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25 マカジキ 中西部北太平洋

Striped Marlin, Tetrapturus audax


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最近の動き

最新の資源評価は、2015年4月にISCかじき類作業部会によって実施された。資源状態は乱獲状態にあり、漁獲は1977年以降、1982年と1983年を除いて過剰漁獲の状態にあるとされた。本資源評価は、2011年の資源評価を基本としたデータのアップデートのみであったが、推定された資源状態、漁獲状態ともに前回の資源評価よりも悲観的になる傾向が見られた。この理由は、データの重みづけと近年のサイズ組成データの変化により漁獲サイズの選択性が変わった結果、資源量と漁獲死亡係数のそれぞれの基準値との比較に影響したことが考えられる。また、ISCかじき類作業部会は、将来予測結果を踏まえ、2,850トン(2010〜2012年の平均漁獲量の9割)の漁獲では2020年までに19%から191%までの範囲で産卵資源量の増加が見込めるが、現状の漁獲死亡係数では2020年までに-18%から18%の範囲で産卵資源量の変化をもたらすことを勧告した。これらの結果を踏まえ、2018年9月のWCPFC北委員会では、資源回復計画を策定することが促された。さらに、同年のWCPFC年次会合では、本資源の資源回復計画を策定すべく、関係メンバーが保存管理措置案を来年の年次会合へ提出することが推奨された。


利用・用途

刺身、寿司で生食されるほか、切り身はステーキや煮付けとされる。


表1. 漁獲方策別加入シナリオ別の2020年に予測される産卵資源量(2015年の産卵資源量比)

3つの加入シナリオを仮定、2007〜2011年または1994〜2011年の加入量をリサンプリング、Beverton-Holt再生産曲線を仮定。4,000回のシミュレーションを行い、2015年の産卵資源量と2020年に予測される産卵資源量の比率を算出した。結果は5、25、50、75、95パーセント点ごとに集計している。作業部会は、FMSYレベルの漁獲圧(Run3)、2010-12年の平均漁獲量の9割の漁獲量(Run9)、2001-03年レベルの漁獲圧(Run1)および2010-12年レベルの漁獲圧(Run2)のシナリオに着目した。赤色は2020年の産卵資源量が2015年より小さくなった場合を示す。

表1

 

図1

図1. 北太平洋(赤道以北)におけるマカジキの我が国の漁業種別漁獲量(ISC 2018)


図2

図2. 北太平洋におけるマカジキの国別漁獲量(ISC集計分)(ISC 2018)


図3

図3. 太平洋におけるマカジキの分布域(桃色)と主要漁獲域(青色)

現在マカジキを主対象とした漁業はごく小規模な沿岸漁業に限られている。マカジキは、主にはえ縄によって漁獲される。


図4

図4. 資源評価に用いた日本の遠洋近海はえ縄の資源量指数

青:エリア1(北緯10度以南)、黒:エリア2(北緯10度以北かつ東経160度以西)、緑:エリア3(北緯10度以北かつ東経160度以東)。さらに、これら3つのエリアを3つの期間(1975-1986、1987-1999、2000-2013)に分割してCPUEの標準化を実施した。


図5

図5. 資源評価に用いたその他の漁業の資源量指数

オレンジ:日本の沿岸はえ縄、紫:台湾の遠洋はえ縄、赤:ハワイのはえ縄。


図6

図6. 統合モデル(Stock Synthesis 3)の解析結果

(a)1歳以上の総資源量、(b)産卵資源量、(c)加入尾数、(d)漁獲死亡係数。赤色は前回の資源評価の結果、青色は今回の資源評価の結果を示す。b、dで示された水平の直線は、それぞれ産卵資源におけるMSY、MSYを達成するために必要な漁獲死亡係数を示す。

漁業の概要

北太平洋(赤道以北)における我が国のマカジキの漁獲量は、1970年代には1万トンを超えていたが、その後減少を続け、近年は1,200トン程度にとどまっている(図1)。本資源を漁獲する漁業は、はえ縄または流し網によるものが大半であるが、一部は突きん棒やひき縄でも漁獲される。漁獲のほとんどは、まぐろ類を対象とした操業の混獲であり、釧路沖、常磐沖、房総沖、南西諸島などでは、はえ縄、突きん棒および流し網が季節的に本資源を主対象とした操業を行っている。

北太平洋のマカジキ漁獲の大半は我が国によるものである(図2)。総漁獲量は1990年以降、減少傾向を示し2017年には2,159トンまで減少した (図2)。ISCの漁獲集計値には、中国などの漁獲情報が含まれていないので、今後更に整備を進める必要がある。


生物学的特性

【資源構造】

太平洋のマカジキには外部形態の比較から南北太平洋の2系群があるといわれていたが、近年、DNA分析結果から中西部北太平洋の個体と東部北太平洋の個体とは遺伝学的に異なることが示された(McDowell and Graves 2008、Purcell and Edmands 2011)。そのため、ISCは中西部太平洋の資源評価を行っている。


