--- 総説 ---

03 まぐろ類の漁業と資源調査(総説)



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世界のかつお・まぐろ漁業

世界のカツオ及び主要マグロ属6魚種(太平洋クロマグロ、大西洋クロマグロ、ミナミマグロ、ビンナガ、メバチ、キハダ)の合計総漁獲量(ここでは国際的に“Tuna”と呼ばれる範囲にならい、これら7種を “まぐろ類”と呼ぶ)は2002年以降400万トン台で推移していたが、2014年に500万トンを超え、それ以降は400万トン台であったが、2017年の漁獲量は再び500万トンを超え、過去最高の506.8万トンであった。日本の漁獲量は1984年に79.2万トンのピークに達した後、次第に減少傾向を示し、2017年には35.9万トンで、インドネシア(72.6万トン)に次ぐ世界第2位となっている(図1)。その他、エクアドル、パプアニューギニア、台湾が30万トンを超える漁獲を揚げている。

これらまぐろ類の漁獲量を大洋別に見ると、太平洋における漁獲量が1950年代当初から他の水域を上回り、ほぼ一貫して増加し続けてきた。2012年以降は300万トンを超え、現在は350万トン前後である(図2)。インド洋の漁獲量は2003〜2006年においては100万トンを上回り、その後、海賊問題の発生もあり2007年以降は100万トンを下回っていたが、2016年は再び100万トンを上回った。大西洋の漁獲量は、近年10年において39万〜54万トンで推移している。

漁獲量の推移を魚種別に見ると、カツオとキハダの漁獲量増加が著しい(図3)。カツオの年代毎の漁獲量は、1950年代は16万〜29万トン、1970年代は40万〜85万トン、1990年代は132万〜199万トン、2000年代は186万〜260万トンに増加した。2010年代においても増加傾向にあり、近年は300万トン近い水準で推移している。近年のカツオの漁獲量は、まぐろ類6種の総漁獲量を上回る規模である。またキハダの漁獲量は、1950年代は10〜22万トン、1970年代は32万〜58万トン、1990年代は98万〜128万トン、2000年代は109万〜149万トンに増加した。2010年代に入っても114万〜148万トンで推移している。

まぐろ類は、はえ縄、竿釣り、まき網等で漁獲される。その中で、特にまき網の漁獲量は1980年代以降急増した(図4)。この漁獲増は、漁船数の増加に加えて、1990年に入って盛んになった集魚装置(FAD)を使用する操業方法が大きく影響している。熱帯域でのカツオを主対象としたFAD操業では、メバチやキハダの小型魚が混獲され、これらの資源に大きなインパクトを与えているとされており、インド洋、東部太平洋及び中西部太平洋で1隻あたりが使用するFAD数を制限することを含む措置が採択されている。


図1

図1. 世界の主要まぐろ類(カツオを含む)の国別漁獲量の推移(1950〜2017年)(FAO統計)


図2

図2. 世界の主要まぐろ類(カツオを含む)の大洋別漁獲量の推移(1950〜2017年)(FAO統計)


図3

図3. 世界の主要まぐろ類(カツオを含む)の魚種別漁獲量の推移(1950〜2017年)(FAO統計)


図4

図4. 世界の主要まぐろ類(カツオを含む)の漁法別漁獲量(1950〜2010年)(FAO統計)


図5

図5. 全大洋における日本の魚種別漁獲量の推移(1950〜2017年)(FAO統計)


図6

図6. 日本の主要まぐろ類(カツオを含む)大洋別漁獲量の推移(1950〜2017年)(FAO統計)


図7

図7. 燃油供給価格の経年変化(水産庁資料)


図8

図8. 国別まぐろ類(カツオを含む)缶詰生産量の動向(1976〜2017年)(FAO統計)


図9

図9. 日本のまぐろ類(カツオを含む)輸入量の経年変化(1976〜2017年)(FAO統計)

日本のかつお・まぐろ漁業

日本のかつお・まぐろ漁業は長く世界をリードしてきたが、前述のように日本の漁獲量は1984年をピークとして減少している。漁獲量の主体は、世界の漁獲傾向と同様にカツオである(図5)。大洋別では、太平洋(2017年32.6万トン)がインド洋や大西洋の漁獲量(2017年1.4万トン及び1.9万トン)より圧倒的に多く、全体の91%である。しかし、その太平洋においても、日本の漁獲量は2014年以降40万トンを下回る水準にある(図6)。

