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35 ホホジロザメ 日本周辺

Great White Shark, Carcharodon carcharias

                                                                                   
PIC
ホホジロザメ(Last and Stevens 1994)

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最近の動き

世界的に特に目立った動きはなかった。2015年に引き続き、2016年12月に三重県にて定置網での混入が報告された。


利用・用途

鰭はフカヒレスープの原料に、肉は食用になる。歯や顎は工芸品として高価格で取引されるが、日本ではほとんど利用されていない。


表1

表1. ホホジロザメの年齢と全長


表2

表2. 日本周辺におけるホホジロザメの年別出現記録、括弧内は発見頭数


図1

図1. 日本周辺と世界のホホジロザメの分布(手島1994 一部改変、Last and Stevens 1994)


図2

図2. ホホジロザメの成長曲線


漁業の概要

世界的にホホジロザメを対象とする漁業はないが、定置網に迷入し漁獲されることがある。その他、刺し網、底びき網、かに籠、小型はえ縄などの沿岸漁業でもごく稀に漁獲される(Nakaya 1994、内田・戸田 1996)。本種は沿岸性が強いと考えられており、まぐろはえ縄などの遠洋漁業による漁獲はきわめて珍しい。


生物学的特性

【分布・回遊】

ホホジロザメは、全世界の温帯から亜熱帯にかけての沿岸域に広く分布する大型のサメである(Last and Stevens 1994)(図1左)。世界各地で行われている電子標識を使った標識放流調査の結果によると、本種は沿岸域の好適な場所に長期間とどまる一方で、公海域まで数千kmの距離を移動すること(Boustany et al. 2002、Bonfil et al. 2010)、沿岸に沿って長距離を移動しながら決まった場所に頻繁に戻ってくること(Bonfil et al. 2005、Bruce et al. 2006、Weng et al. 2007a、2007b)が明らかになっている。北大西洋で行われた研究によれば、大西洋の個体群は、成長に伴い表層〜中深層域まで幅広く利用しながら、沿岸域、大陸棚付近の海域、外洋域とハビタットを変化させることが報告されている。この研究によれば、沿岸域では表層域を利用しながら季節的な南北移動を行い、亜成魚や成魚になると外洋域において、鉛直方向では深度1000 mまで行動範囲が広がり、水平方向には秋〜春にかけて北西大西洋沿岸〜アゾレス諸島まで大規模な移動を示す事例が確認されている(Skomal et al. 2017)。

本種の日本周辺の分布域は、沖縄周辺から北海道周辺海域に及び、水温の季節的な変化に伴って日本周辺海域を南北回遊していると考えられている(Nakano and Nakaya 1987、Nakaya 1994、手島 1994)(図1右)。雌は、胎仔の出産などに関連した季節回遊を行っている可能性がある。

本種の系群構造については、ミトコンドリアDNAの調節領域とD-loopを解析した研究が報告されている。調節領域に基づく研究では、米国西海岸のホホジロザメは、オーストラリア・ニュージーランドの個体、南アフリカの個体とは遺伝的に異なっていること(Jorgensen et al. 2009)、D-loopに基づく研究では、日本周辺のホホジロザメは、米国西海岸、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカのホホジロザメとは別の単一系統の個体群であることが示唆されている(Tanaka et al. 2011)。


【繁殖様式】

ホホジロザメの生殖様式は、卵食型の非胎盤型胎生であり、受精卵は子宮内で発生する。卵殻からふ化した後、卵黄を吸収した胎仔は、母体の卵巣から排卵される未受精卵を食べて成長する。妊娠期間は1年以上と考えられている。

出産間近のホホジロザメの胎仔の観察結果(全長130〜150 cm)によると、腸内から胎仔の皮膚の破片及び歯が多数発見されており、子宮内における胎仔間の共食いや胎仔期における歯の生え替わりが生じている可能性がある。出産直後のホホジロザメはすでに機能的な歯を有していると考えられる(Francis 1996、内田・戸田 1996)。

出産時期は、沖縄では2〜3月頃、九州以北では4〜5月と推定されている(内田・戸田 1996)。本種の出生体長は120〜150 cm、一腹当たりの胎仔数は2〜14尾である(Compagno 2001)。出産場は妊娠個体及び出生直後と思われる遊泳幼体の出現が沖縄から近畿地方以西の海域に限られていることから、沖縄から近畿地方までの海域に存在すると考えられる(図1右)。


【成長・成熟】

本種の成長は米国西海岸、南アフリカ及び日本周辺で採取された標本に基づいて推定されている(Cailliet et al. 1985、Wintner and Cliff 1999、Tanaka et al. 2011)(表1、図2)。得られた成長式を以下に示す。

