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38 アオザメ 全水域

Shortfin Mako, Isurus oxyrinchus

                                                                       
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最近の動き

2017年6月にICCATのさめ類作業部会において、南北大西洋系群の資源評価が5年ぶりに行われ、北大西洋系群は乱獲状態にあり、過剰漁獲が行われていると推定された。南大西洋系群については、同じく乱獲状態にあり、過剰漁獲が行われている可能性があるものの、資源評価の不確実性が大きいため結論は得られていない。北太平洋個体群については、2017年にデータ準備会合が行われ、資源量指数、漁獲量や生物学的パラメータ等の更新が行われ、統合モデルを主体とした資源評価を行うことが決まった。資源評価は2018年に実施される予定である。


利用・用途

肉はソテーやみそ漬け、練り物原料として、鰭はフカヒレ、脊椎骨は医薬・食品原料、皮は革製品として利用される。肉質が良いため、さめ類の中でも商品価値が高い。


表1

表1. アオザメの年齢と尾鰭前長(Semba et al. 2009)


図1

図1. 日本の主要漁港へのアオザメ水揚量


図2

図2. アオザメの分布(Compagno 2001)


図3

図3. アオザメの年齢と成長(尾鰭前長)(Semba et al. 2009に加筆)


図4

図4. 北太平洋におけるアオザメの標準化CPUEの年トレンド(ISC 2015)
黒線、赤線、青線はそれぞれ日本の近海はえ縄漁業、ハワイのはえ縄漁業(深縄)、ハワイのはえ縄漁業(浅縄)データに基づく推定値を示す。2015年にISCで行われたIndicator-Based Analysisでは、これら3つのCPUEトレンドが、北太平洋系群の資源状態の推定に大きく影響することが示唆された。


図5

図5. 大西洋におけるアオザメの標準化CPUEと漁獲量の年トレンド(a:北資源、b:南資源)(ICCAT 2017)
黒線は上下とも漁獲量を示す。CPUEを示す線は、北大西洋ではオレンジが米国(ログブック)、紫が米国(オブザーバーデータ)、赤が日本、緑が台湾、水色がポルトガルのはえ縄データを基に相対化した値で、南大西洋では青がウルグアイ、草色がウルグアイ(オブザーバーデータ)、赤が日本、紺(細線)がブラジル、緑が台湾のはえ縄データを基に計算した値を意味する。


図6

図6. BSP2-JAGSによって推定された(a)北大西洋系群と(b)南大西洋系群の資源量(青線)と漁獲圧(赤線)の年変化
資源量については、各年の資源量とMSY水準の資源量の比を示し、1未満であれば資源量水準が低いことを示す。漁獲圧については、各年の漁獲圧とMSY水準時の漁獲圧の比を示し、1より大きければ漁獲圧が適正水準よりも高いことを示す。ICCAT 2017より引用。


図7

図7. 大西洋のアオザメにおいてBSP2-JAGSによって推定された資源量(黒実線)と各国の提出したCPUE(実線とマーカー)の年変化(a:北大西洋系群、b:南大西洋系群)(ICCAT 2017)
CPUEを示すマーカーは、北大西洋系群では黒(○)が米国、青(×)がスペイン、赤(△)が米国(オブザーバーデータ)、紫(▽)が日本、緑(+)がポルトガル、水色(◇)が台湾、南大西洋系群では緑(+)がブラジル、黒(○)がウルグアイ、水色(◇)がスペイン、赤(△)が日本、青(×)がウルグアイ(オブザーバーデータ)、紫 (▽)が台湾を示す。いずれも1971年を開始年とし、CPUEに国別の重み付けをしていない。


図8

図8. 統合モデルによって推定された北大西洋系群の資源状態
上の図は、MSY水準の親魚量に対する各年の親魚量、下の図はMSY水準の漁獲圧に対する各年の漁獲圧を示す。線の色は3つの異なる設定についての計算結果を示し、赤線がベースケースの結果を示す。点線は、MSY水準の親魚量や漁獲圧であることを示す。