刺身用のまぐろ類を供給するはえ縄漁船数は1970年以降減少している。特に120トン以上の遠洋まぐろはえ縄漁船と20〜120トンの近海まぐろはえ縄漁船でその減少が著しい。遠洋はえ縄漁船は1971年に1,000隻に達していたが、近年は約200隻に減少している。竿釣り漁業も、漁船数には同様の減少傾向が見られ、遠洋竿釣り漁船では、1970年代中盤は300隻あったものが、近年は約40隻に減少している。

熱帯水域で操業し、缶詰やかつお節向け等のカツオを供給するまき網漁船については、各国のまき網漁船数が増加する一方(2000年157隻→2016年251隻)、日本の海外まき網漁船数は、1997年以降は35隻で推移し、2017年は29隻となっている。

日本のかつお・まぐろ漁業にとって、太平洋島嶼国等への入漁料の高騰は、経営上大いに懸念される。また、船員の確保等も切実な問題となっている。さらに、漁船操業に直接的な影響を与える燃油価格(図7)は、2008年に急騰し、同年8月には1キロリットル約12万円まで上昇した。2009年春には6万円の水準まで低下したが、再び上昇に転じ2014年夏前に10万円まで高騰した。その後、2014年後半から下落し、2016年には再び6万円前後の水準になったが、再び増加傾向にある。


まぐろ類の資源管理

高度回遊性魚類であるかつお・まぐろ類については各国の排他的経済水域(EEZ)内における資源管理に関しては国連海洋法条約に基づき所管国に責任がある一方、EEZの内外を問わず地域全体において長期的な保存と持続的可能な利用を確保するため、地域漁業管理機関(RFMO)の下で管理措置の議論が行われている。いずれのRFMOにおいても、その科学小委員会等の補助機関によって各魚種の資源状態が評価され、それに基づき、年次会合等の場で、適切な資源管理方策が議論・決定される。まぐろ類及びその漁業に関するものとしては、主に以下の措置が挙げられる。

中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC;中西部太平洋):まき網は2019、2020年の2年間の措置として、全水域でFAD操業禁止3か月+公海においては2か月の追加(合計5か月)FAD操業禁止、1隻あたり常時350基以下のFAD個数制限、はえ縄は我が国のメバチの漁獲量上限を18,265トン(2001〜2004年の平均値から35%削減)としており、2019年の会合では現行措置の維持が合意された。太平洋クロマグロについては、30 kg未満の小型魚の漁獲量を2002〜2004年の平均水準から半減(我が国は8,015トンから4,007トンに削減)、30 kg以上の大型魚の漁獲量を2002〜2004年の平均水準から増加させない(我が国は4,882トン)、としている。また、「暫定回復目標(親魚資源量を2024年までに少なくとも60%の確率で歴史的中間値(約4万3千トン)まで回復させる)」を達成した後、10年以内に60%以上の確率で「初期資源量の20%(約13万トン)」まで資源を回復させることとなった。さらに、資源変動に応じて管理措置を自動的に改訂する漁獲制御ルールが決定された。

インド洋まぐろ類委員会(IOTC;インド洋):2016年の会合では、キハダに関して、2014年のまき網・はえ縄の漁獲量がそれぞれ5,000トンを超えた国については、2017年〜2019年の各国の漁獲量を、まき網については2014年から15%、はえ縄については2014年から10%削減、等が合意されている。2017年5月の会合では、まき網漁船1隻あたりのFADの数を削減する(1度に設置できる数を425基から350基に削減し、1年間に設置できる数を850基から700基に削減)ことが合意されている。2019年6月の会合では、漁獲量の多い国を対象に削減措置が達成できない場合には超過分を翌年の削減に繰り越すこと、また、1度に設置できるFAD数を300基に、1年間に設置できる数を500基に削減することが合意された。

全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC;東部太平洋):2017年7月の会合で合意された熱帯性まぐろ関係の管理措置として、2017〜2020年におけるまき網の禁漁期間72日間、2018〜2020年においてまき網漁船が使用可能なFADの数を大型まき網船の場合で450基に制限、はえ縄については各メンバーのメバチ漁獲枠を設定、となっている。太平洋クロマグロについては、親魚資源量を2024年までに、少なくとも60%の確率で歴史的中間値(約4.1万トン)まで回復させることを暫定回復目標とし、商業漁業については、2018年及び2019年の2年間の合計が6,600トンを超えないように管理している。また、漁獲のうち、30 kg未満の小型魚の漁獲の比率を50%以下とするよう努力することとなっている。

