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11 ビンナガ 南大西洋

Albacore, Thunnus alalunga

                                                           
PIC

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最近の動き

2017年10月に開催された大西洋まぐろ類保存委員会(ICCAT)の科学委員会(SCRS)において、各国の2016年までの漁獲量が報告された。2016年の漁獲量は約1.3万トンであり、過去5年間の漁獲量の平均およびTAC(24,000トン)を下回った。なお、2014年より日本には国別漁獲割り当て:1,355トンが与えられている。2016年の日本の漁獲量は1,100トンとなった。


利用・用途

主として缶詰原料となっている。また、近年日本のはえ縄船が高緯度域で漁獲したものの多くは刺身用に利用されている。


表1

表1. 南大西洋におけるビンナガの主要国別漁獲量(過去25年分・トン)
ただし、2016年ブラジルの漁獲量は2017年12月時点で未提出。


表2

表2. 将来予測の各モデル・シナリオにおいて資源が2020年に60%の確率でKobe plotの緑の領域(B>BMSY、F<FMSY)となる最大漁獲量


図1

図1. 南大西洋におけるビンナガの漁法別漁獲量(ICCAT 2017)


図2

図2. 大西洋のビンナガの分布と主な漁場


図3

図3. 南大西洋におけるビンナガの年齢と尾叉長(cm)の関係
実線はLee and Yeh 2007、点線はBard and Compean-Jimenez 1980。


図4

図4. 資源評価におけるBSP及びASPICモデルのそれぞれシナリオごとのKobe plot(上段)と資源状態を確率としてを示した円グラフ(下段)


図5

図5. 2016年の資源評価に用いられた南大西洋ビンナガの標準化CPUE(ICCAT 2016) Chinese Taipei LL:台湾のはえ縄、Japan LL:日本のはえ縄、Uruguay LL:ウルグアイのはえ縄。


漁業の概要

南大西洋のビンナガ漁場の開発は日本のはえ縄漁船の大西洋への進出とともに、1950年代後半から始まった。1960年代には、日本に続き、韓国や台湾のはえ縄漁船が参入した。沿岸諸国の表層漁業による漁獲量の記録は1960年代から見られる。南大西洋のビンナガは開発当初からはえ縄による漁獲の割合が大きく、1970年代までは9割以上を占めた(図1)。遠洋漁業国のはえ縄が対象種をビンナガから他の魚種に転換したことと、沿岸国の竿釣りによる漁獲量の増加により、はえ縄による漁獲の割合は減少し、1980年代後半以降は6〜7割となった。このように、南大西洋のビンナガは主としてはえ縄によって漁獲されており、北大西洋とは対照的である。

南大西洋におけるビンナガの総漁獲量は1960〜1970年代にはおよそ2.0万〜3.5万トンの範囲で推移していたが、1980年代後半〜2000年代の初め頃には2.6万〜4.0万トンとより高い水準となった(図1、表1)。その後漁獲量は急激に減少し、2005年に1.9万トンとなった。2006〜2013年は1.9万〜2.5万トンの範囲で推移していたが、2014年の漁獲量は最近年の漁獲量を下回り、1.3万トンとなった(ICCAT 2017)。2016年は前年より漁獲量は減少し、1.3万トンと低い水準にあり、この漁獲量は過去25年(1992〜2016年)における年間総漁獲量において2番目に低い値である。主要漁業国では台湾、南アフリカ、日本、ブラジル及びナミビアであり、これら5か国で南大西洋のビンナガ総漁獲量の9割以上を占めている。また、熱帯域のまき網によってわずかな混獲がある。

台湾ははえ縄で本種を漁獲しており、最大の漁獲国となっている。1973年以降では総漁獲量の6〜9割を占めてきた。台湾船は伝統的にビンナガを主対象として亜熱帯から温帯域の広い海域で周年操業しており、1970〜1980年代には1.2万〜2.9万トン、1990年代には1.6万〜2.3万トンを漁獲した。2000〜2003年の漁獲量は1.6万〜1.7万トンと安定していたが、その後やや減少し0.9万〜1.3万トンとなった。2012年以降、台湾の漁獲量が減少傾向を示し、2014年の漁獲量は6,675トンと過去25年では最も低い値となった(ICCAT 2017、表1)。これは台湾船のビンナガへの努力量が減少したために漁獲量が減少したと考えられている(ICCAT 2017)。

ブラジルの2004年の漁獲量は2003年の2,647トンから500トン台へと大きく減少しており、これは台湾との合弁船が撤退したことや、ブラジルのはえ縄が漁獲対象をメカジキやメバチに変更したことによる。その後も漁獲量は600トン以下の低いレベルのままとなっていたが、2012年には1,857トン、2013年には1,821トンを漁獲している。これは竿釣り及び熱帯性まぐろ類を対象としたはえ縄の混獲によるものである。2014年の漁獲量は438トンと大きく減少し、それ以降低いレベルとなった。