図9

図9. 日本のミナミマグロ漁業オブザーバーデータを基に標準化したアオザメのCPUE(松永ほか2012)


図10

図10. インド洋(全域)において日本のはえ縄で混獲されたアオザメの標準化CPUE(Kimoto et al. 2011)
各折れ線は様々な報告率で抽出したデータに基づく解析結果を示す。


漁業の概要

我が国において、アオザメは主にまぐろはえ縄や沿岸流し網で混獲されている。遠洋はえ縄漁船は冷凍、近海はえ縄や沿岸流し網漁船は氷蔵で水揚げしている。日本の主要漁港におけるまぐろはえ縄等によるさめ類の種別水揚量は、水産庁による委託事業「日本周辺高度回遊性魚類資源対策調査委託事業(平成12〜17年度)」、「日本周辺国際魚類資源調査(平成18年度〜27年度)」及び「国際漁業資源評価調査・情報提供事業 現場実態調査(平成28年度)」によって調査が行われている。1992〜2016年におけるアオザメの総水揚量は554〜1,479トンで、その内はえ縄による水揚量が473〜1,308トンと大部分を占めており(アオザメ総水揚量の約82%)、流し網が続いて多かった(アオザメ総水揚量の約16%)。2011年の水揚量は、東日本大震災の影響から前年に比べて減少し、約550トンであったが、2012年には約850トンまで回復した。その後は、780〜870トンの範囲を推移している(図1)。過去10年のさめ類の合計値に占める本種の割合(2006〜2016年)は6.2〜7.7%であった。

大西洋においては、大西洋まぐろ類保全国際委員会(ICCAT)事務局が漁獲統計を公表している。それによれば、1990〜2016年の北大西洋個体群の漁獲量は2,193〜5,347トンで、1990〜1995年にかけて2,323トンから5,347トンまで増加した後は、およそ2,600〜4,500トンの範囲で推移している。1980年代は、遊漁とはえ縄漁業による漁獲がほぼ同程度であったが、1990年中盤以降はほぼ9割以上がはえ縄による漁獲となっている。国別では、1990〜1996年は米国・ポルトガル・日本による漁獲が大部分を占めていたが、1997年以降はスペインの漁獲が急増する一方で日本の漁獲は減少し、スペイン・ポルトガル・米国による漁獲が全体の大部分を占めている。2011年以降はモロッコの漁獲が増加し、2015年には全体の3割を占めるに至っている。南大西洋においては、1992〜2003年にかけて493トンから3,801トンまで増加した後は、2008年にかけて1,880トンまで減少し、その後はおよそ2,000〜3,500トンの範囲で推移している。1990〜2015年にかけてほぼ全ての漁獲がはえ縄によるもので、国別漁獲量は1990年代中盤以降、スペイン 、ナミビア、ポルトガルによる漁獲が全体の6割以上を占めている。日本のはえ縄の漁獲成績報告書の報告率で選別したデータに基づく分析から、大西洋全域において、1994〜2010年の期間に3,340〜11,120個体(平均5,730個体)、150〜500トン(平均260トン)のアオザメが日本のはえ縄漁船によって漁獲されたと推定されている(Semba and Yokawa 2012)。

インド洋においては、本種は遊漁、沿岸小規模漁業、準産業規模の漁業によって漁獲されるほか、まぐろ・かじき類を対象としたはえ縄漁業において混獲されている。インド洋まぐろ類委員会(IOTC)事務局が取りまとめた統計資料によれば、2013〜2015年の漁獲量(報告値)は1,268〜1,672トン(2010〜2015年の平均値:1,447トン)であったが、未報告の漁獲があるため、実際の漁獲量はこれよりも多いと考えられている(IOTC 2017)。


生物学的特性

まぐろ類の地域漁業管理機関では、本種の系群は南太平洋・北太平洋・インド洋・南大西洋・北大西洋の5つからなるという仮定のもと、資源評価が行われている。しかしながら、生物学的特性値の多くは、個々の系群毎に明らかにされていないため、ここでは各系群の断片的な情報を統合したものを示す。


