--- 総説 ---

65 日ロ浮魚・底魚類(総説)



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最近の動き

2017年にモスクワで開催された「日ロ漁業委員会第34回会議」の決定に従い、日ロ両国の科学者は以下の諸活動を行い、両国が双方の水域内で利用している同一資源について最新の情報を交換し、資源状態に関する見解をとりまとめた。2018年10月にウラジオストクにおいて「さんま、まさば、まいわし、かたくちいわし、いかおよびすけとうだらの生態学および現存量に関する意見交換会」が開催され、スケトウダラ、マサバ、マイワシ、スルメイカ、マダラ、ホッケ、ブリを対象として調査研究結果の報告、議論を行った。2018年10〜11月に東京において「第32回日ロ漁業専門家・科学者会議」を開催し、漁業や資源状態に関する資料および意見の交換を行い、漁況と資源状態に関する共同報告と2019年の調査協力計画案を作成した。


表1. ロシアの千島列島、沿海州の水域におけるTACの合計値(トン)

表1

 

図1

図1. ロシア水域における我が国漁船に対する漁獲割当量(下は近年の拡大)


図2

図2. 日本水域におけるロシア漁船に対する漁獲割当量


図3

図3. ロシア水域における我が国漁船の漁獲量(下は近年の拡大)


図4

図4. 日本水域におけるロシア漁船の漁獲量

ロシアと我が国漁業の歴史

我が国のロシア沖における漁業は、日露戦争の結果による領土の拡大に伴う漁場の広がりもあり、大正時代には母船式かに漁業、帆船たら漁業などが興った(斉藤 1960)。昭和初期には、母船式さけ・ます漁業、トロール漁業を含め発展したが、第2次世界大戦によってこれら漁業は大きな影響を受けた。第2次世界大戦後、マッカーサーラインによって我が国漁船の漁場は著しく狭められていたが、1952年に同ラインが撤廃されるとともに、ソ連沖公海新漁場の開発が積極的に進められた(北野 1980)。1953年に北方四島周辺太平洋岸漁場、1956年にサハリン東岸タライカ湾、1957年にサハリン西岸タタール海峡で調査が行われ、スケトウダラ、ホッケ、かれい類などの底びき網漁場が開発された(北野 1980)。1956年には日ソ漁業条約、1969年には日ソかに取決、1972年には日ソつぶ取決が結ばれた。我が国漁船のソ連沖での漁獲量は、1975年には北海道沖合底びき網が38.9万トン、北転船がカムチャッカ半島周辺で73.3万トンなどであった(北野 1980)。

ソ連による日本沖での漁獲量は、1975年にはさば類13.3万トン、マイワシ12.2万トン、スケトウダラ13.4万トン、イトヒキダラ10.6万トンなど、合計52.7万トンであった(北野 1980)。1976年12月にソ連は漁業管理法を制定し、200海里漁業水域を設定したが、我が国も1977年3月に同漁業水域を設定した。1977年には日ソ・ソ日漁業暫定協定、1978年には日ソ漁業協力協定が結ばれ、相互に相手国200海里水域で自国の漁船が操業できるようになった。1978年にソ連漁業水域内で我が国に与えられた漁獲割当量(漁獲枠)は、スケトウダラ34.5万トン、いか14.6万トン、イカナゴ6.5万トン、マダラ4.5万トン、サンマ6.9万トンなど、合計85万トンであり、200海里水域設定以前の漁獲量に比べかなり減少した(北野 1980)。同年の日本漁業水域内におけるソ連漁業への漁獲割当量は、マイワシ・マサバ31.8万トン、スケトウダラ8.0万トン、イトヒキダラ13.8万トンなど、合計65.0万トンであり、200海里水域設定以前の漁獲量とそれほど差はなかった(北野 1980)。

相互の相手国200海里水域内での漁獲割当量の年推移として、ロシア(ソ連)水域における我が国漁船に対する割当量を図1に示す。割当量は、1979〜1985年には60万〜75万トンの範囲であったが、1986年には15万トンへと大きく減少した。1987年にはそれまでの相互枠(無償枠)の他に、10万トンの有償枠が設けられた。1988年には相互枠と有償枠を合わせてスケトウダラ12.8万トン、サンマ6.5万トン、いか7.5万トンなど、合計31万トンであったが、その後減少を続け、2001年にはスケトウダラ0.5万トン、サンマ3.6万トン、いか0.9万トンなど、合計6.0万トンとなり、1978年の7%にまで落ち込んだ。2005年以降、5.6万〜5.8万トンで推移していたが、2013年は6.7万トン、2014年は7.6万トンに増加し、2015年以降は6.5万トン前後で推移している。2018年は6.6万トンであった。

日本水域におけるロシア漁船に対する割当量を図2に示す。割当量は、1985年以降、ロシア水域の我が国漁船に対する相互枠と等量で推移しており、1989年には21万トンであったが、1994年には10万トンまで減少した。1998年以降はさらに減少して10万トンを下回り、2001年には5.2万トンとなり、以降5.0万〜5.5万トンで推移した。2014年には7.1万トンに増加したが、2015年以降は6.2万〜6.5万トンであり、2018年は6.5万トンであった。魚種の内訳は、1980〜1990年代はいわし(マイワシ、カタクチイワシ)・さば類(マサバ、ゴマサバ)が最も多く60〜90%程度を占めたが、2001〜2012年はイトヒキダラが50%前後を占め、いわし・さば類とサンマがそれぞれ20〜30%程度となった。2013〜2015年はイトヒキダラが40%前後になり、サンマが33〜42%とやや高くなった。2016〜2017年はサンマが13〜14%に低下し、いわし・さば類が43〜44%に上昇した。2018年はいわし・さば類が69%、イトヒキダラが28%、サンマが3%であった。

