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30 カツオ 中西部太平洋

Skipjack, Katsuwonus pelamis

                                                                               
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最近の動き

中西部太平洋における本種の最新の資源評価は太平洋共同体事務局(SPC)の専門家グループにより2016年に行われており、それ以降カツオ資源状況に関する新たな見解は示されていない。2017年12月のWCPFC第14回年次会合においては、メバチ・キハダ・カツオの保存管理措置の見直しも議論され、2018年1年間の暫定措置として、まき網漁業によるEEZ内、公海域FAD禁漁期間がそれぞれ3ヶ月と5ヶ月に短縮、公海操業日数制限は先進国に加え、島嶼国がチャーターする船にも適用、FAD個数制限を1隻あたり常時350個以下とすること等が決まった。また、近年のWCPFCにおいては、長期的な管理枠組みとしての漁獲戦略の導入の議論が進んでいる。


利用・用途

缶詰や節原料のほか、刺身・たたきで生食される。


表1

表1. 中西部太平洋における竿釣り及びまき網の主要漁獲国によるカツオの漁獲量(WCPFC 2017より集計)(単位:千トン)


表2

表2. 資源評価結果に基づいた親魚資源量、漁業がないと仮定して推定した現在の資源量に対する比率、漁獲死亡係数の機関・国別の比較


表3

表3. WCPFCにおける管理戦略に関する検討状況(Nakatsuka 2017を改変)


図1

図1. 中西部太平洋におけるカツオの漁法別漁獲分布(1990〜2016年)
赤:竿釣り、青:まき網、黄:その他。海区区分番号は資源評価で使用した区分番号と同じ。


図2

図2. 2015年中西部太平洋におけるカツオの漁法別サイズ別漁獲量(Williams et al. 2017)
赤が竿釣り、黄がフィリピン・インドネシアの漁業、水色がまき網付き物操業、濃い青がまき網素群れ操業を表す。


図3

図3. 中西部太平洋におけるカツオの主要漁法別漁獲量の経年変化(WCPFC 2017より集計)


図4

図4. 中西部太平洋におけるカツオの国別漁獲量年変化(WCPFC 2017より集計)


図5

図5. 太平洋におけるカツオの分布域、産卵域及び漁場


図6

図6. 中西部太平洋のカツオの成長パターン(嘉山ほか 2003、Tanabe et al. 2003より作成)


図7

図7. von Bertalanffyによる耳石輪紋間隔に基づいた成長式(赤)とMultifan-CLによって推定された成長式(紫)(Ochi et al. 2016)


図8

図8.推定カツオ北上経路と黒潮、黒潮続流、北赤道海流


図9

図9. アーカイバルタグから推定されたカツオ北上移動経路(清藤 2014)


図10

図10. 中西部太平洋カツオ資源評価に適用した海域区分(左)と各海域間の移動の割合(右)(McKechnie et al. 2016)


図11

図11. 提案された新しい海域区分(Kiyofuji and Ochi 2016)


図12

図12.2〜3月に中南海域で放流された2個体のカツオ鉛直遊泳行動(岡本ほか 2011)
(左)放流位置のCTD観測結果(黒:水温、青:塩分)、(右)遊泳深度。


図13

図13.各海域における資源量推定値の経年変化(McKechnie et al. 2016)
中西部太平洋(WCPO)全域の資源量推定値。各海域は図1を参照。


図14

図14.各海域における加入量推定値の経年変化(McKechnie et al. 2016)
中西部太平洋(WCPO)全域の加入量推定値。各海域は図1を参照。


図15

図15.推定された海区別漁獲係数(F)(McKechnie et al. 2016)


図16

図16.資源状態を記述するために使用される漁獲係数と産卵親魚量の関係図
左:MSYレベルを基準とした漁獲係数の相対値(F/FMSY)と産卵親魚量の相対値(SB/SBMSY)の経年変化(McKechnie et al. 2016);縦軸及び横軸の1.0はMSYレベルを示す。
右:MSYレベルを基準とした漁獲係数の相対値(F/FMSY)と漁獲の有無による資源量の相対値(SB/SBF=0)の経年変化(McKechnie et al. 2016);横軸の1.0はMSY、縦軸の0.2は漁獲がないと仮定して推定した現在の産卵資源量の20%を意味し、限界管理基準値として合意されている;緑直線は、2015年年次会合で合意された暫定的な目標管理基準値を意味する(漁獲が無いと仮定して推定した現在の産卵資源量の50%)。


