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10 ビンナガ インド洋

Albacore, Thunnus alalunga


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最近の動き

2019年7月のインド洋まぐろ類委員会(IOTC)第7回温帯性まぐろ作業部会にて最新の資源評価が実施された。その結果に基づき、同年12月のIOTC第22回科学委員会は、資源評価には不確実性があるものの、予防的措置が必要とした(IOTC 2019d)。


利用・用途

刺身及び缶詰として利用されている。


表1. 資源量・漁獲死亡係数に関するリスク解析結果(現漁獲量を増加、減少させた場合、3年後(2020年)及び10年後(2027年)において資源量・FがMSYレベルを維持できなくなる確率)

縦軸と横軸はそれぞれ年、現状(2017年)漁獲量からの増減率。SS3による資源評価結果に基づく。

表1

* 現漁獲量(2017年)


図1

図1. インド洋ビンナガの国別漁獲量(1950〜2018年)

IOTCデータベース(IOTC 2019a)より。NEIはNot Elsewhere Included、FRは冷凍を意味する。


図2

図2. インド洋ビンナガの漁法別漁獲量(1950〜2018年)

IOTCデータベース(IOTC 2019a)より。


図3

図3. インド洋ビンナガのFAO海域別漁獲量(1950〜2018年)

IOTCデータベース(IOTC 2019a)より。F57:東インド洋(FAO海域57)、F51:西インド洋(FAO海域51)。


図4

図4. インド洋ビンナガの分布とはえ縄漁場


図5

図5. 台湾、日本、韓国及び日台韓複合(年別)はえ縄標準化CPUE(Region 1-4はそれぞれ北西、北東、南西、南東海域)(IOTC 2019b)


図6

図6. SS3による資源評価(Kobe Iプロット)の結果(これらのうち、Model 4以外の結果を管理勧告に使用)(IOTC 2019c)

縦軸と横軸はそれぞれ漁獲死亡係数、産卵親魚量(SS3)のMSYレベルに対する比。


付表1. インド洋ビンナガの国別漁獲量(1950〜2018年)(トン)

IOTCデータベース(IOTC 2019a)より。

付表1

***:操業なし、NEI:Not Elsewhere Included、FR:冷凍の意味。


付表2. インド洋ビンナガの漁法別漁獲量(1950〜2018年)(トン)

IOTCデータベース(IOTC 2019a)より。

付表2

*** 操業なし


付表3. インド洋ビンナガの海域別漁獲量(1950〜2018年)(トン)

IOTCデータベース(IOTC 2019a)より。F51:西インド洋(FAO海域51)、F57:東インド洋(FAO海域57)。

付表3

漁業の概要

本資源の漁業は、1950年代前半、日本のはえ縄船により開始された。その後、台湾、韓国のはえ縄船が、それぞれ1954年、1965年から参入した(図1、付表1)。また、1982〜1992年の11年間、台湾は流し網漁業を行ったが、国連の公海大規模流し網漁業禁止決議により1992年で停止した。本資源の漁業では、流し網の行われた11年間と1950〜1951年を除き、漁獲量の9割以上ははえ縄漁業による。台湾のはえ縄漁業の漁獲量は1970年以来、流し網漁業の全盛期(1986〜1992年)及び最近年(2003〜2012年)を除き、総漁獲量の5〜9割を占める。また、2003年以降はインドネシア(大部分ははえ縄)の比率も2013、2016〜2018年を除き20%以上と高くなっている(図1〜2、付表1〜2)。

はえ縄漁業の総漁獲量は操業開始以来緩やかに増加し、1958年までは1万トン以下、1997年までは1万〜3万トンであった。1982〜1992年の11年間は、台湾の流し網漁業で最大2.6万トン漁獲され、総漁獲量は最大3.6万トンまで達したが、流し網漁業を停止した1993年には総漁獲量は2.1万トンにまで減少した。その後、はえ縄漁業の漁獲量が徐々に増加し、2001年には4.6万トン(過去最大)に達したが、その後減少し2003年には2.9万トンになった。2006年から総漁獲量は再び増加し2010年には4.4万トンとなったが、その後は2017年までは3.3万〜3.9万トンで推移し、2018年には前年から2.7千トン増加して4.2万トンとなった(図2、付表2)。また、1983年からは西インド洋でEUを中心とした大型まき網漁業によっても漁獲されており、1992年に最大約3,400トンの漁獲があった(付表2)。西インド洋(FAO海域51)と東インド洋(FAO海域57)における漁獲量の平均的割合(2014〜2018年)は、それぞれ68%及び32%である(図3、付表3)。


