--- 詳細版 ---

40 ネズミザメ 北太平洋

Salmon Shark, Lamna ditropis

ニシネズミザメ 北大西洋・南半球

Porbeagle, Lamna nasus

                                                  PIC PIC
                                                        ネズミザメ                                                             ニシネズミザメ

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最近の動き

大西洋のニシネズミザメに関して、2015年の大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)年次会合において、生きた状態で混獲された場合、速やかに放流を求める措置が合意された。南半球に生息するニシネズミザメに関しては、国際連合食糧農業機関(FAO)によるAreas Beyond National Jurisdiction(ABNJ)プロジェクトの一部として南半球に生息するニシネズミザメの資源状態に関するリスク評価が行われ、2017年8月に開催された中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の科学委員会において、現在の漁獲圧下において、本系群の絶滅リスクは低いことが報告された。


利用・用途

肉はソテーやみそ漬け、鰭はフカヒレ、脊椎骨は医薬・食品原料、皮は革製品として利用されている。両種ともにさめ類の中では肉質が良好で商品価値が高く、ネズミザメについては内臓の一部も食用として利用されている。


図1

図1. 日本の主要漁港へのネズミザメ水揚量


図2

図2. ネズミザメ(左)とニシネズミザメ(右)の分布(Compagno 2001)


図3-1

図3-1. 北東太平洋において2個体のネズミザメから回収された亜熱帯循環流を遊泳中のネズミザメの遊泳深度(縦軸)と周辺水温の情報
水温は右のカラーバーの色に対応し、横軸は時系列(LD59の個体は3月5日から3月12日まで、LD90の個体は11月8日から11月15日まで)を示す。各個体の図の上の白黒のバーは、白色部分が日中、黒色部分が夜間を示す。Coffey et al.(2017)より引用。


図3-2

図3-2. ニュージーランド近海で放流されたニシネズミザメ3個体(Shark1、Shark2、Shark12)の昼夜別の鉛直分布
Shark1は2つの期間、Shark2とShark12は3つの期間にデータを分かれており、白いバーは日中、黒いバーは夜間の深度別の分布頻度を示す。Francis et al.(2015)より引用。


図4

図4. ネズミザメの年齢と成長(田中1980a、Goldman and Musick 2006)


図5

図5. ニシネズミザメの年齢と成長(Aasen 1963、森信 1996、Natanson et al. 2002、Francis et al. 2007)


図6

図6. 北太平洋における日本のはえ縄漁業データを基に標準化したネズミザメのCPUE


図7

図7. ミナミマグロ漁場において、日本の科学オブザーバーが収集したデータを基に標準化したニシネズミザメのCPUE(松永ほか 2012)


図8

図8. 漁獲圧が南半球ニシネズミザメのMIST(個体群が維持可能な漁獲圧の上限に対応するリファレンスポイント)を超える確率を年別に推定した結果
(上から)大西洋南東部とインド洋南西部、インド洋南東部、太平洋南西部、南半球全体。1に近いほど、個体群への負の影響が大きい事を示す。Common Oceans (ABNJ) Tuna Project(2017)より引用。


漁業の概要

ネズミザメは北太平洋の亜寒帯域に生息し、沿岸から外洋まで出現する。主としてはえ縄や流し網によって漁獲され、その多くが宮城県の気仙沼港を中心とした東北地方に水揚げされている。水産庁は委託事業「日本周辺高度回遊性魚類資源対策調査委託事業(平成12〜17年度)」及び「日本周辺国際魚類資源調査(平成18年度〜27年度)」及び「国際漁業資源評価調査・情報提供事業 現場実態調査(平成28年度)」でまぐろはえ縄漁業等による日本の主要漁港へのさめ類の種別水揚量を調査している。それによると1992〜2016年におけるネズミザメの年間水揚量は、はえ縄が289〜2,926トン、流し網が281〜2,029トン、全体では1,136〜4,406トンであった。水揚量は2004年頃までは緩やかな増加傾向が見られ、その後2009年までは増減を繰り返しながら推移した(図1)。2011年は、東日本大震災の影響で水揚げ量は大幅に減少して1,136トンであったが、2012年に3,075トン、2013年に3,309トン、2015年には3,512トンが水揚げされ、震災前のレベル(1992〜2010年の水揚げ量の平均:3,001トン)にまで回復したが、2016年の 水揚げは1,939トンと減少した。さめ類の合計に占めるネズミザメの割合は15〜31%であり(2005〜2016年)、ヨシキリザメに次いで多い。