図17

図17. 設定の違いによる産卵資源量の推定値
黒:SPCが示したreference case


漁業の概要

中西部太平洋におけるカツオの大部分は熱帯域で漁獲され、残りのほとんどが日本近海で季節的に漁獲されている(図1)。西部熱帯域では、インドネシアやフィリピンの近海漁業による漁獲が主要な部分を占める。中部熱帯域では、遠洋漁業国及び島嶼国のまき網漁業の漁獲が卓越している。中西部太平洋で漁獲されるカツオの尾叉長は概ね40〜60 cmが主体であるが、20〜40 cmの個体の大部分はインドネシア、フィリピン水域で漁獲される(図2)。

中西部太平洋におけるカツオの漁獲は、主に日本により行われてきた。竿釣りは江戸時代から始まり、大正初期に漁船の動力化が始まると漁場は急速に広がり、台湾北西部や小笠原諸島近海まで出漁するようになった。さらに、南洋諸島が日本の委任統治領となると、サイパン、トラック、ポナペ等を基地とした現地操業も始まった。昭和に入ると冷凍魚も扱われるようになり、漁場は日本の東北沖では沖合600マイル、南方ではマリアナ諸島、スルー海まで広がり、日本近海での季節的操業に限定されず、近海から遠洋までほぼ周年にわたって操業するものも増え、戦前のピーク時には10万トンを超える漁獲量に至った。戦後まもなく大戦による落ち込みから回復し、1952年にマッカーサーラインが撤廃されると、漁獲量は1960年前後には10万〜17万トン、1970年には20万トンを超え、1970年代後半には30万トンを超えた。この間の漁獲の伸びは主に竿釣りが中心であったが、漁場の拡大に伴う活餌保持の問題と燃油高騰等の経済的要因から、遠洋竿釣り漁船数は減少し、漁獲量の伸びは停滞した。1980年代には各国のまき網船に よる熱帯水域漁場の開発も始まり漁獲量の急増期に入った。中西部太平洋における漁獲量は1970年代まで40万トン台であったが、1990年代には100万トン前後に増大、さらに2009年には180万トン近くに達し、2011年にかけて減少した後、再び増加に転じ、2014年には約200万トンに達したが、2016年は約180万トンで約20%減少した(WCPFC 2017)(図3)。この間、竿釣り・まき網両漁業ともに、漁具の改良に加え、操業機器の開発・改良(低温活餌槽、海鳥レーダー、ソナー、集魚装置(FAD)等)と情報収集能力(衛星情報、インターネット利用)が向上した。

2016年の漁法別漁獲量(暫定値)は、まき網が約137万トンで78%、竿釣りが約15万トンで8%、その他の漁業が約25万トンで全体の12%であった(図3)。まき網については米国、韓国、台湾及び日本の遠洋漁業国が近年の漁獲量の5〜6割を占め、他はインドネシア、フィリピンが多い。2014年については、特に韓国、米国が多く漁獲し、それぞれ21.9万トン、24.8万トンであった。竿釣りについては2005年頃まで日本が約6割を占めていたが、次第に減少し、2006年以降はインドネシアが最も漁獲量が多くなり、日本は近年4〜5割ほどになっている(表1)。

国別漁獲量は、2009年を除き2010年までは日本が最大であったが、2011年には24万トンに減少し、インドネシアが27万トンで最大となり、それ以降継続して漁獲量は高く推移している。韓国、フィリピン、台湾、米国は近年それぞれ15万〜25万トンほど漁獲している(図4)。

