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08 ビンナガ 南太平洋

Albacore, Thunnus alalunga


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最近の動き

本種の最新の資源評価は2018年に太平洋共同体事務局(SPC)の専門家グループにより行われ、現在の漁獲は過剰漁獲ではなく、資源も乱獲状態ではないとされた。同年の中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)科学委員会は、この結果を踏まえ、生物学的な限界管理基準値を下回ることを回避し、経済的に漁業が成立する漁獲率を持続するために、はえ縄の努力量と漁獲量を減少することを勧告した。2017年の本種の暫定漁獲量は2016年の水準を34%上回り、2012〜2016年の平均も上回ったことが報告された(WCPFC 2018a)。

また、近年のWCPFCにおいては、長期的な管理枠組みとしての管理戦略の導入や保存管理措置の策定について議論が進んでおり、2018年のWCPFC年次会合では、目標管理基準値(TRP)として資源量を漁業がないと仮定した場合の資源量の56%にすることとし、20年以内にこの水準に達成することが合意された。


利用・用途

主に缶詰など加工品の原料として利用されてきたが、近年では小型魚を中心に刺身による消費が増加している。


表1. 南太平洋におけるビンナガの国別漁獲量(単位:トン)(データ:WCPFC 2018b)

表1

 

表2. WCPFCにおける管理戦略の検討状況(Nakatsuka 2017より和訳・改変)

表2

 

図1

図1. 南太平洋におけるビンナガの国別漁獲量(データ:WCPFC 2018b)


図2

図2. 南太平洋におけるビンナガの漁法別漁獲量(データ:WCPFC 2018b)


図3

図3. 太平洋におけるビンナガの分布域と主な漁場

南北のビンナガは赤道で区分される。


図4

図4. 南太平洋ビンナガの年齢と体長(尾叉長、cm)の関係


図5

図5. 南太平洋ビンナガの海区区分(WCPFC 2018a)


図6

図6. 南太平洋における各海域区分での漁法別(はえ縄:緑、流し網:水色、ひき縄:黄色)ビンナガ漁獲量の推移(WCPFC 2018a)


図7

図7. 南太平洋の各海域区分におけるビンナガの産卵資源量(上段)、加入量(中段)、資源量(下段)の推定値(WCPFC 2018a)


図8

図8. 南太平洋におけるビンナガの推定された漁獲係数の経年変化(WCPFC 2018aを改変)


図9

図9. 南太平洋のビンナガ産卵親魚量の減耗率(SB/SBf=0)の推移(WCPFC 2018a)

黒線は72通りのシナリオの中央値を、濃灰、薄灰の網掛け部分はそれぞれ50パーセンタイル、90パーセンタイルの範囲を示す。


図10

図10. 南太平洋のビンナガに関するF/FMSYとSB/SBMSY(WCPFC 2018a)

漁業の概要

南太平洋ビンナガの漁獲は1950年代初めから始まり、1960年代までの漁業国は日本、韓国、台湾であった。年間総漁獲量は1960年から現在まで約2.2万〜9.3万トンの範囲を増減している。過去5年間(2013〜2017年)の漁獲量は6.8万〜9.3万トン、2017年の漁獲量は9.3万トンであった(表1)。近年の漁獲努力量と漁獲量の急激な増大に対して、南太平洋諸国からの懸念が高まっている。

主な漁業は、遠洋漁業国(日本、中国、韓国、台湾)および島嶼国(フィジー、バヌアツ、仏領ポリネシア)のはえ縄とニュージーランドおよび米国のひき縄で、竿釣りによる漁獲はわずかである(図1、2、表1)。はえ縄の漁場は南緯10〜30度、東経150度〜西経150度の中・西部熱帯・亜熱帯海域であり、尾叉長80 cm以上の産卵群(成魚)が漁獲される。ひき縄の漁場は南緯35〜45度、東経160度〜西経110度であり、尾叉長80 cm以下の索餌群(未成魚)が漁獲される。1990年代には、はえ縄によって2.1万〜4.4万トン、ひき縄によって3,400〜7,800トンが漁獲された(図2)。2000年代に入り、はえ縄の漁獲量は6万トン台に増加したが、ひき縄の漁獲量は6,455トン(2000年)から2,423トン(2017年)に減少している。

