--- 総説 ---

64 日ロ浮魚・底魚類(総説)



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最近の動き

2016年に開催された日ロ漁業委員会第33回会議の決定に従い、両国科学者は以下の諸活動を行い、日ロ両国が双方の水域内で利用している同一資源について最新の情報を交換し、資源状態に関する見解をとりまとめた。2017年9月に横浜において「さんま、まさば、まいわし、かたくちいわし、いか及びすけとうだらの生態学及び現存量に関する意見交換会」を開催し、スケトウダラ、イトヒキダラを対象として報告、議論を行った。2017年10月にウラジオストックにおいて「第31回日ロ漁業専門家・科学者会議」が開催され、資源状況などに関する資料及び意見の交換を行い、資源に関する見解と2018年の調査協力計画案を作成した。2017年11月〜12月にモスクワで開催された「日ロ漁業委員会第34回会議」において当該調査協力計画案を検討して採択した。


表1

表1. ロシアによる極東水域のTAC数量(トン)の推移


図1

図1. ロシア水域における我が国漁船に対する漁獲割当量の経年変化(右は近年の拡大)


図2

図2. ロシア水域における我が国漁船の漁獲量の経年変化(右は近年の拡大)


ロシアと我が国漁業の歴史

我が国の北洋漁業、特にロシア沖における漁業として、日露戦争の結果による領土の拡大に伴う漁場の広がりもあり、大正時代には母船式かに漁業、帆船たら漁業等が興った(斉藤 1960)。昭和初期には、母船式さけ・ます漁業、トロール漁業を含め発展したが、第2次世界大戦によってこれら漁業は大きな影響を受けた。第2次世界大戦後、マッカーサーラインによって我が国漁船の漁場は著しく狭められていたが、1952年に同ラインが撤廃されるとともに、ソ連沖公海新漁場の開発が積極的に進められた(北野 1980)。1953年に北方四島周辺太平洋岸漁場、1956年にサハリン東岸タライカ湾、1957年にサハリン西岸タタール海峡で調査が行われ、スケトウダラ、ホッケ、かれい類等の底びき網漁場が開発された(北野 1980)。1956年には日ソ漁業条約、1969年には日ソかに取決、1972年には日ソつぶ取決が結ばれた。我が国漁船のソ連沖での漁獲量としては、1975年には北海道沖合底びき網が38.9万トン、北転船がカムチャッカ半島周辺で73.3万トン等であった(北野 1980)。

一方、ソ連による日本沖での漁獲量は、1975年にはさば13.3万トン、マイワシ12.2万トン、スケトウダラ13.4万トン、イトヒキダラ10.6万トン等、合計52.7万トンであった(北野 1980)。1976年12月にソ連は漁業管理法を制定し、200海里漁業水域を設定したが、我が国も1977年3月に同漁業水域を設定した。1977年には日ソ・ソ日漁業暫定協定、1978年には日ソ漁業協力協定が結ばれ、相互に相手国200海里水域で自国の漁船が操業できるようになった。1978年にソ連漁業水域内で我が国に与えられた漁獲割当量(漁獲枠)は、スケトウダラ34.5万トン、いか14.6万トン、イカナゴ6.5万トン、マダラ4.5万トン、サンマ6.9万トン等、合計85万トンであり、200海里水域設定以前の漁獲量に比べかなり減少した(北野 1980)。同年の日本漁業水域内におけるソ連漁業への漁獲割当量は、マイワシ・マサバ31.8万トン、スケトウダラ8.0万トン、イトヒキダラ13.8万トン等、合計65.0万トンであり、200海里水域設定以前の漁獲量とそれほど差はなかった(北野 1980)。

相互の相手国200海里水域内での割当量の推移として、ロシア水域における我が国漁船に対する漁獲割当量の経年変化を図1に示した。1979〜1985年には、割当量は60万〜75万トンの範囲であったが、1986年には15万トンへと大きく減少した。1987年にはそれまでの無償枠(相互枠)の他に、日本漁船に対してソ連水域で10万トンの有償枠が設けられた。我が国漁業に対する割当量は、1988年には相互枠と有償枠を含めてスケトウダラ12.8万トン、サンマ6.5万トン、いか7.5万トン等、合計31万トンであったが、その後減少を続け、2001年にはスケトウダラ0.5万トン、サンマ3.6万トン、いか0.9万トン等、合計6.0万トンとなり、1978年の7%にまで落ち込んだ。2005年以降、割当量は5.6万〜5.8万トンで推移していたが、2014年は7.6万トンに増加し、2015〜2017年は、それぞれ、6.4万〜6.6万トンであった。

日本水域におけるロシア漁船に対する割当量は、1985年以降我が国漁船に対するロシアからの相互枠と等量で推移しており、1988年には21万トンであったものが、1994年には10万トンにまで減少した。1998年以降割当量はさらに減少し、2001年には5.2万トンとなり、それ以降5.0万〜5.5万トンで推移していた。2014年は増加して7.1万トンとなったが、2015〜2017年は6.2万〜6.5万トンで推移している。

