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24 メカジキ 南大西洋

Swordfish, Xiphias gladius

                                                                                   
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最近の動き

2017年に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の科学委員会(SCRS)により本種の資源評価が実施された。資源評価にはJust Another Bayesian Biomass Assessment(JABBA)及びBayesian Surplus Production 2(BSP2)が用いられ、JABBAの結果を元に資源状態は乱獲状態にあり、漁獲は過剰漁獲の状態ではないものの、MSYレベルに近いことが示された。また、SCRSは将来予測の結果から、総漁獲量(TAC)を近年の15,000トンで維持した場合、2028年に資源がMSYレベルに回復する可能性が26%であり、50%以上の可能性で資源を維持するためには、TACを14,000トンとする必要があることを指摘した。本結果を受けて、ICCATは2018〜2021年のTACを14,000トンと設定した。なお、日本の漁獲割り当ては901トンである。


表1

表1. 南大西洋におけるメカジキの近年の国別漁獲量(Anon. (ICCAT) 2017)
* 2016年の漁獲量は暫定値


表2

表1. 将来予測による一定の漁獲量(Y軸:TAC)に対してある年までにB>BMSY、F<FMSYとなる確率(Anon. (ICCAT) 2017)
灰色の部分はそれぞれB>BMSY、F<FMSYとなる確率が50%以上を示す。


図1

図1. 南大西洋におけるメカジキの漁法別漁獲量(1951〜2016年)(Anon. (ICCAT) 2017)


図2

図2. 南大西洋におけるメカジキの国別漁獲量(1951〜2016年)(Anon. (ICCAT) 2017)


図3

図3. 大西洋における漁法ごとのメカジキの累積漁獲量(2010〜2015年の合計)の分布図(Anon. (ICCAT) 2017)
青がはえ縄漁法、灰色がその他の漁法による漁獲量を示す。円の大きさは漁獲量の相対的な比を表す。凡例の丸は上から32,500トン、65,000トン。南北の系群は北緯5度(太線)で仕切られている。


図4

図4. 国別の標準化されたCPUE(Anon. (ICCAT) 2017)
平均値でスケール化されているため単位はない。


図5

図5. JABBAで推定された相対資源量(B/BMSY:右図)及び相対漁獲係数(F/FMSY:左図)(Anon. (ICCAT) 2017)
点線は95%信頼区間。


図6

図6. BSP2で推定された相対資源量(B/BMSY:青線)及び相対漁獲係数(F/FMSY:赤線)(Anon. (ICCAT) 2017)
実線は推定値、破線は90%信頼区間。


漁業の概要

南大西洋のメカジキは、1980年代末まで主に日本、台湾、韓国のはえ縄の混獲物として漁獲されており、総漁獲重量は10,000トン未満と少なかった(図1、図2)。1989年からメカジキを目的にはえ縄の浅縄操業を行うスペインの船団が参入し、1995年の総漁獲量は21,930トンへと急増した。これは、スペインの漁場が徐々に北大西洋及び他の大洋から南大西洋へとシフトしたことによるが、加えて、ブラジル、ウルグアイ等の沿岸国が漁獲を伸ばしたことも影響している。近年これらの国々のメカジキ漁獲量は減少傾向にある。大西洋における2010〜2015年のメカジキ累積漁獲量の分布図を図3に示す。2016年の漁獲量は1995年より約65%減の7,725トンであり、前年の漁獲量(10,319トン)より減少した(表1)。これは主にスペインの漁獲量が増加したためである。しかし、ブラジルとウルグアイの努力量は近年減少している。また、ウルグアイは近年ビンナガの漁獲枠が増加したため、近い将来混獲によりメカジキに対する努力量が増加する可能性が高い。

大西洋で行われる我が国の漁業において、メカジキは主に熱帯・亜熱帯域で操業するメバチを対象としたはえ縄操業の混獲物である。1995年以降メバチの漁場がそれまでの南大西洋から徐々に北大西洋に移行したため、南大西洋の我が国のメカジキ漁獲量は減少傾向にある。


