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76 サンマ 北太平洋

Pacific Saury, Cololabis saira


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最近の動き

サンマは北太平洋の温帯・亜寒帯域に広く生息しており、その一部が日本近海域へ来遊し漁獲される。FAOの統計などによると、1980年以前は日本およびロシア(旧ソ連)のみが北太平洋でサンマを漁獲していたが、近年では韓国、台湾、中国およびバヌアツも漁獲するようになった。日本およびロシアは主に自国の200海里水域内で操業を行っているが、その他の国・地域は主に北太平洋公海域で操業しており、近年ではこれらの国・地域による漁獲量が増加している。

現在、北太平洋のサンマは高度回遊性魚類として北太平洋漁業委員会(NPFC)による資源管理の対象になっている。2018年4月に開催されたNPFC科学委員会(SC)のサンマの小科学委員会(SSC)では、資源評価に適用する標準化CPUEの期間や組み合わせについてメンバー間で見解の相違があり、適用方法の統一ができなかったため、資源評価結果の合意に至らなかった。これを受けて、2018年7月に開催されたNPFC第4回年次会合では、2019年のSCで一致した資源評価結果を得るべく作業を進めることが合意された。このほか、すでに合意されている漁獲努力量の抑制に加え、サンマの洋上投棄禁止および小型魚の漁獲抑制の奨励が追加措置として合意された。


利用・用途

日本では、生鮮食品、加工原料として広く利用されている。台湾では主に冷凍で水揚げし、中国と韓国向けを中心に輸出する場合が多い(酒井ほか 2014)。台湾が輸出しているサンマのうち、大型のサンマは中国、韓国で食用にされるほか、オーストラリアではまぐろ養殖用の餌として利用されている。小型のサンマは台湾からタイやフィリピンに輸出され、缶詰に加工された後、ロシアに輸出されている(酒井ほか 2014)。ロシアでは主に缶詰などの加工原料として利用されているほか、フィッシュミールの原料にも用いられている。


表1. 北太平洋におけるサンマの国・地域別漁獲量(トン)

表1

NPFCおよびFAOの資料を基に作成。

ロシアについては、2018年11月のNPFC第3回サンマ資源評価技術ワーキンググループにおいてロシア側から修正のあった数値を記載。


表2. 2018年のNPFCにおける日本、中国および台湾の資源評価結果

日本、中国および台湾の評価結果の例。日本の調査船による分布量を定量的に用いた場合で示した。Technical Working Group on Pacific Saury Stock Assessment 2018より。

表2

 

表3. 日本の調査船調査で推定したサンマの海区別分布量(万トン)

表3

 

図1

図1. 北太平洋におけるサンマの漁獲量

FAOおよびNPFCの資料に基づいて作成した。


図2

図2. さんま棒受網(大臣許可)漁船のトン数別操業隻数


図3

図3. さんま棒受網漁船の年間操業回数(網数)の推移


図4

図4. サンマの分布域(索餌場と産卵・生育場)と日本漁船および公海における外国漁船の主漁場位置


図5

図5. サンマの日齢と体長(左)、日齢と体重(右)の関係式

Gompertzの成長曲線にあてはめて推定した。


図6

図6. 2017年のNPFCにおける資源評価結果

KOBEプロットで示された日本の評価結果の例。日本の調査船による分布量を定量的に用いた場合で示した。Technical Working Group on Pacific Saury Stock Assessment 2018より。


図7

図7. 日本の調査船調査(表層トロール)によるサンマの採集尾数(2003〜2018年)

1歳魚、0歳魚の比率


図8

図8. 日本の調査船調査(表層トロール)から推定した海区別サンマの分布量

(表層トロール調査を実施した2003〜2018年の結果)。


図9

図9. サンマの漁獲割合の推移(2003〜2017年)

漁獲割合は(各国・地域におけるサンマの漁獲量の合計値/日本の調査船調査による推定分布量)として求めた。


図10

図10. サンマの標準化CPUEの推移(計算を実施した1994〜2017年のみ)

