--- 詳細版 ---

37 ヨシキリザメ 全水域

Blue Shark, Prionace glauca

                                                                                   
PIC

[HOME] [詳細版PDF] [要約版PDF] [要約版html] [戻る]

最近の動き

2017年は北太平洋系群及びインド洋系群の資源評価が行われた。2016年は南太平洋系群の資源評価が行われた。2015年は南北大西洋系群の資源評価が行われた。


利用・用途

肉はすり身など、鰭はふかひれ、皮は工芸品や医薬・食品原料、脊椎骨は医薬・食品原料などに利用されている。


表1

表1. まぐろはえ縄漁業によるさめ類漁獲量(トン)(データ:漁業・養殖業生産統計年報)
2011年は、東日本大震災の影響により、岩手県、宮城県、福島県においてデータを消失した調査対象があり、消失したデータは含まない数値である。


表2

表2. ヨシキリザメの年齢ごとの推定体長(尾鰭前長cm)(中野1994)


図1

図1. 日本の主要漁港へのヨシキリザメ水揚量(1992〜2016年)


図2

図2. ヨシキリザメの分布(Compagno 1984より)


図3

図3. ヨシキリザメの年齢と成長(中野1994)


図4

図4. 北太平洋系群の資源評価で用いられたヨシキリザメの国別漁獲量(1971〜2015年)
EPOは東部太平洋で漁獲されたその他の国の漁獲量、WCPOは中西部太平洋で漁獲されたその他の国の漁獲量。


図5b

図5. 北太平洋系群の資源評価で用いられたヨシキリザメのはえ縄船標準化CPUE(1976〜2015年)
縦軸は、CPUEを平均値で割ることで1にスケール化したCPUE。JPEおよびJPLは日本の近海遠洋まぐろはえ縄船により浅縄操業(一鉢当たりのはり数が3〜5本)で漁獲されたヨシキリザメの標準化CPUE(1976〜1993年;Hiraoka et al. 2013および1994〜2015年;Kai 2016)を表す。MEXはメキシコのはえ縄船により漁獲されたたヨシキリザメの標準化CPUE(2006〜2015年;Fernández-Méndez et al. 2016)、SPCは中西部太平洋で操業したはえ縄船のオブザーバーデータを用いて標準化したヨシキリザメのCPUE(1993〜2009年;Rice and Harley 2014)、TWNは台湾のはえ縄船により漁獲されたヨシキリザメの標準化CPUE(2004〜2015年;Tsai and Liu 2016)、HWIはハワイのはえ縄船により深縄操業(一鉢当たりのはり数が15本以上)で漁獲されたヨシキリザメの標準化CPUE(2000〜2015年;Carvalho 2016)。


図6

図6. 統合モデル(Stock Synthesis)で推定された北太平洋におけるヨシキリザメの産卵親魚量(ISC 2017)
青の影は95%の信頼区間、赤線はMSY水準を表す。


図7

図7. 統合モデル(Stock Synthesis;左図)及びベイジアンサープラスプロダクションモデル(BSP;右図)で示された神戸プロット
黒丸および実線は北太平洋におけるヨシキリザメの相対資源量および相対漁獲死亡係数の時系列変化(ISC 2017)。


図8

図8. 大西洋におけるヨシキリザメの標準化されたCPUE(ICCAT 2015)
上:北大西洋、1957〜2013年、下:南大西洋、1971〜2013年。灰色は漁獲量、実線は各国のCPUE(北資源:米国のオブザーバー航海(朱)、日本のはえ縄前期(青)、日本のはえ縄後期(茶)、米国のオブザーバー航海(橙)、ベネズエラのはえ縄(黄緑)、スペインのはえ縄(黒)、ポルトガルのはえ縄(紫)、台湾のはえ縄(紫と×印)、南資源:ウルグアイのはえ縄(緑)、ブラジルのはえ縄(朱)、日本のはえ縄前期(青)、日本のはえ縄後期(赤)、スペインのはえ縄(黒)、台湾のはえ縄(紫))を示す。


図9

図9. 資源評価で用いられたインド洋におけるヨシキリザメの標準化CPUE(1992〜2015年)(IOTC 2017)
縦軸は、CPUEを平均値で割ることで1にスケール化したCPUE。各線はそれぞれ日本のはえ縄(青線)、EUフランスのはえ縄(赤線)、EUポルトガルのはえ縄(緑線)を示す。


図10

図10. 統合モデル(Stock Synthesis)で示された神戸プロット
青丸および実線は北太平洋におけるヨシキリザメの相対資源量および相対漁獲死亡係数の時系列変化(Rice 2017)。グレーの丸はMCMCによる不確実性の範囲を示す。


