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26 マカジキ 中西部北太平洋

Striped Marlin, Tetrapturus audax


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最近の動き

最新の資源評価は、2019年4月に北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)かじき類作業部会によって実施された。本資源評価は、前回の資源評価から東西の境界や漁業の定義などを変更し、大幅な改変をした。資源評価の結果、資源状態は乱獲状態にあり、漁獲は1993年以降、過剰漁獲の状態にあるとされた。しかしながら、この結果には、様々な不確実性が含まれていることをISCかじき類作業部会は指摘している。また、ISCかじき類作業部会は、様々な漁獲状態の組み合わせで、近年の低加入が続く場合と、過去からの平均的な場合の将来予測を実施し、それぞれのシナリオで、初期資源量の20%まで回復する確率を示した。これらの結果を踏まえ、2019年12月の中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)年次会合では、本資源の暫定的な資源回復目標を、2034年までに少なくとも60%の確率で20%SSBF=0を達成することとし、当該回復目標を達成するための保存管理措置の改正を今後検討することが合意された。


利用・用途

刺身、寿司で生食されるほか、切り身はステーキや煮付けとされる。


図1

図1. 北太平洋(赤道以北)におけるマカジキの我が国の漁法別漁獲量(ISC 2019a)


図2

図2. 北太平洋におけるマカジキの国別漁獲量(ISC集計分)(ISC 2019a)


図3

図3. 太平洋におけるマカジキの分布域(桃色)と主要漁獲域(青色)

現在マカジキを主対象とした漁業はごく小規模な沿岸漁業に限られている。流し網のモラトリアム以降、マカジキは主にはえ縄によって漁獲される。


図4

図4. 資源評価に用いた日本の遠洋近海はえ縄の資源量指数(CPUE)

黒丸は標準化されたCPUE、実線は平滑化されたCPUEのトレンドであり、灰色の塗り潰しは95%信頼区間を示す。資源評価に用いられたCPUEは、第3四半期エリア1の日本のはえ縄(左下2つの図)、1995年以降の台湾、及び米国ハワイの値である。


図5

図5. 統合モデル(SS3)による資源評価結果

(a)1歳以上の総資源量、(b)産卵資源量、(c)加入尾数、(d)漁獲死亡係数。b、dで示された水平の直線は、それぞれ産卵資源におけるMSY、MSYを達成するために必要な漁獲死亡係数を示す。


図6

図6. AGEPROによる将来予測の結果

(a)漁獲圧一定シナリオによる将来予測結果、(b) 一定漁獲量シナリオによる将来予測結果。それぞれ複数の漁獲圧と漁獲量での結果を示している。黒線は、長期的な過去の加入量が将来も見込まれると仮定した場合の将来予測の結果であり、灰色の線は、近年の少ない加入量が続く場合を想定した将来予測結果である。

漁業の概要

北太平洋(赤道以北)における我が国のマカジキの漁獲量は、1970年代には1万トンを超えていたが、その後減少を続け、2018年の漁獲量は1,612トンにとどまっている(図1)。本資源を漁獲する漁業は、はえ縄または流し網によるものが大半であるが、一部は突きん棒やひき縄でも漁獲される。漁獲のほとんどは、まぐろ類を対象とした操業の混獲であり、釧路沖、常磐沖、房総沖、南西諸島等では、はえ縄、突きん棒及び流し網が季節的に本資源を主対象とした操業を行っている。

北太平洋のマカジキ漁獲の大半は我が国によるものである(図2)。総漁獲量は1990年以降、減少傾向を示し2018年には2,536トンまで減少した (図2)。ISCの漁獲集計値には、中国等の漁獲情報が含まれていないので、今後さらに整備を進める必要がある。


生物学的特性

【資源構造】

太平洋のマカジキには外部形態の比較から南北太平洋の2系群があるといわれていたが、DNA分析結果から中西部北太平洋の個体と東部北太平洋の個体とは遺伝学的に異なることが示された(McDowell and Graves 2008、Purcell and Edmands 2011)。そのため、ISCは中西部太平洋の資源評価を行っている。


【分布と回遊】

太平洋におけるマカジキの分布は、はえ縄におけるCPUEの分布から、熱帯太平洋中西部海域を取り囲む馬蹄形をなすことが古くから知られている(図3)。主な活動水深帯は表層混合層及びその直下の水温躍層部であり、それより深いところに潜ることは多くない。電子標識装着調査データの解析から、夜半から朝にかけて活動が極端に低下する時間帯があることが報告されている。