一方、近縁種であるニシネズミザメは北大西洋及び南半球の温帯〜亜寒帯域に生息し、はえ縄や流し網によって漁獲されている。北大西洋では本種を対象とした漁業が存在し、1920年台から北東部の個体群の利用が始まり、1960年台に個体数が激減すると漁業の中心は北西大西洋に移動した。1961年に北西部の個体群の利用が始まると、1960年台、1990年台に2度個体数が激減した。大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)事務局が公表する漁獲統計によれば、1990〜2014年の北大西洋の個体群の漁獲量は1994年の2,726トンをピークとして、2014年の29トンに至るまで一貫した減少傾向を示している。2015年の報告値は57トンと若干増加したが、2014年と比べると水揚げ量は同程度であり、死亡投棄の報告が増えたことを反映している。2016年には死亡投棄が減少し、漁獲量は20トンまで減少した。1990〜2014年の漁獲量の合計値では、約65%がはえ縄で漁獲されており、2007年頃まではカナダ、フランス、フェロー諸島による漁獲量は447〜2,458トンで北大西洋全体の漁獲量の9割を占めていたが、その後は各国の漁業規制により 3国の漁獲量(合計値)は10トン以下にまで減少している。南大西洋では、本種は主にまぐろ・かじき類を対象としたはえ縄漁業での混獲物であり1991〜2016年の漁獲量は0〜85トンで、1991年から増減しながら2008年の85トンのピークに達したが、その後は減少を続け、2016年の報告値は、暫定値ではあるが1トンであった。漁法別に見ると、一部の年を除き、ほぼ全てがはえ縄で漁獲されている。


生物学的特性

【分布】

ネズミザメは北太平洋の亜寒帯域の沿岸から外洋まで広く分布している(中野 1996)(図2左)。ニシネズミザメは北大西洋及び南半球の温帯〜亜寒帯域に分布している(Compagno 2001)(図2右)。系群構造については、ネズミザメについては北太平洋内において1系群とする説と東西2系群とする説があるが、まだ結論は出ていない。ニシネズミザメは繁殖周期が大洋の南北で逆になることと、南半球における分布が連続していると想定されることから、南北で別系群と考えられる。北大西洋・南大西洋・インド洋(ミナミマグロ漁場)において収集されたニシネズミザメの標本を分析した分子遺伝学的研究によれば、北大西洋はその他の2つの海域とは明瞭に分かれるものの、南大西洋とインド洋の標本間の遺伝的な差は小さいことが示されている(Kitamura and Matsunaga 2008)。一方で、はえ縄で同じく混獲されるヨシキリザメやアオザメに比べると沿岸性が強く(Pade et al. 2009)外洋域での分布密度が小さくなる点から、大西洋では東西に分かれているとの見方も存在し、ICCATにおいては南北とともに東西 に分けた資源評価が行われている。しかし、近年の研究では、南北の系群ともに広範囲な移動を示す個体がいること(Saunders et al. 2011、Francis et al. 2015)、南半球の個体群については、1)外洋域を含めて広く分布すること、2)一部の個体はミナミマグロはえ縄漁業の主な操業域(南限南緯45度付近)よりさらに高緯度域に分布すること、3)幼魚は、未成魚や成魚よりも高水温の環境に分布すること、4)妊娠個体はこれまでニュージーランド・豪州周辺でのみ報告されていたが、南アフリカのケープ沖にも分布することが報告されている(谷津 1995、Semba et al. 2013)。南西大西洋の高緯度域(51-57°S)で収集されたオブザーバーデータの解析結果によれば、54°12'Sの南に位置する大陸棚外縁に分布密度の高い海域が存在すると推定されている(Cortés and Waessle 2017)。