生物学的特性

【系群】

インド洋・大西洋・太平洋のビンナガは、血清学的見地からかなり異質で、それぞれ別系群と考えられている(鈴木 1962)。特に、体長組成、仔稚魚、分布の特性から、インド洋は単一系群とみられている(Hsu 1994)。ただし、太平洋とインド洋のビンナガはオーストラリアの南側で、インド洋と大西洋のビンナガの分布はアフリカ南端で連続しており、一部交流している可能性があるとも考えられている(古藤 1969)。


【分布】

インド洋ビンナガの分布範囲は、北緯5度〜南緯40度である。メバチやキハダが赤道海域を中心に分布するのに対し、本種の主要分布域は南半球の中緯度海域で、北緯5度〜南緯25度が成魚分布域、南緯10〜25度に産卵域、南緯30〜40度に索餌海域があり、魚群の密度が高い。分布の南限や北限は季節によってやや異なる(図4)。

海流はビンナガの分布や漁場形成を左右する最も重要な要因と考えられている。赤道反流の南である南緯10度付近に一種の収束線が形成され、ビンナガ好漁場の北限となっている。


【回遊】

ビンナガはよく発達した胸鰭を持ち、索餌または産卵のために大規模な回遊をする。インド洋における回遊の研究は皆無で、経路等は不明である。


【食性】

ビンナガも他のまぐろ類と同様に、魚類・甲殻類・頭足類を主な餌として、生息環境中に多い餌生物を主として、昼間に無選択的に捕食する。したがって、胃内容物組成は海域や季節によってかなり変化する。西部インド洋では、主にギマ科、ミズウオ科、ホウネンエソ科、アジ科、クロタチカマス科、ヒシダイ科等を捕食する(Koga 1958)。なお、本種の捕食者はさめ類、海産哺乳類である。


【産卵】

最近、新たな知見が報告され(Dhurmeea et al. 2016a)、西部インド洋においては、産卵は南緯10〜30度で10〜1月に行われ、雌の50%成熟体長は85.3±0.7 cm、主産卵期における産卵頻度は2.2日間隔、1尾の抱卵数は26万〜209万粒であるとされた。

なお、それまではインド洋においては産卵に関する詳しい知見がなかったため、IOTCにおける資源評価でも太平洋の知見が参照された。西部太平洋のビンナガは、卵巣が200 g以上になると産卵すると考えられ、その最小体長は87 cmである。雄では精巣重量150 g以上のものが成熟個体とみなされ、その最小体長は97 cmである。卵巣卵の直径は成熟期では0.6 mm以上となり、卵巣重量は100〜200 gだが、大型の成熟したものは200 g以上になる。体重20 kg前後の魚体で、1尾の抱卵数は180万〜210万粒である(上柳 1955)。1産卵期中に複数回の産卵が推定される。成熟に達する年齢は5歳あるいはそれ以上である。


【体長・体重関係】

以下の体重(W: kg)・体長(尾叉長 L: cm)の関係式が報告されている。

        Lee and Kuo(1988):

                雄 W = (3.383 × 10-5) L2.8676

                雌 W = (4.183 × 10-5) L2.8222

さらに、2016年7月のIOTC第6回温帯性まぐろ作業部会にて最新の研究結果が報告され、海域別・雌雄別に合計12通りの関係式を示した(Dhurmeea et al. 2016b)。ただし、標本個体の体長範囲が限られていることにより、2016年及び2019年の資源評価では南大西洋での推定値(Penny 1994)が用いられた。


【年齢・成長式】

インド洋のビンナガは、鱗の研究により8歳まで確認されている(Huang et al. 1990)。その他に、脊椎骨、体長組成解析及び近年は耳石によるものも含めて以下の成長式の報告がある。L: 尾叉長(cm)、t: 年齢とする。なお、2019年にIOTCにて実施された資源評価ではFarley et al.(2019)による成長式(雌雄別)が用いられた。

        Huang et al.(1990):鱗

                Lt (cm) = 128.13 [1-e-0.162 (t + 0.897)]

        Lee and Liu(1992):脊椎骨

                Lt (cm) = 163.7 [1-e-0.1019 (t + 2.0668)]

        Hsu(1991):体長組成解析

                Lt (cm) = 136 [1-e-0.159 (t + 1.6849)]

        Chen et al.(2012):耳石(北太平洋)