【分布】

本種は全世界の熱帯及び温帯の沿岸から外洋まで広く分布する(図2、Compagno 2001)。温帯域での分布豊度が比較的高く、ヨシキリザメと同様に温帯域出現種と考えられている(中野 1996)。系群構造については、ミトコンドリアDNAを用いた解析が行われ、北大西洋の系群は、その他の海域(南大西洋、北太平洋、南太平洋)の系群とは異なる遺伝組成であることが示された(Heist et al. 1996)。より詳細な系群構造については現在研究が行われているところである。また、本種は成長段階や性による棲み分けを示すことが示唆されているが(Mucientes et al. 2009)、成熟個体の分布に関する知見が少ないこともあり、詳細な分布様式の把握のためには今後の調査における知見の収集が必要である。


【産卵・回遊】

本種の繁殖様式は卵食型の非胎盤型胎生であり(Wourms 1977)、産仔数の範囲は4〜16、出生時の全長は約70 cm(Stevens 1983)である。本種の繁殖サイクルは、妊娠期間とともに休止期間を伴うと推定されているが、妊娠期間については研究によって推定値の幅が15〜25か月と大きく、休止期間の推定値は得られていない(Mollet el al. 2000、Joung and Hsu 2005、Semba et al. 2011)。北大西洋で行われた標識放流調査の結果によると、本種の適水温は17〜22℃(Casey and Kohler 1992)であること、電子標識を用いた調査によれば、22〜27℃の水温帯に多くの時間滞在していることが明らかとなり(Vaudo et al. 2016)、これに従って環境水温の変化に伴い回遊を行うことが示唆されている。北太平洋においては、幼魚は亜寒帯境界付近を生育場にすると推測されているが(中野 1996)、成長段階を通じた性別の移動の詳細は不明である。近年は、PSAT(ポップアップアーカイバルタグ)を用いた移動・回遊の研究が盛んに行われている(Loefer et al. 2005、 Abascal et al. 2011、Rogers et al. 2015)。近年大西洋で報告された研究によれば、主要分布域は大陸棚上であるものの、移動パターンの個体差が大きいこと、一部の個体は季節移動を行うことが示されている(Vaudo et al. 2017)。この研究では、米国メリーランド沖とメキシコのユカタン半島沖から計26個体のアオザメに電子標識が装着され、放流されたが、2つの海域で放流された個体の移動は重複することなく、前者は大陸棚を超えて外洋域まで長距離の移動を行ったのに対し、後者は大陸棚に留まり、周年カンペチェバンク周辺に分布していたことが報告されている。

交尾期、交尾場、出産場等についての知見は乏しいが、いずれの海域においても、出産期は晩冬から盛夏にかけてと推測されている(Compagno 2001)。


【成長・成熟】

脊椎骨に形成される輪紋から年齢が推定されており、北東太平洋(Cailliet and Bedford 1983、Ribot-Carballal et al. 2005、Wells et al. 2013)、中西部北太平洋(Semba et al. 2009)(表1)、南太平洋(Bishop et al. 2006、Cerna and Licandeo 2009)、大西洋(Pratt and Casey 1983、Natanson et al. 2006、Doño et al. 2015)、インド洋(Groeneveld et al. 2014)から報告されている。図3はこれまでに報告されている成長式の比較を行ったものである。研究により推定結果に違いが見られるが、これには高齢個体の標本の不足や技術的な問題(年齢査定法・モデル式等)に加えて輪紋周期性の仮定の差(年に2本か1本か)が関与していると考えられ、近年北東太平洋の研究報告において、未成魚期には輪紋が年に2本形成され、成魚になると1本に減少する可能性が指摘されている(Kinney et al. 2016)。北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)では北太平洋系群の成長式の再検討が行われている。

50%成熟体長に関して、雄は150〜183 cm(尾鰭前長)、雌は230〜260 cm(尾鰭前長)、年齢では雄は5〜9歳、雌は17〜21歳と推定されている。寿命については定義によって推定値が異なるが、各海域の知見を統合すると、雄は20〜30歳、雌は30〜40歳と推定されている。