【産卵・回遊】

両種の繁殖様式は卵食・共食い型の非胎盤型胎生であり(Wourms 1977)、産仔数の範囲と出生時の体長はネズミザメがそれぞれ3.8尾(Conrath et al. 2014)から4〜5尾(田中 1980a)、約70 cm(尾鰭前長)(田中 1980a)、ニシネズミザメはそれぞれ4尾、58〜67 cm(尾叉長)(Francis and Stevens 2000、Jensen et al. 2002)と報告されている。ネズミザメについては、秋に排卵後交尾し、9〜10か月の妊娠期間を経て出産すること、繁殖周期は2年の可能性があることが示されている(Conrath et al. 2014)。ニシネズミザメについては、妊娠期間が北大西洋・南太平洋ともに8〜9か月と推定されており、北大西洋の研究では繁殖周期は1年であることが示唆されている。回遊については両種とも季節的な南北移動を行い(田中 1980a、谷津 1995、Francis et al. 2015)、日周鉛直移動を行うことが示唆されている(図3-1、図3-2;Carlisle et al. 2011、Francis et al. 2015、Coffey et al. 2017)。北東太平洋で行われた研究によれば、アラスカ沿岸域で放流 されたネズミザメは、アラスカ沿岸の沈降流、亜寒帯循環、移行域、亜熱帯循環、カリフォルニア海流と多様な海洋環境を経験する中で、鉛直移動パターンを変化させており、沖合域では沿岸域よりも深い水深帯を利用すること、溶存酸素濃度が低い環境も利用していることと推定されている(Coffey et al. 2017)。北西大西洋のニシネズミザメに電子標識を用いた調査によれば、雄と未成熟個体(雌雄)は放流後カナダ東方沖の大陸棚の冷水域に留まる一方、成熟した雌は冬季にはサルガッソー海まで南下していることが示され、出産場はこれまで報告されていた分布域よりも南にある可能性があるとされている(Campana et al. 2010)。また、北東大西洋に位置するビスケー湾で実施された電子標識放流調査によれば、6月に放流された8個体のメスと1個体のオスは、晩夏に約2,000 km移動した後、翌年の春に放流地点に戻る行動を示している(Biais et al. 2017)。また、ネズミザメの場合、幼魚は亜寒帯境界付近(中野 1996)やカリフォルニア海流系(Carlisle et al. 2015)を生育場 にしていると推測されている。交尾場、出産場等についての知見は乏しいが、出産期はネズミザメが3〜5月(田中 1980a)、北大西洋のニシネズミザメが春〜夏 (北大西洋では4〜6月)、南太平洋のニシネズミザメでは冬(6〜7月)(Francis and Stevens 2000、Jensen et al. 2002)で、北大西洋のニシネズミザメについては、交尾期が9〜11月と推定されている。


【成長・成熟】

両種ともに脊椎骨に形成される輪紋から年齢が推定されており、ネズミザメについては、北西太平洋(田中 1980a)、北東太平洋(Goldman and Musick 2006)の個体群について成長式が推定されている(図4)。ニシネズミザメについては、北大西洋(Aasen 1963、Natanson et al. 2002)、南太平洋(Francis et al. 2007)、インド洋(ミナミマグロ漁場)(森信 1996)の個体群についての成長式が推定されている(図5)。ネズミザメについては東西の違いは小さいが、ニシネズミザメについては北大西洋個体群と南太平洋個体群の成長曲線は大きく異なっており、インド洋の個体群の成長式は両者の間に位置している。成熟体長と年齢は、ネズミザメは北西部では雌180 cm(尾鰭前長)で8〜10歳、雄140 cm(尾鰭前長)で5歳、北東部では雌165 cm(尾鰭前長)で6〜9歳、雄124 cm(尾鰭前長)で3〜5歳と推定されている(田中 1980a、Goldman and Musick 2006)。またニシネズミザメについては、北大西洋では雌212〜218 cm(尾叉長)で13〜14歳、雄174〜175 cm(尾叉長)で7〜8歳と報告されている( Campana et al. 1999、Jensen et al. 2002)。南太平洋では雌165〜180 cm(尾叉長)で15〜18歳、雄140〜150 cm(尾叉長)で8〜11歳と報告されている(Francis and Stevens 2000)。寿命は、ネズミザメの場合、雌が20年、雄が25年以上(田中1980a、Goldman and Musick 2006)、ニシネズミザメは北大西洋で20〜46年(Aasen 1963、Campana et al. 2002、Natanson et al. 2002)、南太平洋で最大65年(Francis et al. 2007)と推定されている。


【食性・捕食者】

ネズミザメの食性は、北緯48度以北の大型魚がさけ・ます類やいか類、北緯48度以南の小型魚が多獲性浮魚類(いわし類、サンマ等)やいか類を多く摂取している(佐野 1960、1962、川崎ほか 1962、田中 1980b)。本種の摂餌行動については、はっきりとした日周性は報告されておらず、生息域に豊富にいる利用しやすい餌生物を食べる日和見食者であると考えられている(Kubodera et al. 2007)。ニシネズミザメも魚類・頭足類等を中心として摂餌する日和見食者と考えられているが、季節回遊に関連した食性の変化(春:表層の浮魚類、秋:深層の底魚類)が報告されている(Joyce et al. 2002)。また、捕食者については両種共に良く知られていない。