【分布と回遊】

太平洋におけるマカジキの分布は、はえ縄におけるCPUEの分布から、熱帯太平洋中西部海域を取り囲む馬蹄形をなすことが古くから知られている(図3)。主な活動水深帯は表層混合層およびその直下の水温躍層部であり、それより深いところに潜ることは多くない。電子標識装着調査データの解析から、夜半から朝にかけて活動が極端に低下する時間帯があることが報告されている。


【成長と成熟】

体長(眼後叉長)組成の解析から1歳で64 cm、3歳で150 cm、5歳で200 cmに達し、寿命は10歳程度(最大体長290 cm)と推定されているが、正確な成長および成熟年齢に関する情報は得られていない。160 cm前後(3〜4歳)で約50%の個体が成熟するものと考えられている。産卵場は稚魚の採集地点の分布状況から北緯20度前後の海域であろうと推定されている。東部太平洋での卵稚仔の採集報告はないが、卵巣の成熟状態から一部の個体は産卵している可能性がある。産卵期は4〜6月である。


資源状態

ISCでは中西部北太平洋系群と東部北太平洋系群の境界線が西経140度にあるとして、中西部北太平洋資源の資源評価を行っている(Anon. (ISC) 2012a、2012b、ISC 2013、2015a)。

最新の資源評価は2015年4月にISCかじき類作業部会によって実施された。使用したモデルは統合モデルの一つであるStock Synthesis3 ver. 3.24f(SS3)である(Methot and Wetzel 2013)。今回の資源評価は基本的に2011年の資源評価のアップデートのみであり、漁獲データ、サイズデータ、資源量指数が更新された。モデルの設定については前回の方法が踏襲されたが、データの重みづけ手法は変更された(Francis 2011)。具体的には、SS3が予測したサイズデータのサンプル数を用いて再度SS3で資源量を推定している。サンプル数が変わることにより、サイズデータの重み付けが変更される。資源解析に使用した資源量指数は、エリア別の日本の遠洋近海はえ縄(エリア1:北緯10度以南、エリア2:北緯10度以北かつ東経160度以西、エリア3:北緯10度以北かつ東経160度以東)、日本の沿岸はえ縄、台湾の遠洋はえ縄(1995年以後)およびハワイのはえ縄の標準化CPUEである(図4、図5)。

推定された1歳以上の総資源量は、1975年から1980年にかけて28,000トンから15,000トンに大きく減少し、15,000トンで推移したが、その後1990年半ばに、10,000トンを割り込み、近年まで推移している。推定された産卵資源量は、1975年から1980年にかけて5,000トンから2,000トンに大きく減少し、その後1980年代前半に3,500トン程度に回復したが、その後減少を続け近年は1,500トン前後で推移している(図6b)。推定された加入量は、1975年から1990年半ばに、250千〜1,700千尾の範囲で大幅な変動を繰り返したが、その後は近年まで500千尾以下と卓越した加入群が出現しておらず、特に2007〜2011年の加入量は少ない(図6c)。産卵資源量が1990年代半ばに大幅に減少してその後回復しなかった原因としては、漁獲死亡係数の増加と加入量の減少が考えられる(図6d)。推定された資源量は総資源量、産卵資源量ともに前回の資源評価よりも悲観的になる傾向が見られた(図6)。理由としては、データの重みづけが変わったことと、サイズ組成データが更新されることにより、漁獲サイズの選択性が変化したことが考えられる。これらを踏まえ、作業部会は、現在の資源状態は乱獲状態にあり、かつ漁獲は過剰漁獲にあるとするとともに、近年のサイズ組成データの変化により選択性と加入の推定が変わった結果、資源量と漁獲死亡係数のそれぞれの基準値との比較が影響を受けたとした。資源量はMSYを下回り、近年の1歳以上の資源量は減少傾向がみられるため、資源水準は低位、資源動向は減少と判断した。

将来予測は、将来予測モデルRebuilder 3.12dを使用した(Punt 2010)。将来予測の評価期間は、2015年から2020年の5年間とし、初期値や漁獲死亡係数などのパラメータはSS3の出力結果を使用した。また、将来予測は3種類の加入シナリオと10種類の管理シナリオの組み合わせで、それぞれ4,000回試行のシミュレーションを実施した。シミュレーションの結果の中央値(50パーセント値)をみると、FMSY(Run3)で漁業を行った場合、2015年に対する2020年の産卵親魚は、3種類の加入シナリオごとにそれぞれ、25%、55%、95%増加した。また、2,850トン(2010-12年の平均漁獲量の9割)の漁獲量(Run9)で漁業を行った場合、2020年の資源量は2015年比でシミュレーションの結果の中央値は19〜191%増加した。一方、2010〜2012年と2001〜2003年レベルの漁獲死亡係数は、FMSYをそれぞれ82%、49%上回っており、これらのレベルで漁業を続けた場合(Run1およびRun2)、更に産卵資源量が減少する可能性が示された(表1)。これを踏まえ、作業部会は、2,850トンの漁獲では2020年までに19%から191%までの範囲で産卵資源量の増加が見込めるが、現状の漁獲死亡率では2020年までに-18%から18%の範囲で産卵資源量の変化をもたらすことを勧告した。