日本のさんま棒受網漁船の漁獲資料を基に解析した。


図11

図11. 日本におけるサンマのTACと漁獲量の推移

漁業の概要

日本以外でサンマを漁獲している国・地域は、ロシア、台湾、韓国、中国およびバヌアツである。FAOの統計によると、1950年代にはすでに日本および韓国が漁獲を行っていたが、韓国が太平洋側でサンマ漁を開始したのは1980年代中盤であり、それ以前は日本海側の韓国沿岸における漁獲量である。1960年代からは旧ソ連、1980年代終盤からは台湾が漁獲を始めた。1990年以降、外国漁船によるサンマの漁獲量が増加し、総漁獲量に占める日本の漁獲量の割合は徐々に低下した(図1)。日本を含め、これらの国・地域も棒受網による漁獲が大部分を占める。日本およびロシア漁船は主に自国の200海里水域内を漁場としているのに対し、台湾、中国およびバヌアツは北太平洋公海域を漁場としている。しかし、近年の漁場の沖合化に伴い、日本漁船の公海における漁獲量の割合は徐々に増えている。また、韓国は1980年代から公海漁業に進出し、現在の主漁場は公海である。日本の棒受け網漁業の漁期は8月から12月であるが、公海での漁期は5月ごろから12月までである。


【日本】

日本では、サンマの大半は北太平洋さんま漁業として棒受網漁業で漁獲される。日本のサンマ漁獲量は棒受網漁業の発達に伴い1950年代に増加したが、1960年代になると減少し、1969年には6.3万トンとなった。1970年代は漁獲量がやや回復したものの、年変動が大きく、1973年に40.6万トンに達したが、20万トンを下回る年も多かった(図1)。1980年代以降は漁獲量も安定し、1980年と1981年、1998年と1999年は20万トンを下回ったものの、2012年まで20万トン以上を維持してきた。しかし、近年は減少傾向にあり、2016年に11.4万トン、2017年は8.4万トンとさらに減少し、1970年以降で最も低い値となった(表1、図1)。

漁船の大きさで漁業許可は区分され、10トン未満は知事許可、10トン以上200トン未満は大臣許可の北太平洋さんま漁業となっている。後者の漁期は8月から12月であり、漁場は千葉県以北の太平洋側の200海里水域内がほとんどであったが、2010年以降は公海でも操業するようになり、近年その割合は増加してきている。サンマの漁場は、8月は北海道東部沖から千島列島沖に形成されるが、9月下旬から10月上旬には三陸沖まで南下し、11月から12月の漁期終盤には常磐沖から房総沖にまで達する。このほか小規模ながら、7月には北海道東部沖で流し網が、10月から翌年2月頃まで熊野灘で棒受網漁業が行われ、日本海を含む各地の定置網でも漁獲されている。

北太平洋さんま漁業の漁船のトン数階層別の隻数は、年代によって大きく変化している。1980年代はじめは50〜80トンの漁船の割合が多かったが、これらは1990年代中盤までにほぼ姿を消し、それ以降は10トン以上20トン未満(小型船)および100トン以上200トン未満船(大型船)に2極化した(図2)。2017年の北太平洋さんま漁業の出漁隻数は、前年よりも7隻減少して、145隻であった。漁期年ごとの操業回数は1980年代に大きく減少し、1982年は28.5万回の操業があったが、1992年には7.0万回まで減少した。その後、1998〜2003年には10.6万〜14.6万回に回復したものの、2004年以降は再び低下し、2015年(4.8万回)と2016年(4.6万回)の操業回数は5万回を下回ったが、2017年は5.5万回とやや増加した。近年、操業回数が減少した要因として、漁場が例年よりも沖合に形成されたことが影響していると考えられる(図3)。

全漁業国・地域の漁獲量に占める日本の割合は2001年までは多くの年で70%以上であったが、台湾をはじめとする他国・地域の漁獲量の増加によって2002〜2009年は49〜66%に低下、2010年以降は50%を下回る状況が続き、2017年は32%で2016年に次ぐ低い値となった(表1、図1)。


【台湾】

FAOの統計では、台湾の漁獲量は1989年から記録されている。NPFCの資料によると台湾の漁獲量は、2001年までは0.8万〜4.0万トンの範囲であったが、2002年以降は急増し、2005年には11.1万トンに達した(図1)。その後、2006年と2007年に一時的に減少したものの、2008年以降は10万トン以上を維持し、2013年には18.3万トンに達して初めて日本の漁獲量(14.9万トン)を上回った。2017年(10.7万トン)も日本と同様に前年(2016年、14.6万トン)の漁獲量を下回ったものの、日本の漁獲量(8.4万トン)を上回る状況が続いている。台湾のさんま漁船は、日本漁船より早い5月末から12月まで、主に東経150度以東の公海域で棒受網による操業を行っている(Huang et al. 2007)。初夏から秋にかけては北海道沖の200海里水域の境界線外側に沿って南西方向に南下しながら操業を行っている(Tseng et al. 2013)。台湾のさんま漁船の多くはいか釣りとの兼業船で、1〜4月頃まで南西大西洋のアルゼンチンマツイカ漁を行い、5月から機材を替えて12月頃まで棒受網漁を行う。そのため、アルゼンチンマツイカをはじめとする海外いか類の漁模様が台湾のさんま漁船の操業期間にも影響を与える。