【成長と成熟】

体長(眼後叉長)組成の解析から1歳で64 cm、3歳で150 cm、5歳で200 cmに達し、寿命は10歳程度(最大体長290 cm)と推定されているが、正確な成長及び成熟年齢に関する情報は得られていない。160 cm前後(3〜4歳)で約50%の個体が成熟するものと考えられている。産卵場は稚魚の採集地点の分布状況から北緯20度前後の海域であろうと推定されている。東部太平洋での卵稚仔の採集報告はないが、卵巣の成熟状態から一部の個体は産卵している可能性がある。産卵期は4〜6月である。


資源状態

最新の資源評価は2019年4月にISCかじき類作業部会によって実施された。これまでISCでは、中西部北太平洋系群と東部北太平洋系群の境界線が西経140度にあるとして、中西部北太平洋資源の資源評価を行っていた(Anon. (ISC) 2012a、2012b、ISC 2013、2015)。しかし、2019年の資源評価において再度レビューを行った結果、系群の境界に関する明確な科学的根拠が認められなかった。そこでISCかじき類作業部会は、東西の境界をWCPFCと全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)の境界である西経150度に変更した(ISC 2019b)。

使用したモデルは統合モデルのStock Synthesis 3 ver. 3.30(SS3)である(Methot and Wetzel 2013)。本資源評価は、2017年の資源評価をもとに、東西の境界と漁業の定義を変更し、漁獲データ、サイズデータ、資源量指数が更新された。モデルの設定については前回の方法が踏襲されたが、データの重みづけ手法や漁具の選択率、加入のプロセスの過程などが変更された。資源解析に使用した資源量指数(標準化CPUE)は、エリア・四半期別の日本のはえ縄(第3四半期のエリア1:北緯25度以南及び東経180度を除くエリア)、台湾の遠洋はえ縄(1995年以後)及びハワイのはえ縄の標準化CPUEである(図4)。

推定された1歳以上の総資源量は、1975年から1980年代半ばにかけて10,000トンから20,000トンで変動し、その後20,000トン前後で安定したが、1990年以降に減少し、近年は10,000トンを下回って推移している(図5a)。推定された産卵資源量は、1975年から1990年にかけてMSYレベルの2,604トン前後で推移していたが、その後大きく減少し、近年まで1,000トン前後で推移している(図5b)。推定された加入量は、1975年から1990年半ばに、400千尾より高い値で変動を繰り返したが、その後は近年まで卓越した加入群が出現しておらず、特に2009年、2012年及び2014年の加入量は少ない(図5c)。産卵資源量が1990年代半ばに大幅に減少してその後回復しなかった原因としては、漁獲死亡係数の増加と加入量の減少が考えられる(図5d)。これらの結果を踏まえ、ISCかじき作業部会は、現在の資源状態は乱獲状態にあり、かつ漁獲は過剰漁獲にあるとした。しかし、ISCかじき作業部会は、今回の資源評価結果には多くの不確実性があることを指摘し、管理方策を決定する場合、これらの不確実性を考慮するよう言及した。

本稿では資源量がMSYを下回り、近年の1歳以上の資源量も減少傾向がみられるため、資源水準は低位、資源動向は減少と判断した。

将来予測は、将来予測モデルAGEPROを使用した(Brodziak et al. 1998)。将来予測の評価期間は、2018年から2037年の20年間とし、初期値や漁獲死亡係数等のパラメータはSS3の出力結果を使用した。また、評価する管理シナリオは2種類の加入シナリオを仮定し、一定の漁獲圧と漁獲量一定の漁獲シナリオを組み合わせて、計27種類のそれぞれ10,000回のシミュレーションを実施し、20%SSB0に資源が回復する確率を算出した。将来予測の結果を見ると、一定の漁獲圧で管理する場合、加入量は、資源を20%SSB0まで回復する確率に大きく影響した。平均加入量が多い長期加入シナリオでは、最も高い漁獲圧で漁獲するシナリオ7を除くすべてのシナリオで2021年までに資源を回復すると予測された(図6a:黒の実線)。平均加入量の少ない短期の加入シナリオでは、最も低い漁獲圧では20%SSB0に到達すると予想されるが、他のシナリオでは2021年までに60%の確率で資源が20%SSB0を上回ることは期待されなかった(図6a:灰色の実線)。漁獲量一定のシナリオでは、長期加入シナリオでの予測のすべてが、61%から73%の確率で資源量は20%SSB0に到達した(図6b:黒の実線)。一方、短期の加入シナリオでは、少なくとも60%の確率で20%SSB0に到達するためには、大幅な漁獲削減が必要となった(図6b:灰色の実線)。資源量の回復が予想される最小の漁獲削減はシナリオ24で、現在の管理措置の漁獲量2,151トンから1,359トンに60%削減され、2021年には65%の再構築の確率があることが示された。