漁業の概要

ヨシキリザメは全大洋の熱帯域から温帯域にかけて広く分布し、外洋性さめ類の中で最も資源豊度が高いと考えられている。本種はまぐろはえ縄漁業で数多く漁獲されているが、日本周辺の漁場を除き、基本的には混獲種である。我が国漁船の水揚げは加工設備が整っている宮城県気仙沼港を中心に行われ、肉、鰭、軟骨、皮が食用や工芸用に利用されていたが、東日本大震災により港・加工場ともに壊滅的な被害を受け、漁港機能が一時的に停止した。震災後、気仙沼魚市場の復旧、水産加工施設等の集積地の整備などが行われている。2012年4月からは、近海まぐろはえ縄船漁業復興を目的として水産庁事業「もうかる漁業創設支援事業」による船団操業が開始され、初年度は近海まぐろはえ縄船13隻が参加した。2013年から17隻が参加するようになりほぼ震災前の操業体制に戻った。

農林水産省統計部「漁業・養殖業生産統計年報」(農林統計)に記載されている、まぐろはえ縄漁業によるさめ類(さめ類全種込み)の漁獲量を表1に示した。種別漁獲量は不明であるが、7〜8割程度を本種が占めているものと推定される(中野 1996)。農林統計では、まぐろはえ縄漁業は1971年以降、遠洋・近海・沿岸の3種類に分類されており、これらの漁獲量の合計(以後漁獲量)は13,000〜33,000トンで推移している。漁獲量は1990年代後半まで減少傾向にあったが、2000年代になって増加傾向となり、2005年に初めて3万トンを上回った。2011年は近海及び沿岸まぐろはえ縄漁業の漁獲量が激減した。この原因は東日本大震災の影響により、本種を多く漁獲していた気仙沼基地の近海はえ縄漁船及び沿岸流し網漁船の操業数が著しく減少したためである。これらの漁船の多くは、2012年には通常の操業に復帰したが、さめ類の加工施設の復興が遅れたため、2012年の漁獲量は29,000トンにとどまった。2013年の漁獲量は、遠洋はえ縄漁船の操業数の減少により23,600トンに減少したが、2014年及び2015年の漁獲量は、ヨシ キリザメの資源量の増加に伴いそれぞれ26,700トン、27,399トンに増加した。2016年の漁獲量は24,800トンに減少したが、原因は不明である。

水産庁委託事業で、まぐろはえ縄漁業等による日本の主要漁港のさめ類の種別水揚量を調査している。それによるとヨシキリザメの水揚量は、1992〜2016年で5,100〜16,000(平均10,934)トンであり、2001年をピークに減少傾向で、2011年は過去最低を大きく更新したが、2012年は2010年レベルまで回復した(図1)。2000年代の漁獲量の落ち込みは、本種を季節的に主対象として漁獲している気仙沼基地の近海はえ縄漁船数が減少したためで、2011年の落ち込みは東日本大震災の影響と考えられる。また漁法別に見ると、はえ縄の割合が1999年のピーク時の割合(96.1%)に比べると2014年の割合は85%となり徐々に減少したが、2015年及び2016年の割合は約90%と増加した。この原因は流し網漁業の割合が両年で減少した(2014年は12%だったのが両年では約8%まで減少した)ためである。


生物学的特性

【分布】

本種は南北太平洋、南北大西洋、インド洋の熱帯域から温帯域にかけて広く分布し(Compagno 1984)(図2)、特に温帯域での分布豊度が高い(中野 1996)。系群については、繁殖周期が大洋の南北で逆になるので、南北太平洋で2系群、南北大西洋で2系群と考えるのが妥当であろう。各漁業管理機関では、これらの4系群にインド洋1系群を加え、5系群が存在するとして資源評価及び管理を行っている。太平洋ではISCが中心となってDNA分析による系群構造の解明作業が行われつつあるが、南北資源を明確に分ける遺伝的な証拠は得られていない(King et al. 2015、Taguchi et al. 2015)。系群構造に関しては、熱帯域の資源量が極端に少ない上に、これまで行われた標識放流・電子標識放流調査の情報からは赤道を越えた個体は確認されていない(Weng et al. 2005、Stevens et al. 2010、Sippel et al. 2011)。そのため、太平洋には南北の2系群が存在すると仮定して、資源評価はそれぞれの系群に対して行われている(ISC 2017)。