生物学的特性

メカジキの資源構造については、1990年代中期から2000年代中期にかけて分子遺伝学的手法による研究が精力的に行われ、2006年にはICCATでメカジキの資源構造に関するワークショップが開催された(Anon. (ICCAT) 2006、ICCAT 2006)。これまでの研究結果は、ミトコンドリアDNA・核DNAの塩基配列の違いに基づき、地中海、北大西洋、南大西洋、太平洋の4つの独立した系群の存在を示唆している。大西洋におけるメカジキの南北の境界線については、便宜的に北緯5度線が境界として定められているが(Miyake and Rey 1989)、この境界よりも北であるとの指摘がある(Chow and Takeyama 2000)。また、Chow and Nohara(2002)は、本系群はアフリカ沿岸では北緯15度付近まで分布する可能性を示唆している。2006年のワークショップでは、同様な指摘が複数報告されたが、どの研究もカバーする水域や時期が限られており、境界を変える判断を下すに不十分であるとされた。その後、北緯10〜20度において広く標本が収集・分析され、境界線が北緯15度付近にあることが示された(Chow et al. 2007)。最新の 遺伝解析による知見(Smith et al. 2015)では、南北大西洋の境界線が北緯20〜25度、西経45度付近にあり、地中海と大西洋の境界線が西経10度にあることが示されたが、資源の境界線については、資源分布の季節的な変化の影響を十分に調べる必要があるため、現在の境界線を維持することとなった(Anon. (ICCAT) 2015)。

メカジキの産卵場は熱帯及び亜熱帯域にあり、成長したメカジキはアフリカ沿岸方面やウルグアイ沖合水域に摂餌のために回遊すると考えられている(Anon. (ICCAT) 2014)。南大西洋のメカジキの年齢、成長、成熟に関して本格的な研究はまだ行われていない。


資源状態

最新の資源評価は2017年にICCATのSCRSによって1950~2015年までのデータを用いて実施された。資源評価にはJust Another Bayesian Biomass Assessment(JABBA)及びBayesian Surplus Production 2(BSP2)が用いられ、資源量指数と将来予測の計算にはJABBAが、感度解析にはBSP2が使用された。両モデルともに資源量指数として、日本、台湾、スペイン、ブラジル、ウルグアイ、南アフリカのはえ縄の資源量指数を使用した(図4)。なお、前回の資源評価では、各国のCPUEトレンドが大きく異なるうえに変動も大きいため、ブラジルを除いた一本のCPUEとブラジルと台湾の両方を除いた一本のCPUEが使用されたため、今回の資源評価結果は単純に前回の資源評価結果と比較することはできない。

2種類のモデルによる本種の資源評価結果の結果は概ね一致していた。BSP2の結果から、現在の資源量(B2015)はBMSYよりも低く、現在の漁獲圧(F2015)はFMSYよりも高いと推定された(図5)。JABBAモデルは、F2015がFMSYに非常に近く、B2015はBMSY未満であると推定した(図6)。JABBAの結果から本種の資源状態は乱獲状態にあり、漁獲は過剰漁獲の状態ではないものの、MSYレベルに近いことが示された。また、SCRSは、JABBAを用いて2028年までの将来予測を行った。漁獲量を既存のTAC(15,000トン)とした場合では、10年後にMSYレベルに回復する可能性は26%であり、50%の確率で資源量と漁業をMSYレベルにするためには漁獲を14,000トンに減少させる必要があることが示唆された(表2)。

漁獲量規制の導入に伴って、混獲されるメカジキの水揚量を調節するために、生きて漁獲されたメカジキを放流する動きが出てきたが、一部の国では放流個体数等についての情報収集が十分にされていないこと、過少報告の可能性があることが指摘されている(Anon. (ICCAT) 2013)。データの質・量の低下は資源評価の信頼性を落とすことに繋がるので、今後改善が必要である。


管理方策

ICCATは2014〜2017年の間、各年15,000トンのTACを設定していたが、2017年の年次会合において、2018?2021年までのTACを14,000トンとした。日本の割当量は901トンである。国別割り当て分を超過もしくは余った場合には、2年以内であれば差し引き・上乗せを行い調整することができる。ただし、調整分は前年の割り当て量の20%を超えない範囲とする(Anon. (ICCAT) 2013)。