【食性・捕食者】

主としてまぐろ・かつお類を含む魚類やいか類を捕食する(川崎ほか 1962、谷内 1984、Strasburg 1958、Preti et al. 2012)。DNAを用いた分析によって、マイルカの捕食も確認されている(Porsmoguer et al. 2015)。海域、成長段階等によって異なった物を摂餌しており、特に選択的ではなく、生息域に豊富に分布している利用しやすい餌生物を食べる日和見食者と考えられている。成魚に対する捕食者は知られていないが、幼魚はホホジロザメによる捕食が報告されている(Compagno 2001)。


資源状態

2015年3月に行われた北太平洋系群の資源状態に関する包括的な指標による解析(indicator analysis)では、日本の近海はえ縄漁業(浅縄)、ハワイのはえ縄漁業(浅縄及び深縄)のCPUEが、本系群の資源状態に関して最も有益な情報を提供することが示された(図4)が、指標によっては最近年のCPUEの年トレンドが矛盾しており、また増加率についても資源の増加をどの程度反映しているかについて不確実性が認められたことから、資源状態は決定できないと結論付けられた。この結果を受け、ISC本会合では未提出の漁獲データを収集すること、漁業データが利用できる各国においても漁獲量やCPUEの年トレンドの変化を引き続きモニターしていくことが勧告された。2017年11~12月に行われたさめ類作業部会によるデータ準備会合では、資源評価に用いる資源量指数、漁獲量、生物パラメータの更新が行われ、@指標によって資源量指数の年トレンドの変動規模に違いは見られるものの、前回見られた指標間の大きな差は改善され、A不確実性が大きい成長パラメータについては、各加盟国が収集した年齢別体長データを用い たメタ解析によって推定された値を資源評価に用いることが合意された。また、各国の雌雄別サイズデータや本系群の生活史特性に基づき、資源量指数は親魚の指標として適していないこと、長寿命であり成長段階や雌雄で異なる分布パターンを示す事などを考慮して、2018年には統合モデルを主体とする資源評価を行うことが合意された。

