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04 クロマグロ 太平洋

Pacific Bluefin Tuna, Thunnus orientalis


PIC

左から順に成魚、未成魚(尾叉長60 cm、20 cm)


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最近の動き

2018年3月に開催された北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)太平洋クロマグロ作業部会により資源評価が更新された。資源評価期間(1952〜2016漁期年)の親魚資源量は、2010年の歴史的低水準から徐々に増加していることが示され、2016年の親魚資源量は約2.1万トンと推定された。加入量については資源評価期間を通じて大きく変動し、明瞭な傾向を示していない。今後低加入(1980年代の10年間の平均加入尾数の約830万尾)が続くとの仮定の元で現行の保存管理措置を継続した場合、親魚資源量を2024年までに歴史的中間値(約4.3万トン)以上に回復させるとする「暫定回復目標」を達成する確率は98%であるとの将来予測結果が示された。また、2017年にWCPFCで採択された漁獲制御ルールに基づき、ISCは漁獲制御ルールで定められた漁獲枠の増加が可能となる条件を満たしつつ、どの程度漁獲枠を増加できるのかを示す選択肢も提示した。

2014年に採択された現行の保存管理措置の主な内容は以下のとおり。(ア)30 kg未満の小型魚の漁獲量を2002-2004年平均水準から半分以下に制限(WCPFC全体で9,450トンから4,725トン、うち我が国が8,015トンから4,007トンに削減)。(イ)30 kg以上の大型魚の漁獲量を2002〜2004年平均水準から増加させない(WCPFC全体で6,591トン、うち我が国は4,882トン)。また2018年には、漁獲枠の余剰分(取り残した分)について、漁獲枠の5%までは翌年に繰り越し可能とする規定が採択された(2019年漁期の余剰分から適用)。我が国は2018年からクロマグロに対するTAC制度を導入し、漁獲量の管理を行っている。また、水産庁は2014年より、その年に生まれた太平洋クロマグロの加入量水準について、概ね10月、12月、翌年5月、および翌年10月頃の計4回、モニタリングの結果の公表を行っている。


利用・用途

クロマグロは「本まぐろ」とも呼ばれ、成魚は寿司や刺身用の高級食材として利用される。また、0〜1歳の若齢魚は「めじ」または「よこわ」と呼ばれ、主に刺身用食材として安価に流通している他、養殖用種苗として利用されている。東部太平洋における漁獲(主にメキシコによる)の多くは数か月から1年の蓄養の後、日本向けに食材として輸出されている。一方、東シナ海付近における韓国による漁獲物の多くは生鮮で日本に輸出され、台湾による漁獲物(主に大型魚)は台湾国内で消費されている。


表1. 北太平洋における太平洋クロマグロの国別漁獲量(単位:トン、ISC による公表値に基づく)

表1

 

図1

図1. 太平洋クロマグロの国別漁獲量の推移(1952〜2017年)(ISCによる公表値に基づく)


図2

図2. 太平洋クロマグロの漁法別漁獲量の推移(1952〜2017年)(ISCによる公表値に基づく)


図3

図3. 日本周辺における太平洋クロマグロの主な漁場分布


図4

図4. 太平洋クロマグロの分布と回遊の概念図


図5

図5. 太平洋クロマグロの産卵場の概念図


図6

図6. 太平洋クロマグロの尾叉長・体重と年齢との関係


図7

図7. 資源評価で仮定している年齢別の自然死亡係数と成熟率


図8

図8. 日本の春期の南西諸島海域の近海・沿岸まぐろはえ縄の太平洋クロマグロのCPUE(上図)、対馬・五島海域のひき縄のCPUE(下図)

各CPUEは標準化した後、比較のためデータ期間の平均値で除して正規化し重ね描きした。日本の沿岸・近海と台湾のはえ縄のCPUE(上図)は高齢魚、五島周辺・対馬海峡のひき縄CPUE(下図)は0歳魚を中心とする若齢魚の資源量指数として用いられている。(ISCによる公表値に基づく)。


図9

図9. 太平洋クロマグロの親魚資源量(1952〜2016年)(上図)と加入量(1952〜2016年)(下図)のトレンド

赤色の実線は最尤法による点推定値、上下の点線はパラメトリックブートストラップ法により計算した90%信頼区間の端点。(ISCによる公表値に基づく)。


図10

図10. 資源評価モデルで推定された年齢別漁獲尾数の経年変化(上図)、1991〜2014年と2015〜2016年の年齢別漁獲尾数の平均の違い(下図)(ISCによる公表値に基づく)