はえ縄の漁獲量を国別で見ると、1967年から2005年まで台湾が最も多く、1967〜1995年には1.0万〜2.7万トンであった。近年、一部の操業を北太平洋ビンナガあるいは中西部太平洋赤道域のメバチに移行したため、台湾の漁獲量は減少している。一方、島嶼国の漁獲量は急増し、特にフィジーは一時1万トンを超え、2006年には台湾を上回った。また、中国の漁獲量は2007年の0.5万トンから2008年の1.5万トンに急増、2012〜2016年には2.2〜2.8万トンに達した。2017年にはさらに4.0万トンに増加し、最近年の総漁獲量の増加の主な要因となっている。日本のはえ縄については、1950年代終盤から1960年代半ばには1.7万〜3.5万トンの漁獲があり、全体の漁獲の大半を占めたが、1960年代終盤から減少した。漁獲量の大部分は、メバチを対象とした東太平洋のはえ縄での混獲物であり、南太平洋のビンナガ漁場で漁獲されたものは少ない。

はえ縄以外では、ニュージーランドのひき縄による漁獲が最も多く、1980年代が400〜4,400トン、1990年代には1,800〜5,300トンで、2000年以降は2,700トン前後で推移している。

その他、遠洋漁業国の大規模流し網は1983年頃から始まり、漁獲量は1987年までは1,000〜2,000トン程度であったが、1989年には2.2万トンを記録した。その後、1990〜1991年には大きく減少し、さらに国連決議により禁止されたため、公海における大規模流し網は1991年7月を最後に消滅した。


生物学的特性

太平洋においてビンナガは、北緯50度から南緯45度の広い海域に分布し(図3)、赤道を挟んで北太平洋と南太平洋の2系群が存在するとされている。これは太平洋の南北間で形態学的な差異があること、太平洋の赤道付近ではビンナガがほとんど漁獲されず赤道の南北をまたぐ標識再捕がほとんどないこと、産卵場が地理的に分離することおよび産卵盛期が一致しないことに基づいている。

南太平洋ビンナガは、およそ赤道〜南緯45度の豪州東岸から南米西岸にかけての広い海域に分布する(図3)。仔魚の出現から推定した産卵場は、南緯10〜20度の豪州北東沖〜西経120度付近までの中・西部熱帯・亜熱帯海域である。仔魚分布密度の季節変化および生殖腺の成熟状況から推定した産卵期は、南半球の春・夏季にあたる10〜2月と考えられている(上柳 1969)。産卵域の物理環境的な特徴は、表層混合層が厚く、表層から水深250 m付近まで水温躍層が見られない高水温域である(水深50〜60 mで水温24℃以上、250 m付近で水温15℃以上)。性比は、90 cm未満の未成熟魚ではほぼ1:1であるが、成熟魚では雄の比率がかなり高くなる。

成長については、脊椎骨の輪紋読み取り結果から、以下の式より推定されている(Labelle et al. 1993)(図4)。耳石および背鰭棘の年輪に基づく年齢査定結果では(Farley and Clear 2008)、成長がより早いと推定され、Multifan-CLにより推定された成長によく近似した。

          L(t)=121.0(1-e-0.134(t+1.922))
          L:尾叉長(cm)、t:年齢

成熟開始年齢は、満6歳、尾叉長約80 cmである。本種の寿命は、少なくとも12歳以上と見られる。

主要な餌生物は魚類(小型浮魚)・甲殻類・頭足類である。餌生物に対する選択性は弱く、生息環境中に多い餌を捕食するため、胃内容物組成は海域や季節によって変化する。索餌場は、主として中緯度(南緯30〜45度)の外洋域で、索餌期は南半球の夏季である。捕食者は、大型の外洋性浮魚類(まぐろ類、かじき類)、さめ類、海産哺乳類が知られている。