南北大西洋系群については、2017年6月にICCATのさめ類作業部会において資源評価が行われた。日本、米国(北系群のみ)、スペイン、台湾、ポルトガル(北系群のみ)、ウルグアイ(南系群のみ)、ブラジル(南系群のみ)のまぐろはえ縄の漁獲量及び標準化CPUEが資源評価の入力データとして用いられた(ICCAT 2017)。各国が提出した(平均値で基準化した)CPUEは北大西洋系群についてはいずれも1996年頃から2010年頃まで増加傾向を示したが、その後2015年まで減少傾向を示した(図5a)。南大西洋系群については、国によって変動はあるものの2015年まで概ね増加傾向を示した(図5b)。資源評価モデルは、北大西洋系群についてはベイジアンサープラスプロダクションモデル(BSP2-JAGS)および統合モデル、南大西洋系群についてはベイジアンサープラスプロダクションモデル(BSP2-JAGSとJABBA)のみが用いられた。南大西洋系群については、各国のCPUEの不確実性が大きいことを理由に、CPUEを使わずに漁獲量および生産力からMSY管理基準値を計算するCMSYという手法も用いられた。北大西洋系群について、 BSP2-JAGSの結果では、現在(2015年)の資源量はMSY水準を下回り(B2015/BMSY = 0.66〜0.85)、漁獲圧はMSY水準を上回る(H2015/HMSY = 2.97〜3.58)結果となった(図6a)。資源量の年トレンドは、各国のCPUEの年トレンドと比較的よく合致した(図7a)。一方、統合モデルの結果(ベースケース)では、漁獲圧は1980年代中旬からMSY水準を超え、親魚量も1990年代から減少傾向を示しており、現在の資源量はMSY水準付近にあるが、乱獲状態にあり、過剰漁獲が行われていることが示唆された(図8)。2つの資源評価モデルの結果を統合して推定した資源状態は、B2015/BMSY = 0.57〜0.95、F2015/FMSY = 1.93〜4.38であった。BSP2-JAGSによる将来予測の結果、現在の漁獲量水準を維持した場合、資源量は減少を続けること、減少を食い止めるには漁獲量を1,000トン以下にする必要があることが推定された。南大西洋系群について、BSP2-JAGSの結果では、現在(2015年)の資源量はMSY水準を上回っており (B2015/BMSY=1.69〜1.75)、漁獲圧についてはMSY水準を上回っている可能性がある(H2015/HMSY = 0.86〜1.07)ことから(図6b)、資源量は乱獲状態にないが、過剰漁獲が起こっている可能性があると考えられた。また、CPUEの不確実性を考慮して実施したCMSYによる資源評価結果によれば、南大西洋系群は乱獲状態の可能性があり(B2015/BMSY = 0.65〜1.12)、過剰漁獲が起こっている可能性がある(F2015/FMSY = 1.02〜3.67)と考えられた。しかし、推定された資源量の年トレンドと各国のCPUEの年トレンドが合致しないこと(図7b)、推定された資源量、漁獲圧の年トレンドが非現実的な変化を示すこと、漁獲量とCPUEがともに増加傾向を示しモデルの設定に合わないことなどを総合的に考え、南大西洋系群の評価結果は不確実性が高く、信頼性が低いとされた。2つの資源評価モデルの結果を統合して推定した資源状態は、B2015/BMSY = 0.65〜1.75、F2015/FMSY = 0.86 〜3.67であった。これらの結果に基づき、科学委員会は、北大西洋系群については、乱獲を止め資源を回復させるには年間漁獲量を500t以下にすること(2040年までに資源が回復する確率は35%)、目標とする資源回復プランによっては船上保持禁止が最も有効な緊急措置であること(2040年までに資源が回復する確率は54%)、資源の回復をモニターするためのデータ収集体制を強化することを勧告した。南大西洋系群については、資源状態・漁獲量の不確実性・本系群の脆弱性と北大西洋系群の悪化した資源状態を考慮して、不確実性が低減されるまでは、年間漁獲量が過去5年の最低値を超えないようにすることを勧告した。前回(2012年)の資源評価結果(南北大西洋系群ともに乱獲状態の可能性は低く、現状の漁獲は持続可能なレベル)と大きく異なる評価になった理由としては、@資源評価モデルが変更されたこと(プロダクションモデルについてプロセス誤差を考慮したこと)、A近年の各国のCPUEの年トレンドが2010年以降減少傾向を示したこと(北大西洋系群)、B成長式を中心とする生物パラメータが更新され、 内的自然増加率が前回の設定の約半分になったこと(北大西洋系群)等が考えられる。本系群の資源評価を更新するに当たり、前回と比べて使用するデータの質、量は向上したものの、更新された成長式や自然死亡率の検証が不十分なこと、統合モデルによる評価が不完全であること、沿岸漁業による漁獲量や投棄・放流量の推定値などの解析に必要なデータが十分な精度で得ることができない等の問題は依然としてあるため(特に南大西洋系群)、引き続き資源評価の精度を高めるための取り組みが必要である。

インド洋系群についてはこれまで資源評価は行われていないが、松永ほか(2012)が日本のオブザーバー調査データ(1992〜2010年)を使って標準化したミナミマグロ漁業で混獲されるアオザメのCPUEの経年変化をみなみまぐろ保存委員会(CCSBT)生態学的関連種作業部会に報告している(図9)。標準化CPUEは多少の変動は見られたものの、顕著な増加又は減少傾向は確認されなかった。また、2011年にはインド洋で操業する日本の遠洋はえ縄の漁獲成績報告書データを用いて標準化したCPUEの経年変化(1994〜2010年)がインド洋まぐろ類委員会に報告された(図10)。標準化CPUEは、年によって飛び値や年変動が見られるものの、解析期間中に顕著な増減傾向は認められなかった(Kimoto et al. 2011)。