魚種の内訳は、1980、1990年代はマイワシ・マサバが最も多かったが、2001〜2012年にはイトヒキダラがほぼ半分を占めていた。

ロシア水域における我が国の漁獲量の推移を図2に示した。相互枠と有償枠を合わせて、我が国漁船の漁獲量は1979年の約54万トンが最も多く、スケトウダラが約5割を占めた。漁獲量は、1986年には約7万トンに急減したが、1988年には約17万トンに回復した。その後は直線的に減少し、2002年には1.2万トンとなったが、2004〜2006年には4.5万〜5.1万トンに増加した。2007〜2009年には2.3万〜2.7万トンに半減したが、その後は3.2万〜4.3万トンで推移している。1980年代前半はスケトウダラ、その後はサンマが最も多く漁獲された。割当量合計に対する漁獲量合計の割合は、1980年代は45〜71%であったが、1990年代には13〜43%に低下した。2004〜2006年には再び73〜89%に上昇したが、2007〜2009年は40%台に低下した。2010年以降は51〜69%と増加している。

我が国水域におけるロシア漁船の漁獲量は、1985〜1992年には5万〜15万トンで、マイワシとマサバが大部分を占めたが、1994年以降ほとんど漁獲されなくなった。1999年以降はイトヒキダラのみが漁獲されていたが、2010〜2013年はサンマの漁獲もみられた。2000年以降のロシア漁船による漁獲量は、2.4万〜2.7万トンで推移していたが、2008年以降2万トンを下まわっている。2011年は震災によるロシア側の操業自粛により、漁獲量は1.2万トンと前年の3分の2に減少したが、2012年には1.7万トンと震災前の水準に戻り2014年は2.3万トンに増加した。2015年は1.7万トンに減少し、2016年は1,700トン(11月までの暫定値)と大きく減少している。

なお、日本漁船は、日ソ地先沖合漁業協定の他に日ソ漁業協力協定、北方四島周辺水域操業枠組協定及び貝殻島昆布協定(民間)に基づく操業も行っている。


日ロ両国水域にまたがって存在する資源に関する資源評価

日ロ間には、北西太平洋の生物資源の保存及び最適利用を考慮し、相互の200海里水域で他方の国の漁船が漁業を行うために、1984年に「日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の両国の地先沖合における漁業の分野の相互の関係に関する協定(通称:日ソ地先沖合漁業協定)」が締結され、これに基づき日ロ漁業委員会が設置されている。日ロ漁業委員会では、日ロ両国水域に共通に存在する主要な魚種系群の持続的利用を協議するため、科学者グループを設置し、それらの資源状態を協議し報告書を作成している。

2017年の日ロ漁業専門家・科学者会議において、日ロ両国が双方の水域内で利用している同一資源の状況に関して、両国の科学者は、以下の通り共通の見解を持った。スケトウダラ、サンマ、スルメイカ等については、ロシア水域での分布や資源状態に関する情報が、それらの適切な資源評価及び評価結果を踏まえた資源管理のために重要であり、引き続き日ロ科学者による意見交換会等の機会に、これらの情報収集に一層努める必要がある。


(1)サンマ:現在サンマ資源は減少傾向にあり、資源に与える漁業の影響が増大していることから、今後の資源動向には注意を要する。

(2)マイワシ:太平洋のマイワシ資源は1980年代と比べれば、低水準にあるが、近年、その明瞭な増加傾向が認められている。対馬暖流系群マイワシ資源の増加が見られるものの、その水準は1980年代と比べて依然として低位にあり、今後の状況を見守り、日本海や東シナ海における幼魚の漁獲を制限し、管理していくことが必要である。

(3)マサバ:資源は2000年代前半の最低水準を脱し、増加中である。

(4)カタクチイワシ:カタクチイワシの資源は減少傾向にある。

(5)スルメイカ:日本海におけるスルメイカの資源は中位水準であるが分布の北偏化が見られ、太平洋においては資源量が大きく減少していることから、今後の資源動向には注意を要する。

(6)ニシン:サハリン・北海道系ニシンの資源は、増加傾向もみられない極めて低い水準あり、今後の資源動向を注視する必要がある。

(7)スケトウダラ:北部日本海系群のスケトウダラ資源は、1990年以降、低水準にある。


ロシアからの割り当てに関係するその他の重要資源に関する情報

マダラ、キチジ等の重要資源に関して、ロシアから入手可能な情報は少ない。ロシアは、これら魚種についても資源調査を基にTACを設定しており、当該TACは基本的に資源動向を反映していると考えられる。ここでは、我が国漁船が操業している水域の主な魚種に関して、ロシアが設定した極東水域のTAC数量を記載する(表1)。


執筆者

北西太平洋ユニット
北西漁業資源サブユニット
北海道区水産研究所 資源管理部

伊藤 正木


参考文献

  1. 北野 裕. 1980. 北海道海域底魚資源. In 青山恒雄(編), 底魚資源. 恒星社厚生閣, 東京. 204-228 pp.
  2. 斉藤市郎. 1960. 遠洋漁業. 恒星社厚生閣, 東京. 318 pp.