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15 キハダ 大西洋

Yellowfin Tuna, Thunnus albacares

                                                                                 
PIC

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最近の動き

2016年の総漁獲量は12.7万トン(予備集計)で前年の117%であった。資源評価は2016年7月に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)により行われた。MSYは12.6(11.9〜15.1)万トンと推定され、2016年の漁獲量とほぼ同値である。2014年の資源量はMSYレベルよりやや小さく(B2014/BMSY = 0.95(0.71〜1.36))、2014年の漁獲圧はMSYレベルより小さい(F2014/FMSY = 0.77(0.53〜1.05))と推定された。したがって、2014年において、本資源は乱獲状態だが、適正なレベルに近く、本資源への漁獲圧は過剰でなかったといえる。2016年11月のICCAT年次会合でTACを引き続き11万トンとすることが合意された。また、前年の熱帯マグロ保存管理措置の改正時に合意されたFADs操業の制限(禁漁期、禁漁区域、FADs設置数の上限)などの資源管理方策についても、引き続き適用されることとなった。


利用・用途

はえ縄漁獲物は主として刺身、すしに利用される。外国では、缶詰に利用される比率が高い。


表1

表1. 大西洋におけるキハダの年齢ごとの尾叉長(cm)と体重(kg)の関係
2つの成長式(Gascuel et al. 1992、Draganik and Pelczarski 1984)について示す。


表2

表2. 将来予測
漁獲量一定(6万〜15万トン)で、資源と漁獲圧が健全な状態(B/BMSY>1、F/FMSY<1)である確率


図1

図1. 大西洋におけるキハダの漁法別漁獲量(上図)と国別漁獲量(下図)(2016年は暫定値)


図2

図2. 大西洋におけるキハダの漁場(漁獲分布、2012〜2016年)
青:はえ縄、赤:竿釣り、黄:まき網、白:その他。凡例の丸は上から91,000トン、182,000トン。


図3

図3. 大西洋におけるキハダの分布域


図4

図4. 大西洋におけるキハダの産卵場と産卵期(月)
卵巣標本を収集し、組織学的観察により確認されたもの。地図上の範囲は、標本採集場所を表す。


図5

図5. 大西洋におけるキハダの資源量指数
主として1990年代の動向の違いにより、2つのグループに分けて示す。すべてはえ縄漁業である。なお、台湾は両方のグループに含まれている。


図6

図6. 大西洋キハダの資源解析結果(資源評価モデル別)
上から非平衡プロダクションモデル、年齢構造を考慮したプロダクションモデル、VPA2-BOX及びStock Synthesisの神戸プロット。左側の4つのパネルは資源量指数がグループ1、右側がグループ2(資源量指数については図5参照)を用いた資源状態の動向を示す。なお、グループ2を用いた非平衡プロダクションモデル(最も右上)は収束せず、結果は得られなかった。実線は経年変化を示し、大きな青丸は2014年の状態を示す。白丸は各モデルにつき、500回のブートストラップ試行の分布を示す。縦軸は漁獲圧、横軸は資源量で現状/持続可能な値の比で示す。


図7

図7. 大西洋キハダの資源解析結果(各モデルの結果を統合)
上図:図6の7つのブートストラップ試行の結果を統合。大きな青丸は2014年の状態を示す。オレンジ丸は3,500回(7モデルX 500回)の各ブートストラップ試行の分布を示す。縦軸は漁獲圧、横軸は資源量で現状/持続可能な値の比で示す。神戸プロットの上側と右側に、それぞれ横軸、縦軸についての頻度分布図を示す。
下図:統合されたブートストラップ試行3,500個(7モデルX 500回)が分布する。


付表1-1 付表1-2 付表1-3

付表1. 大西洋キハダの年別、国別漁獲量 (単位:トン)


漁業の概要

大西洋におけるキハダ漁業は1950年頃に始まり、1955年頃から、竿釣り及びはえ縄漁業が開始された。当初は、はえ縄の漁獲が多くを占めたが、最近年は、全漁獲量のうちおおよそ70%がまき網、16%がはえ縄、8%が竿釣りにより漁獲されている(図1上)。1990年に漁獲量のピーク(19.3万トン)が記録された後、減少傾向に転じ、2016年には12.7万トン(予備集計)となった(ICCAT 2017)。