資源状態

ネズミザメに関しては、Nakano and Honma(1996)が提案したまぐろはえ縄漁船の漁獲成績報告書のさめ類報告率(航海あたりのさめ類漁獲日の割合)から、信頼性の高いデータを選別する方法を用いてCPUEの標準化が我が国において行われている。具体的には、1993〜2007年にかけてのまぐろはえ縄漁船の漁獲成績報告書から、1航海あたり80%以上の操業でさめ類の漁獲が報告されたデータを抜き出し、一般化線形法(GLM)で標準化したネズミザメのCPUEを算出した。その結果は予備的ではあるが、1994〜1998年、2003〜2007年にかけて増減はあるものの、一定した傾向は認められなかったので、解析期間中にネズミザメの資源状態は大きく変化はしていなかったものと考えられる(図6)。

南半球のニシネズミザメに関しては、南米ウルグアイ沖ではCPUEの減少傾向が報告され、資源の減少が懸念されているが(Pons and Domingo 2009)、より広範囲な漁業データを使った解析結果では、顕著な減少傾向は見られていない。例えば、松永ほか(2012)は、南アフリカ沖やオーストラリア西岸沖に至るミナミマグロ漁場において、日本のミナミマグロ漁業の科学オブザーバー調査で収集されたニシネズミザメの混獲データをもとに、GLMによってCPUEを標準化した。その結果をみると、1992〜2010年のCPUEは増減を繰り返していたものの、解析期間を通じて連続した減少傾向は見られていない(図7)。また、Semba et al.(2013)は、1994〜2011年の期間に南半球で収集された日本のはえ縄漁業の漁獲成績報告書及び開発調査センターが1982〜1990年の期間に南太平洋で実施した流し網調査のデータを用いて本種のCPUEを標準化した。その結果、CPUEに顕著な減少傾向は見られないことを報告している。2015年より、南半球に生息するニシネズミザメに関して資源状態の推定等を行うABNJプロジェクトが開始され た。このプロジェクトでは、関係国(日本、アルゼンチン、チリ、ニュージーランド、ウルグアイ)が保有する漁業データを用いて、資源量指数(CPUE)、体長や性比の年トレンドなどに基づき資源状態の傾向を包括的に解析するとともに、本系群の生産力に対し、現在の漁獲圧が持続的なレベルであるか否かをリスク評価の枠組みで検討した。その結果、南半球全体で見ると、本系群に対する漁獲圧は非常に低く(絶滅を引き起こすインパクトの9%以下)、海区別に見るとインド洋東部から太平洋西部にかけて低くなる傾向が見られた(図8;Common Oceans (ABNJ) Tuna Project 2017)。この結果は、漁具にかかった個体の死亡率を100%と仮定した場合の推定値のため、生存個体の放流を適切に実施している場合は、現行の漁獲圧のインパクトは更に低くなると考えられる。これらの結果から、本系群の資源状態は不明であるものの、乱獲のリスクは極めて低いと判断された(WCPFC 2017)。

大西洋のニシネズミザメに関しては、2009年にICCATにおいて資源評価が行われ、大西洋の北西部、北東部、南西部、南東部の4系群を仮定した解析が行われた。北東系群は、現在の資源量はBMSY以下であり、漁獲死亡率はFMSYより大きいことが示唆されたが、利用の歴史が最も古いものの漁業最盛期の情報がないため、解析に際して大きな不確実性が伴う結果となった。北西系群は、資源量は一度BMSYを大きく下回ったが、近年の漁獲死亡係数はFMSYを下回り、資源は回復傾向を示した。いずれの系群も、漁獲死亡を0にした場合でも、資源状態BMSYの状態まで回復するには20年以上を要すると推定された。南系群については、西部の資源は減少傾向にあり(BMSY以下でFMSY以上)、東部については1990年代まで安定した傾向が示されたが、いずれにおいてもデータの量が非常に少ないため、資源水準についての結論は得られなかった(ICCAT 2009)。南西系群については、報告されている水揚量は、実際の水揚量を大きく下回る可能性が示唆されており(A non. (ICCAT) 2013)、データの収集が急務と考えられる。資源評価に必要な種別漁獲量等の統計資料が不十分である点が最大の問題であり、今後は資料収集方法の改善も含めて検討していく必要があろう。


