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20 メバチ 大西洋

Bigeye Tuna, Thunnus obesus


PIC

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最近の動き

2018年7月に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)メバチ資源評価会合において新たな資源評価が実施され、資源は乱獲状態かつ過剰漁獲と推定された。2016年及び2017年の漁獲量はTACを大きく超過した。これは主として、漁獲割当のない国による漁獲量増加による。2019年11月にICCAT年次会合にて、TAC削減、FAD管理の強化を含む新たな管理措置が決定された。


利用・用途

刺身・すし・缶詰等に利用されている。


表1. 年齢−尾叉長の関係

表1

* 10+の体長


表2. 尾叉長−体重関係(Parks et al. 1982)

表2

 

表3. SS3に基づくメバチ資源将来予測結果(Kobeプロットのグリーンゾーンになる確率)

表3

 

表4. 主要漁業国のはえ縄及びまき網の年間の最多操業隻数枠及びメバチの年間漁獲量枠(2016〜2019年)

表4

 

図1a
図1b

図1. 大西洋におけるメバチの漁法別漁獲量(上図)及び国別漁獲量(下図)


図2

図2. 主要なまぐろ漁業による大西洋におけるメバチの漁獲分布(2010〜2016年)(ICCAT 2018)

青:はえ縄、赤:竿釣り、黄:まき網、灰:その他。凡例の丸は上から30,000トン、60,000トン。


図3

図3. 大西洋における日本のはえ縄船の出漁隻数の推移(国際水産資源研究所資料)


図4

図4. 大西洋におけるメバチの分布


図5

図5. 標識放流、脊椎骨及び耳石から推定されたメバチの成長式


図6

図6. 資源評価ベースモデルに用いた資源量指数(日本・韓国・米国はえ縄複合CPUE)(ICCAT 2018)


図7

図7. SS3で推定されたSSB / SSBMSY(上図)とF / FMSY(下図)の年変化(ICCAT 2018)


図8

図8. SS3の18シナリオで推定されたSSB / SSBMSYとF / FMSYの経年的プロット(ICCAT 2018)


付表1. 大西洋におけるメバチの国別漁獲量(単位:トン、投棄は除く)

付表1a
付表1b
付表1c

漁業の概要

大西洋において、メバチは主にはえ縄、竿釣り、まき網によって漁獲されてきた(図1上図)。主として成魚を漁獲するはえ縄が漁獲の大部分を占めてきたが、大西洋は他の大洋と異なり、従来からまき網や竿釣りによる漁獲が比較的多い。まき網がFAD操業を開始した1991年以降、小型魚漁獲が増加した。総漁獲量も同様に増加し、1994年には過去最高の13万トンに達したが、その後徐々に減少して、2005年以降は6万〜8万トンで推移し、2015年の総漁獲量は8.0万トンで前年からやや増加した。2016年からは新たな(より厳しい)TAC(6.5万トン)が適用されたが、2016年、2017年漁獲量はいずれも7.9万トンと、あまり減少は見られず、2018年(暫定値)には7.3万トンとやや減少したが、いずれもTACを大きく超過していた。2018年現在、はえ縄の漁獲は全体の約半分弱(44%)で、はえ縄の漁獲減少によりまき網の漁獲比率(2018年:39%)が以前より高くなっている(図1上図、図2)。漁獲されるメバチの平均体重は、はえ縄で45〜60 kg、竿釣りで20〜30 kg、まき網で3〜4 kgである。現在、大西洋における我が国の漁業ははえ縄のみであり、まき網及び竿釣りはそれぞれ1992年、1984年に操業を停止している。