現在操業している台湾のさんま漁船の大きさは900〜1,200トン(ただし国際総トン数)である。台湾のさんま漁船では、漁獲したサンマを船上でサイズ選別、箱詰めして船内の魚倉で冷凍保管した後、運搬船に積み替えて台湾や中国などの港に水揚げしている。台湾のさんま漁船には、漁労作業のほか、選別・箱詰め作業の作業員を含め、50人以上乗船している(酒井ほか 2014)。以前は日本およびロシアの200海里水域内にも入域していたが、現在は公海域のみで操業を行っている。NPFCの資料によると2017年に公海域で操業した台湾のさんま漁船数は84隻で、2016年の91隻よりも7隻減少した。


【中国】

FAOの資料によると、中国は2012年から公海におけるさんま漁業に参入している。NPFCの資料によると、中国漁船による各年のサンマの漁獲量は2,014トン(2012年)、2.3万トン(2013年)、7.6万トン(2014年)と、年々急増した。その後、2015年は4.9万トンに留まり、日本や台湾同様に前年を下回ったものの、2016年は日本、ロシア、台湾が前年よりも減少する中、6.3万トンに増加したが、2017年は4.8万トンに減少した。2017年に公海域で操業した中国のさんま漁船の数は55隻であり、前年(60隻)を下回った。


【ロシア】

ロシアは1950年代からサンマの漁獲を始めている。1961〜1995年までは1983年(7,606トン)を除き、年間2万トン以上漁獲した。NPFCの資料では、1996〜2000年は年間2万トンを下回った(4,665〜17,390トン)ものの、2001年以降は増加し、2014年まで5万トン前後を維持、2007年には過去最高の11.9万トンに達した。しかし、2015年以降は毎年減少し、2016年は1.5万トン、2017年は5,464トンとなった。漁場は主に200海里水域内であったが、2017年は公海の漁獲量が200海里水域の漁獲量を上回っている。公海域で操業した漁船数は、2013年の21隻をピークに漸減し、2016年には6隻となったが、2017年は13隻に増加した。


【韓国】

韓国では、自国200海里水域内(日本海と東シナ海)で古くからサンマを漁獲してきたが、太平洋で漁獲を始めたのは1980年代である。1980年代後半は1,050〜3,236トンの低い水準であったが、1990年以降増加し、2017年まで1万トン以上で推移している。公海における漁期は5〜12月であるが、この期間に他国の200海里水域内に入域することもある。このほか、韓国200海里水域内(日本海と東シナ海)で4〜6月を主漁期としてサンマを漁獲しており、1960年代〜1970年代初めにかけては年間2.5万トン前後(1.1万〜4.0万トン)の漁獲があった(Zhang and Gong 2005)が、2001年以降は320〜7,099トンの間で推移している(韓国海洋水産部Web:https://www.fips.go.kr/、2018年11月1日閲覧)。漁船数は、2013年以降13〜14隻で推移している。


【バヌアツ】

バヌアツは2013年にさんま漁業に参入し、初年は1,509トンを漁獲している。漁獲量は年々増加し、2016年に7,331トンに達したが、2017年には4,437トンに減少した。漁場は公海域のみで、漁船の隻数は2014年までは1隻のみであったが、2015年以降は4隻となっている。


生物学的特性

【分布と回遊】

サンマは、日本海・オホーツク海、北太平洋の亜熱帯水域から亜寒帯水域にかけて広く分布する。集団遺伝学的解析では、東シナ海、日本海や北米沿岸に分布するものを含めて、変異がきわめて小さいと考えられている(Chow et al. 2009)。サンマが分布する海域の表面水温は7〜25℃に及ぶが、10〜15℃の水温域で分布密度が高く、漁場が形成されやすい。