管理方策

WCPFCは、本資源の保存管理措置として、各メンバーが漁獲量を2000〜2003年の最高漁獲量から2011年は10%、2012年は15%、2013年以降は20%削減することを2010年に決定している(WCPFC 2010)。上述の資源評価の結果を受け、2018年のWCPFC北小委員会は本資源の資源回復計画を策定することを促した(WCPFC 2018)。さらに、同年のWCPFC年次会合では、本資源の資源回復計画を策定すべく、関係メンバーが保存管理措置案を来年の年次会合へ提出することが推奨された。


マカジキ(中西部北太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(北太平洋)
(最近5年間)
2,103〜2,988トン
最近(2017)年:2,159トン
平均:2,391トン(2013〜2017年)
我が国の漁獲量
(北太平洋)
(最近5年間)
1,248〜1,924トン
最近(2017)年:1,248トン
平均:1,548トン(2013〜2017年)
管理目標 検討中
資源評価の方法 Stock Synthesis 3
資源の状態 現在の資源状態は乱獲状態にあり、かつ漁獲は過剰漁獲の状態にある。
管理措置 各国が漁獲量を、2000〜2003年の最高漁獲量から2011年は10%、2012年は15%、2013年以降は20%削減。
管理機関・関係機関 WCPFC、ISC
最新の資源評価年 2015年
次回の資源評価年 2019年

執筆者

かつお・まぐろユニット
さめ・かじきサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

井嶋 浩貴


参考文献

  1. Anon. (ISC) 2012a. Report of the billfish working group (6-16 December 2011, Honolulu, USA). In ISC (ed.), Report of the twelfth meeting of the international scientific committee for tuna and tuna-like species in the north Pacific Ocean. (18-23 July 2012 Sapporo, Japan). Annex 5.
  2. Anon. (ISC) 2012b. Report of the billfish working group (2-9 April 2012, Shanghai, China). In ISC (ed.), Report of the twelfth meeting of the international scientific committee for tuna and tuna-like species in the north Pacific Ocean. (18-23 July 2012 Sapporo, Japan). Annex 7.
  3. Francis, R.C. 2011. Data weighting in statistical fisheries stock assessment models. Can. J. Fish. Aquat. Sci., 68(6): 1124-1138.
  4. Graves, J.E., and McDowell, J.R. 1994. Genetic analysis of striped marlin Tetrapturus audax population structure in the Pacific Ocean. Can. J. Fish. Aquat. Sci., 51: 1762-1768.
  5. ISC. 2013. Report of the thirteenth meeting of the international scientific committee for tuna and tuna-like species in the north Pacific Ocean. (17-22 July 2013; Busan, Korea).
  6. ISC. 2015. Stock assessment update for Striped Marlin (Kajikia audax) in the Western and Central North Pacific Ocean through 2013 (15-20 July 2015 Kona, Hawaii, USA).
  7. ISC. 2018. Annual catch table 2018. http://isc.fra.go.jp/pdf/ISC17/ISC17_Annual_Catch_Table_2017.xlsx(2017年11月13日)
  8. McDowell, J.R., and Graves, J.E. 2008. Population structure of striped marlin (Kajikia audax) in the Pacific Ocean based on analysis of microsatellite and mitochondrial DNA. Can. J. Fish. Aquat. Sci., 65(7): 1307-1320.
  9. Methot, R.D., and Wetzel, C.R. 2013. Stock synthesis: A biological and statistical framework for fish stock assessment and fishery management. Fish. Res., 142: 86-99.
  10. Punt, A.E. 2010. SSC Default Rebuilding Analysis: Technical specifications and User Manual. Jan. 2010.
  11. Purcell, C.M., and Edmands, S. 2011. Resolving the genetic structure of striped marlin, Kajikia audax, in the Pacific Ocean through spatial and temporal sampling of adult and immature fish. Can. J. Fish. Aquat. Sci., 68(11): 1861-1875.
  12. WCPFC. 2010. Conservation and Management Measures (CMMs) and Resolutions of the Western Central Pacific Fisheries Commission (WCPFC).
  13. WCPFC. 2015. Scientific Committee Eleventh Regular Session summary report (5-13 August 2015 Pohnpei, Federated States of Micronesia).
  14. WCPFC. 2018. Northern Committee Fourteenth Regular Session Summary report (4-7 September 2018 Fukuoka, Japan).