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16 キハダ 大西洋

Yellowfin Tuna, Thunnus albacares


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最近の動き

2018年の総漁獲量は13.6万トン(予備集計)で前年の97%であった。最新の資源評価は2019年7月に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)により行われた。MSYは12.1(9.0〜26.7)万トンと推定され、2018年の漁獲量より小さい。2018年の資源量はMSYレベルより大きく(B2018 / BMSY = 1.17(0.75〜1.62))、2018年の漁獲圧はほぼMSYレベルである(F2018 / FMSY = 0.96(0.56〜1.50))と推定された。したがって、2018年において、本資源は乱獲状態ではなく、本資源への漁獲圧は適正なレベルであったといえる。2019年11月のICCAT年次会合でTACを引き続き11万トンとすることが合意された。また、従来のFAD操業の制限(2019年1月1日〜2月28日の2か月間、南緯4度、北緯5度、西経20度、アフリカ大陸で囲まれた海域で操業禁止)は強化され、2020年には1〜2月の2か月間、さらに2021年には1〜3月の3か月間において、大西洋全体におけるFAD操業の禁止が予定されている。


利用・用途

はえ縄漁獲物は主として刺身、すしに利用される。外国では、缶詰に利用される比率が高い。


表1. 大西洋におけるキハダの年齢ごとの尾叉長(cm)と体重(kg)の関係

2つの成長式(2019年資源評価でのSSによる推定値、Gascuel et al. 1992、Draganik and Pelczarski 1984)について示す。

表1

 

表2. 大西洋におけるキハダの年齢ごとの自然死亡係数

2019年、2016年の資源評価で用いた固定値、Gascuel et al.(1992)、Draganik and Pelczarski(1984)による推定値を示す。

表2

 

表3. 将来予測

漁獲量一定(6万〜15万トン)で、資源と漁獲圧が健全な状態(B / BMSY>1、F / FMSY<1)である確率。
将来予測はSSではmultivariate normal (MVN) iterationsの手法を用いた。個々の一定漁獲量の条件あたり2,500回の繰り返しを、それぞれのシナリオで行った。F / FMSYが4以上、0.2以下になる場合は、それぞれ4、0.2となるようにした。MPBは500回のブートストラップ試行が行われた。JABBAはシナリオあたり36,000回のMCMC iterationを行った。最終的に表2を作成するために、9つのシナリオが等価の重みとなるように統合した。

表3

 

図1a
図1b

図1. 大西洋におけるキハダの漁法別漁獲量(上図)と国別漁獲量(下図)


図2

図2. 大西洋におけるキハダの漁場(漁獲分布、2010〜2017年)

青:はえ縄、赤:竿釣り、黄:まき網、灰:その他。凡例の丸は上から73,000トン、146,000トン。


図3

図3. 大西洋におけるキハダの分布域


図4

図4. 大西洋におけるキハダの産卵場と産卵期(月)

卵巣標本を収集し、組織学的観察により確認されたもの。地図上の範囲は、標本採集場所を表す。


図5

図5. 各大洋におけるはえ縄漁業によるキハダの平均漁獲サイズ(kg)の一例(2010年)

赤いラインはまぐろ類RFMOの境界の目安。黒いラインはEEZ。


図6

図6. 大西洋におけるキハダの資源量指数

上:はえ縄国のデータを統合した資源量指数。中:まき網素群れ操業の資源量指数。下:FAD漁業に用いるエコーサウンダー部位のデータを利用した小型魚の資源量指数。


図7

図7. 大西洋キハダの資源解析結果

2種類のプロダクションモデル(MPBは1シナリオ及びJABBAは4シナリオ)及び統合モデル(SSは4シナリオ)のB / BMSY(上)、F / FMSY(下)の経年変化。


図8

図8. 大西洋キハダの資源解析結果(各モデルの結果を統合)

図7で示した9つのシナリオの2018年の資源状況についての統合した結果。青丸は2018年の状態を示す。黒丸は4,500回(9シナリオ×500回)のモデル設計やデータの不確実性を考慮した試行の分布を示す。縦軸は漁獲圧、横軸は資源量で現状/持続可能な値の比で示す。神戸プロットの上側と右側に、それぞれ横軸、縦軸についての頻度分布図を示す。


付表1. 大西洋キハダの年別、国別漁獲量 (単位:トン)