【繁殖・回遊】

本種は胎盤型の胎生種であり、産仔数の平均は35.5尾、その範囲は15〜112尾、出生時の体長(尾鰭前長)は34〜36 cmである(Fujinami et al. 2017a)。約11か月間の妊娠期間を経て、春季(4−7月)に出産し、出産後すぐに排卵(夏季)が起こることから連続して繁殖(交尾・受精)が可能であり、繁殖周期は1年と考えられている(Fujinami et al. 2017a)。資源の生産力は他の外洋性さめ類と比較して高く、性および年齢の違いを考慮した行列モデルから計算された内的自然増加率の中央値は0.384となった(Yokoi et al. 2017)。この数値は資源量が年間約1.5倍増加することを意味する。外洋性さめ類は胎生種であるため、一般的に強い親子関係が認められるが、本種の場合密度依存性が高く、強い親子関係が認められなかった(Kai and Fujinami 2018)。

北太平洋においては漁業データをもとに回遊モデルが提唱されている(中野 1994)。それによると、本種は北緯20~30度の海域で初夏に交尾し、雌は約1年の妊娠期間後に北緯30~40度の海域で出産する。幼魚は北緯40度付近の亜寒帯境界付近を生育場とし、成熟すると温帯域に移動する。北西太平洋では国際水研が浮上型の記録型電子標識を用いて上記回遊モデルの検証作業を行っている。また、空間統計モデル及び最近5か年の漁業データを用いて、ヨシキリザメの年・四半期別の空間分布(ホットスポット)が示された(Kai et al. 2017)。その結果、ヨシキリザメは黒潮―親潮移行帯から天皇海山群の海域まで幅広く分布しており、季節的な東西移動を示したが、海水温との顕著な関係は認められなかった(Kai et al. 2017)。さらに、回遊モデルが示す性別・成長段階別の生態学的な棲み分けを考慮したヨシキリザメの資源管理手法について提案が行われている(Kai and Yokoi 2017)。


【成長・成熟】

脊椎骨椎体に形成される輪紋から年齢が推定されており、その結果に基づいてCailliet and Bedford(1983)、田中(1984)、中野(1994)が太平洋における成長式を雌雄別に報告している。成長には性差が認められ、雄が雌に比べて早く大きく成長する。成熟に達する体長は、北太平洋では雌雄共に140〜160 cm(須田 1953、中野 1994)、北大西洋では雌が約165 cm、雄が160 cm(Pratt 1979)と報告されており、年齢に換算すると雌6歳、雄5歳と推定される。また寿命は20歳以上とされている(Compagno 1984)。北太平洋の最新の知見によると、雌雄の50%成熟体長(尾鰭前長)は雄で160.9 cm、雌で156.6 cmであった(Fujinami et al. 2017a)。

以下に北太平洋で求められた成長式を示す。

       Cailliet and Bedford(1983):全長
             雌:Lt=241.9(1-e-0.251(t-(-0.795)))
             雄:Lt=295.3(1-e-0.175(t-(-1.113)))
       田中(1984):尾鰭前長
             雌:Lt=256.1(1-e-0.116(t-(-1.306)))
             雄:Lt=308.2(1-e-0.094(t-(-0.993)))
       中野(1994):尾鰭前長(表2、図3)
             雌:Lt=243.3(1-e-0.144(t-(-0.849)))
             雄:Lt=289.7(1-e-0.129(t-(-0.756)))

【食性・捕食者】

多獲性浮魚類(カタクチイワシ)やまぐろ類、頭足類が主な餌料である(Strasburg 1958、川崎ほか 1962、谷内 1984、Fujinami et al. 2017b)。海域、成長段階等によって異なった餌生物を摂餌しており、特に選択的ではなく、生息域に豊富にいる利用しやすい動物を食べる日和見的捕食者とみなされている。成魚の捕食者は知られていないが、幼魚は大型さめ類や海産哺乳類に食べられている可能性がある(Nakano and Seki 2003)。