サンマは季節的な南北回遊を行い、5〜8月に北上して夏季に黒潮・親潮移行域北部・亜寒帯水域を索餌域として利用する(図4)。8月中旬以降、南下回遊を開始し、冬季には産卵のため移行域・黒潮前線域・亜熱帯域に達する。南北回遊に加えて、大きく東西方向にも回遊することが知られている(Suyama et al. 2012)。サンマは漁期前の6〜7月には日本のはるか沖合、東経155度〜西経170度付近に多く分布し、日本近海では少ない。しかし、秋以降には西方向に回遊し、東経170度より東に分布していたサンマも日本近海に来遊し、漁獲される。しかし、北太平洋に分布するすべてのサンマが日本列島近海に来遊するわけではなく、東方沖合の公海域を南下する群もいると考えられている(Miyamoto et al. 2019)。


【成長と成熟】

サンマの寿命は約2年である(Suyama et al. 2006)。耳石日周輪の解析から、ふ化後6〜7か月で体長(肉体長:下顎先端〜尾柄肉質部末端)約20 cmに成長し、漁獲の主対象となる1歳魚は漁期中(8〜12月)に体長29 cm以上に達する(図5)。サンマの産卵期は長く、9月から翌年6月にわたる。産卵海域は季節的に移動し、秋季と春季は主に黒潮・親潮移行域に形成されるのに対し、水温の低い冬季は黒潮域〜黒潮続流域に形成される(図4)。飼育実験や野外の調査結果では、成熟している個体は主に体長25 cm以上で、0歳魚の一部と1歳魚が産卵する(巣山ほか 2016)。


【食性】

仔稚魚期はカイアシ類のノープリウス幼生などの小型動物プランクトンを捕食するが、成長とともにオキアミなど大型の動物プランクトンも捕食するようになる(小達 1977)。サンマを捕食する生物として、ミンククジラなどの鯨類、ハイイロミズナギドリ、ウトウなどの鳥類、ギンザケ、ビンナガなどの大型魚類やアカイカなどの高次捕食者が知られている。


資源状態

2018年4月のNPFC科学委員会(SC)のサンマの小科学委員会(SSC)において、日本の調査船による調査結果および各国・地域のさんま漁業から得た資源量指数を用いた余剰生産モデルによる資源評価が行われた。ここでは、その結果の概要と合わせて調査船による調査結果と日本のさんま漁業から得た資源量指数の解析結果に基づいて判断した資源状態も示す。


【NPFCにおける資源評価】

2018年4月に開催されたSSCにおいて、ペラ・トムリンソン型の余剰生産モデルを用いた資源評価が行われた。余剰生産モデルの過程誤差と資源量指数の観測誤差を考慮して、資源量と最大持続生産量(MSY)を推定した。資源量指数として、日本の調査船調査で推定された分布量に加え、日本、中国、台湾、ロシアおよび韓国の漁業データから得られた標準化CPUE(1網あたり、あるいは1隻1操業日あたりの漁獲量)の時系列データが提供された。日本のほか、中国と台湾がそれぞれの資源評価結果を示したが、資源評価に適用する標準化CPUEの期間や組み合わせについてメンバー間で見解の相違があり、異なる資源評価結果が示された。具体的には、資源状態の結果が大きく二つに分かれ、日本および台湾の結果では、最終年(2017年)の資源量(B2017)はMSYを達成する資源量(BMSY)を下回り、最終年の漁獲死亡係数(F2017)はMSYを達成する水準(FMSY)を上回った(図6、表2)。一方で、中国の結果では、B2017がBMSYを上回り、かつF2017はFMSYを下回った。また、MSYも標準化CPUEの使い方によって推定値が異なり、37〜58万トンと推定された。SSC期間中の議論において、適用する標準化CPUEの設定とそれに基づく資源評価結果について合意に至らなかった。これを受けて、2018年7月に開催されたNPFC第4回年次会合では、2019年のSCで一致した資源評価結果を得るべく作業を進めることが合意された。


【調査船調査】

日本では、北太平洋におけるサンマの漁期前の分布状況・分布量を明らかにするため、2003年以降6〜7月の北太平洋において、表層トロール(ニチモウ社製NST-99型表層トロール)を使用して調査を行っている。調査は東経143度から西経165度までの海域を対象とし、原則として、経度4度間隔で調査線を設定し、調査ライン上の表面水温8〜18℃の海域で行っている。また、表層トロールによる曳網面積と採集個体数から各調査点における分布密度を求めるとともに、これらの平均分布密度に調査海域の面積を乗じて調査海域におけるサンマの分布量を推定している(巣山ほか 2016)。分布状況の把握と分布量の推定にあたっては、調査海域を1区、2区、3区の3海区に区分して行っている。1区(東経143度〜東経162度)は日本周辺および公海域の漁場が形成される海域、2区(東経162度〜西経177度)は当年内に日本周辺漁場に来遊するサンマが分布すると想定される海域、3区(西経177度〜西経165度)は0歳魚が中心に分布する海域で、この海域に分布するサンマは主に翌年以降に日本周辺漁場に来遊すると想定されている。