図11

図11. 加入水準の仮定(上図)および漁獲管理措置(下図)の違いによる親魚資源量の将来予測結果の比較

グラフはシナリオごとの6,000回のシミュレーション結果の中央値であり、計算結果の半数はこれよりも低い。両図中の破線は、資源評価期間(1952〜2014年)における歴史的中間値(約4.3万トン)。上図における加入水準は、低加入では1980年代の低レベルを、平均加入では資源評価全期間を仮定。(図はISC評価結果に基づき編集)。

漁業の概要

本種の利用の歴史は古く、日本沿岸では縄文時代から利用されてきた(Kishinouye 1911、1923、渡辺 1973)。公式な統計としては、「まぐろ類」の漁獲量として水産事項特別調査(1891年)や農商務統計表(1894年)に報告があり(岡本 2004、Muto et al. 2008)、漁獲の大半が沿岸漁業であることからその多くが本種であると推測される。1920年代からは、北海道南東沖で流し網による漁獲が盛んになり、多い年で1万トン以上の漁獲を記録している(川名 1934、Muto et al. 2008)。東部太平洋では1918年から記録があり、1935年には1万トンを超えたが、その後は急速に衰退した(Bayliff 1991)。台湾沖では1930年代から第二次大戦中まで本種を対象としたはえ縄漁業があり、3,000トンを超える漁獲があった(中村 1939、矢崎 1943、台湾総督府農商局水産課 1945、Muto et al. 2008)。

本種の年間漁獲量は0.9万〜4万トンの間で変動している(表1、図1)。1981年に3.5万トンを記録した後、1988年に0.9万トンまで落ち込んだ。漁獲の多くがまき網やひき縄で漁獲される小型魚であるため、加入変動が漁獲量変動の要因の一つと考えられている。

2000年代以降の漁獲量は1.1万〜2.9万トンの間で推移している。近年は資源の減少に伴い漁獲量も減少傾向にあり、2008年の2.5万トンから2015年には1.1万トンまで減少した(図1)。直近5年(2013〜2017年)の漁獲量は、北西太平洋で0.7万〜1.1万トン、東部太平洋で0.3万〜0.6万トンと推定されている。2000年代前半の好調な漁獲は、加入の水準が比較的高かったことと、メキシコおよび日本での養殖の発展などによる需要の増加によって、本種を狙う努力量が増加したことが原因であると推測される。2000年代半ば以降は、はえ縄による高齢の大型成魚(100 kg以上)の漁獲が親魚資源の減少に伴って継続的に減少してきた。また、まき網による30〜50 kg程度の成魚の漁獲も減少し、その後、低加入の影響によりまき網とひき縄を中心とする小型魚の漁獲も減少していたが、近年は30 kg未満の小型魚の漁獲が増加傾向にある。ただし、近年の漁獲量は漁獲上限の影響も受けることに留意が必要である。

2017年の総漁獲量は約1.5万トン(暫定値)で、過去5年間(2012〜2016年)の平均漁獲量1.4万トンを上回った。2017年の各国漁獲量は、日本9,035トン、韓国743トン、台湾415トン、米国855トン、メキシコ3,643トンと見積もられている。

現在、本種は様々な漁法および漁場で漁獲されている。日本周辺の沿岸域ではひき縄で小型魚が、定置網により小型魚と大型魚が、また沖合域ではまき網により夏季から秋季に小型魚と大型魚が漁獲されており、2017年の日本の漁法別漁獲量は、おおよそひき縄が600トン、まき網が4,500トン、定置網が900トンであった(図2)。台湾東沖から奄美諸島周辺域にかけては、春季にはえ縄で成魚が漁獲されている(図3)。東シナ海から日本海南西部にかけては、1990年以降、まき網による小型魚の漁獲が増加したが、近年は漁獲規制により2,000トン以下に管理されている。東部太平洋では、メキシコが5〜10月にまき網で漁獲しており、そのほとんどが養殖種苗となっている。