管理方策

2019年のWCPFC年次会合では、資源評価の結果を受けて暫定的な資源回復計画に合意した。当該計画では、本資源の暫定的な資源回復目標を、2034年までに少なくとも60%の確率で20%SSBF=0を達成することとした上で、当該回復目標を達成するための保存管理措置の改正を今後検討することとされている。


マカジキ(中西部北太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(北太平洋)
(最近5年間)
2,120〜2,569トン
最近(2018)年:2,536トン
平均:2,386トン(2014〜2018年)
我が国の漁獲量
(北太平洋)
(最近5年間)
1,389〜1,759トン
最近(2018)年:1,613トン
平均:1,567トン(2014〜2018年)
管理目標 検討中
資源評価の方法 SS3
資源の状態 現在の資源状態は乱獲状態にあり、かつ漁獲は過剰漁獲の状態にある。
管理措置 各国が漁獲量を、2000〜2003年の最高漁獲量から2011年は10%、2012年は15%、2013年以降は20%削減
管理機関・関係機関 WCPFC、ISC
最新の資源評価年 2019年
次回の資源評価年 2024年

執筆者

かつお・まぐろユニット
さめ・かじきサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

井嶋 浩貴


参考文献

  1. Anon. (ISC) 2012a. Report of the billfish working group (6-16 December 2011, Honolulu, USA). In ISC (ed.), Report of the twelfth meeting of the international scientific committee for tuna and tuna-like species in the north Pacific Ocean. (18-23 July 2012 Sapporo, Japan). Annex 5.
  2. Anon. (ISC) 2012b. Report of the billfish working group (2-9 April 2012, Shanghai, China). In ISC (ed.), Report of the twelfth meeting of the international scientific committee for tuna and tuna-like species in the north Pacific Ocean. (18-23 July 2012 Sapporo, Japan). Annex 7.
  3. Brodziak, J., Rago, P., and Conser, R. 1998. A general approach for making short-term stochastic projections from an age-structured fisheries assessment model. In Funk, F., Quinn II, T., Heifetz, J., Ianelli, J., Powers, J., Schweigert, J., Sullivan, P. and Zhang, C.-I. (eds.), Proceedings of the International Symposium on Fishery Stock Assessment Models for the 21st Century. Alaska Sea Grant College Program, Univ. of Alaska, Fairbanks. https://www.researchgate.net/publication/267682539_A_General_Approach_for_Making_Short- Term_Stochastic_Projections_from_an_Age-Structured_Fisheries_Assessment_Model(2019年12月27日)
  4. Graves, J.E., and McDowell, J.R. 1994. Genetic analysis of striped marlin Tetrapturus audax population structure in the Pacific Ocean. Can. J. Fish. Aquat. Sci., 51: 1762-1768.
  5. ISC. 2013. Report of the thirteenth meeting of the international scientific committee for tuna and tuna-like species in the north Pacific Ocean. (17-22 July 2013; Busan, Korea).
  6. ISC. 2015. Stock assessment update for Striped Marlin (Kajikia audax) in the Western and Central North Pacific Ocean through 2013 (15-20 July 2015 Kona, Hawaii, USA).
  7. ISC. 2019a. Annual catch table 2019. http://isc.fra.go.jp/pdf/ISC19/ISC19_Annual_Catch_Table_2019.xlsx(2019年11月29日)
  8. ISC. 2019b. Stock assessment report for striped marlin (Kajikia audax) in the Western and Central North Pacific Ocean through 2017. http://isc.fra.go.jp/pdf/ISC19/ISC19_ANNEX11_Stock_Assessment_Report_for_Striped_Marlin.pdf(2019年12月27日)
  9. McDowell, J.R., and Graves, J.E. 2008. Population structure of striped marlin (Kajikia audax) in the Pacific Ocean based on analysis of microsatellite and mitochondrial DNA. Can. J. Fish. Aquat. Sci., 65(7): 1307-1320.
  10. Methot, R.D., and Wetzel, C.R. 2013. Stock synthesis: A biological and statistical framework for fish stock assessment and fishery management. Fish. Res., 142: 86-99.
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  12. WCPFC. 2010. Conservation and Management Measures (CMMs) and Resolutions of the Western Central Pacific Fisheries Commission (WCPFC).
  13. WCPFC. 2015. Scientific Committee Eleventh Regular Session summary report (5-13 August 2015 Pohnpei, Federated States of Micronesia).
  14. WCPFC. 2018. Northern Committee Fourteenth Regular Session Summary report (4-7 September 2018 Fukuoka, Japan).