南アフリカの竿釣りは同国西岸沖からナミビア沖にかけて操業している。1960年から漁業が始まり一時中断したものの1972年から再開され、1980〜1984年に1,000〜3,000トン、1985〜2002年には4,000〜8,000トン台を漁獲し、その後はやや減少し3,000〜5,000トンになった。2015年の南アフリカの漁獲量は4,030トンと過去5年平均(3,662トン)及び2014年(3,719トン)の漁獲量をやや上回った。南アフリカとほぼ同じ漁場で操業するナミビアの竿釣りの漁獲量は、漁獲が初めて報告された1994年以降増加傾向を示し、2006年には過去最高の5,100トンとなった。その後、漁獲量は年ごとに大きく変動し、1,000〜5,000トンの範囲で推移し、2014年の漁獲量は1,062トンと前年の漁獲量(1,057トン)と同様であった(表1)。

日本のはえ縄は、1960年代に2万数千トンまで漁獲を伸ばしたが、対象が刺身用の他のまぐろ類へと変化したためビンナガの漁獲量が急激に減少し、1973年以降は1,000トン以下となった。しかしながら、近年ではナミビアや南アフリカ水域で漁獲努力量が増加し、2011〜2013年にかけて漁獲量は1,194〜3,145トンへ増加し、混獲から漁獲対象種へ移行していることが伺える。これは日本市場におけるビンナガの刺身用原料としての需要が増加している等の理由によると考えられる。2014年より日本にも国別割当量(年間1,355トン)が制定されており、他国から移譲された割当量分の消化も含めると、2016年(暦年)の漁獲量は1,100トンとなっている。


生物学的特性

大西洋のビンナガは、大型魚の漁獲される海域及び稚魚の分布海域が赤道付近をはさんで南北でかなり明瞭に分かれていること、また、標識放流結果においても南北をまたいだ記録がないことから、南北で別々の系群が存在すると考えられている。ICCATでは、北緯5度線を南北両系群の境界として資源管理しており、南大西洋ビンナガはおよそ赤道〜南緯40度付近の西風皮流域との潮境に当たる亜熱帯収束線の北側海域に分布している(図2)。

ビンナガを対象としたはえ縄の漁場は南緯10〜30度、西経35度〜東経15度で、ここでは尾叉長90 cm以上の産卵群が漁獲される。それよりも南側(南緯30度以南)では尾叉長90 cm以下の索餌群が主体となる。南アフリカ沿岸では、この魚群が竿釣りで漁獲される。産卵域ははっきりしないが、稚魚は南緯10〜25度の南米大陸寄りに多く出現している(西川ほか 1985)。産卵期は春から夏と考えられている。索餌域は南緯25度以南と考えられる。

捕食、被食に関してははっきりしないが、魚類、甲殻類、頭足類を捕食し、さめ類、海産哺乳類のほか、まぐろ類・かじき類によって捕食されているものと思われる。

南大西洋ビンナガの成長に関して、脊椎骨及び背鰭棘の輪紋が一定の間隔で形成されるかの評価(Validation)がなされていなかったため(Lee and Yeh 1993)、2003年の資源評価までは北大西洋ビンナガの成長式(Bard and Compean-Jimenez 1980)が用いられてきた。しかし、2007年に実施された資源評価会合で新たな成長式(Lee and Yeh 2007)が提唱された(図3)。これによると、尾叉長は3歳で68 cm、5歳で86 cm、7歳で99 cmとなる。尾叉長90 cmで50%が成熟する。体長-体重関係は下記(Penney 1994)により示されている。寿命ははっきりしないが、少なくとも10歳以上と思われる。
         L (t)=147.5(1−e-0.126(t+1.89))  L: 尾叉長(cm)、t : 年
         w=1.3718×10-5 ×l3.0973    w : 体重(kg)、l : 尾叉長(cm)


資源状態

大西洋ビンナガの資源評価はICCATにより2016年4〜5月に行われた(ICCAT 2016)。この資源評価では前回の資源評価(2013年)と同様にベイズプロダクションモデル(Baysian Surplus Production model:BSP)、ASPICで解析が行われた(ICCAT 2016)。