付表1a 付表1b 付表1c

漁業の概要

大西洋におけるキハダ漁業は1950年頃に始まり、1955年頃から竿釣り及びはえ縄漁業が開始された。日本は1956年に出漁している。当初は、はえ縄の漁獲が多くを占めたが、最近年は全漁獲量のうちおおよそ70%がまき網、16%がはえ縄、8%が竿釣りにより漁獲されていた(図1上)。1990年に漁獲量のピーク(19.3万トン)が記録された後、減少傾向に転じ、2018年には13.6万トン(予備集計)となった(ICCAT 2019)。なお、2018年はブラジルやガーナ等を中心として、過去の漁獲量の改定(増加)が目立った。

主漁場は熱帯域であり、特に東部大西洋からの漁獲が多い(図2)。1990年から2007年にかけて、スペインやフランスのまき網船が65隻から27隻に減少したこともあり、漁獲量は60%減少(12.7万トンから4.7万トン)した。隻数は減少したものの、船舶が大型化したため、2010年のまき網漁業全体の魚艙容量は1990年代半ばと同等とみなされた。その後、インド洋操業船(大型の魚艙を装備し、より漁獲効率の良い新造船)が大西洋へ移動してきたため、魚艙容量は2010年に比べてさらに50%増加したとみられている。2013年以降、この元インド洋操業船数が6隻に達したこともあって、まき網の漁獲量は上昇に転じ、2018年には9.3万トンとなった。近年は、素群れ操業よりも、よりFAD操業に依存するようになっている。2011年以降、FAD操業の漁場は拡大し、南は西アフリカ沿岸の南緯15度付近、北はモーリタニア沖合の北緯15度付近まで拡がっている。一方、西部大西洋のまき網漁業は、主としてベネズエラ船が担っていたが、2018年の漁獲量はピーク時(1980年代半ば)の10%程度(0.3万トン)となっている。はえ縄は、大西洋のほぼ全域で操業が行われ、2018年は総漁獲量の11%(1.5万トン)を占めた。メキシコ湾で操業する米国船、メキシコ船及びベネズエラ船はキハダを対象としている。日本及び台湾のはえ縄船は、主に熱帯域においてメバチを主対象として操業している。近年の竿釣り船の漁獲量は、東部、西部大西洋ともにピーク時(1990年代)の10〜30%程度にまで減少している(ICCAT 2019)。

FAD操業の進展で、近年のまき網の漁獲物の平均体重は10 kgを下回り、1990年のおおよそ半分にまで減少している。はえ縄の漁獲物の平均体重は、ばらつきが大きく、近年は50 kg程度を推移している。

国別には、フランスとスペインの漁獲量が多く、近年ガーナの比率が高くなっている(図1下、付表1)。2018年はこれら3か国で全体のおおよそ44%を占めた。最近5か年の日本の漁獲量は0.3万〜0.4万トン前後で、大きな年変動はみられない。


生物学的特性

キハダは、三大洋の熱帯域から温帯域にかけて広く分布する(図3)。若齢で小型のキハダは、似たような大きさのカツオやメバチと群れを作ることがあり、これらはもっぱら表層に分布する。成長するにつれて、キハダ単独の群れとなり、より水深の深い層にも分布するようになる。産卵は水温24℃以上の水域で周年行われると考えて良いが、季節性もみられ、ギニア湾では12月から翌4月にかけての盛んな産卵行動が知られている。また、海域によって産卵の盛んな時期が異なること(メキシコ湾:盛期5〜8月、南カリブ海:盛期7〜9月)も知られている(図4;ICCAT 2001)。このような時期の異なる産卵は、大西洋のキハダに複数の系群が存在する可能性を示唆する。また、移動経路を記録するタイプの近年の標識放流調査からは、あまり移動せず、ある一定の範囲に留まる傾向がみてとれ、系群の存在を補強する証拠となり得る。一方で、はえ縄の漁獲状況をみると、大西洋の東西を通じて、漁獲の切れ目がないことが分かる。また、放流点と再捕点のみが分かるタイプの標識放流調査からは、西部から東部まで大西洋を横断する例が得られている(Ortiz 2001)。また、漁獲サイズには海域によって違いが見られることが知られている(図5)。このように系群の存在についての異なる見解が得られるため、判断が難しいものの、2019年の資源評価の場合も含めて、近年の大西洋キハダの資源評価では、全大西洋で1つの系群と見なしている。