これまでの調査の結果、2003〜2009年は日本に近い1区でもサンマが多く採集されていたが、2010年以降は、1区でのサンマの採集数が大きく減少し、その後も同様の傾向が続いている(図7)。1区に分布するサンマは、日本では漁期はじめに漁獲されること、および2区に分布するサンマよりも大型であることから、近年の漁期当初にみられる不漁および魚体サイズの小型化と関連していることが想定される。

調査海域におけるサンマの分布量は、調査を開始した2003年以降、減少傾向にあり、特に2017年には、これまでで最も低かった2016年(178万トン)の約半分、最も多かった2003年(502万トン)の17%にあたる86万トンにまで減少した(表3、図8)。2018年には205万トンと、2017年の2.4倍に増加し、2016年を上回った。海区別にみると、2010年以降の分布量の減少には、1区の分布量の減少が大きく影響しており、さらに2017年の減少にはこれまで比較的変動の少なかった2区の分布量の減少が大きく関与していた(図8)。2018年の2区における分布量は121万トンと、2015年および2016年をやや上回っていた。

漁期前の調査で推定した分布量と、表1に示す漁業国・地域における全漁獲量から計算した漁獲割合(全漁獲量/資源量)を図9に示す。漁獲割合は、2003年が最も低く(8.9%)、その後、年変動はあるものの、増加傾向を示し、2012年(24.0%)には2003年以降初めて20%を超えた。2015年と2016年は各国の漁獲量が減少したものの、漁期前の分布量も減少していたことから、漁獲割合も比較的高い値(15.8%と20.3%)であった。2017年の分布量の減少に伴い漁獲割合はさらに増加し、30.8%に達した。

以上のように、2018年の日本の調査船調査結果では、推定分布量が前年の約2.4倍と増加したものの、短寿命であるサンマでは分布量が短期間に変化することがあるため、今後も分布量の動向に注視する必要がある。


【漁業による資源量指数】

漁業から得た資源量指数として、日本のさんま漁船のCPUE(1網あたりの漁獲量)を提供した(Suyama et al. 2018)。さんま漁船のCPUEには、漁船の規模、漁期、漁場および表面水温が影響を及ぼすと考えられ、これらの影響を取り除いた標準化CPUEを資源量指数に用いる必要がある(巣山ほか 2016)。そこで、1994年から2017年までの聞き取り調査から得られた70トン以上の標本船のCPUEデータに、一般化線形モデル(GLM)を適用した。GLMの応答変数にはCPUEの自然対数値、説明変数には、年、月、漁船トン数、表面水温および海区をそれぞれ用い、誤差分布には対数正規分布を仮定した。全ての主効果と1次の交互作用からなるフルモデルから、BIC(ベイズ情報量基準)に基づいてモデル選択を行った。最終的に選択されたモデルから、最小二乗平均(庄野 2004)を用いて、資源量の年変動以外の影響を取り除いた値を標準化CPUEとして算出した。

その結果、標準化CPUE(平均比)は1998年と1999年は0.4以下の低い値であったが、その後上昇し、2005年〜2008年は1.5以上の高い値となった。しかし、その後は低下し、2010年以降は2014年を除いて1994年以降の平均値を下回る年が続いている(図10)。2017年は0.4に低下し、平均値−標準偏差(0.45)より低い値となった。


【資源の水準と動向】

我が国が行ってきた資源状態の判断方法と過去のサンマの判断基準に従い(巣山ほか 2016)、サンマの資源水準と動向を判断した。資源水準は、漁業による資源量指数である標準化CPUEを用い、1994年から2017年までの標準化CPUEの平均値±標準偏差(0.45-1.54)内を中位水準、同平均値+標準偏差以上を高位水準、同平均値−標準偏差以下を低位水準とした。その結果、2017年の資源水準は、標準化CPUE(0. 38)が平均値−標準偏差以下にあることから、低位と判断された。また、直近5年間の調査船による推定分布量の変化を基にすると、2017年から2018年に増加したものの、2014年以降4年連続で減少しており、今後の変化が判断できないことから、動向は減少と判断した。