各国の漁業概要は以下のとおりである。


【日本】

まき網、はえ縄、ひき縄、竿釣り、定置網、一本釣り等により漁獲している。1993年以前には公海域で流し網でも漁獲していた。1952年以降、年間漁獲量は0.6万〜3.4万トンの間を変動しているが、過去10年は0.6万〜1.7万トンであり、その内の約半分はまき網により漁獲されている。まき網の主な漁場は、かつては夏期の三陸沖であったが、1980年代初頭からは日本海南西部でも成魚の漁場が形成され、2000年代後半からはまき網による成魚の漁獲の大半は日本海で行われている。現在、日本海におけるまき網漁業は3〜5歳魚を主に漁獲している。その漁場は6月初旬より日本海北東部に形成され、6月下旬以降になると日本海南西部に移動する。なお、2015年ころより三陸沖の漁場が復活しつつある。また、まき網は1990年代初頭からは、東シナ海北部から日本海西部の海域にかけて0、1歳魚を中心とした小型魚も漁獲している。2000年以降は、ひき縄による養殖種苗用の0歳魚の漁獲が増加したが、近年は加入量の減少と漁獲上限の導入により漁獲も低水準となっている。


【韓国】

主にまき網により済州島から対馬にかけての海域で漁獲しているが、表中層トロールでもわずかに漁獲している。近年は済州島周辺でひき縄でもわずかに漁獲が報告されている。漁獲量は1982年以降報告されており、2000年以降は600〜2,600トンで推移し、最大漁獲量は2003年の2,600トンである(表1)。過去の漁獲は小型魚にほぼ限定されていたが、2016年には漁獲の半分近くが30 kg以上の個体で占められた。


【台湾】

台湾東沖に広がる産卵場ではえ縄が200 cm以上の産卵親魚を漁獲している。過去にはまき網でも稀に混獲されていた。近年の漁獲量は減少傾向で、1999年の3,100トンから2008年には1,000トンを下回り、2012年には210トンまで減少したが、2015年には578トンまで持ち直した。以前は日本へも輸出していたが、近年はほとんどが台湾で消費されている(表1)。


【米国】

近年はまき網による漁獲量が大きく落ち込む一方、遊漁による漁獲の増加が目立っている。まき網漁獲量の減少は、1980年代にメキシコが排他的経済水域を導入したことで、米国のまき網船がカリフォルニア半島沿岸から閉め出されたことが大きい。近年の漁獲量は、1994年級群に支えられた1996年のピーク(4,700トン)以来減少し、2007年には約60トンになった。しかしその後はカリフォルニア南部からカリフォルニア半島の沿岸水域にかけて、まき網による散発的な漁獲が報告されている。2011年以降、メキシコの排他的経済水域に入域できる遊漁で年間300〜800トン程度の漁獲が続いていている。


【メキシコ】

キハダ、カツオを対象としたまき網がカリフォルニア半島沿岸で本種も漁獲している。まき網の全漁獲量に占める本種の割合は非常に小さいが、蓄養向けの需要が増加しており相対的に重要度が増している。また、本種の総漁獲量に対するメキシコの割合は近年大きくなっている。漁獲量は1980年代に120〜680トンであったが、1989年以降0〜9,800トンと大きく変動している(図1)。2000年以降は、養殖用種苗向けに本種を対象とする操業が増加している。メキシコの漁獲量は東部太平洋への来遊量に左右されるが、近年は漁獲量規制により管理されている。2017年には、3,300トンの漁獲枠に対し3,643トンを漁獲した(表1)。


生物学的特性

【分布と回遊】

太平洋に分布するクロマグロThunnus orientalisは、かつては大西洋に分布する大西洋クロマグロThunnus thynnusの地理的亜種とされていたが、現在では分子遺伝学的研究などにより別種として扱われており(Collette 1999)、1系群で構成されると考えられている。