本種の1回当たりの産卵数(Batch fecundity)は、尾叉長132 cmで約120万粒、142 cmで約400万粒と推定されている(Arocha et al. 2001)。産卵は夜間にほぼ毎日行われると考えられている(Schaefer 1996)。本種の寿命は、年齢査定の結果や成長が早いことから、メバチより短く7〜10年であろうと考えられていたが、耳石輪紋の解析により18歳と査定される研究例もあり(Andrews et al. 2020)、2019年の資源評価では寿命を18歳として考えた。本種の胃中には魚類や甲殻類、頭足類等、幅広い種類の生物がみられる。仔稚魚時代には、魚類に限らず多くの外敵がいるものと思われるが、あまり情報は得られていない。遊泳力がついた後では大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に外敵は限られるものと思われる。最大体長は200 cmを超えるとみられる(FAO FishFinder)。

2019年の資源評価では、半数の個体が成熟する尾叉長は115.1 cmとされ(Diaha et al. 2015)、自然死亡係数は、Lorenzen(2005)の方法に基づいて年齢別自然死亡係数を推定した。これはベースとなる自然死亡係数(ターゲット自然死亡係数)を成長曲線に合わせて変化させて推定していく方法で、5歳時の自然死亡係数(0.35)をベースとした。なお、尾叉長145 cmより大きい場合、大部分が雄であることから、雌の自然死亡率が雄より高い可能性がある。一方、尾叉長120〜135 cmでは、雌が優占しており、雌の体長の上限が雄より低い可能性がある。このため、雌雄別の成長と自然死亡率を資源評価で考慮することも検討に値するが、2019年の資源評価では、雌雄で同一の成長式(表1)と自然死亡係数が用いられた。

成長式

      Gascuel et al. (1992) :Lt = 37.8 + 8.93t + (137.0 - 8.93t) [1 - exp (-0.808t)]7.49

      Draganik and Pelczarski (1984):Lt = 192.4 * (1 - exp (-1 * 0.37 (t + 0.003)))

            (Lt : ある年齢tでの尾叉長(cm)、t : 年齢)

            2019年の資源評価で用いられた値は表1に示した。

自然死亡係数(それぞれの成長式に応じた年齢別(0歳から11歳+)の値):Gascuel et al.(1992)、Draganik and Pelczarski(1984)、2016年及び2019年の資源評価で用いられた値を表2に示した。

体長体重関係式

      Caverivière et al.(1976):W = 2.1527 * 10-5 L2.976

            (L : 尾叉長(cm)、W : 体重(kg)、t : 年齢)


資源状態

最新の資源評価はICCATにより2019年に行われた。資源評価モデルは、2種類のプロダクションモデル(MPB:Surplus production model、JABBA:Bayesian surplus production model)及び統合モデル(SS:Stock Synthesis)が用いられた。資源量指数として、各国(日本、米国、韓国、ブラジル、台湾)はえ縄漁業のJoint index(1979-2018、年別)を使用(北大西洋、熱帯域、南大西洋の3種)。また、EUまき網漁業素群れデータを用いたindex(1993-2018、年別)と加入に関するインデックス(FAD漁業で用いるEchosounder Buoysデータからのインデックス)(2010-2018、四半期別)も使用した(図6)。前回は、まき網漁業のCPUEに関しては、継続的な漁労技術、探索機器の発達があるため、漁獲効率も上昇していると考えられるが、この変化を適切に推定することは難しい。このため、まき網のCPUEの標準化は困難として、漁獲の多くを占めるにもかかわらず、まき網のCPUEは資源量指数としては用いられなかったが、今回はFAD漁業で用いるEchosounder Buoysのデータを用いるなど新たな展開がみられた。

MSYは12.1(9.0〜26.7)万トンと推定され、2018年の漁獲量より小さい。2018年の資源量はMSYレベルより大きく(B2018 / BMSY = 1.17(0.75〜1.62))、2018年の漁獲圧はほぼMSYレベルである(F2018 / FMSY = 0.96(0.56〜1.50))と推定された。したがって、2018年において、本資源は乱獲状態ではなく、本資源への漁獲圧は適正なレベルであったといえる(図7、8)。将来予測(3モデル統合)では、将来的な漁獲量13万トン(現状の漁獲量)で2033年(15年後)にグリーンゾーン確率38%、11万トン(TAC)で2033年にグリーンゾーン確率86%と推定された(ICCAT 2019;表3)。近年の資源量のレベルは過去の最低位に近く、その動向は、横ばいである。したがって、資源水準と動向は低位で横ばい考えられる。