資源状態

【太平洋】

北太平洋系群については、2017年のISCさめ作業部会において、漁獲量(図4)及び資源量指数(CPUE)のデータ(図5)等を使用し、統合モデル(SS)及びベイジアンサープラスプロダクションモデル(BSP)により資源評価が行われた(ISC 2017)。前回(2014年)の資源評価結果との違いは、3年間(2013-2015年)漁業データ(漁獲量・CPUE・サイズデータ)が更新されたこと、成長・成熟・自然死亡など生物学的なパラメータが更新されたこと、前回情報がなかった親子関係のパラメータを特定し設定した事である。これらによりSSによるデータへのあてはまりが大幅に改善した。そのため、資源評価結果として、報告書には主にSSの結果を示すことが合意された。1994年以降の資源量指数として5つの異なるCPUEが用いられた(図5)。日本のCPUE以外を用いた場合、生物パラメータや漁獲量・サイズデータとのミスフィットがみられた。また、日本のCPUEデータは、データの時空間的なカバレージが高く、標準化手法も特に問題がないことから、最も信頼性が高いと判断され、日本のCPUEを用いた設定をリファレンスケース とすることが決まった。SSの結果は、資源量は1980年代から1990年代前半にかけて減少傾向を示したが、その後緩やかな増加傾向を示し2015年には295,774トンに達した(図6)。最大持続生産量(MSY)の管理基準値に対する現在の資源量(B)の相対値はB2015/BMSY=1.69、漁獲死亡係数(F)の相対値はF2011/FMSY=0.38であるとされた(図7)。様々なモデル診断を行った結果、大きな問題はなかった。また、寿命や再生産サイクル等について異なるパラメータ値を用いた場合や日本以外のCPUEを用いた場合の感度解析が行われた。その結果、異なるパラメータの設定やモデル構造の違いは資源評価結果に大きな影響を及ぼさなかった。BSPの資源および漁獲状態に関する結果は、SSの結果と類似していた(図7)。資源評価の結論として、MSYを管理基準値とすると、現在(2012-2014年)の資源量は乱獲状態になく、過剰漁獲の状態でもないことが示された(図7)。この結果は、同年7月のISC本会合で承認されたのち、8月のWCPFC科学委員会でも受け入れられた(WCPFC 2017)。併 せて、WCPFC科学委員会は、以下のISCによる保全情報について言及したが、特に管理勧告は出ていない。

@太平洋においてまぐろおよびまぐろ類似種をターゲットにした国際的な漁業により漁獲(混獲)される外洋性さめ類の管理に対する責任を有する機関であるWCPFC及びIATTCでは、外洋性さめ類に対する目標及び限界管理基準値が決まっていない。

A2015年の資源量はMSY水準を上回っており、2012-2014年の漁獲死亡係数はMSY水準を下回っている。将来予測の結果は、異なる漁獲死亡係数のシナリオ(現状、±20%、MSY水準)において将来の資源量の中央値がMSY水準を下回りそうにないことを示した。MSY以外の管理基準値については、この資源評価では考慮されなかった。

南太平洋系群については、2016年に太平洋共同体事務局(SPC)の専門家グループによりオブザーバーデータとはえ縄の漁業データを用いて、Multifun-CL(統合モデル)により資源評価が行われWCPFC科学委員会において報告された(Takeuchi et al. 2016)。しかし、資源状態を示すのにデータが不十分かつ生物学的なパラメータの不確実性等多くの課題が残っているため、資源評価結果から資源状態や管理勧告を示すことができなかった。本資源については、資源解析精度向上のために、1993年以前の漁獲情報の整備、1994年以降のデータについてもオブザーバーデータやログブックデータの質と量の向上、成長・成熟・再生産・分布・回遊などの生物学的データの収集・解析を行っていく必要がある。


【大西洋】

2015年のICCATさめ資源評価会合において、漁獲量及びCPUEのデータ等を使用し、北大西洋資源(北資源)についてはBSP及びSSにより資源評価が行われ、南大西洋資源(南資源)についてはBSP及び状態空間ベイジアンサープラスプロダクションモデル(SS-BSP)により資源評価が行われた(ICCAT 2015)。その結果、北資源については、BSP及びSSの結果は、資源量は乱獲状態になく、漁獲も過剰漁獲の状態になかった。南資源については、BSPの結果は、資源量は乱獲状態になく、漁獲も過剰漁獲の状態になかったが、SS-BSPの結果は、真逆の結果を示した。北資源は8つのCPUE、南資源は6つのCPUEを用いて資源評価が行われた(図8)。南北資源のCPUEのトレンドは横ばいか増加傾向を示した。一般的に、漁獲量と資源量のトレンドの関係は、漁獲量が減少して資源量が増加する、あるいは漁獲量が増加して資源量が減少すると考えられる。しかし、南資源は漁獲量および複数のCPUEのトレンドが共に増加傾向を示したため、特にデータの不確実性が高いとみなされた。日本が提出した南北資源のCPUEトレンドは近年共に横ばい あるいは若干の増加傾向を示した(Kai et al. 2014)。科学委員会は、南北資源の入力データ及びモデル構造の仮定に関して不確実性が高いことを理由に、これらの資源評価結果に対して不確実性が高いと指摘した上で、北資源に対しては乱獲状態になく漁獲も過剰漁獲の状態ではないだろうと評価し、南資源に対しては、資源状態は不明とし、SSのモデル構造や歴史的な漁獲量の改善等を促した(ICCAT 2015)。