本種は主に北緯20〜40度の温帯域に分布するが、熱帯域や南半球にもわずかながら分布がみられる(Fujioka et al. 2015)(図4)。産卵期および産卵場は、4〜7月に南西諸島周辺海域を中心とした日本の南方〜台湾の東沖、7〜8月に日本海南西部と考えられている(米盛 1989、Ohshimo et al. 2017)(図5)。さらに、最近常磐沖の太平洋でも夏季に成熟した卵巣を持つ個体が確認された(Ohshimo et al. 2018)。0〜1歳魚は、夏季に日本沿岸を北上し、冬季に南下して(Itoh et al. 2003)北緯32〜35度の比較的暖かい東シナ海や太平洋側沿岸域で越冬する(Fujioka et al. 2018)。また、尾叉長20 cm程度の0歳魚は夏季には主に表層混合層内を遊泳し、冬季の黒潮離岸をきっかけに東方沖合域への回遊を開始することがアーカイバルタグ調査から明らかとなった(Furukawa et al. 2016、Fujioka et al. 2018)。2〜3歳魚は北西太平洋を主な分布域とし、春季に黒潮続流域を西進、夏季に三陸沖を黒潮分派に沿って北上、秋季に親潮前線に沿って東進、冬季に日付変更線付近で黒潮続流域に向かって南下、という海洋構造に応じた時計回りの回遊パターンを示している(Inagake et al. 2001)。

しかし、個体によっては日付変更線付近まで移動しない場合や、半年〜数年間沿岸の同一箇所に滞在し続ける場合もあり、個体ごとの回遊パターンに大きな違いが認められる。さらに、相当程度の未成熟魚は、太平洋を横断して東部太平洋に渡り、北米西岸を南北に回遊をしながら数年滞在した後、産卵のために西部太平洋へ回帰するものがあることも知られており(Fujioka et al. 2015)、最近の窒素安定同位体比分析により、太平洋東西間の回遊パターンが明らかにされつつある(Madigan et al. 2017、Tawa et al. 2017)。産卵後、親魚の多くは北太平洋北部の沖合に索餌回遊すると考えられているが、一部の親魚はさらに南方あるいは黒潮沿いに東方へ移動することがポップアップタグによる調査で示されている(伊藤 2006)。


【成長と成熟】

近年の耳石を用いた研究により年齢と成長に関する知見が蓄積され、高齢魚の年齢推定が大幅に改善された (Shimose et al. 2008、2009)。2013年11月には太平洋クロマグロと北太平洋ビンナガの年齢査定に関するワークショップが開催され、両種の年齢査定技術の確立が図られた(ISC 2013、Shimose and Ishihara 2015)。さらに、この年齢査定方法の妥当性については、放射性炭素同位体を用いた検証によって確かめられている(Ishihara et al. 2017)。以前から漁獲物測定データのモード(最頻値)と成長式から計算された5歳前後までの若齢魚の体長が一致しないことが指摘されてきたが、0歳魚耳石日輪データの導入とモデリングの改善およびデータの重み付けにより、観測値をよく再現できるよう成長式の改善が図られた(Fukuda et al. 2015)。本種は、若齢期に急激に成長して5歳で尾叉長約160 cmに達し、それ以降は成長速度が遅くなって8歳で約200 cm、12歳で極限体長の90%である226 cmになる(図6)。寿命は20歳以上と考えられる。漁獲物の最大体長は300 cm以上に達する。

本種は一産卵期に数回産卵する多回産卵魚であり、卵は直径約0.7〜1 mmである。産卵数は体長に伴って増加する(Chen et al. 2006)。個体ごとの産卵継続期間や産卵回数などは不明であるが、本種の産卵間隔は台湾〜南西諸島近海では平均3.3日(Chen et al. 2006、Ashida et al. 2015)、日本海では平均1.1〜1.2日(Tanaka 2011、Okochi et al. 2016)と報告されている。産卵水温は、台湾〜南西諸島近海では表層水温約26〜29℃と報告されている(Chen et al. 2006、Suzuki et al. 2014)。一方、日本海における産卵開始水温は20℃前後(Tanaka 2011、Okochi et al. 2016)と南西海域での水温より低いことが報告されている。成熟サイズについては、日本海では50%成熟サイズは約114 cm(おおよそ3歳魚に相当)、95%成熟サイズは約134 cm(おおよそ4歳魚に相当)と報告されているが(Okochi et al. 2016)、東部太平洋では同サイズの個体による産卵は確認されていない。また日本の南方〜台湾東沖で漁獲されるのは、ほとんどが体重60 kg以上(5歳以上に相当)の成熟個体である。以上の知見に基づき、現在の資源評価では、3歳で20%、4歳で50%、5歳以上で100%を成熟割合と仮定している(図7)。なお、南西海域の産卵群について、漁獲物の年齡組成に雌雄差は認められないものの、尾叉長230〜270 cmの大型個体では雄の割合が有意に高く、また雄が先に来遊する傾向が認められること(Shimose et al. 2016)、産卵は新月に活発になる傾向があること(Shimose et al. 2017)が報告されている。