【はえ縄漁業】

大西洋における主要なはえ縄漁業国は日本と台湾であり、近年、大西洋における本種全漁獲の30〜40%を占めている(図1下図)。2001年以降、はえ縄漁獲量は4万〜5万トン程度で推移していたが、近年減少傾向で、2018年の漁獲量は3.2万トンであった。1956年に参入した日本のはえ縄は、当初キハダとビンナガを漁獲対象としていたが、その後、急速冷凍技術の導入により、1970年代半ばから刺身材料としてのメバチの需要が高まり、本種が主要な漁獲対象になるとともに、はえ縄漁場は次第に大西洋東部に集中していった。大西洋への参入以来、努力量は増加を続け、1996年にはピークの1.2億鈎に達したが、その後減少した。2009年に実施された国際減船で日本の努力量は5,800万鈎まで減少し、出漁隻数も1993年に300隻あまりであったが、2015年には72隻に減少し、2016年以降はやや増加して2018年は87隻であったが、依然として低水準であった(図3)。日本のはえ縄によるメバチの漁獲量は1960年代にはおよそ1.5万トンで、1989年の4万トンをピークに減少に転じ、2001年以降は1.0万〜2.0万トンの間で推移し、2018年は1.0万トンであった。一方、台湾のはえ縄は1960年代初頭に参入し、1990年頃からメバチが主要対象魚種の1つになっており、2018年は1.2万トンを漁獲した。


【まき網漁業】

まき網は主にヨーロッパ連合(EU)、特にフランスとスペインのまき網が主体であり、近年規模を増加させているガーナのまき網を含め、東部大西洋のギニア湾を中心に操業が行われている(図2)。1990年代には71隻が操業していたEUのまき網船は、1998年以来40〜45隻に減少している。このEUのまき網船は付き物(もしくはFAD)群れもしくは素群れに対する操業の2タイプの操業を行うが、1991年以降FAD操業が増加しており、それに伴いメバチ漁獲量も増加し、近年では、全漁獲量の35〜50%がまき網によるものである。まき網による本種の漁獲は1994年の3.3万トンをピークとして、2008年の1.6万トンまで減少を続けた。その後、増加に転じ、2011年に2.8万トンに達したものの、その後はやや減少もしくは横ばいである。これは、2009年から2011年頃まで継続し、その後沈静化したインド洋ソマリア沖を中心とする海賊行為(IOTC 2014)の影響によりインド洋から多くのはえ縄・まき網漁船が移動したため、大西洋での漁獲努力量が増減したことによると思われる。


【竿釣り】

竿釣りは主に、東部大西洋のガーナ、セネガル、アゾレス諸島、マデイラ諸島、カナリア諸島で操業が行われている(図2)。メバチの漁獲サイズは、ガーナでは主に小型(およそ40〜60 cm)、セネガルでは中型以下(およそ40〜80 cm)、残る3か所は小型から大型(およそ40〜120 cm)が主体である。一方、西部大西洋ではブラジルが主要な竿釣り漁業国であるが、カツオのみを狙っており、メバチの漁獲はほとんどない。竿釣りの漁獲量は最近10年では0.7万〜1.3万トンの間で変動し、2018年には0.8万トンの漁獲があった。


生物学的特性

【水平・鉛直分布】

大西洋においてメバチは、北緯55度から南緯40度にかけてのほぼ全域に広く分布している(図4)。本種は他のまぐろ類よりも生息深度が深いことが知られているが、大西洋においてもポップアップタグ調査の結果から、夜間は200 m以浅の表層付近に分布し、昼間は水温躍層かそれ以深に移動する日周行動を行うことが明らかになっている(Matsumoto et al. 2004、Lam et al. 2014)。


【繁殖】

メバチの卵は分離浮性卵で油球が1個あり、受精卵の卵径は0.8〜1.2 mmである。産卵は稚魚の分布から、熱帯・亜熱帯域の水温24℃以上のほとんどの水域でほぼ周年行われていると考えられているが、大西洋における産卵や稚魚の分布に関する情報は少ない。他水域の情報から大西洋においても本種は多回産卵型の産卵を行い、産卵期にはほぼ毎日産卵し、産卵は夜間に行われると推察される(Matsumoto and Miyabe 2002)。最小成熟サイズは90〜100 cm、14〜20 kg(3歳)と考えられ、120 cmを超えると大部分が成熟する。


【成長】

大西洋における本種の成長については、標識放流(Cayré and Diouf 1984)、脊椎骨(Alves et al. 1998)、耳石日周輪の読み取り(Hallier et al. 2005)により成長式を推定している(図5)。なお、2018年の資源評価にはHallier et al.(2005)の成長式(Richardsモデル)が用いられている。以下に両者の式を、表1に両式から推定された各年齢における尾叉長を示した。

