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21 メカジキ 北太平洋

Swordfish, Xiphias gladius


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最近の動き

2018年4月にISCかじき類作業部会は、中西部北太平洋系群の最新の資源評価を実施した。資源評価の結果、現在の資源量は乱獲状態になく、漁獲も過剰漁獲状態ではないとされた。東部太平洋北部系群については、2014年の結果を踏襲し、現在乱獲状態ではないものの、過剰漁獲に陥りつつあるとされた。これらの結果は2018年7月のISC本会合で承認された後、同年8月のWCPFC科学委員会に報告された。また、同年9月のWCPFC北小委員会において、本種の管理目標について議題に取り上げられ、資源量を、最大持続生産量を産出する水準に維持しつつ漁業を発展させることを管理目標とすることが合意されたが、漁獲圧と資源量のどちらを限界管理基準値とするかについては合意されなかった。一方、IATTC海域の東部太平洋においては、管理に関する具体的な議論はされていない。


利用・用途

刺身、寿司で生食されるほか、切り身はステーキや煮付けなどに利用される。


表1. ISCに報告された北太平洋のメカジキの近年の国別漁獲量(トン)

表1

 

図1

図1. ISCに報告された北太平洋(赤道以北)におけるメカジキの国別漁獲量


図2

図2. 北太平洋(赤道以北)におけるメカジキの我が国の漁法別漁獲量


図3

図3. 北太平洋のメカジキ系群の分布域(Anon. (ISC) 2009)

中西部北太平洋系群の分布は赤丸で示した赤道以北の海域、東部太平洋系群の分布は青丸で示した海域、両系群の境界線は青い点線で示す。


図4

図4. ISCカジキ作業部会によって合意された雌雄別の成長式(DeMartini et al. 2007より作図)


図5

図5. 雌雄別50%成熟下顎叉長(DeMartini et al. 2000より作図)


図6

図6. 2018年の中西部北太平洋系群の資源評価に用いた資源量指数(CPUE)(Anon. (ISC) 2018b)

黒丸は標準化されたCPUE、実線はそれぞれのトレンド、塗りつぶしは95%信頼区間を示す。日本のCPUEはFleet 1〜Fleet 4であり、台湾のはえ縄(Fleet 8)と米国の流し網(Fleet 10)は使用されていない。


図7

図7. 2018年の中西部北太平洋系群の資源評価に用いた漁獲サイズデータ(Anon. (ISC) 2018b)

灰色塗りつぶしが観測されたデータ。緑色の実線がモデルによる推定値を示す。それぞれ、F1およびF2が日本のはえ縄、F6が日本の近海大目流し網、F10が台湾のはえ縄、F13およびF14が米国のはえ縄、F18がIATTC提供のサイズ組成データを示す。


図8

図8. SS3による中西部北太平洋系群の解析結果(Anon. (ISC) 2018b)

左図は、産卵親魚量の経年変化(黒丸)および最大持続生産量の生産に必要な資源量(緑色点線、SSBMSY)を示す。右図は、漁獲死亡係数(黒丸)および最大持続生産量の生産に必要な漁獲率(緑色点線、FMSY)を示している。両図とも、エラーバーは95%信頼区間を示す。


図9

図9. SS3の解析結果を用いた中西部北太平洋系群の将来予測結果(Anon. (ISC) 2018b)

(a):推定された産卵親魚源量、(b):期待される総漁獲量。将来予測は5種類のシナリオで将来の資源状態を推定した。S1:2013〜2015年の漁獲強度(F2013-2015 = F43%)で漁業を続ける。S2:MSYレベルの漁獲強度(F18%)で漁業を続ける。S3:産卵親魚量が初期資源量の20%となるような漁獲強度(F22%)で漁業を続ける。S4:F20%の高い漁獲強度で漁獲を続ける。S5:F50%の低い漁獲強度で漁獲を続ける。


図10

図10.2014年の東部太平洋系群の資源評価に用いた資源量指数


図11

図11. 東部太平洋系群のプロダクションモデル解析の結果

左図は、開発可能な資源量(黒丸、1955〜2012年)および最大持続生産量の生産に必要な資源量(点線、BMSY)を示す。右図は、漁獲率(黒丸、1951〜2012年)および最大持続生産量の生産に必要な漁獲率(点線、HMSY)を示している。両図とも、エラーバーは95%信頼区間を示す。