大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT;大西洋):2019年の会合では、メバチの2019年の総漁獲可能量(TAC)65,000トン(日本の国別割当量は17,696トン)が、2020年には62,500トン(日本の国別割当量は13,980トン)に、2021年には61,500トン(国別枠は2020年に協議)へと削減されることが合意された。また、大西洋クロマグロについては、2018年年次会合において2019〜2020年の未配分であった漁獲枠を国別漁獲割当量として配分することが合意され、我が国の国別漁獲割当量は各々2,544トン(16トン増加)、2,819トン(18トン増加)となった。

みなみまぐろ保存委員会(CCSBT;ミナミマグロ):予め決定された管理方式(MP)によって総漁獲可能量が算出されており、その値を踏まえて各加盟国等の割当量が設定されている。2017年の会合において2018〜2020年の各年の総漁獲可能量は17,647トン、うち我が国が6,165トンで合意されている。

世界的な過剰漁獲の削減問題はどのRFMOにとっても重要な課題である。2006年には船舶モニタリングシステム(VMS)の採用、はえ縄漁獲物の転載をモニタリングするための運搬船監視の仕組み等がいくつかのRFMOで決定される等、漁業監視が強化された。また、「漁獲されたまぐろ類に対し、漁船の旗国や定置網、畜養場を管理する国等が、漁獲から転載、畜養、貿易までの全ての行為に対し、それぞれ政府認証を行う」漁獲証明制度の導入が大西洋クロマグロ(2007年)とミナミマグロ(2008年)で決まった。

まぐろ類各魚種・海域での資源状態及びそれに関連した資源管理の詳細については、それぞれの魚種・海域の項を参照されたい。


まぐろ類への需要

熱帯水域における各国のまき網による漁獲量は、缶詰の生産量に対応して増加してきた。2017年時点で、まぐろ類の缶詰総生産量は209万トンであり、その23%である48万トンがタイで生産されており、次いでスペイン、エクアドル、イラン、フィリピン、米国等で生産されている(図8)。

日本のまぐろ類輸入量は1980年には約10万トン未満であったが、その後増加し、2002年には45万トンを上回った。2004年以降は減少傾向となり2007年以降は30万トン前後で推移している(図9)。漁獲量と輸入量から輸出量を差し引いた、日本のまぐろ類市場への供給量は、約70万トンの水準にある。

日本のみならず、健康食ブームや寿司人気の高まりにより、米国やアジア諸国でのまぐろの寿司や刺身の消費は拡大している。責任あるまぐろ漁業推進機構(OPRT)の推定(http://www.oprt.or.jp/pdf/KOBEnihongo.pdf、最終アクセス日2019年11月26日)によれば、海外での生鮮まぐろの消費は、米国、韓国を筆頭に合計で2007年は8万トン強だったものが2011年には15万トンに増加していると見積もられている。日本においても、消費者のトロ嗜好とともに、クロマグロ(太平洋クロマグロ、大西洋クロマグロ)、ミナミマグロの畜養が急増し、日本の養殖まぐろ輸入量(水産庁 我が国のかつお・まぐろ類供給量と価格 http://www.jfa.maff.go.jp/j/tuna/attach/pdf/index-54.pdf、最終アクセス日2019年11月26日)は1998年の約12,000トンから増加し、2006年のピーク時には約34,400トンとなり2017年には約25,500トンと見積もられた。なお、輸入養殖まぐろについて、畜養場への活込量、畜養中の死亡報告や魚体サイズ等の科学データが、輸出国から提供されていないことは、資源管理上問題である。地中海の活込量が近年減ったのは、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)での総漁獲可能量(TAC)の削減によるものであったが、大西洋クロマグロの資源回復によるTAC増加を受け、今後この動向が変化することも想定される。日本では、2017年における太平洋クロマグロの養殖生産量は約15,858トンと見積もられている。このように、刺身商材となるまぐろ類の価格形成については、市場の需要や畜養物の輸入量や養殖生産量等との関連性を考慮する必要があり、これは、関連する漁業にも少なからず影響するものと思われる。