管理方策

全てのまぐろ類地域漁業管理機関において、漁獲されたさめ類の完全利用(頭部、内臓及び皮を除く全ての部位を最初の水揚げ又は転載まで船上で保持すること)及び漁獲データ提出が義務付けられている。加えて、WCPFCでは、2014年の年次会合において、@まぐろ・かじき類を対象とするはえ縄漁業は、ワイヤーリーダー(ワイヤー製の枝縄及びはりす)又はシャークライン(浮き玉又は浮縄に接続された枝縄)のいずれかを使用しないこと、Aさめ類を対象とするはえ縄漁業は、漁獲を適切な水準に制限するための措置等を含む管理計画を策定すること、が合意された。これを受け、北太平洋系群のヨシキリザメを漁獲対象としている気仙沼の近海はえ縄漁業において、年間のアオザメの水揚げ量の上限を600トンにすること、1 m以下のアオザメをできるだけ放流することなどの取組を定めた管理計画が2016年1月1日より5年間実施されている。

全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)でも、2016年の年次会合で、シャークラインの使用禁止を内容とする決議が採択され、2018年から義務付けられる。

また、ICCATの年次会合では、2017年の資源評価の結果を受けて、北大西洋系群について原則所持禁止とするが、オブザーバーが乗船し生存放流・死亡投棄個体数等のデータを収集する条件で死亡個体の保持を認める、或いは生死に限らず一定サイズ以上の個体については保持を認める等の例外措置を盛り込んだ管理勧告が採択された。併せて同管理勧告の中で、科学委員会は2019年にこれらの措置の有効性を評価し、必要に応じて変更及び追加の管理勧告を行うこととされている。


アオザメ(全水域)の資源の現況(要約表)

北太平洋 南太平洋 北大西洋 南大西洋 インド洋
資源水準 調査中 調査中 低位 調査中 調査中
資源動向 横ばい 調査中 乱獲状態、過剰漁獲 乱獲状態、過剰漁獲の可能性がある 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
(2012〜2016年)
調査中 調査中 2,904〜4,478トン(水揚量)
最近(2016)年:3,377トン
平均:3,527トン
2,001〜3,273トン(水揚量)
最近(2016)年:2,641トン
平均:2,709トン
調査中
我が国の漁獲量
(最近5年間)
(2012〜2016年)
764〜873トン
(水揚量)
最近(2016)年:873トン
平均:814トン
91〜258トン
(水揚量)
最近(2016)年:91トン
平均:165トン
33〜75トン
(水揚量)
最近(2016)年:75トン
平均:56トン
77〜291トン
(水揚量)
最近(2016)年:77トン
平均:154トン
99〜148トン
(水揚量)
最近(2016)年:99トン
平均:114トン
管理目標 検討中 検討中 MSY MSY 検討中
資源評価の方法 統合モデル及びVPAによる解析(予定) 検討中 ベイジアンサープラスプロダクションモデル及び統合モデルによる解析 ベイジアンサープラスプロダクションモデル及びCMSY(漁獲量と生産力情報に基づく資源評価手法)による解析 検討中
資源の状態 検討中 検討中 B2015/BMSY
:0.57〜0.95
F2015/FMSY
:1.93〜4.38
B2015/BMSY
:0.65〜1.75
F2015/FMSY
:0.86〜3.67
検討中
管理措置 漁獲物の完全利用等 漁獲物の完全利用等 漁獲物の完全利用等
原則所持禁止(例外措置として、@オブザーバー乗船時に種々のデータ収集を行えば捕獲時死亡個体のみ採捕可能とする措置や、A一定のサイズ以上の個体であれば生死によらず採捕可能とする措置、等がある。)
漁獲物の完全利用等 漁獲物の完全利用等
管理機関・関係機関 IATTC、ISC、WCPFC WCPFC ICCAT ICCAT IOTC、CCSBT
最新の資源評価年 2015年 2017年 2017年
次回の資源評価年 2018年

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

仙波 靖子・甲斐 幹彦


参考文献

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