日本近海は本種の分布縁辺部にあたり(図5)、漁獲は資源量と北上回遊・漁場形成に係わる海洋環境に影響される。日本近海の漁獲量は、1970年代以降9万〜21万トン(北緯20度以北)で推移している。常磐・三陸沖漁場が中心的漁場となっているが、漁獲量の変動が激しく、1970年代以降では2万〜14万トン(北緯35度以北の竿釣りとまき網の合計)である。この漁場では、竿釣りに加え、まき網操業が1980年代後半から増加している。2016年の常磐・三陸沖漁場の漁獲量は、近海竿釣り約2.6万トン、北部まき網0.9万トンであり、2006〜2015年の10年平均値(竿釣り2.9万トン、北部まき網2.4万トン)に比べて竿釣りもまき網も下回った。日本沿岸域のひき縄による漁獲は1,642トンであり、日本近海漁獲量の約2%程度である。2014年春季(3〜5月)の日本沿岸域(高知県・和歌山県)におけるひき縄漁業によるカツオ漁獲量は過去最低を記録した(小倉 2015)。


生物学的特性

【分類・系群】

カツオ(Katsuwonus pelamis)はスズキ目サバ科カツオ属1属1種で、3大洋全ての熱帯〜温帯水域、概ね表面水温15℃以上の水域に広く分布している。これら3大洋の系群は別系群と考えられているが、太平洋内については単一系群とする説と複数系群とする説がある。歴史的に系群構造の推定は生化学的分析(1960〜1980年代)とDNA分析(1980年代〜現在)とに大別できる。血清蛋白を用いた集団遺伝学的研究では、太平洋には西部に1系群、中部及び東部に1つ以上の系群が存在するとしたが(Fujino 1996)、遺伝子頻度の差が遺伝的な隔離による確証はない。一方、DNA分析では、研究結果により遺伝的な差異が有意な場合とそうでない結果が示されており、この原因究明が今後の課題である。このため、系群構造に関しては確固たる結論が得られていない(鈴木 2010)。資源管理は、漁業の分布にあわせて東部太平洋と中西部太平洋に分けて行われている。


【成長・成熟】

成長は、近年耳石の日周輪の観察により明らかになってきた。ふ化直後は全長2.6 mm程度であるが、その後の成長は早く1.5か月後には10 cmを超え、6か月で約30 cmに成長する。その後、満1歳で尾叉長44 cm、満2歳で62 cmに達する(嘉山ほか 2003、Tanabe et al. 2003)(図6)。80 cmを超える大型魚は、はえ縄等でわずかに漁獲されることがあり、最大体長は100 cmに達するとされる。これらの大型魚は6歳以上と考えられている。

成熟は尾叉長40〜45 cmで開始するとされてきたが、最近の組織学的分析結果では、成熟開始体長は雌で40.0 cm、雄で35.5 cmと雄の成熟開始が早いことが明らかになった(芦田 2010)。1回の産卵数は魚体サイズにより7.6万〜130万粒である。産卵は、表面水温24℃以上の水域で広く行われ、特定の産卵域は形成されない。産卵期は、熱帯水域では周年とされ、日本近海では沖縄周辺はもとより伊豆諸島から北緯35度付近にも仔魚の出現が見られ、規模は小さいものの産卵が行われていると考えられている(上柳ほか 1973)。亜熱帯から温帯域における産卵生態は今後の研究課題である。卵は分離浮性卵で、卵径約1 mm、水温27℃では約25時間でふ化する。多回産卵とされているが、個体の産卵期間・頻度・間隔等、再生産機構については不明な点が多い。なお、資源評価で使用されるモデルでは、耳石の解析から得られた成長式よりも早い成長を仮定しており、このため本資源の最生産力が過大に推定されている可能性がある(Ochi et al. 2016)(図7)。


【食性・被食】

餌生物は魚類、甲殻類、頭足類で、餌生物に対する選択性は弱く、その水域にいる最も多いものや捕食しやすいものを食べていると考えられている。捕食者は、カツオ自身を含め、まぐろ類・かじき類、カマスサワラ、ウシサワラ、さめ類、海鳥が挙げられる。これらの胃中に発見されたカツオのサイズは3〜70 cmにおよぶが、20 cm以下が最も多く観察されている。


【仔稚魚期の生態】

稚魚期の餌は魚類仔魚であるが、キハダ等のマグロ属の稚魚よりは魚食性は弱く、カイアシ類、オキアミ類や頭足類も捕食する。摂餌活動は昼間行われ、視覚捕食者である。成長に伴い捕食する魚類・甲殻類・頭足類のサイズは大型化するが、胃内容物には動物プランクトン等も引き続き出現する。餌の選択性は弱く、周りの餌環境と遊泳能力・口の大きさ等で決まると考えられている。仔魚は朝から夕方にかけて摂餌活動を行い、夜間には摂餌を行わない典型的な視覚捕食者である(田邊 2002)。稚魚期においても仔魚期同様、夜間には摂餌を行わない。