ロシア水域における我が国漁船の漁獲量実績の推移を図3に示す。漁獲量は、1979年に約54万トンと最も多くなった。1986年には割当量の削減により約7万トンに急減したが、1988年には有償枠の漁獲もあって約17万トンに増加した。その後は漸減し、2002年には1.2万トンとなったが、2004〜2006年には4.5万〜5.1万トンに増加した。2007〜2009年に2.3万〜2.7万トンに半減後、2010年以降は3万〜4万トン程度で推移していたが、2017年は2.1万トンに減少した。魚種の内訳は、1980年代まではスケトウダラが40〜50%程度でサンマとスルメイカが10〜30%程度であったが、1990年代以降は大部分をサンマが占めるようになっており、2017年は89%がサンマであった。割当量に対する漁獲量の割合(消化率)は、1980年代までは45〜72%であったが、1990年代〜2000年代初めは13〜43%に低下した。2004〜2006年には73〜89%に上昇したが、2007〜2009年は41〜47%に低下した。2010年以降は50〜60%台で推移していたが、2017年はサンマの漁獲が伸びず、31%に低下した。

日本水域におけるロシア漁船の漁獲量実績の推移を図4に示す。漁獲量は、1985〜1992年は5万〜15万トンで、90%以上をマイワシ・マサバが占め、残りのほとんどはイトヒキダラでサンマもみられた。1993年はマイワシ・マサバの減少により0.9万トンに減少した。1994年以降2000年代までは、実績のなかった1996、1997年を除き、イトヒキダラだけが漁獲され、1998年までは7千トン以下、1999〜2009年は1.6万〜2.7万トンであった。2010〜2013年は1.2万〜1.7万トンであり、ほとんどがイトヒキダラでサンマもわずかにみられた。2011年は震災によるロシア側の操業自粛により、前年の3分の2の1.2万トンに減少したが、2012、2013年には1.7万トンと震災前の水準に戻った。2014、2015年はイトヒキダラのみで2.3万、1.7万トンであった。2016年は1.3万トンであり、さば類が1.3千トン、イトヒキダラが1.2万トンであった。2017年は4.0万トンに増加し、さば類が2.7万トン、マイワシが1.8千トン、イトヒキダラが1.1万トンであった。


日ロ両国水域にまたがって存在する資源に関する資源評価

日ロ間には、北西太平洋の生物資源の保存および最適利用を考慮し、相互の200海里水域で他方の国の漁船が漁業を行うために、1984年に「日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の両国の地先沖合における漁業の分野の相互の関係に関する協定」(日ソ地先沖合漁業協定)が締結され、これに基づき日ロ漁業委員会が設置されている。日ロ漁業委員会会議では、日ロ両国水域に共通に存在する主要な魚種系群の持続的利用を協議するため、科学者グループを設置して、それらの資源状態について、日ロ漁業専門家・科学者会議での議論を踏まえて協議し、報告書を作成している。

2018年の日ロ漁業専門家・科学者会議において、日ロ両国が双方の水域内で利用している同一資源の状況に関して、両国の科学者は、以下の通り共通の見解を持った。スケトウダラ、サンマ、マサバ、スルメイカなどについては、ロシア水域や周辺海域における分布や資源状態に関する情報が、それらの適切な資源評価および評価結果を踏まえた資源管理のために重要であり、引き続き日ロ科学者による意見交換会などの機会に、これらの情報収集に一層努める必要がある。

  1. 近年、サンマの資源は減少傾向並びに著しい変動が認められ、資源に与える漁業の影響が増大していることから、今後の資源動向には注意を要する。
  2. 太平洋のマイワシ資源は1980年代に比べて低水準にあるが、近年、その明瞭な増加傾向が認められている。対馬系群マイワシ資源の明瞭な増加が見られるものの、その水準は1980年代と比べて依然として低位にあり、今後の状況を見守り、日本海や東シナ海における幼魚の漁獲を制限し、管理していくことが必要である。
  3. マサバの資源は2000年代前半の最低水準を脱し、増加中である。
  4. カタクチイワシの資源は減少傾向にある。
  5. 日本海ではスルメイカの北偏が認められ、太平洋および日本海におけるスルメイカの資源量は減少傾向にあることから、今後の資源動向には注意を要する。
  6. サハリン・北海道系ニシンの資源は極めて低い水準にあり、今後の資源動向を注視する必要がある。
  7. 北部日本海系群のスケトウダラ資源は、1990年以降、低水準にある。

ロシアからの割り当てに関係するその他の重要資源に関する情報

マダラ、キチジなどの重要資源に関して、ロシアから入手可能な情報は少ない。ロシアは、これら魚種についても資源調査を基にTACを設定しており、当該TACは基本的に資源動向を反映していると考えられる。ここでは、我が国漁船が現在漁獲枠を有している千島列島と沿海州の水域において、ロシアが設定した主な魚種のTAC数量を表1に記載する。


執筆者

北西太平洋ユニット
北西漁業資源サブユニット
北海道区水産研究所 資源管理部

川端 淳


参考文献

  1. 北野 裕. 1980. 北海道海域底魚資源. In 青山恒雄(編), 底魚資源. 恒星社厚生閣, 東京. 204-228 pp.
  2. 斉藤市郎. 1960. 遠洋漁業. 恒星社厚生閣, 東京. 318 pp.