漁業の概要

北太平洋における本種の漁獲量は、ISCが集計している。主な漁業国は、日本、米国、台湾および韓国であるが、本データには、近年のフィリピンや中米諸国などによる漁獲量が含まれていない。北太平洋における総漁獲量は、1960年前後に2万トンを上回ったが、その後急激に減少し、1960年代〜1970年代前半には1万トン前後になった(図1)。その後1980年代に米国が、1990年代に台湾が漁獲量を増加させたため、総漁獲量は増加傾向を示し、1993年の総漁獲量は再び2万トンを上回った(図1)。最近年の総漁獲量は9,611トンであり、近年の日本の漁獲量は4,929〜6,228トンで推移している(表1)。1970年代まで、日本は全体の9割程度のメカジキを漁獲していたが、近年、米国や台湾の漁獲量が増加したため、全体に占める割合は5〜6割程度にまで落ち込んでいる(図1)。米国は、ハワイを基地とするはえ縄漁船がメカジキを漁獲している。当該漁業は1980年代終盤に始まり、急速に成長して1993年には7,681トンを漁獲した。2000年には125隻(その内57隻がメカジキを主漁獲対象としていた)が操業して3,000トンを漁獲した(Ito and Coan 2002)。しかしながら、1999年初頭に海亀混獲を削減するための規制が当該漁業を対象に設定され(Ito and Coan 2002)、2001年の発効(Ito and Coan 2004)に伴い赤道以北でのメカジキを対象とした操業を禁止されたため、その一部は、一時的に基地をカリフォルニアに移して操業を継続することとなった。その後、ハワイを基地とするメカジキを対象としたはえ縄漁業は2005年に条件付き(海亀のクォータおよびオブザーバーの全船受け入れ)で再開している(50 CFR Part 665. 2012)。台湾は主に、遠洋・近海はえ縄により漁獲しており、2000年に3,000トンを超え、近年は2,061〜3,207トンで推移している(図1)。

北太平洋における我が国の総漁獲量は、1980年代後半までは0.8万〜1.2万トンであったが、1994年以降は一貫して減少傾向にあり、2011年には4,459トンまで減少し、2017年の漁獲量は4,954トンであった(図2)。近年の漁業種別漁獲量割合は、はえ縄が全体の8割以上を占め、次いで大目流し網などが多い(図2)。大目流し網による漁獲量は1980年代に1,000トンを超える時期があったが、1992年の公海域における流し網のモラトリアム(操業停止)以降、操業水域が我が国200海里内に限られたため漁獲量は急激に減少し、500トン以下にまで落ちこんだ。しかしながら、2000年代初頭に再び1,000トン以上となり、近年は269〜303トンを漁獲している(図2)。


生物学的特性

【分布と回遊】

北西太平洋では、アーカイバルタグを用いた研究によって、本資源が季節的な南北移動をすることが明らかになっている(Takahashi et al. 2003、田中・山口 2017)。具体的には、本種は、夏季に親潮域から黒潮続流域の餌資源が豊富な索餌海域に分布し、冬季には北緯30°N以南の産卵海域に移動する(田中・山口 2017)。これらの、電子標識によって観測された分布・回遊は、漁業の季節的な変動とも合致する(田中・山口 2017)。一方、北東部太平洋における回遊については明らかになっていない。また、他の海域のメカジキ同様、北西太平洋のメカジキも日周鉛直移動を行うことが、アーカイバルタグ調査によって確認されている(図3、Takahashi et al. 2003、田中・山口 2017)。


【成長と成熟】

2018年の資源評価にあたり、ISCカジキ作業部会は、北太平洋系群のメカジキの成長に関する研究をレビューした。レビューの結果、耳石と臀鰭第2棘を用いて年齢査定を行いDeMartini et al.(2007)の成長式を資源評価に採用することになった(図4)。本資源は、他の海域同様、雌の方が早く成長し大型になる(図4)。また、観測される下顎叉長2 m以上の個体はほとんど雌である。50%成熟下顎叉長は、ハワイ沖では雄で102 cm、雌で144 cmと報告されている(DeMartini et al. 2000)(図5)。主産卵期は3〜7月頃であるが、産卵はほぼ周年行われると考えられている(Anon. (ISC) 2018b)。


【資源構造】

2009年2月のISCカジキ類作業部会で既存の情報のレビューが行われた(Anon. (ISC) 2009)。その結果、遺伝子の解析結果から東部北太平洋海域と中西部北太平洋で系群が異なることが示唆されていること(Reeb et al. 2000)、さらに、両海域ではえ縄のCPUEトレンドが異なることから、両者は別系群であると判断され、資源評価も個別に行うこととなった。これを受け、Ichinokawa and Brodziak(2010)は、日本のはえ縄CPUEの解析を行い、その結果を基にISCカジキ作業部会は、両系群の境界を図3に示したようなラインとすることで合意した(Anon. (ISC) 2009)。