資源状態

本種の最新の資源評価は2018年にSPCの専門家グループにより、Multifan-CL(Fournier et al. 1998)を用いて行われ(Tremblay-Boyer et al. 2018)、WCPFC科学委員会に報告された。前回(2015年)資源評価からの大きな変更は、1. 日本のはえ縄データを含めた点、2. 対象海域を2015年の8つの海域区分から5つに変更した点(図5)、3. CPUE標準化の方法に空間統計モデルを採用した点、4. 資源評価に大きな影響を与える可能性のあるデータや仮定について、72通りのシナリオ(3通りの親子関係、2通りの自然死亡率、2通りの成長式、3通りのサイズ組成の重みづけ、2通りのCPUE)を設定することで、不確実性の影響を考慮した点である。資源解析に利用したデータは、漁獲量(図6)、はえ縄努力量(100鈎数)、サイズデータと標識データである。漁獲データは、流し網を除いて漁獲尾数が用いられた(流し網は漁獲重量)。漁獲努力量は、はえ縄については枝縄100本、ひき縄および流し網については操業日数が用いられた。成熟率は、2015年資源評価と同様に年齢別の成熟率とした設定に加え、新たにMULTIFAN-CLで設定可能になった体長別成熟率で設定された。2通りの成長式は、MULTIFAN-CL内で推定した場合と、’Chen-Wells’の成長式(Xu et al. 2014)で固定した場合とで設定された。

推定された産卵資源量および資源量は、1960年代から減少し、1990年以降は比較的安定して推移し、近年はわずかに増加傾向となった(図7)。特に、海域区分2は産卵親魚量の大部分を支える海域と推定された。推定された加入は、年ごとの変動が大きく、主に海域3と5で起こるとされた(図7中段)。海域ごとに出現サイズが異なる理由として、幼魚期の季節的な南北回遊や、産卵期になると親魚が産卵場(図3)まで回遊することが挙げられる(Nikolic et al. 2017)。成魚の漁獲係数(F)は、1960年代以降徐々に増加し、1990年頃からはさらに急増したものの、2010年以降は減少している(図8)。未成魚のFは、1990年ごろまで増加し、それ以降は比較的安定している。1980年後半に認められた急激な増加は、流し網漁業の影響によるものである(図8)。

同種の限界管理基準値(LRP)は、漁業がないと仮定して推定した現在の資源量の20%(20%SBF=0)とされており、72のモデルから推定された現在の資源量は、漁業が無いと仮定して推定した現在の資源量の52%と(図9)、LRPおよびMSY水準(6.8万トン)を上回ることが示され、資源水準は高位と判断された。また、Frecent/FMSYの中央値は0.2、80%は0.08-0.41の範囲にあり、Frecent/FMSYはどのモデル結果も1を越えなかった(図10)。以上のことから、南ビンナガ資源は長期間減少を続けているが、過剰漁獲にも陥っておらず、乱獲状態でも無いとした。


管理方策

WCPFCにおいて、南緯20度以南の太平洋でビンナガを目的として操業する漁船隻数を2005年または過去5年間(2000〜2004年)の平均より増加させないことが2005年に合意されている(WCPFC 2005)。2015年には、船別漁獲量情報の提出(南緯20度以南水域で本種を漁獲した船が対象)が合意された(WCPFC 2015b)。

現在、WCPFCにおいては、長期的な資源管理の枠組みとして、管理戦略の導入に向けた議論が活発になってきている(表2)。2018年の第15回年次会合では、TRPとして資源量を漁業がないと仮定した場合の資源量の56%にすることとし、20年以内にこの水準に達成することが合意された。なお、WCPFCも含む、近年のまぐろ類RFMOにおけるMSEの進捗状況についてはNakatsuka(2017)が詳しい。