     L = 285.4 * (1 - exp-0.1127 * (t + 1))      Cayré and Diouf(1984)

     L = 217.3 * (1 - exp-0.18 * (t + 0.709))      Hallier et al.(2005)

                    L:尾叉長(cm)、 t:年齢

本種の寿命は知られていないが、太平洋のさんご海における標識再捕の結果から、15歳を超える雌が確認されている。

大西洋における体長体重の関係式はParks et al.(1982)のものが資源解析に用いられている。この式から求められる各尾叉長における体重を表2に示した。

     W = 2.396 * 10-5 * FL2.9774                    W:重量(kg)、FL:尾叉長(cm)


【回遊】

漁業から得られた知見から、主にギニア湾を中心とした熱帯で生まれた稚魚は海流に乗りながら、もしくは遊泳しながら移動し、多くは熱帯や亜熱帯に留まるものの、一部は温帯域へ索餌回遊を行い、成熟に達したら産卵に適した水温の高い水域に戻るのではないかと想定されている。しかし、熱帯域にも広く小型から大型の個体が常時分布しており、特定の索餌域や産卵域が本種にあるかは不明である。メバチの小型魚は流れ物周辺においてキハダやカツオの小型魚と群れを形成するが、成長するとそのような傾向は見られなくなる。また、他水域のメバチ同様に適水温はキハダよりやや低く、したがって分布も南北方向及び鉛直方向にキハダよりやや広い。


【性比】

本種の性比に関して、年齢が増すに従って雄の比率が高くなることが知られている。はえ縄漁獲物の性比比較では100 cm未満、160 cm以上のいずれのサイズにおいても雄の比率が高く(Miyabe 2003)、また70〜200 cmの体長範囲を比較したまき網漁獲物の観察においても、雄が卓越している(Roberto et al. 2003)。


【食性】

本種の胃中には魚類や甲殻類、頭足類等幅広い生物が見られ、餌に対して特別な選択性はないようである。しかし、他のまぐろ類に比べてハダカイワシ類やムネエソ等の中深層性魚類が多い。

稚仔魚期には、魚類に限らず多くの捕食者がいるものと思われるが、あまり情報は得られていない。遊泳力が付いた後も、まぐろ類を含む魚食性の大型浮魚類による被食があるが、50 cm以上に成長すると、捕食者は大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に限られるものと思われる。


【系群】

現在、大西洋のメバチに複数の系群の存在は知られていないが、インド−太平洋のメバチとは遺伝的な差異が報告されている(Chow et al. 2000)。ミトコンドリア調節領域を用いた解析では、インド洋から大西洋への遺伝子流動が生じた可能性が指摘されている(Martinez et al. 2006)。


資源状態

本種に関する最新の資源評価は2018年にICCATで行われた。プロダクションモデル(mpb)、ベイズ型プロダクションモデル(JABBA:Just Another Bayesian Biomass Assessment)、統合モデル(SS3:Stock Synthesis 3)を用いて行われ、SS3の結果が管理勧告に用いられた(ICCAT 2018)。


【豊度指数】

資源評価に使用された豊度指数は、日本、韓国、米国はえ縄複合CPUEであり、従来用いられていた国別CPUEよりも代表性が高いとされた(図6)。標準化された複合CPUEは1980年代後半から2010年代初頭までほぼ一貫した減少傾向が認められていたが、その後はやや増加または横ばいである。


【資源評価及び将来予測】

SS3ベースモデルでは、豊度指数は上述のはえ縄複合CPUEを用い、成長式にはHallier et al.(2005)(Richardsモデル)が用いられた。エリアは1つとした。Steepnessの値を3通り(0.7、0.8、0.9)、自然死亡係数を2通り、加入変動を3通りの組み合わせで計18通りのシナリオをベースモデルとした。その結果、親魚資源量は1960年代以降継続的に減少し、1990年代後半頃にはMSYレベルを割り込み、近年は横ばいである。漁獲死亡率は1990年代半ばまで増加傾向で、その後は変動を伴う横ばいであるものの、MSYレベルを上回っていることが示された(図7)。ブートストラップの結果、99%以上の確率で漁獲死亡係数がMSYレベルを超過、資源がMSYレベルよりも減少した状態にあると推定された。最新年(2017)における資源状態は、MSY:7.3万〜8.0万トン(中央値7.6万トン)、F / FMSY:1.14〜2.12(中央値 1.63)、SSB / SSBMSY:0.43〜0.80(中央値 0.59)と推定され、乱獲状態及び過剰漁獲とされた。資源水準は相対資源量(SSB2017 / SSBMSY)が1未満であることから低位とし、資源動向は2000年代半ば以降の相対資源量の推移を基に横ばいと判断した。