                Lt (cm) = 103.5 [1-e-0.340 (t + 0.53)] (雌)

                Lt (cm) = 114.0 [1-e-0.253 (t + 1.01)] (雄)

        Wells et al.(2013):耳石(北太平洋)

                Lt (cm) = 124.1 [1-e-0.164 (t + 2.239)]

        Farley et al.(2019):耳石

                Lt (cm) = 103.8 [1-e-0.38 (t + 0.86)] (雌)

                Lt (cm) = 110.6 [1-e-0.34 (t + 0.87)] (雄)

なお、インド洋のビンナガの最大サイズは、尾叉長約1.2 m、体重約30 kgである。また、寿命は10歳以上と考えられている。


【自然死亡係数】

以下2件の報告がある。なお、2019年にIOTCにて実施された資源評価では、北太平洋・北大西洋のもの(0.3で一定)もしくは0.2207(感度解析)で一定を用いた。

        Lee et al.(1990):Pauly(1980)の方法により推定。

                M = 0.206

        Lee and Liu(1992):はえ縄データを用い、Z=q*F+Mより推定。

                M = 0.2207


資源状態

2019年に開催されたIOTC第7回温帯まぐろ作業部会(データ準備会合)において、台湾、日本、韓国及び日台韓はえ縄漁業複合の標準化CPUEが資源量指数として提示された。台湾と日本のCPUEについて一部期間のトレンドに違いがあり、その原因は本種を漁獲対象としているか否かが関係していると考えられる(図5)。2019年の資源評価では主として複合CPUEを資源量指数として用いて実施した。

資源評価は2017年までのデータを基に、試行された5つのモデルのうち、統合型モデルのSS3(Stock Synthesis 3;Langley 2019)の結果が採用された(図6)。結果として、F2017 / FMSY = 1.346(95%信頼区間:0.588-2.171)、SSB2017 / SSBMSY = 1.281(0.574-2.071)及びMSY = 3.57万トン(2.7万〜4.4万トン)(資源評価実施時2017年の漁獲量:3.9万トン)であった。これらの推定値から、インド洋のビンナガ資源は乱獲状態ではないが過剰漁獲状態であるとされた。また、現状(2017年:資源評価実施時)の漁獲量がこのまま続いた場合2027年には資源量がSSBMSYレベルを下回る確率は71%となった(表1)。資源水準は(SSB2017 / SSBMSY)が1以上3未満であることから中位とし、資源動向は1990年代からの相対資源量の推移を基に減少と判断した。


管理方策

2019年12月のIOTC第22回科学委員会は、同年に実施した資源評価を基に、資源評価には不確実性があるものの、予防的措置が必要とした(IOTC 2019d)。

なお、現在IOTCではビンナガを漁獲対象とする漁船の隻数を2007年水準に制限している。

また、各魚種共通の管理措置として、義務提出データ(管理措置15/01:ログブックによる漁獲量・漁獲努力量報告、及び管理措置15/02:IOTC事務局漁獲量報告)、オブザーバープログラム(管理措置11/04)等も実施されている。


ビンナガ(インド洋)の資源の現況(要約表)*

資源水準 中位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
3.6万〜4.2万トン
最近(2018)年:4.2万トン
平均:3.8万トン(2014〜2018年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
1,669〜3,737トン
最近(2018)年:1,789トン
平均:2,496トン(2014〜2018年)
管理目標 MSY=3.57万トン
(95%信頼区間:2.7万〜4.4万トン)
資源評価の方法 統合モデル(SS3)による解析
はえ縄漁業CPUE、漁獲動向等により水準と動向を評価
資源の状態 資源評価結果によると、資源は乱獲状態ではないが過剰漁獲状態。現状の漁獲量がこのまま続いた場合2027年には資源量がSSBMSYレベルを下回る確率は71%。
管理措置 資源管理措置:ビンナガを漁獲対象とする漁船の隻数を2007年水準に制限。
漁業管理措置(共通項目):義務提出データ(管理措置15/01:ログブックによる漁獲量・漁獲努力量報告、及び管理措置15/02:IOTC事務局への漁獲量報告)、オブザーバープログラム(管理措置11/04)ほか。
管理機関・関係機関 IOTC
最新の資源評価年 2019年
次回の資源評価年 未定

* 2017年までのデータを使用した資源評価の結果に基づく


執筆者

国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部

松本 隆之

国際水産資源研究所 業務推進課

西田 勤


参考文献

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