【資源と海洋環境の関係】

今回のNPFCの資源評価では、海洋環境の変化が与える資源変動への影響が考慮されなかったものの、マイワシなどの他の小型浮魚類同様、サンマの資源量も10年〜数10年規模の海洋環境変動との関連が指摘されている(Tian et al. 2003、2004)。10年〜数10年規模の海洋環境の変動としては、太平洋の海面水温に見られる太平洋十年規模振動(Pacific Decadal Oscillation:PDO)やNPGO(North Pacific Gyre Oscillation)がある。また、韓国における日本海での1970年代後半から1980年代のサンマの漁獲量の減少には1970年代のレジームシフトによる水温上昇の影響が報告されている(Zhang and Gong 2005)。

10〜数10年規模の海洋環境変動に加えて、エルニーニョ・南方振動(El Niño-Southern Oscillation:ENSO)による数年規模の海洋環境の変化とサンマの資源変動との関係(エルニーニョの時に大型魚が増える)も報告されている(Tian et al. 2003)ほか、北太平洋中部移行域におけるChl-a濃度や混合層深度とサンマ資源水準との強い関係が見いだされている(Ichii et al. 2015)。しかし、海洋環境が魚類資源変動に与える影響は複雑であり、海洋環境の変化によるサンマの資源変動の応答を把握し、メカニズムを解明することは今後の重要な課題となっている。

海洋環境の変化と資源変動のメカニズムとの関連では、サンマの卵、仔稚魚は黒潮によって主に東に運ばれ、輸送過程の環境が生残に大きく影響する。そのため、実際のサンマの仔稚魚の分布密度の変化(Takasuka et al. 2014)や、粒子追跡シミュレーションによって移送過程や経験する海洋環境の推測が試みられており(Oozeki et al. 2015)、近年の1区を中心とするサンマの資源量変動との関係の解明が期待される。


管理方策

我が国におけるサンマの資源管理については、操業期間や操業海域を定めて管理する許可漁業制度(大臣許可(10トン以上船)および知事許可(10トン未満船))や年間の漁獲量の上限を定めて管理する漁獲可能量(TAC)制度(図11)などが行われている。

NPFCにおいては、2015年9月に開催された第1回年次会合において2017年に行われる資源評価に基づき、新たな保存管理措置がとられるまでの間、漁船の許可隻数の急激な増加を抑制することなどが合意されたことをはじめとして、保存管理に関する議論が継続している。2017年7月に開催された第3回年次会合では、遠洋漁業国・地域による許可隻数の増加禁止(沿岸国の許可隻数は急増を抑制)が合意された。このほか、2018年7月に開催された第4回年次会合では、日本から、沿岸国の水域と公海に分けて数量管理を行う漁獲数量規制の導入を提案したものの合意に至らず2019年に向けて引き続き検討していくこととなった。その他、サンマの洋上投棄禁止および小型魚の漁獲抑制の奨励について、現行の資源管理措置に追加されることが合意された。


サンマ(北太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
26.4万〜63.0万トン
最近(2017)年:26.4万トン
平均:40.8万トン(2013〜2017年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
8.4万〜22.8万トン
最近(2017)年:8.4万トン
平均:13.8万トン(2013〜2017年)
管理目標 MSY水準の維持
資源評価の方法 各国の標準化CPUEと日本の調査船による分布量データを用い、余剰生産モデルで資源量とMSYを推定
資源の状態 最新(2018年)のNPFCにおける資源評価では合意なし。なお、2017年までのデータを用いた日本および台湾の解析結果では、現在の資源量はMSY水準を下回っていると推定されている。また、日本の漁獲情報(標準化CPUE)および調査船調査結果(推定分布量)によると、低位水準、減少傾向と判断されている。
管理措置 我が国では、許可制度、TAC制度などによって資源管理が行われている。2015年以降、NPFCでは国際的な保存管理措置として、許可漁船の登録、中国などの遠洋漁業国・地域の許可隻数の増加禁止(沿岸国の許可隻数は急増を抑制)、VMS(Vessel Monitoring System)の設置、サンマの洋上投棄禁止および小型魚の漁獲抑制の奨励などが決まっている。
管理機関・関係機関 NPFC
最新の資源評価年 2018年
次回の資源評価年 2019年

執筆者

小型浮魚類ユニット
東北区水産研究所 資源管理部 浮魚・いか資源グループ

巣山 哲・宮本 洋臣・阿保 純一・納谷 美也子

国際水産資源研究所 外洋資源部

大島 和浩・冨士 泰期・橋本 緑

中央水産研究所 資源研究センター

中山 新一朗


参考文献

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