【インド洋】

2017年のIOTC混獲・生態系作業部会会合において、漁獲量及びCPUE(図9)のデータ等を使用し、キャッチオンリーモデル(SRA)、BSP、SSの3つのモデルにより1950-2015年の期間で資源評価が行われた(IOTC 2017)。ヨシキリザメの生物学的なデータおよび漁業データの質と量を考慮してこれら3つのモデルから、SSの結果をベースケースとすることが決まった。前回(2015年)の資源評価の設定と大きく異なる点は、生物学的なパラメータの更新(成長・成熟・再生産・自然死亡係数等の更新)に伴って、生産力を決定する親子関係のパラメータが増加したことである(スティープネスが0.5から0.79に増加)。また、漁業データについては、漁獲量の過小報告が問題であるため、4つの漁獲量(1: ノミナルの漁獲量、2: 各エリアや年別の割合から推定した漁獲量、3: 一般化加法モデル(GAM)から推定した漁獲量、4: さめ鰭の貿易から推定した漁獲量)が考慮されたが、最も信頼性が高い3がベースケースとして用いられた。CPUEについては、各フリート間での増減のトレンドが一致しないことが大きな問題となったため、階 層構造を用いたクラスター解析をもとに各フリートを6つ(1: EU-ポルトガル・EU-フランス、2: EU-ポルトガル・EU-フランス・日本後期、3: EU-スペイン・インドネシア・日本後期、4: 日本前期・EU-ポルトガル・EU-フランス、5: 日本前期・EU-ポルトガル・EU-フランス・日本後期、6: 日本前期・EU-スペイン・インドネシア・日本後期)にグルーピングし、CPUEデータの信頼性・代表性等を考慮してEU-ポルトガル・EU-フランス・日本後期のCPUEをベースケースとして用いることが決まった(図9)。日本後期のCPUEの年変動は大きいが、トレンドは比較的安定していた(Semba and Kai 2017)。

MSYを管理基準値とした場合、どのモデルも現在の資源状態は乱獲状態になく過剰漁獲行為も行われていない結果となった(図10)。SSによる現在の資源および漁獲の状態は、F2015/FMSY(80%信頼区間)= 0.304(0.298 - 0.311)およびB2015/BMSY(80%信頼区間)=1.50(1.32 - 1.68)であった(図10)。ベースケースモデルの不確実性をマルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC)により計算した結果、74.6%はグリーンゾーン(乱獲状態になく過剰漁獲行為も行われていない状態)、25.4%はオレンジのゾーン(乱獲状態にないが過剰漁獲行為が行われている状態)にあることがわかった。しかし、近年の資源量および漁獲死亡係数ともにMSY水準に近付いており、漁獲量を増加させないことが勧告された(IOTC 2017)。


管理方策

全てのまぐろ類地域漁業管理機関において、漁獲されたさめ類の完全利用(頭部、内臓及び皮を除く全ての部位を最初の水揚げ又は転載まで船上で保持すること)及び漁獲データ提出が義務付けられている。加えて、WCPFCでは、2014年の年次会合において、@まぐろ・かじき類を対象とするはえ縄漁業は、ワイヤーリーダー(ワイヤー製の枝縄及びはりす)又はシャークライン(浮き玉又は浮縄に接続された枝縄)のいずれかを使用しないこと、Aさめ類を対象とするはえ縄漁業は、漁獲を適切な水準に制限するための措置等を含む管理計画を策定することが合意された(WCPFC 2014)。Aに対応して、ヨシキリザメを漁獲対象としている気仙沼の近海はえ縄漁業において、年間のヨシキリザメの水揚量の上限を7,000トンにすること等を定めた管理計画が2016年1月1日より5年間実施されている。

IATTCでも、2016年の年次会合で、シャークラインの使用禁止を内容とする決議が採択され、2018年1月1日から義務付けられている(IATTC 2016)。

ICCATでは、2016年の年次会合において、北資源については、総漁獲量3.9万トン(2011〜2015年の平均総漁獲量)を基準として、2年間の平均漁獲量がこれを超過した場合には、次回の資源評価(2021年に実施予定)の結果を踏まえて追加的な管理措置を検討することとし、南資源については、当該資源評価の結果を踏まえて適切な管理措置を検討することが採択された(ICCAT 2016)。


ヨシキリザメ(全水域)の資源の現況(要約表)