仔稚魚期の鉛直分布は表層混合層下部から水温躍層が中心で、まぐろ類より深い。時間帯別の採集結果から、夜になると表層近くへ浮上する日周鉛直移動を行っていると考えられている。また、発生直後は水温躍層よりも浅い水深に分布するが、成長に伴ってより深い水深帯にも分布するようになる。


【分布・回遊】

太平洋におけるカツオの分布域は、適水温帯の分布にあわせて西側で南北に広く東側では狭くなる(図5)。大型魚ほど熱帯水域のみに分布する傾向があり、若齢ほど南北方向の分布範囲が広い。したがって、熱帯水域には仔稚魚から60 cm以上の魚まで全てのサイズが分布しているが、分布の縁辺部である温帯域には1歳魚の摂餌回遊群が季節的に分布する。本種は大洋の沖合域に広く分布し、標識放流からは西部太平洋と中部太平洋の交流及び東部太平洋から中部太平洋への移動が確認されており、フィリピン群島付近も中西部太平洋の魚群の移動範囲に含まれる。また、熱帯域におけるカツオ漁場は、ENSO(El-Niño and Southern Oscillation:エルニーニョ・南方振動)に伴う西部太平洋の暖水(warm pool)に強く影響されていることが明らかになっている(Lehodey et al. 1997)。

これまでに実施されてきた標識放流の結果から、日本近海への主要な来遊ルートは、黒潮沿い、紀南・伊豆諸島沿い、伊豆諸島東沖があると考えられ、三陸沖漁場では沖合から現れる魚群もあり、天皇海山漁場まで含めた東沖からの来遊も示唆されている(浅野 1984、田代・内田 1989、川合 1991)(図8)。日本近海へは、主に尾叉長30 cm台後半(1歳弱)以降の魚が来遊する。これらの中で特に重要なのは伊豆諸島沿いと伊豆諸島東沖を北上するルートで、日本近海の主要漁場である常磐・三陸沖へと来遊してくる。三陸沖へ来遊する魚群は、9月頃に北緯41度付近まで達した後、南下することが明らかとなっている(渡辺ほか 1995)。小笠原諸島から伊豆諸島を北上するルートでは、伊豆半島沖に西進する魚群と、5月以降に伊豆諸島東沖から来遊する魚群と房総沖から常磐・三陸沖へ北上する魚群が見られる。黒潮沿いを北上するルートは、南西諸島から薩南海域に入り、一部は黒潮から分岐する対馬暖流沿いに九州西岸・五島付近に達するが、多くは薩南海域から四国沖・紀伊半島沖を通過し、遠州灘・伊豆諸島周辺に達 する。さらに一部は伊豆諸島周辺に達した後、常磐・三陸海域に北上する魚群も見られる。なお、黒潮沿いを北上するルートは「北上するカツオは黒潮に乗ってくる」等、主要な来遊ルートのごとく表現されてきたが、科学的な観測事実に裏付けられていないとの指摘がある(川崎 1965、川合 1991)。

水産研究・教育機構では、亜熱帯海域からのカツオ北上来遊経路を明らかにするために、2011年から電子標識放流を実施している。主な放流海域は、与那国島周辺、沖ノ鳥島周辺、硫黄島周辺海域での3海域である。放流の対象としたカツオのサイズは、春先に日本近海で漁獲対象となるサイズを考慮し、尾叉長40 cm前後とした。与那国周辺で放流したカツオは太平洋側に出ていくことなく北東方向に進み、夏から秋にかけてトカラ列島周辺海域に留まった。沖ノ鳥島周辺で放したカツオは一直線に北緯28度付近まで北上し、北西方向に向きを変えた後、足摺岬周辺でおそらく黒潮にぶつかり、東へ転進した。硫黄島周辺で放流したカツオも北上した後、北緯30度付近で留まる傾向を示した。これらの結果から、南から日本近海へのカツオの来遊経路は大まかに、@東シナ海黒潮沿い経路(トカラ周辺海域止まり)、A九州・パラオ海嶺経路、B伊豆・小笠原列島沿い経路の3経路があるとの結論に達した(図9)。また、沖ノ鳥島と硫黄島周辺で放流したカツオが迂回や滞留した海域には、水温20℃以下の水塊が分布しており、カ ツオはこの水温帯を避けるように迂回した(図9)。タグに記録されていた水温も95%が18℃以上であったことから、日本近海へのカツオの来遊に影響する要因の一つとして冬季から春季にかけて日本南方に形成される水温18℃以下の分布が考えられた(清藤 2014)。