主漁場は熱帯域であり、とくに東部大西洋からの漁獲が多い(図2)。1990年から2007年にかけて、スペインやフランスのまき網船が65隻から27隻に減少したこともあり、漁獲量は60%減少(12.7万トンから4.7万トン)した。隻数は減少したものの、船舶が大型化したため、2010年のまき網漁業全体の魚艙容量は1990年代半ばと同等とみなされた。その後、インド洋操業船(大型の魚艙を装備し、より漁獲効率の良い新造船)が大西洋へ移動してきたため、魚艙容量は2010年に比べて、さらに50%増加したとみられている。2013年以降、この元インド洋操業船数が6隻に達したこともあって、漁獲量は上昇に転じ、2016年には9.9万トンとなった。近年は、素群れ操業よりも、よりFAD操業に依存するようになっている。2011年以降、FAD操業の漁場は拡大し、南は西アフリカ沿岸の南緯15度付近、北はモーリタニア沖合の北緯15度付近まで拡がっている。一方、西部大西洋のまき網漁業は、主としてベネズエラ船が担っていたが、2016年の漁獲量はピーク時(1980年代半ば)の20%程度(0.5万トン)となっている。はえ縄は、大西洋の ほぼ全域で操業が行われ、2016年は総漁獲量の10%(1.3万トン)を占めた。メキシコ湾で操業する米国船、メキシコ船及びベネズエラ船はキハダを対象としている。日本及び台湾のはえ船は、主に熱帯域においてメバチを主対象として操業している。近年の竿釣り船の漁獲量は、東部、西部大西洋ともにピーク時(1990年代)の10〜30%程度にまで減少している(ICCAT 2017)。

FAD操業の進展で、近年のまき網の漁獲物の平均体重は10 kgを下回り、1990年のおおよそ半分にまで減少している。はえ縄の平均体重は、ばらつきが大きく、近年は50 kg程度を推移している。

国別には、フランスとスペインの漁獲量が多く、近年、ガーナの比率が高くなっている(図 1下、付表 1)。2016年はこれら3か国で全体のおよそ5割を占めた。最近5か年の日本の漁獲量は0.3万〜0.4万トン前後で、大きな年変動はみられない。


生物学的特性

キハダは、三大洋の熱帯域から温帯域にかけて広く分布する(図3)。若齢で小型のキハダは、似たような大きさのカツオやメバチと群れを作ることがあり、これらはもっぱら表層に分布する。成長するにつれて、キハダ単独の群れとなり、より水深の深い層にも分布するようになる。産卵は水温24℃以上の水域で周年行われると考えて良いが、季節性もみられ、ギニア湾では12月から翌4月にかけての盛んな産卵行動が知られている。また、海域によって産卵の盛んな時期が異なること(メキシコ湾:5〜8月、南カリブ海:盛期7〜9月)も知られている(図4;ICCAT 2001)。このような時期の異なる産卵は、大西洋のキハダに複数の系群が存在する可能性を示唆する。また、移動経路を記録するタイプの近年の標識放流調査からは、あまり移動せず、ある一定の範囲に留まる傾向がみてとれ、系群の存在を補強する証拠となり得る。一方で、はえ縄の漁獲状況をみると、大西洋の東西を通じて、漁獲の切れ目がないことが分かる。また、放流点と再捕点のみが分かるタイプの標識放流調査からは、西部から東部まで大西洋を横断す る例が得られている(Ortiz 2001)。このように系群の存在についての異なる見解が得られるため、判断が難しいものの、2016年の資源評価の場合も含めて、近年の大西洋キハダの資源評価では、全大西洋で一つの系群と見なしている。1回当たりの産卵数(Batch fecundity)は、尾叉長132 cmで約120万粒、142 cmで約400万粒と推定されている(Arocha et al. 2001)。産卵は夜間にほぼ毎日行われると考えられている(Schaefer 1996)。本種の寿命は、年齢査定の結果や成長が速いことから、メバチより短く7〜10年であろうと考えられている。本種の胃中には魚類や甲殻類、頭足類等、幅広い種類の生物がみられる。仔稚魚時代には、魚類に限らず多くの外敵がいるものと思われるが、あまり情報は得られていない。遊泳力がついた後では大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に外敵は限られるものと思われる。