北太平洋
(北緯20度以北)
南太平洋
(北緯20度以南)
北大西洋
(赤道以北)
南大西洋
(赤道以南)
インド洋
資源水準 中位〜高位 調査中 中位〜高位 調査中 中位〜高位
資源動向 横ばい 調査中 横ばい 横ばい 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
(2011〜2015年)
調査中 調査中 3.7万〜4.2万トン
最近(2016)年:4.2万トン
平均:3.8万トン
2.0万〜2.6万トン
最近(2016)年:2.4万トン
平均:2.4万トン
2.8万〜3.2万トン
最近(2015)年:3.0万トン
平均:3.0万トン
我が国の漁獲量
(最近5年間)
(2011〜2015年)
6,547〜7,520
(水揚量)
最近(2016)年:7,509トン
平均:7,108トン
注:これらの数値は遠洋はえ縄船の漁獲量がほとんど含まれていない。
196〜735トン
最近(2016)年:196トン
平均:503トン
1,808〜4,239トントン
最近(2016)年:4,239トン
平均:3,156トン
2,135〜3,199トン
最近(2016)年:2,135トン
平均:2,577トン
832〜1,558トン
最近(2015)年:974トン
平均:1,175トン
管理目標 検討中
資源評価の方法 SS、BSP Multifun-CL SS、BSP BSP SS、BSP、Catch-only model
資源の状態 B2015/BMSY
:1.65(BSP)
1.69(SS)
議論中 B2013/BMSY
:1.35〜3.45
B2013/BMSY
:0.78〜2.03
SB2015/SBMSY
:0.83〜1.75
管理措置 漁獲物の完全利用等
管理機関・関係機関 IATTC、WCPFC、ISC WCPFC、SPC ICCAT ICCAT IOTC、CCSBT
最新の資源評価年 2017年 2016年 2015年 2015年 2017年
次回の資源評価年 未定 未定 未定 未定 未定