管理方策

全てのまぐろ類RFMOにおいて、漁獲されたさめ類の完全利用(頭部、内臓及び皮を除く全ての部位を最初の水揚げ又は転載まで船上で保持すること)及び漁獲データ提出が義務付けられている。加えて、WCPFCでは、2014年の年次会合において、@まぐろ・かじき類を対象とするはえ縄漁業は、ワイヤーリーダー(ワイヤー製の枝縄及びはりす)又はシャークライン(浮き玉又は浮縄に接続された枝縄)のいずれかを使用しないこと、Aさめ類を対象とするはえ縄漁業は、漁獲を適切な水準に制限するための措置等を含む管理計画を策定すること、が合意された。全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)でも、2016年の年次会合で、シャークラインの使用禁止を内容とする決議が採択され、2018年から義務付けられる。ICCATにおいては、2015年の年次会合において、ニシネズミザメが生きた状態で混獲された場合、速やかに放流を求める措置が合意された。

この他、ネズミザメに関しては、宮城県気仙沼を中心として国内の水揚量・サイズデータの収集を行い、モニターを継続している。ニシネズミザメに関しては、大西洋沿岸国において、国内措置として独自の資源評価に基づく漁獲量制限等が行われている。具体的には、EUは2010年からTACを0に、カナダのニシネズミザメ対象漁業は2013年に終了し、ウルグアイでは2013年にニシネズミザメの保持が禁止された。一方で、本種を混獲物として扱う漁業国においては、生きて漁獲された個体の生存放流を推奨する他、混獲回避手段や漁獲死亡率を低減するための調査研究の推進が求められている。

また、ニシネズミザメに関して、CITES第14回締約国会議(2007年)と第15回締約国会議(2010年)で本種を附属書IIへ掲載する提案が相次いで出された。これらの提案はいずれも否決されたが、CITES第16回締約国会議(2013年)において、EUを始めとする国々が再度本種を附属書IIに掲載する提案を提出し、投票の結果可決された。CITESは附属書IIに掲載することにより、本種の国際商取引を透明化し漁業及び資源の管理に貢献することを目指しているが、国際取引が資源に悪影響を与えているという論拠がないことから、この制度がどこまで有効に機能するか注視していく必要がある。我が国は商業漁業対象種の資源は、持続的利用の観点から、漁業管理主体であるRFMO又は沿岸国が適切に管理していくべき等との立場から、本種の附属書II掲載について留保している。


ネズミザメ(北太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 調査中
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
調査中
我が国の漁獲量
(最近5年間)
1,939〜3,512トン(水揚量)
最近(2016)年:1,939トン
平均:3,069トン
管理目標 検討中
資源評価の方法 未実施
資源の状態 調査中
管理措置 漁獲物の完全利用等
管理機関・関係機関 ISC、WCPFC
最新の資源評価年
次回の資源評価年

ニシネズミザメ(北大西洋・南半球)の資源の現況(要約表)

北西大西洋 北東大西洋 南西大西洋 南東大西洋 その他南半球
資源水準 低位 低位 調査中 調査中 調査中
資源動向 回復傾向 調査中 調査中 調査中 調査中
世界の漁獲量
(最近5年間)
20〜156トン
最近(2016)年:20トン
平均:74.4トン
調査中
我が国の漁獲量
(最近5年間)
0〜98トン
最近(2016)年:2トン
平均:29.8トン
1〜25トン
最近(2016)年:1トン
平均:11.6トン
7〜42トン
最近(2016)年:7トン
平均:20トン
管理目標 MSY 検討中
資源評価の方法 ベイジアンサープラスプロダクションモデルによる解析 ベイジアンサープラスプロダクションモデル及び年齢構成を考慮したプロダクションモデルによる解析 ベイジアンサープラスプロダクションモデル及び漁獲量を考慮しない年齢構成を考慮したプロダクションモデルによる解析 N.A. MISTによるリスク評価
資源の状態 B2008/BMSY
:0.43-0.65
B2008/BMSY
:0.09-1.93
B2008/BMSY
:0.36-0.78
調査中 調査中
管理措置 漁獲物の完全利用等
生きた状態で混獲された場合の放流義務
※その他、沿岸国における以下の国内規制あり。
・国内漁獲量制限(米国:11.3トン、EU:0トン、ウルグアイ:0トン)
・対象漁業の禁止(カナダ)
・水揚げサイズ規制(EU:尾叉長210 cmまで)
漁獲物の完全利用等
管理機関・関係機関 ICCAT、NAFO、CITES ICCAT、ICES、CITES ICCAT、CCSBT、CITES ICCAT、CCSBT、CITES ICCAT、IOTC、WCPFC、IATTC、CCSBT、CITES
最新の資源評価年 2009年 2009年 2009年 2009年 2017年
次回の資源評価年 2019年 2019年 2019年 2019年

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

仙波 靖子


参考文献

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