なお、資源評価で使用されるモデルでは、そこから計算される海域間の交流率が、日本による上記標識放流調査などの結果よりも小さく、例えば熱帯域と日本周辺海域の交流が再現できていない(図10)。このため、日本からは、現在使用されている海域区分は間違っている可能性があるとして、近年日本が実施してきた標識放流再捕結果を踏まえた新しい海域区分を提案している(図11)。

また、仔稚魚分布とともに漁業の対象とならない20〜35 cm程度のカツオ幼魚分布を明らかにすること、耳石輪紋間隔に基づいた成長式推定のためのサンプル採集調査を2015年度より開始した。2017年は、インドネシア海洋漁業センターとの共同研究として、インドネシア群島水域内での調査を実施した。


【行動】

カツオの遊泳行動を明らかにするためにテレメトリーや記録型標識による行動研究が行われている(小倉 2002、Schaefer and Fuller 2007)。記録型標識の結果では、夏季の北上群は、夜間は45%が5 m以浅の表層を遊泳し、昼間も20%近くが表層を遊泳していることが明らかとなった(小倉 2002)。

東部熱帯域で記録型アーカイバルタグを取り付けた体長60 cm前後の大型のカツオ5匹の鉛直行動は、夜間の98.6%が水温躍層(44 m)より浅い深度を、昼間は37.7%が水温躍層より深い深度を遊泳し、この昼夜の遊泳深度は、深海音響散乱層(Deep-scattering layer:DSL)の日周変動と良く一致したので、索餌行動に起因する行動であると示唆された(Schaefer and Fuller 2007)。40 cm前後の比較的小型のカツオに取り付けたアーカイバルタグデータに基づくと、95%以上が23.8℃以上の表層(120 m以浅)に分布していたことが明らかとなった(岡本ほか 2011)(図12)。また、観察事例は少ないが、カツオは昼間70%近くの時間は潜っており、浮上してきた僅かな時間がカツオと漁業との接点になっていること(岡本ほか 2011)、熱帯域における昼間の遊泳水深は水温躍層より深いことが明らかになっている(Schaefer and Fuller 2007)。


資源状態

中西部太平洋のカツオの最新の資源評価は2016年にSPCの専門家グループにより実施された(McKechnie et al. 2016)。解析には統合モデルのMultifan-CLが用いられた。評価期間は1972〜2015年とし、漁獲量データ、努力量データ、体長組成データ、標識放流再捕データを入力して行われた。これらのデータは5海域(図1)、23の漁業定義に基づいて集約された。前回(2014年)に実施された資源評価からの設定を継承することに重きを置き、実施された。

SPCは、13通りの評価結果を示し、どの結果も同じようにありえるとしつつも、その中の1つを取り上げ、参照事例(資源状態を記述するための基本的な結果;Reference case)として提示した。それによると、中西部太平洋全域における産卵親魚量は2010年以降、増加傾向を示した(図13)。加入量は、1980〜1986年まで増加した後、1995年以降は横ばい傾向であった(図14)。漁獲係数は年々増加しており、2010年前後に最大となった後、減少した(図15)。現在(2015年)の産卵資源量は漁獲がなかったと仮定して推定された産卵親魚量の約58%であった(図13右)。現在(2011〜2014年)の漁獲圧はMSYを下回っており(Frecent/FMSY:0.45)、かつ産卵資源量はMSYレベルを上回っていた(SBrecent/SBMSY:2.31)(図13左)。これを踏まえ、SPCは、参照事例の評価結果のみから、資源は過剰漁獲の状態にはなく、乱獲状態にも陥っておらず、また、資源状況は改善し、漁業による圧力は減少していると評価した。同年8月のWCPFC科学小委員会において、SPCの評価結果は大半 のメンバーに支持された。一方、日本、中国、台湾は、SPCが説明したどの評価結果も同様にあり得るのであれば、資源水準はその上限と下限の範囲で示すべきと主張した。また、資源評価モデルの設定(成長式、海域区分、自然死亡率)に問題があること、かつそれらの妥当性の検証も十分に行われていないこと、モデルで使用されているデータや設定の評価結果への影響の診断が行われていないこと、SPCが選んだ評価結果は日本近海で操業する漁業者の感覚とも大きく乖離しており、支持できないと主張した。このため、科学小委員会はSPCの評価結果を承認せず、双方が支持する資源水準(表2)が会合レポートに掲載された。