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

甲斐 幹彦・藤波 裕樹


参考文献

  1. Cailliet, G.M., and Bedford, D.W. 1983. The biology of three pelagic sharks from California waters, and their emerging fisheries: A review. Cal. COFI Rep., 24: 57-69.
  2. Carvalho, F. 2016. Standardized CPUE for Blue Shark (Prionace glauca) Caught by the Longline Fisheries Based in Hawaii (1994 - 2015) (ISC/16/SHARKWG-1/16). NOAA - Pacific Islands Fisheries Science Center, Busan, South Korea.
  3. Clarke, S., Yokawa, K., Matsunaga, H., and Nakano, H. 2011. Analysis of North Pacific Shark Data from Japanese Commercial Longline and Research/Training Vessel Records. (WCPFC-SC7-2011/EB-WP-02). Oceanic Fisheries Programme, Secretariat of the Pacific Community. Pohnpei, Federated States of Micronesia.
  4. Compagno, L.J.V. 1984. FAO species catalog, Vol.4: Sharks of the world; Fisheries Synopsis No. 125. Food and Agricultural Organization of the United Nations, Rome, Italy. 655 pp.
  5. Fernández-Méndez, J.I., González-Ania, L.V., and Castillo-Géniz, J.L. 2016. Standardized catch rates for blue shark (Prionace glauca) in the 2006-2015 Mexican Pacific longline fishery based upon a shark scientific observer program (ISC/16/SHARKWG-1/25). National Fisheries institute, Busan, South Korea.
  6. Fujinami, Y., Nakatsuka, S., and Ohshimo, S. 2017b. Feeding habits of the blue shark (Prionace glauca) in the Northwestern Pacific based on stomach contents and stable isotope ratios. Pac. Sci., 72(1).
  7. Fujinami, Y., Semba, Y., Okamoto, H., Ohshimo, S., and Tanaka, S. 2017a. Reproductive biology of the blue shark (Prionace glauca) in the western North Pacific Ocean. Mar. Freshwater Res., 68: 2018-2027. doi: 10.1071/MF16101
  8. Hiraoka, Y., Kanaiwa, M., and Yokawa, K. 2013. Summary of estimation process of abundance indices for blue shark in the North Pacific (ISC/13/SHARKWG-2/02). National Research Institute of Far Seas Fisheries, Shizuoka, Japan.
  9. IATTC. 2016. Report of the meeting. Inter-American tropical tuna commission scientific advisory committee seventh meeting, La Jolla, USA. https://www.iattc.org/Meetings/Meetings2016/SAC-07/PDFs/Docs/_English/SAC%2007-RPT_7th-Meeting-of-the-Scientific-Advisory-Committee.pdf(2017/12/13)
  10. ICCAT. 2015. Report of the standing committee on research and statistics (SCRS), Madrid, Spain. 207-227 pp.
  11. ICCAT. 2016. Report of the standing committee on research and statistics (SCRS), Madrid, Spain. 214-237 pp.
  12. ICCAT. 2017. Report of the standing committee on research and statistics (SCRS), Madrid, Spain. 215-244 pp.
  13. IOTC. 2017. Report of the 13th working party on ecosystems and bycatch (IOTC-2017-WPEB13-R). Indian Ocean Tuna Commission, working party on ecosystems and bycatch, San-Sebastian, Spain.
  14. ISC. 2017. Report of the stock assessment and future projections of blue shark in the North Pacific Ocean through 2015. Vancouver, Canada. http://isc.fra.go.jp/pdf/ISC17/ISC17_Annex13-Stock_Assessment_and_Future_Projections_of_Blue_Shark.pdf(2017/12/12)
  15. Kai, M. 2016. Update of Japanese catches for blue shark caught by Japanese offshore and distant water longliner in the North Pacific (ISC/16/SHARKWG-1/11). National Research Institute of Far Seas Fisheries, Busan, South Korea.
  16. Kai, M., and Fujinami, Y. 2018. Stock-recruitment relationships in elasmobranchs: application to the North Pacific blue shark. Fish. Res., 200: 104-115.
  17. Kai, M., Semba, Y., Ohshimo, S., Shiozaki, K., and Yokawa, K. 2014. Update of standardized CPUE for blue shark caught by the Japanese tuna longline fishery in the Atlantic Ocean. (SCRS/2014/031). National Research Institute of Far Seas Fisheries, Piriápolis, Uruguay.
  18. Kai, M., Thorson, J.T., Piner, K.R., and Maunder, M.N. 2017. Predicting the spatio-temporal distributions of pelagic sharks in the western and central North Pacific. Fish. Oceanogr., 26: 569-582. doi: 10.1111/fog.12217
  19. Kai, M., and Yokoi, H. 2017. Evaluation of harvest strategies for pelagic sharks taking ecological characteristics into consideration: an example for North Pacific blue shark. Can. J. Fish. Aqua. Sci., 74: 933-947. doi/abs/10.1139/cjfas-2016-0170.
  20. 川崎 健・八百正和・安楽守哉・永沼 章・浅野政宏. 1962. 東北海区に分布する表層性魚食性魚類群集体の構造とその変動機構にについて. 第1報. 東北区水産研究所報告, 22: 1-44.
  21. King, J., Wetklo, M., Supernault, J., Taguchi, M., Yokawa, K., Sosa-Nishizaki, O., and Withler, R. 2015. Genetic analysis of stock structure of blue shark (Prionace glauca) in the North Pacific Ocean. Fish. Res., 172: 181-189.
  22. 松永浩昌・余川浩太郎. 2009. ミナミマグロ漁場で漁獲される主要な外洋性サメ類3種のCPUEの経年変化の更新(1992−2007). CCSBT-ERS提出文書.