         雌雄込み(全長):Lt=764(1-e-0.058(t+3.53)) (Cailliet et al. 1985)
         雌雄込み(全長):Lt=686(1-e-0.065(t+4.4)) (Wintner and Cliff 1999)
         雄(全長):Lt=455(1-e-0.196(t+1.92)) (Tanaka et al. 2011)
         雌(全長):Lt=607(1-e-0.159(t+1.80)) (Tanaka et al. 2011)
         雌雄込み(尾叉長):
                 数式1
                 (Natanson and Skomal 2015)
         雌雄込み(尾叉長):
                 数式2(Christiansen et al. 2016)

Ltはt歳時の全長又は尾叉長、tは年齢である。全長(TL)を尾鰭前長に直すとそれぞれ653 cm(764 cm TL)、544 cm(686 cm TL)、379 cm(455 cm TL)、509 cm(607 cm TL)となる。

本種の成熟体長(全長)は、雄は310〜370 cm、雌は450〜480 cmと推定されている。成熟年齢は9〜10歳(雌雄込み:米国西海岸の成長式に基づく)で、雄は4歳(日本近海)から8〜10歳(南アフリカ)、雌は7歳(日本近海)から12〜13歳(南アフリカ)と推定されている。これまでに年齢査定された最高齢の個体は、少なくとも22年は生存していたと考えられている(例えばMollet et al. 1996)。本種の最大体長(全長)を7.6 mとすると成長式から推定される最高年齢は27歳である(Compagno 2001)。近年盛んに行われるようになった放射性炭素同位体を用いた研究によれば、雌で39年(北西大西洋:Natanson and Skomal 2015)又は40年(北西大西洋:Hamady et al. 2014)、雄で73年(Hamady et al. 2014、Natanson and Skomal 2015)、38年(インド洋南西部:Christiansen et al. 2016)は生存すると推定されている。


【食性・捕食者】

ホホジロザメは本来、機会選択的捕食者であり、その生息域内で量が多く利用しやすいものを捕食する。主に捕食するのは硬骨魚類、軟骨魚類、海産哺乳類、海鳥類、軟体動物、甲殻類、海産爬虫類(うみがめ類)、腹足類などである(Compagno 2001)。一般的に、成長と共に餌のサイズや多様性は大きくなり、2 m以下の個体では硬骨魚類やさめ類を多く捕食するのに対して、3 m以上の個体では海産哺乳類を捕食する傾向がある。ホホジロザメの捕食者としては、カリフォルニア州フェラロン諸島でシャチが3〜4 mのホホジロザメを捕食した例が報告されている(Pyle et al. 1999)。


資源状態

【資源の動向】

日本周辺海域におけるホホジロザメの年別出現数を表2に要約した。過去50年間にわたりほぼ均等な頻度で出現が報告されている。1992年に14件、1993年に7件の報告があるのは、1992年に瀬戸内海でホホジロザメによる事故が発生し、マスメディアの関心が集まった結果、例年よりもホホジロザメの報告例が増えたためと考えられる。2000年以降は、出現記録のない年もあるが、ほぼ継続的に確認されている。定置網をはじめとする沿岸漁業で漁獲された個体は、放流されるものもあり、水揚げされる個体は一部に過ぎないと考えられている。また、わが国が実施しているまぐろはえ縄漁業のオブザーバープログラムや調査船調査の資料によれば、外洋域での本種の混獲報告はほぼ0件である。主に定置網漁業での混獲が年に1~2件報告されるものの、わが国では基本的に本種を対象とした漁業は無いため、漁獲圧は低いと考えられる。


管理方策

本種の管理措置はない。我が国には本種を対象とした漁業はなく、積極的な漁獲努力は行われていないので、特に管理方策を策定する必要はないと考えられる。なお、ホホジロザメが絶滅の危機にあるとして、2000年のワシントン条約(CITES)第11回締約国会議では附属書I掲載提案が米国とオーストラリアから共同で提出されたが否決された。その後、2002年の第12回締約国会議では提案はなく、2004年の第13回締約国会議にオーストラリアとマダガスカルから共同で提案され、採決の結果、附属書IIへの掲載が採択された。このことから国際取引が規制されるようになったが、我が国はさめ類を含む海産種の資源管理については、漁業管理主体であるRFMO又は沿岸国が適切に管理していくべきとの立場等から、ホホジロザメの附属書IIへの掲載に関して留保を付している。

  
        

ホホジロザメ(日本周辺)の資源の現況(要約表)

資源水準
資源動向
世界の漁獲量
(最近5年間)
調査中
我が国の漁獲量
(最近5年間)
年間1〜2個体程度の出現が報告されている
管理目標 なし
資源評価の方法 検討中
資源の状態 検討中
管理措置
管理機関・関係機関 FAO、CITES
最新の資源評価年
次回の資源評価年

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

仙波 靖子


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*和名のホオジロザメは原文のままとした。