管理方策

2019年11月のICCAT年次会合でTACを引き続き11万トンとすることが合意された。また、従来のFAD操業の制限(2019年1月1日〜2月28日の2か月間、南緯4度、北緯5度、西経20度、アフリカ大陸で囲まれた海域で操業禁止)は強化され、2020年には1〜2月の2か月間、さらに2021年には1〜3月の3か月間において、大西洋全体におけるFAD操業の禁止が予定されている。


【MSE (Management strategy evaluation) の検討状況】

「4. まぐろ類RFMOにおける管理方策(総説)」のMSEに関する一般的な説明を参照のこと。


キハダ(大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
11.3万〜14.9万トン
最近(2018)年:13.6万トン
平均:13.2万トン(2014〜2018年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
0.3万〜0.4万トン
最近(2018)年:0.3万トン
平均:0.3万トン(2014〜2018年)
管理目標 MSY:12.1(9.0〜26.7)万トン
資源評価の方法 プロダクションモデル(MPB、JABBA)
統合モデル(SS)
資源の状態 B2018/BMSY:1.17(0.75〜1.62)
F2018/FMSY:0.96(0.56〜1.50)
管理措置 TAC(11万トン)
大西洋全体におけるFADを利用したまき網操業の禁止(2020年は1〜2月の2か月間、2021年は1〜3月の3か月間を予定)
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2019年
次回の資源評価年 2024年

執筆者

かつお・まぐろユニット
熱帯まぐろサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

佐藤 圭介


参考文献

  1. Andrews, A.H., Pacicco, A., Allman, R., Falterman, B.J., Lang, E.T., and Golet, W. 2020. Age validation of yellowfin (Thunnus albacares) and bigeye (Thunnus obesus) tuna of the northwestern Atlantic Ocean. Can. J. Fish. Aquat. Sci., doi: 10.1139/cjfas-2019-0328
  2. Arocha, F., Lee, D.W., Marcano, L.A., and Marcano, J.S. 2001. Update information on the spawning of yellowfin tuna, Thunnus albacares, in the western central Atlantic. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 52(1): 167-176.
  3. Caverivière, A., Conand, F., and Suisse de Saint-Claire, E. 1976. Distribution et abondance des larves de thonidés dans l'Atlantique tropical oriental. Etude des données de 1963 a 1974. Doc. Sci. Cent. Rech. Océanogr. Abidjan. ORSTOM, 7(2): 49-70.
  4. Diaha, N.C., Zudaire, I., Chassot, E., Pecoraro, C., Bodin, N., Amandè, M.J., and Gbeazere, D.A. 2015. Present and future of reproductive biology studies of yellowfin tuna (Thunnus albacares) in the eastern Atlantic Ocean. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT: 71(1) : 489-509.
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  7. Gascuel, D., Fonteneau, A., and Capisano, C. 1992. Modélisation d'une croissance en deux stances chez albacore (Thunnus albacares) de l'Atlantique Est. Aquatic Living Resources, 5 (3): 155-172. http://halieutique.agrocampus-ouest.fr/pdf/3479.pdf(2019年12月)
  8. ICCAT. 2001. Report of the ICCAT SCRS Atlantic yellowfin tuna stock assessment session (Cumaná, Venezuela, July 10 to 15, 2000). Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 52(1): 1-148.
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  10. Lorenzen, K. 2005. Population dynamics and potential of fisheries stock enhancement: practical theory for assessment and policy analysis. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences, 360(1453): 171-189. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1636107/pdf/rstb20041570.pdf (2019年12月)
  11. Ortiz, M. 2001. Review of tag-releases and recaptures for yellowfin tuna from the U.S. CTC program. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 52(1): 215-221. https://www.iccat.int/Documents/CVSP/CV052_2001/no_1/CV052010215.pdf (2019年12月)
  12. Punt, A.E., Butterworth, D.S., de Moor, C.L., de Oliveira, J.A.A., and Haddon, M. 2016. Management strategy evaluation: best practices. Fish Fish., 17: 303-334. Doi: 10.1111/faf.12104
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