【自然死亡係数】

本種の自然死亡係数は若齢魚で高く、その後低下すると考えられている。しかし、0歳魚の自然死亡係数について通常標識から若干の知見が得られている他は、信頼できる推定値がない(Takeuchi and Takahashi 2006)。そのため、資源評価で用いられる自然死亡係数は、若齢魚については、通常標識による推定値(0歳魚:1.6、Takeuchi and Takahashi 2006)、同様の水温帯に分布して生活史が類似しているミナミマグロで通常標識を用いて推定された値(1歳魚:0.386、Polacheck et al. 1997、ISC 2008) が用いられ、2歳魚以降については、Pauly(1980)の経験式から推定した値(0.25、ISC 2008)が用いられている(図7)。


【食性】

仔魚期は、カイアシ類(卵、ノープリウス幼生を含む)、尾虫類、枝角類などを主な餌とするプランクトン食性である。特に日本海の仔魚は尾虫類と枝角類を選択的に捕食する傾向がある(Kodama et al. 2017)。主に日中に摂餌し、夜間は摂餌を休止するという、顕著な日周変動がみられる(米盛 1989、Uotani et al. 1990、Kodama et al. 2017)。全長5 mm未満の仔魚はカイアシ類のノープリウス幼生を主に摂餌するが、全長5 mm以上では遊泳力の向上に伴ってより大型のカイアシ類を摂餌するようになる(Uotani et al. 1990)。全長7〜8 mm程度になると魚類仔魚を捕食し始め、それに伴って魚体は急激に成長する(Tanaka et al. 2014)。20〜60 cmの当歳魚は、日本海ではホタルイカモドキからキュウリエソに、太平洋では甲殻類幼生からいわし類へと、成長に伴い食性を変化させる(Shimose et al. 2013)。成魚の胃袋からは、いか類の他、トビウオ類、キントキダイ類、カツオなど魚類が多く見られる。いずれにしても特定の魚種を選択的に捕食するのでなく、その海域に多い生物を機会に応じて捕食しているとされている(山中 1982)。また幼魚のときには他のまぐろ類に捕食され、大型魚はごく稀にシャチやさめ類に捕食される(山中 1982)。


資源状態

2018年3月、ISC太平洋クロマグロ作業部会で行われた資源評価が最新であり、その結果は同年7月のISC年次会合で承認、公表された(ISC 2018)。以下の記述はその結果に基づく。


【資源解析】

2018年の資源評価は「アップデート」であり、基本的に2016年の資源評価の設定をそのまま使用し、最新のデータを取り込んだ。統合モデルのStock Synthesis ver. 3.24f(SS、Methot and Wetzel 2013)を用いた。使用したデータは、漁期年で1952年(1952年7月)から2016年(2017年6月末)までの四半期別・漁法別漁獲量、各漁業による漁獲物の体長頻度データ、および標準化された年別の資源量指数である。資源量指数として、大型魚については日本の近海はえ縄CPUE(1952〜1973年、1974〜1992年)、沿岸はえ縄 CPUE(1993〜2016年)、台湾のはえ縄 CPUE(2000〜2016年)、ならびに0歳魚については五島周辺・対馬海峡で漁獲が行われるひき縄 CPUE(1980〜2016年)を使用した(図8)。

SSを用いた資源評価のモデリングに必要な、成長式と体長・体重関係式(図6)、年齢別の自然死亡係数や成熟率(図7)などの本種の生物学的な仮定には、本種あるいは近縁のマグロ属魚類における生物学研究で得られた知見を用いた(ISC 2018)。クロマグロの資源評価では、最尤法によりモデルに入力された漁獲物の体長頻度分布、漁獲量、資源量指数を矛盾なく説明するように、各年の加入尾数、年齢別漁獲尾数、年齢別の個体数、産卵親魚量などの資源量を推定している。