  23. 中野秀樹. 1994. 北太平洋に分布するヨシキリザメの年齢と繁殖および回遊に関する生態学的研究. 遠洋水産研究所研究報告, 31: 141-256.
  24. 中野秀樹. 1996. 北太平洋における外洋性板鰓類の分布. 月刊海洋, 28: 407-415. http://www.iccat.es/Documents/CVSP/CV046_1997/no_4/CV046040393.pdf(2017/12/13)
  25. Nakano, H., and Seki, M. 2003. Synopsis of biological data on the blue shark, Prionace glauca Linnaeus. Bull. Fish. Res. Agen., 6: 18-55.
  26. 農林省統計情報部. 1973. 昭和51年 漁業・養殖業生産統計年報. 農林統計協会, 東京. (4) + 317 pp.
  27. 農林水産省統計部. 2004-2016. 平成16年−28年 漁業・養殖業生産統計年報 (併裁:漁業生産額). 農林統計協会, 東京.
  28. 農林水産省統計情報部. 1974-2003. 昭和52年−平成13年 漁業・養殖業生産統計年報. 農林統計協会, 東京.
  29. Pratt, H.W.Jr. 1979. Reproduction in the blue shark, Prionace glauca. Fish. Bull., 77: 445-470.
  30. Rice, J. 2017. Stock assessment blue shark (Prionace glauca) in the Indian ocean using stock synthesis (IOTC-2017-WPEB13-33). Consultant, San-Sebastian, Spain.
  31. Rice, J., and Harley, S. 2014. Standardization of blue shark catch per unit effort in the North Pacific Ocean based on SPC held longline observer data for use as an index of abundance (ISC/14/SharkWG-2/04). Secretariat of the Pacific Community, Keelung, Taiwan.
  32. Semba, Y., and Kai, M. 2017. Updated standardized CPUE of blue shark (Prionace glauca) in the Indian Ocean estimated from Japanese observer data between 1992 and 2016 (IOTC-2017-WPEB13-29 Rev_1). National Research Institute of Far Seas Fisheries, San-Sebastian, Spain.
  33. Sippel, T., Wraith, J., Kohin, S., Taylor, V., Holdsworth, J., Taguchi, M., Matsunaga, H., and Yokawa, K. 2011. A summary of blue shark (Prionace glauca) and shortfin mako shark (Isurus oxyrinchus) tagging data available from the North and Southwest Pacific Ocean (ISC/11/SHARKWG-2/04). NOAA-Southwest Fisheries Science Center, Keelung, Chinese Taipei.
  34. Stevens, J.D., Bradford, R.W., and West, G.J. 2010. Satellite tagging of blue sharks (Prionace glauca) and other pelagic sharks off eastern Australia: depth behaviour, temperature experience and movements. Mar. Biol., 157: 575-591. doi:10.1007/s00227-009-1343-6
  35. Strasburg, D.W. 1958. Distribution, abundance, and habitats of pelagic sharks in the central Pacific Ocean. Fish. Bull. U.S. Fish. Wildlife Serv., 58: 335-361.
  36. 須田 明. 1953. ヨシキリザメ(Prionace glauca Linne)の生態研究. 南海区水産研究所業績, 1(26): 1-11.
  37. 水産庁(編). 1993-1997. 平成4年度-平成8年度 日本周辺クロマグロ調査委託事業報告書. 水産庁, 東京.
  38. 水産庁(編). 1998-2001. 平成9年度-平成12年度 日本周辺高度回遊性魚類資源対策調査委託事業報告書−II(別冊資料:まぐろ類等漁獲実態調査結果). 水産庁, 東京.
  39. 水産総合研究センター(編). 2002-2006. 平成13年度-平成17年度 日本周辺高度回遊性魚類資源対策調査委託事業報告書. 水産総合研究センター, 横浜.
  40. 水産総合研究センター(編). 2007. 平成18年度 日本周辺国際魚類資源調査委託事業報告書. 水産総合研究センター, 横浜.
  41. 水産総合研究センター(編). 2008-2011. 平成19年度-平成22年度 日本周辺国際魚類資源調査報告書. 水産総合研究センター, 横浜.
  42. 水産総合研究センター(編). 2012-2016. 平成23年度-平成27年度 水揚地でのまぐろ・かじき調査結果. 水産総合研究センター, 横浜.
  43. Taguchi, M., King, J.R., Wetklo, M., Withler, R.E., and Yokawa, K. 2015. Population genetic structure and demographic history of Pacific blue sharks (Prionace glauca) inferred from mitochondrial DNA analysis. Mar. Freshwater. Res., 66: 267-275.
  44. Takeuchi, Y., Tremblay-Boyer, L., Pilling, G.M., and Hampton, J. 2016. Assessment of blue shark in the southwestern Pacific. (WCPFC-SC12-2016/SA-WP-8). Secretariat of the Pacific Community, Bali, Indonesia.
  45. 田中 彰. 1984. 資源研究の現状. In 谷内 透・須山三千三(編), 資源生物としてのサメ・エイ類. 恒星社厚生閣, 東京. 46-59 pp.
  46. 谷内 透. 1984. 漁業との関わり. In 谷内 透・須山三千三(編), 資源生物としてのサメ・エイ類. 恒星社厚生閣, 東京. 35-45 pp.
  47. Tsai, W., and Liu, K.M. 2016. Catch estimate and CPUE standardization of the blue shark based on observers' records of Taiwanese large-scale tuna longline fisheries in the North Pacific Ocean (ISC/16/SHARKWG-1/22). National Taiwan Ocean University, Busan, South Korea.
  48. WCPFC. 2014. Report of the WCPFC 10th Regular Session of the Scientific Committee. Majuro, Republic of Marshall Islands. https://www.wcpfc.int/system/files/SC10%20-%20final_posted-rev.pdf(2017/12/13)
  49. WCPFC. 2017. Report of the WCPFC 13th Regular Session of the Scientific Committee. Rarotonga, Cook Islands. https://www.wcpfc.int/system/files/0_SC13%20Summary%20Report%20%28Adopted%20Version%20-%2017Nov2017%29.pdf(2017/12/13)
  50. Weng, K.C., Castilho, P.C., Morrissette, J.M., Landeira-Fernandez, A.M., Holts, D.B., Schallert, R.J., Goldman, K.J., and Block, B.A. 2005. Satellite tagging and cardiac physiology reveal niche expansion in salmon sharks. Science, 310: 104.
  51. Yokoi, H., Ijima, H., Ohshimo, S., and Yokawa, K. 2017. Impact of biology knowledge on the conservation and management of large pelagic sharks. Sci. Rep., 7: 10619. DOI:10.1038/s41598-017-09427-3