将来予測(漁獲量一定)についても、SS3の18シナリオによる結果を統合した。その結果、表3に示すように、2018年時点のTAC(6.5万トン)を維持した場合、2033年に資源が乱獲状態及び過剰漁獲でなくなる確率はおよそ44%とされた。


管理方策

2015年のICCAT年次会合において、同年の資源評価結果を受けて、漁獲量・能力制限として、主要漁業国の漁獲量及び全長20 m以上のはえ縄及びまき網漁船に対する年間操業隻数が、表4のように制限され、TACは6.5万トンとなった。2018年の資源評価結果を受け、同年のICCAT年次会合においてTAC改定等の新たな管理措置が検討されたものの、主として、TAC削減量、資源回復期間、FAD禁漁期間、国別枠の設定について意見が分かれたため合意に至らず、それまでの(2015年制定、2016年一部改訂)措置が2019年にも適用されることになった。また、発展途上沿岸国以外の加盟国は年間の漁獲量を1,575トン以下に抑えるよう努力することとなっている。メバチ・キハダの幼魚が多く生育するギニア湾におけるFADを含めた付き物操業の禁漁期、禁漁区域が2015年の年次会合で変更され、若干拡大(南緯4度、北緯5度、西経20度、アフリカ大陸で囲まれた海域において、1月1日〜2月28日の2ヶ月間)され、同禁漁期/区で操業するまき網や竿釣り船には、引き続きオブザーバーの乗船が義務付けられることとなった。また、同時に設置できるFAD数を1隻当たり一度に500基までに制限することとなった。2002年4月から、統計証明制度(輸入には漁業国の証明書が必要)が導入されている(Recommendation 01-21(ICCAT 2001))。2019年のICCAT年次会合において、熱帯まぐろ保存管理措置が改定され、新たなTACは2020年に62,500トン、2021年に61,500トンとされた。また、2020年には1〜2月の2ヶ月間、2021年には1〜3月の3ヶ月間、大西洋全体においてFAD操業の禁止を決定した。FAD数は、1隻当たり一度に350基(2020年)及び300基(2021年)までとした(いずれも、2022年以降は今後決定される)。


メバチ(大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
7.3万〜7.9万トン
最近(2018)年:7.3万トン
平均:7.7万トン(2014〜2018年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
1.0万〜1.4万トン
最近(2018)年:1.0万トン
平均:1.2万トン(2014〜2018年)
管理目標 MSY:7.2万〜8.0万トン(中央値7.6万トン)
(2018年の漁獲量:7.8万トン)
資源評価の方法 統合モデル(SS3)による解析:はえ縄漁業CPUE、及び漁獲動向等により水準と動向を評価
資源の現状 F/FMSY= 1.14〜2.12(中央値1.63)
SSB/SSBMSY= 0.43〜0.80(中央値0.59)
管理措置 ・TAC(6.5万トン:2019年、6.25万トン:2020年、6.15万トン:2021年)、主要国の漁獲枠、漁船隻数枠の設定
・ギニア湾(南緯4度、北緯5度、西経20度、アフリカ大陸で囲まれた海域)における1月1日〜2月28日(2016〜2019年)もしくは大西洋全体における1月1日〜2月29日の2ヶ月(2020年)ないし1月1日〜3月31日の3ヶ月(2021年)のFAD操業禁漁期設定、FAD数制限
・統計証明制度
・オブザーバー乗船(まき網、竿釣り)
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2018年
次回の資源評価年 2021年

執筆者

国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部

松本 隆之

国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

岡本 慶


参考文献

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