現在、大西洋全域について、@下顎叉長125 cm/体重25 kg未満の個体の水揚量を15%以下に抑える、またはA下顎叉長119 cm/体重15 kg未満の個体の水揚量を0%にする(投棄量の評価含む)、という2種類の最小体長規制がある(Anon. (ICCAT) 2015)。2006〜2008年の大西洋全体で水揚げされた125 cm以下の個体の割合は24%(尾数)と推定されている(北系群では28%、南系群では20%)(Anon. (ICCAT) 2013)。


メカジキ(南大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
7,725〜10,686トン
最近(2016)年:7,725トン
平均:9,380トン(2012〜2016年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
639〜1,162*1トン
最近(2016)年:639トン
平均:824トン(2012〜2016年)
管理目標 MSY:約14,600トン
資源評価の方法 Just Another Bayesian Biomass Assessment(JABBA)及びBayesian Surplus Production 2(BSP2)による。
資源の状態 B2015/BMSY=0.72(0.53〜1.01)*2
F2015/FMSY=0.98(0.70〜1.36)*2
管理措置
  • 2018〜2021年のTACを各年14,000トン(日本の割り当ては901トン)とする。国別割り当てについて、割り当て分を超過もしくは余った場合には、2年以内であれば差し引き・上乗せを行い調整することができる。ただし、調整分は前年の割り当て量の20%を超えない範囲とする。
  • 下顎叉長125 cm/体重25 kg未満の個体の水揚量を15%以下に抑えるか、下顎叉長119 cm/体重15 kg未満の個体の水揚量を0%にする(投棄量の評価含む)。
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2017年
次回の資源評価年 未定
*1 この値は日本の近年の漁獲割当量を上回っているが、これは、ICCATの合意に基づいた過去の漁獲割り当ての未消化分の漁獲が含まれているためである。
*2 Just Another Bayesian Biomass Assessment(JABBA)の中央値と95%信頼区間。

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

井嶋 浩貴


参考文献

  1. Anon. (ICCAT) 2006. 8 Executive summaries on species. 8.8 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, October 2 to 6, 2006). PLE-014/2006. 83-91 pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/PLE-014%20EN.pdf(2008年10月31日)
  2. Anon. (ICCAT) 2013. 8 Executive summaries on species.8.9 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, September 30 to October 4, 2013). 161-180 pp.
  3. Anon. (ICCAT) 2014. 8 Executive summaries on species.8.9 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, September 29 to October 3, 2014). 145-164 pp.
  4. Anon. (ICCAT) 2015. 8 Executive summaries on species.8.9 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, September 28 to October 2, 2015). 158-176 pp.
  5. Anon. (ICCAT) 2017. 8 Executive summaries on species.8.9 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, October 2 to 6, 2017). 156-178 pp.
  6. Chow, S., Clarke, S., Nakadate, M., and Okazaki, M. 2007. Boundary between the north and south Atlantic populations of the swordfish (Xiphias gladius) inferred by a single nucleotide polymorphism at calmodulin gene intron. Mari. Biol., 152: 87-93.
  7. Chow, S., and Nohara, K. 2002. Further implication on boundary between north and south Atlantic stocks of the swordfish. SCRS/2002/141. ICCAT Col. Vol. Sci. Pap., 55: 1719-1722.
  8. Chow, S., and Takeyama, H. 2000. Nuclear and mitochondrial DNA analyses reveal four genetically separated breeding units of the swordfish (Xiphias gladius). J. Fish Biol., 56: 1087-1098.
  9. ICCAT. 2006. Report of the 2006 Atlantic swordfish stock assessment session (Madrid, September 4 to 8, 2006). SCRS/2006/015. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/SCI-040%20EN.pdf(2008年10月31日)
  10. Miyake, P.M., and Rey, J.C. 1989. Status of Atlantic broadbill swordfish stocks. In Stroud, R.H. (ed.), Planning the Future of Billfishes Part I 115-136 pp. National Coalition for Marine Conservation Incorporation, Athens, Georgia, USA.
  11. Smith, B.L., Lu, C.-P., García-Cortés, B., Viñas, J., Yeh, S.-Y., and Alvarado Bremer, J.R. 2015. Multilocus Bayesian Estimates of Intra-Oceanic Genetic Differentiation, Connectivity, and Admixture in Atlantic Swordfish (Xiphias gladius L.). PLoS ONE, 10(6): e0127979. doi: 10.1371/journal.pone.0127979.