2016年の資源評価では、半数の個体が成熟する尾叉長は115.1 cmとされ(Diaha et al. 2015)、自然死亡係数は、体重と自然死亡率の関係(Lorenzen 2005)を考慮し、成長式(複数)に対応した年齢別の自然死亡係数及び2011年の資源評価での値が用いられた。なお、尾叉長145 cmより大きい場合、大部分が雄であることから、雌の自然死亡率が、雄より高い可能性がある。一方、尾叉長120〜135 cmでは、雌が優占しており、雌の体長の上限が、雄より低い可能性がある。このため、雌雄別の成長と自然死亡率を資源評価で考慮することも検討に値するが、2016年の資源評価では、雌雄で同一の成長式(表1)と自然死亡係数が用いられた。

 成長式
Gascuel et al. (1992) :Lt = 37.8 + 8.93t + (137.0 - 8.93 t) [1 - exp (-0.808 t)]7.49
Draganik and Pelczarski (1984):Lt = 192.4 * (1 - exp(-1*0.37(t + 0.003)))
(Lt : ある年齢tでの尾叉長(cm)、t : 年齢)
 自然死亡係数(それぞれの成長式に応じた年齢別(0歳から11歳+)の値)
Gascuel et al. (1992) : 1.588、1.194、0.748、0.550、0.476、0.447、0.435、0.431、0.429、0.428、0.428、0.428
Draganik and Pelczarski (1984):1.758、0.889、0.672、0.576、0.525、0.495、0.476、0.463、0.455、0.450、0.446、0.443
2011年の資源評価で用いられた値:0.8、0.6、0.6、0.6、0.6、0.6(0歳から5歳+)
 体長体重関係式
Caverivière et al.(1976):W = 2.1527 * 10-5 L2.976
(L : 尾叉長(cm)、W : 体重(kg)、t : 年齢)

資源状態

最新の資源評価はICCATにより2016年に行われた。資源評価モデルは、非平衡プロダクションモデル(ASPIC)、年齢構造を持つプロダクションモデル(SCAA。ASPMの一種)、VPA 2-Box及びStock Synthesis(SS)が用いられた。資源量指数として、8つのはえ縄漁業の標準化CPUEが選ばれた。これらは、1990年代の指数上昇の有無により2つのグループに分けられた(図5)。まき網漁業のCPUEに関しては、継続的な漁労技術、探索機器の発達があるため、漁獲効率も上昇していると考えられるが、この変化を適切に推定することは難しい。このため、まき網のCPUEの標準化は困難となっている。前回の資源評価では、当座の措置として、まき網の漁獲効率が年率3%あるいは7%上昇と仮定したが、今回はこのような措置も取られることはなく、漁獲の多くを占めるにもかかわらず、まき網のCPUEは資源量指数としては用いられなかった。

MSYは12.6(11.9〜15.1)万トンと推定され、2015年の漁獲量より大きい。2014年の資源量はMSYレベルよりやや小さく(B2014/BMSY = 0.95(0.71〜1.36))、2014年の漁獲圧はMSYレベルより小さい(F2014/FMSY = 0.77(0.53〜1.05))と推定された。したがって、2014年において、本資源は乱獲状態だが、適正なレベルに近く、本資源への漁獲圧は過剰でなかったといえる(図6、7)。将来予測を行うと、漁獲量11万トンとした場合、2024年に資源と漁獲圧が健全な状態(B2024/BMSY>1、F2024/FMSY<1)である確率は97%と推定された(ICCAT 2016a;表2)。


管理方策

ICCATのRecommendation 16-01(ICCAT 2016b)に基づき、資源管理措置が講じられている。将来にわたる持続的利用を確実にするため、TAC(11万トン)が設定(ICCAT 2016b:パラグラフ11)されている。また、FADsを利用するまき網の禁漁期(1月1日〜2月28日)、禁漁区域(南緯4度、北緯5度、西経20度とアフリカ西岸で囲まれた海域)及び各まき網船の1年間のFADs設置数の上限(500基)が導入されている(ICCAT 2016b:パラグラフ13及び16)。