資源状態

中西部北太平洋系群の最新の資源評価は、ISCカジキ作業部会により、2018年4月に実施された(Anon. (ISC) 2018b)。使用されたモデルは、統合モデルのStock Synthesis 3 (SS3) である。SS3には、現在考えられる最良の生物学的知見が考慮され、日本、米国および台湾から報告された資源量指数(CPUE)、漁獲サイズデータおよび総漁獲量統計が入力されている。特筆すべき点としては、@統合モデルを十分に使用できるデータの質と量を考慮して、評価期間を前回よりも短い期間(1975?2016年)としたこと、A雌雄で成長式が異なることを反映するため、雌雄別の個体群動態モデルを採用したことである。CPUEは、台湾のはえ縄と米国の流し網を除く8種の指標が用いられ、SS3の推定値に対しおおむね良い当てはまりを見せた(図6)。尤度プロファイルによるモデル診断の結果、漁獲サイズデータは、過去のデータと近年のデータとで初期資源量の推定に異なる影響を示すことが判明したため、過去のデータであるF1(日本のはえ縄の一部)、F6(日本の近海流し網)およびF16(米国その他漁業)を資源量の推定から除外した。これら過去のデータは資源量推定に利用されなかったものの、SS3の推定値と類似した傾向を見せた(図7)。SS3の解析の結果、1975〜2016年の全期間において、本資源の水準はMSYレベル以上であったことが示された(図8左図)。一方、漁獲死亡係数は、1990年台に一度にFMSYを上回ったが、その後はFMSY以下で推移し、2006年以降は減少傾向を示した(図8右図)。さらにISCカジキ作業部会は、SS3による解析結果を基に、5種類のシナリオで将来の資源状態を予測した(図8)。将来予測には、日本の研究者が作成したソフトウェアが用いられた(Ijima et al. 2016)。将来予測の結果、現在よりも高い漁獲圧にした場合、資源量は減少し、漁獲量は全てのシナリオで増加した(図9)。

以上の結果から、ISCカジキ作業部会は、現在の資源量は乱獲状態になく、漁獲も過剰漁獲状態ではないとの結論に至った。この結果は、同年7月のISC本会合で承認されたのち、同年8月WCPFC科学委員会に報告された。資源量は、SSBMSYを上回り、増加傾向も落ち着いたため、資源水準は高位、資源動向は安定と判断した。

東部太平洋系群の最新の資源評価は、ISCカジキ類作業部会において2014年2月にベイジアン・プロダクションモデルを適用して行われた(ISC 2014)。使用されたデータは、日本および台湾から報告された資源量指数(図10)と各国の漁業種類別漁獲量(1953〜2012年)である。解析の結果、資源水準は1995年の3.1万トンから2010年の6万トンへと増加し、その後もBMSYを概ね上回って推移しているが(図11左図)、漁獲率は長期にわたって増加し1998、2002、2003年および近年はMSYレベルを上回った過剰漁獲状態にある(図11右図)。近年の資源量は、BMSYを上回り、増加の傾向が見られるため、資源水準は高位、資源動向は増加と判断した。


管理方策

中西部北太平洋系群については、資源状態は健全であるとのISCの資源評価結果を反映し、これまでWCPFC北小委員会では、本資源に関する保存管理措置導入の議論は行われていなかった。しかし、2018年9月のWCPFC北小委員会において、本資源の管理目標について議題に取り上げられ、資源量を、最大持続生産量を産出する水準に維持しつつ漁業を発展させることを目的とすることが合意されたものの、限界管理基準については、米国が提案した漁獲圧を指標とするか、WCPFCで管理する他の魚種と同様に資源量を指標にするかの間で意見が分かれ、合意に至らなかった(Anon. (WCPFC NC) 2018)。一方、IATTCでは、東部太平洋北部系群の具体的な管理についての具体的な議論は行われていない。


メカジキ(北太平洋)の資源の現況(要約表)

系群 中西部北太平洋系群 東部太平洋系群
資源水準 高位 高位
資源動向 安定 増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
9,611〜11,489トン
最近(2017)年:9,611トン
平均:10,404トン(2013〜2017年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
4,929〜6,228トン
最近(2017)年:4,954トン
平均:5,397トン(2013〜2017年)
管理目標 検討中 検討中
資源評価の方法 Stock Synthesis 3 Bayesian surplus production model
資源の状態 現在の資源量は乱獲状態になく、漁獲も過剰漁獲状態ではない。 現在の資源量は乱獲状態ではないが、漁獲は過剰漁獲状態になりつつある。
管理措置 なし なし
管理機関・関係機関 ISC、WCPFC ISC、IATTC
最新の資源評価年 2018年 2014年
次回の資源評価年 未定 未定

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

井嶋 浩貴


参考文献

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  2. Anon. (ISC) 2018a. Report of the billfish working group workshop, (17-23 January 2018; Honolulu, Hawaii, USA). In ISC (ed.), Report of the ninth meeting of the international scientific committee for tuna and tuna-like species in the North Pacific Ocean. (11-16 July 2018 Yeosu, Korea). Annex 7.
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