ビンナガ(南太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間
6.8万〜9.3万トン
最近(2017)年:9.3万トン
平均:8.2万トン(2013〜2017年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
1,914〜3,667トン
最近(2017)年:3,256トン
平均:2,823トン(2013〜2017年)
管理目標 検討中
資源評価の方法 MULTIFAN-CL
資源の状態 * MSY=98,080
Frecent/FMSY=0.20
SBrecent/SBF=0=0.52
SBrecent/SB0=0.56
管理措置 南緯20度以南の漁船数を2005年または過去5年(2000〜2004年)の平均以下に抑制
管理機関・関係機関 WCPFC、SPC
最新の資源評価年 2018年
次回の資源評価年 2021年

* 72のモデルの中央値


執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

青木 良徳


参考文献

  1. Farley, J., and Clear, N. 2008. Preliminary study of age, growth, and spawning activity of albacore in Australia’s eastern tuna & billfish fishery. Information paper BI-IP-1, presented to the fourth meeting of the WCPFC. 36 pp. http://www.wcpfc.int/node/1191(2008年7月30日)
  2. Fournier, D.A., Hampton, J., and Sibert, J.R. 1998. MULTIFAN-CL: A length-based, age-structured model for fisheries stock assessment, with application to south Pacific albacore, Thunnus alalunga. Can. J. Fish. Aquat. Sci., 55: 2105-2116.
  3. Hampton, J. 2002. Stock assessment of albacore tuna in the South Pacific Ocean. Working paper ALB-1, 15th Standing Committee on Tuna and Billfish. 31 pp.
  4. Labelle, M., Hampton, J., Bailey, K., Murray, T., Fournier, D.A., and Sibert, J.R. 1993. Determination of age and growth of South Pacific albacore (Thunnus alalunga) using three methodologies. Fish. Bull., 91: 649-663.
  5. Nakatsuka, S. 2017. Management strategy evaluation in regional fisheries management organizations - How to promote robust fisheries management in international settings. Fish. Res., 187: 127-138.
  6. Nikolic, N., Morandeau, G., Hoarau, L., West, W., Arrizabalaga, H., Hoyle, S., Nicol, S.J., Bourjea, J., Puech, A., Farley, J.H., and Williams, A.J., 2017. Review of albacore tuna, Thunnus alalunga, biology, fisheries and management. Reviews in fish biology and fisheries, 27(4): 775-810 pp.
  7. Tremblay-Boyer, L., Hampton, J., McKechnie, S., and Pilling, G. 2018. Stock assessment of south Pacific albacore tuna. WCPFC-SC14-2018/SA-WP-05-Rev 2 (2 August 2018). 14th Regular Session of the Scientific Committee. 113 pp. https://www.wcpfc.int/node/31182(2018年11月29日)
  8. 上柳昭治. 1969. インド・太平洋におけるマグロ類仔稚魚の分布. ビンナガ産卵域の推定を中心とした検討. 遠洋水産研究所研究報告, 2: 177-256. http://fsf.fra.affrc.go.jp/bulletin/kenpoupdf/kenpou2-177.pdf(2009年10月23日)
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  12. WCPFC. 2018a. Summary Report of the Fourteenth regular session of the Scientific Committee. 255 pp. https://www.wcpfc.int/meetings/14th-regular-session-scientific-committee(2018年11月29日)
  13. WCPFC. 2018b. WCPFC Tuna Fishery Yearbook 2017. https://www.wcpfc.int/doc/wcpfc-tuna-fishery-yearbook-2017-excel-files(2018年11月29日)
  14. Williams, P., and Terawasi, P. 2016. Overview of tuna fisheries in the western and central Pacific Ocean, including economic conditions. WCPFC-SC12-2016/GN WP-1-Rev 3. 69 pp. https://www.wcpfc.int/node/ 27480(2017年11月24日)
  15. Xu, Y., Sippel, T., Teo, S.L.H., Piner, K., Chen, K.-S., and Wells, R.J. 2014. Meta-analysis of north pacific albacore tuna natural mortality. ISC14/ALBWG/04, La Jolla, USA, 14-28 April 2014.