【資源状態】

親魚資源量は、1960年前後、1990年代中頃をピークとする変動傾向を示している(図9上)。親魚資源量が歴史的に最大となったのは1960年代で、日本のはえ縄の資源量指数(図8上)と同じ傾向を示している。近年の親魚資源量は、1990年代中頃のピークから2010年まで徐々に減少した後、徐々に回復していることを示した。最近年(2016年)の親魚資源量は約2.1万トンで、評価期間(1952〜2016年)の最低値(2010年;約1.2万トン)の2倍に近い水準となった。2014年の加入量は過去最低レベルであったが、2015年はこれを上回り、2016年は過去の平均を上回る加入が推定された(図9下)。漁獲尾数で見ると、2歳以下の魚が全漁獲の95%以上を占めていると推定され、1991年以降高い水準で推移している(図10)。

以上を踏まえ、ISCは本種の資源状態について、1)最近年(2016年)の親魚資源量は一般的に用いられている管理基準値と比較すると「減り過ぎ」の状態であり、2)漁獲圧力も、一般的に用いられている管理基準値と比較すると「獲り過ぎ」の状態である、とした。以上を踏まえ、ここでは、資源水準は「低位」、資源動向は「増加」とした。


【将来予測】

ISCは、WCPFC及びIATTCの現行の保存管理措置(WCPFC CMM2017-08、IATTC Resolution C-16-03)に基づく漁獲シナリオにおいて将来の加入量の仮定毎の親魚資源の将来予測を実施し、2017年以降の保存管理措置の効果を検討した。その結果、低水準の加入(1980年代の10年間の平均加入尾数の約830万尾)が今後継続すると仮定した場合でも、30 kg未満の小型魚の漁獲量を2002〜2004年平均水準から半減させる現行管理措置の元では、2024年までに暫定回復目標である歴史的中間値以上に親魚資源が回復する可能性が98%であることが示された(図11上)。また、ISCはさらに漁獲上限を様々な形で増加させた場合の将来予測も実施した(図11下)。


【保存勧告】

これらを踏まえISCは、WCPFCの漁獲戦略に規定された加入シナリオ(暫定回復目標を達成するまでは低加入、その後平均加入に移行)に基づく場合、現行の保存管理措置が遵守される場合には、暫定回復目標(2024年までに初期資源の6.7%)と次期回復目標(2034年までに初期資源の20%)をそれぞれ98%、96%の確率で達成すると報告した。さらに、WCPFCの漁獲戦略に基づき、漁獲制御ルールで定められた漁獲枠の増加が可能となる条件を満たす増加幅の選択肢を提示した。


管理方策

中西部太平洋水域においては、2014年のWCPFCで、1)親魚資源量を2024年までに、少なくとも60%の確率で歴史的中間値(約4.3万トン)まで回復させることを「暫定回復目標」とする、2)30 kg未満の小型魚の漁獲量を2002〜2004年平均水準から半減させる、3)30 kg以上の大型魚の漁獲量を2002〜2004年平均水準から増加させない(2016年のWCPFC年次会合で義務規定化に合意)、などを内容とする保存管理措置が採択された。2017年にはWCPFC第14回年次会合で、「次期回復目標」として「暫定回復目標」を達成した後、10年以内に60%以上の確率で「初期資源量の20%(約13万トン)」まで資源を回復させることが合意されるとともに、漁獲制御ルールとして、資源評価の結果、「暫定回復目標」の達成確率が、(ア)60%を下回った場合、60%に戻るよう、管理措置を強化、(イ)75%を上回った場合、(a)「暫定回復目標」の達成確率を70%以上に維持、かつ(b)「次期回復目標」の達成確率を60%以上に維持する範囲で増枠の検討が可能となることも合意された。さらに、MSE(管理戦略評価:「03. まぐろ類の漁業と資源調査(総説)」を参照)を2019年に開始し、2024年までに完了する方針も示された。2018年9月に開催された第14回WCPFC北小委員会では、ISCの資源評価結果に基づき漁獲上限の増加が検討されたが、コンセンサスが得られず漁獲上限の増加は見送られた。その後、12月に開催された第15回WCPFC年次会合において、漁獲枠の余剰分(取り残した分)について、漁獲枠の5%までは翌年に繰り越し可能とする規定が採択された。