また科学小委員会は、SPCが示した計算結果のいくつかは現在の産卵資源量が暫定的な目標管理基準値(漁業がないと仮定して推定した現在の資源量の50%)を下回っていることを留意するとともに、@分布水域縮小に関する研究の継続、A暫定目標管理基準値を達成するための措置の採択、B標識放流調査の継続、Cまき網漁業データに基づく資源量指数のための研究の継続を勧告した。


管理方策

2017年12月のWCPFC年次会合において、既存のメバチ・キハダ・カツオの保存管理措置が2017年で失効し、規制がない状態に戻るため、2018年以降の措置について議論が行われ、2018年1年間の暫定措置として以下のように合意された。なお、島嶼国以外のメンバーが大型まき網漁船の隻数を増やさない措置は継続となった。

1. まき網漁業によるEEZ内、公海域FAD禁漁期間がそれぞれ4ヶ月と12ヶ月から、3ヶ月と5ヶ月に短縮
2. 公海操業日数制限は、先進国に加え、島嶼国がチャーターする船にも適用
3. FAD個数制限として、新たに1隻あたり常時350個以下とすることが決定

また、2015年第12回年次会合においては、カツオの長期管理目標として、@漁業がないと仮定して推定した現在の産卵資源量の50%を暫定的な目標とすること、Aこの管理目標値は遅くとも2019年に見直され、それ以降も適宜見直されること、B見直しに際しては、日本沿岸域への来遊状況等に関する科学委員会の勧告が考慮されること、が合意されている。

現在、WCPFCにおいては、漁獲戦略ルールの導入に向けた議論が活発になってきており、漁獲戦略ルールの検討状況は表3に示す通りである。なお、WCPFCを含む近年のまぐろ類RFMOにおけるMSEの進捗状況についてはNakatsuka(2017)が詳しく、MSE概論は、国際資源の現況の「3. まぐろ類の漁業と資源調査(総説)」を参照のこと。


カツオ(中西部太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向
世界の漁獲量
(最近5年間)
175.4万〜200.2万トン
最近(2016)年:178.6.万トン
平均:183.5万トン(2012〜2016年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
19.2万〜25.8万トン
最近(2016)年:19.2万トン
平均:23.0万トン(2012〜2016年)
管理目標 暫定的に漁業がないと仮定して推定した現在の資源量の50%とすることが2015年の年次会合で合意されている。
資源評価の方法 統合モデル(Multifan-CL)による解析
資源の状態 2016年科学小委員会では合意できず。
管理措置 ・メバチ・キハダ・カツオの保存管理措置は、2018年1年間の暫定措置として、まき網漁業によるEEZ内、公海域FAD禁漁期間がそれぞれ3ヶ月と5ヶ月に短縮、公海操業日数制限は先進国に加え、島嶼国がチャーターする船にも適用、FAD個数制限を1隻あたり常時350個以下とすることが決まった(FAD操業規制はメバチ幼魚死亡率削減を目的とするが、本種にも影響を与えている)。
・長期管理目標として、@漁業がないと仮定して推定した現在の資源量の50%を暫定的な目標とすること、Aこの管理目標値は遅くとも2019年に見直され、それ以降も適宜見直されること、B見直しに際しては、日本沿岸域への来遊状況等に関する科学委員会の勧告が考慮されることについて、2015年第12回年次会合で合意。   
管理機関・関係機関 WCPFC、SPC
最新の資源評価年 2016年
次回の資源評価年 2019年

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

清藤 秀理


参考文献

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