最近、熱帯まぐろ類の資源管理は、上述のように科学者が資源評価と将来予測の情報を提供し、それに基づいて行政官が管理方策を決定する伝統的な手法から、漁獲戦略(Harvest Strategy。WCPFCでの呼称であるが、便利のため、この呼称を用いる)と呼ばれる手法へと発展しようとしている。これは、資源を管理する目標(Management ObjectivesあるいはManagement Goal)を改めて明確に関係者で合意し、漁獲制御ルール(HCR:Harvest Control Rules)と管理基準値(RP:Reference Points)を設定して、資源量の変動に応じて予め決めておいた管理措置を発動するものである。さらに、このルールが管理目標に合致するかを漁獲と資源の応答のシミュレーションにより検証する枠組が管理戦略評価(Management Strategy Evaluation(MSE)またはManagement Procedure(MP))である(Rademeyer et al. 2007、Maunder and Deriso 2016、Maunder et al. 2016)。このような動きの背景には、資源評価に、大きな不確実性がついてまわるということが広く認識されてきたことがある。たとえば、図5に示 したように、親子関係の仮定の違いにより、資源評価結果は大きく異なる。また、資源評価結果が過去の結果と大きく変わり、議論の余地が大きくなった場合に、管理方策が恣意的に変更されないようにする必要性が認識され始めていることも一因である。この漁獲戦略の進展には、漁業者、行政官および科学者の連携と合意形成が不可欠とされている(Punt et al. 2016)。ICCATにおいては、北大西洋のビンナガ資源がモデルケースとして先行している(ICCAT 2016c、ICCAT 2017)。熱帯性まぐろ類では2018年以降、MSEの構築が開始されることとなっている(ICCAT 2017)。太平洋のキハダ、メバチ資源における、この新たな資源管理の検討状況を、それぞれの国際資源の現況に示した。先行的に、ミナミマグロの例(Kurota et al. 2010)や米国、オーストラリアなどの国内魚類資源での事例があり、MSE構築の実際についての知見が集積されている(Punt et al. 2016)。ICCATも含む、近年のまぐろ類の地域漁業管理機関におけるMSEの進捗状況についてはNakatsuka(2017)が詳しい。また、Naka tsuka et al.(2017)は、まぐろ類の地域漁業管理機関で適用されている限界管理基準値のレビューを行っている。さらに、地域漁業管理機関のMSE構築に関する技術連携、情報交換も徐々に進んでおり、2016年11月には最初の合同会合がICCATをホストとして開催された(http://groupspaces.com/tRFMO-MSE/wiki/)。近年の魚類資源評価の技術的進展に先導的な役割を極めて活発に果たしているCAPAM(Center for the Advancement of Population Assessment Methodology)によるMSE作業部会も企画されており(ICCAT 2017)、魚類資源管理の一層の展開が期待される。


キハダ(大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
9.7万〜12.8万トン
最近(2016)年:12.8万トン
平均:10.7万トン(2012〜2016年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
0.3万〜0.4万トン
最近(2016)年:0.3万トン
平均:0.4万トン(2012〜2016年)
管理目標 MSY:12.6(11.9〜15.1)万トン
資源評価の方法 プロダクションモデル(ASPIC、SCAA)
VPA(VPA-2BOX)
統合モデル(Stock Synthesis)
資源の状態 B2014/BMSY:0.95(0.71〜1.36)
F2014/FMSY:0.77(0.53〜1.05)
管理措置 TAC(11万トン)
FADsを利用したまき網操業の禁止(1月1日〜2月28日:南緯4度、北緯5度、西経20度とアフリカ西岸で囲まれた海域)及び各まき網船のFADs使用数の上限(500基)
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2016年
次回の資源評価年 2021年

執筆者

かつお・まぐろユニット
熱帯まぐろサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

佐藤 圭介


参考文献

  1. Arocha, F., Lee, D.W., Marcano, L.A., and Marcano, J.S. 2001. Update information on the spawning of yellowfin tuna, Thunnus albacares, in the western central Atlantic. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 52(1): 167-176. http://www.iccat.int/Documents/CVSP/CV052_2001/no_1/CV052010167.pdf(2017年10月)
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