東部太平洋水域においては、2018年8月のIATTC第93回会合において、保存管理措置の見直しが行われ、WCPFCの次期回復目標及び漁獲制御ルールと同等の管理措置が追加的に合意されたほか、1)親魚資源量を2024年までに、少なくとも60%の確率で歴史的中間値まで回復させることを暫定回復目標とする、2)商業漁業については2019年および2020年の2年間の漁獲量の合計が6,600トンを超えないように管理する(年間3,500トンを超えない)、3)漁獲のうち、30 kg未満の小型魚の漁獲の比率を50%以下とするよう努力し、2020年の年次会合において2019年の操業結果のレビューを行う、4)取り残した分について、漁獲枠の5%までは翌年に繰り越し可能、等を内容とする保存管理措置が採択された(水産庁 2018)。

国内においては、小型魚の漁獲を抑制・削減し、大きく育ってから獲ることにより、太平洋クロマグロの資源管理を推進すること、資源変動の大きい本種の親魚資源量が中長期的(5〜10年)に適切な変動の範囲内に維持され、これまでの最低水準を下回らないよう管理していくこと、を基本的な対応とする「太平洋クロマグロに係る資源管理の実施について」等に基づき、1)ひき縄などの沿岸漁船の承認制および漁獲実績報告の義務化、2)クロマグロ養殖場の登録制および実績報告の義務化、3)天然種苗を用いるクロマグロ養殖場の数・生け簀の規模の拡大防止、などの管理措置が導入されている(水産庁 2010、2011)。これに加え、WCPFCの決定を受けて2015年1月から小型魚は4,007トン、大型魚は4,882トンの漁獲管理に取り組んでいる。さらに、2017年4月には資源管理法の対象魚種に指定されると共に、「海洋生物資源の保存及び管理に関する基本計画」が変更され、クロマグロのTACが定められた。資源管理法による管理は2018年1月から開始された。また、「まぐろ資源の保存及び管理の強化に関する特別措置法」に基づき国内の流通業者(輸入業者、卸売業者)から韓国産およびメキシコ産の太平洋クロマグロの輸入情報を収集する取組が行われている。


クロマグロ(太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
1.1万〜1.7万トン
最近(2017)年:1.5万トン
平均:1.3万トン(2013〜2017年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
0.6万〜1.0万トン
最近(2017)年:0.9万トン
平均:0.8万トン(2013〜2017年)
管理目標 親魚資源量を2024年までに、少なくとも60%の確率で歴史的中間値(約4.3万トン)まで回復させることが暫定回復目標となっている。
さらに、暫定回復目標を達成した後、10年以内に60%以上の確率で「初期資源量の20%(約13万トン)」まで資源を回復させることが次期回復目標とされた。
資源評価の方法 統合モデル
資源の状態 最近年(2016年)の親魚資源量は約2.1万トンであり、2010年の歴史的最低水準(約1.2万トン)から徐々に増加している。
管理措置 WCPFC:1)30 kg未満の小型魚の漁獲量を2002〜2004年平均水準から半減させる。2)30 kg以上の大型魚の漁獲量を2002〜2004年平均水準から増加させない。3)取り残した分について、漁獲枠の5%までは翌年に繰り越し可能。

IATTC:1)商業漁業については、2019年および2020年の2年間の漁獲量の合計が6,600トンを超えないように管理する(2019年は3,500トンを超えない)。2)漁獲のうち、30 kg未満の小型魚の漁獲の比率を50%まで削減するよう努力し、2020年の年次会合において2019年の操業結果のレビューを行う。3)取り残した分について、漁獲枠の5%までは翌年に繰り越し可能。

日本国内:1)ひき縄などの沿岸漁船の承認制および漁獲実績報告の義務化、2)クロマグロ養殖場の登録制および実績報告の義務化、3)天然種苗を用いる養殖場数・生け簀の規模の拡大防止など。2015年1月から漁獲枠を小型魚は4,007トン、大型魚は4,882トンとし、沿岸漁業の小型魚の漁獲管理は基本的に都道府県別に行われている。2018年から「海洋生物資源の保存及び管理に関する法律」に基づくTAC管理が開始された。
管理機関・関係機関 WCPFC、IATTC、ISC
最新の資源評価年 2018年
次回の資源評価年 2020年

執筆者

くろまぐろユニット
くろまぐろサブユニット
国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部 くろまぐろ資源グループ

中塚 周哉・福田 漠生・西川 水晶
国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部 くろまぐろ生物グループ

田中 庸介

参考文献

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