まぐろ類の資源調査

まぐろ類は広大な海に分布するため、調査船による直接的な分布密度調査等により年々の資源状態を評価するのは困難であり、多くの魚種の資源評価は商業漁獲によるデータに大きく依存している。日本のはえ縄漁業が提供する漁獲成績報告書に基づくデータは、歴史的に漁場のカバー率が高く、長期間にわたって整備されてきたため、様々な漁業委員会の資源評価において貴重な資料として使用されている。資源評価では、漁獲効率に関する情報を資源量の動向として指数化するため、漁獲努力量に含まれる様々な要因の影響を除去する標準化という作業が重要となる。例えばはえ縄漁業では、対象魚に応じて漁具の仕立てを変更することは通常良く行われ、水深が深いところまで分布するメバチを狙う際は深縄(釣り鈎を深い水深に設置するはえ縄の仕立て)を、逆に夜間メカジキを狙う際には浅縄操業を行うことが考えられる。このような対象種に応じた漁具の違いや季節・海域での違い等が漁獲効率に及ぼす影響をどう補正するかが、資源解析をする上で重要な課題である。しかし、近年の日本の遠洋漁業の縮小により、資源分布に対するカバー率が減少していることは、資源評価の精度を低下させる要因となる点で懸念される。

主要な産卵場及び分布域が日本周辺にある太平洋クロマグロでは、調査船による産卵場調査、各道県等の機関による市場等での調査体制が構築されるとともに、日本沿岸のひき縄データによる幼魚の加入量把握も実施しており、さらに集団における遺伝的近親関係の分析による資源量推定等、漁業データに依存しない手法の開発にも取り組んでいる。また、熱帯域から温帯域まで広く分布するカツオでは、日本に来遊するカツオの漁獲量減少などもあり、熱帯・亜熱帯域からのカツオ北上来遊経路や南下経路などを明らかにするために電子標識放流を実施してる。さらに、クロマグロ、カツオも含めてメバチ、かじき類、さめ類などを対象に資源評価において重要な情報となる成長や成熟など生物学的な調査研究も進めている。

資源評価にあたっては、プロダクションモデル、統合モデル等、様々な解析モデルが用いられるが、各国から提出される漁獲量、はえ縄等の漁業データに基づく資源量指数、漁獲物の体長組成、各種の生物学的パラメータ等が主要なインプットとなり、さらに、標識放流データ等も用いられる。利用可能なデータを組み合わせることにより、資源評価の精度の向上を目指しているが、データの質が良くないと不確実性が増大してしまうため、年齢情報、成長と成熟、分布回遊等生物学的知見の充実とあわせて、体系的なデータ収集体制を維持していくことが必要である。

また、最近の国際会議においては、まぐろ類の調査研究のみならず、まぐろ漁業による混獲状況の把握やその削減、生態系保全に向けた情報収集を目的とした科学オブザーバー調査、また混獲削減のための調査研究の実施が求められている。まぐろ漁業の混獲種という側面もあった外洋性さめ類やかじき類についても、精度の高い資源評価が求められるようになっているので、基本的な漁獲・混獲データの整備とともに、不足していた生物学的特性値の充実も急務となっており、標本収集や標識放流について、各水揚市場、地方公庁船、漁業現場等との協力が一層重要となってきている。


今後の問題点

本項では、まぐろ類の資源評価に関する今後の問題点を列記した。

  • 漁獲統計、生物統計の精度とカバー率の向上及びデータ収集の迅速化
  • はえ縄、竿釣り、まき網漁業等における漁獲努力量の標準化及び漁獲努力量の動向の把握、特にまき網漁業データの解析
  • 畜養まぐろに関するデータの収集とその漁獲が資源に及ぼす影響の評価
  • 資源評価精度の向上、資源変動要因の解明及び資源加入モニタリング技術の開発
  • 混獲種に関するデータの充実と混獲が資源に与える影響の評価

データソース

主にFAOの統計コレクション(2019年11月21日にデータ確認)を用いた。

  • 国別・海域別・魚種別・年別の漁獲量:http://www.fao.org/fishery/statistics/global-capture-production/query/en
  • 国別・魚種製品別・年別の輸出入量:http://www.fao.org/fishery/statistics/global-commodities-production/query/en
  • まぐろ類の国別・魚種別・漁業種類別・年別漁獲量:http://www.fao.org/fishery/statistics/tuna-catches/query/en

執筆者

かつお・まぐろユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部

南 浩史


くろまぐろまぐろユニット
国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部

岡本 浩明