に分布するクチナガフウライ及びラウンドスケールスピアフィッシュとは外部形態が極めてよく似ているが、これら3種は、吻の長さ、胸鰭の形状及び肛門の相対的な位置で区別される(ICCAT 2012)。ラウンドスケールスピアフィッシュは2006年に新種として記載されたため、これ以前に行われた本資源の生物学的研究は、ラウンドスケールスピアフィッシュの標本混入により混乱していると考えられる。

産卵は大西洋熱帯域で、北半球域では4〜7月に、南半球域では12〜3月に行われている。索餌は、夏季に温帯域で行う。外洋の表層混合層内が主たる分布水深帯であるが、100〜200 m層への潜水行動を頻繁に行うことが確認されている。潜水行動には、深層域に一定時間止まるU字型と、すぐ浮上するV字型が認められるが、どちらの潜水行動をより多く行うかについては、個体や海洋環境による変異が大きく特定の傾向は認められていない。


資源状態

2012年の資源評価では、ICCATのニシマカジキ水揚げ統計に混入しているラウンドスケールスピアフィッシュの情報を取り除く手法の検討が行われた。本資源の分布の中心である西大西洋域では、ラウンドスケールスピアフィッシュに対するニシマカジキの割合は、季節や水域で変化するものの全体としては、23〜27%程度であることが判明した。その一方で、東大西洋域では情報が少なく混入率の推定はできなかった。このため、2019年の資源評価でもニシマカジキとラウンドスケールスピアフィッシュを合わせた漁獲量が用いられた。

2019年のICCATの科学委員会(SCRS)には多くの資源量指数(CPUE)が報告された(ICCAT 2019a)。SCRSは、大きくトレンドの異なるEUスペインのはえ縄CPUEと、日本のはえ縄CPUE(1959〜1961年)を除いた全てのCPUEを資源解析に用いた(図5)。資源解析に用いた漁獲量には、他種の混入という問題に加えて、報告漁獲量の減少が指摘されている。本種は2002年から、生存個体の放流義務等の規制が導入され、結果として2002年以降報告漁獲量が減少しているためである。2019年の資源評価では、投棄・放流に関する報告率について議論された。総漁獲量は1995年以降減少しているが、非報告型の全廃漁船による漁獲割合は、1990年代以降、近年最大80%に達していることにSCRSは留意した。

資源解析はベイジアンプロダクションモデル(Just Another Bayesian Biomass Assessment:JABBA)と統合モデル(Stock Synthesis 3:SS3)を用いて実施された(ICCAT 2019a)。上記に示されるような不確実性を反映するために、SS3を用いた解析では、投棄・放流をモデル内で推定するシナリオ(モデル6)と、提出された漁獲データのみを使用するシナリオ(モデル7)が使用された。資源評価の結果、本資源はこれまで高い漁獲圧を受けてきたが、現在は漁獲圧も減少し、現在の漁獲死亡係数の水準はMSYレベルよりも低くなっている。一方、資源量はいまだにMSYレベルよりも低くなっていると考えられる(図6)。将来予測は、JABBA(S3)とSS(モデル6)の将来予測結果を組み合わせて、神戸IIマトリックスを作成した。これらの予測結果をみると、現在の400トンのTACは、2029年までに漁獲圧、資源量共に乱獲状態から回復する可能性は93%であった(表2)。また、TACが1,000トンであっても2029年には68%の確率で資源が回復する結果となった(表2)。しかし、SCRSは、これらの推定値がJABBAとSS3の両方で過度に楽観的である可能性があると指摘している。以上の結果から、資源量は、MSYを下回っている可能性があるものの、漁獲量は減少しているため、資源水準は定位、資源動向は微増と判断される。


管理方策

2019年に行われた資源評価結果を受けて、大西洋のニシマカジキ資源に対しては、2020年以降の陸揚げ限度量を355トンとすることが合意された(ICCAT 2019b)。日本の割当量は年間35トンである。また、生きて漁獲された個体をできるだけ放流後の生存率が高くなるように放流することが勧告されたほか、資源解析・評価の実施に当たって問題となった生存放流及び死亡投棄個体数の各国推定方法についてのSCRSでの検証、スポーツフィッシングについてはオブザーバーの乗船(カバー率5%)、サイズ規制と売買の禁止が勧告されている。


ニシマカジキ(大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 微増
世界の漁獲量*
(最近5年間)
304〜480トン
最近(2018)年:304トン
平均:471トン(2014〜2018年)
我が国の漁獲量*
(最近5年間)
6〜10トン
最近(2018)年:8トン
平均:8トン(2014〜2018年)
管理目標 MSY
資源評価の方法 JABBA及びSS3
資源の状態 B2010<BMSY、F2010<FMSY
管理措置 2020年以降の陸揚げ限度量を355トンとする(日本の割当量は35トン)。
スポーツフィッシングについてオブザーバー乗船(5%)、サイズ規制、漁獲物の売買禁止。
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2019年
次回の資源評価年 未定

* 漁獲量には、いずれもラウンドスケールスピアフィッシュの漁獲が混入していると考えられる。


執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

井嶋 浩貴


参考文献

  1. ICCAT. 2012. Report of the 2012 White Marlin Stock Assessment Meeting (Madrid, Spain May 21-25, 2012). SCRS/2012/012. http://www.iccat.int/Documents/CVSP/CV069_2013/n_3/CV069031085.pdf (2018年1月30日)
  2. ICCAT. 2014. 10. Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain September 29 - October 3, 2014). 130 pp. http://www.iccat.es/Documents/Meetings/Docs/2014-SCRS-REP_ENG.pdf(2018年1月30日)
  3. ICCAT. 2019a. Report of the 2019 White Marlin Stock Assessment Meeting (Miami, USA 10-14 June 2019). SCRS/2019/004. https://www.iccat.int/Documents/SCRS/DetRep/WHM_SA_ENG.pdf(2019年11月29日)
  4. ICCAT. 2019b. Recommendation by ICCAT to establish a rebuilding program for Blue marlin and White marlin/Roundscale Spearfish (Recommendation 19-05).
  5. ICCAT. 2019c. ICCAT statistical databases. Nominal Catch Information. https://www.iccat.int/Data/t1nc_20191104.7z(2019年11月29日)