解析には2014年までの漁獲量、努力量が用いられた。資源評価には日本、台湾、ウルグアイのはえ縄CPUE及び各漁業別の漁獲量を入力データとして用いた。資源評価モデル(ASPIC・BSP)の設定は前回の資源評価(2013年、ICCAT 2013)とほぼ同様とし、初期資源量と環境収容力との比(B0/K)を0.9に固定または事前分布の平均として設定、資源CPUEの重み付け(等ウェイトもしくは漁獲量で重みづけ)、再生産モデル(logisticもしくはFox)の仮定を変えた4つの設定で実施し(計8シナリオ)、これらの結果は同等に扱われた。

これら8つのシナリオから出力された各MSY推定値の中央値は25,901トン(80%信頼区間:15,270〜31,768トン)、B2015/BMSY推定値の中央値は1.10(80%信頼区間:0.51〜1.80)、F2014/FMSY推定値の中央値は0.54(範囲:0.31〜0.87)であり、南大西洋のビンナガは資源量及び漁獲係数ともにMSY水準を維持しているとされた(図4)。これら8つのシナリオから推定された「過剰漁獲でありかつ乱獲状態である確率」は3%、「過剰漁獲ではなくかつ乱獲状態でもない確率」は66%であることが示された。

資源量の将来予測の結果はシナリオによってかなり異なった。8つのシナリオのうち、どのシナリオがより実態に近いかを客観的に判断する材料が乏しいため、8つのシナリオ全てを用いた。将来予測の各モデル・シナリオにおいて資源が2020年に60%の確率でKobe plotの緑の領域(B>BMSY、F<FMSY)となる最大漁獲量を表2に示した。最大漁獲量は各モデル・シナリオによって異なり1.8万〜3.4万トン(平均:2.57万トン)と推定された。2016年のTAC(2.4万トン)の漁獲を続けた場合、2020年に資源がKobe plotの緑の領域(B>BMSY、F<FMSY)にある確率は63%と推定された。また将来における年間漁獲量を2.6万トン以上に設定した場合、2020年までに資源をKobe plotの緑の領域(B>BMSY、F<FMSY)で60%の確率で維持することができないことが示されている(ICCAT 2016)。


管理方策

1995年から主要漁獲国(台湾、南アフリカ、ブラジル及びナミビア)は漁獲量を1989〜1993年の平均漁獲量の90%以下(=およそ2.2万トン)にする管理措置が初めて実施され、2001年からは総漁獲量の規制が始められた。

2013年のICCAT年次会合においては、資源評価結果を受け2014〜2016年のTACが2.4万トンに設定された。日本の漁獲量については、南大西洋(北緯5度以南)におけるはえ縄によるメバチの漁獲量の4%以下に抑制するというこれまでの努力規定から、新たに1,355トンの国別割当量が設定された(ICCAT 2014)。

2016年のICCAT年次会合において、同年の資源評価結果を基に2017〜2020年のTAC及び国別割当の議論が行われ、これまでと同じTACを適用することが合意され、日本の割当もこれまでと同じ1,355トンとされた。一方で、ブラジル等から毎年200トンの移譲を受けることとなったことから、日本の実質的な割当は1,555トンとなった。


ビンナガ(南大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位*1
資源動向 増加*1
世界の漁獲量
(最近5年間)
13,677〜25,061トン
最近(2016)年:13,679トン
平均:17,362トン(2012〜2016年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
1,100〜3,106トン
最近(2016)年:1,100トン
平均:1,998トン(2012〜2016年)
管理目標 MSY:25,901トン(範囲:15,270〜31,768トン)*2
資源評価の方法 BSP及びASPIC
資源の現状 B2015/BMSY=1.10(0.51〜1.80)
F2014/FMSY=0.54(0.31〜0.87)*3
管理措置 漁獲量規制:24,000トン
うち日本への割り当ては1,355トン
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2016年
次回の資源評価年 2020年(予定)
*12016年資源評価の資源状態及び過去5年の漁獲量の動向に基づく。
*22016年資源評価結果より。8つの各シナリオからの推定値の範囲。
*32016年資源評価結果より。8つのシナリオの結果全部から推定した80%信頼区間。

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

青木 良徳

国際水産資源研究所 業務推進課 国際海洋資源研究員

松本 隆之


参考文献

  1. Bard, F.X., and Compean-Jimenez, G. 1980. Consequences pour l'evaluation du taux d'exploitation du germon Thunnus alalunga. Nord Atlantique d'une courbe de croissance debuite de la lecture des sections de rayons epineux. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 9(2): 365-375.
  2. ICCAT. 2013. Report of the 2013 ICCAT north and south Atlantic albacore stock assessment meeting (Sukarrieta, Spain - June 17-24, 2013). 115 pp. http://www.iccat.es/Documents/Meetings/Docs/2013_ALB_ASSESS_REP_ENG.pdf(2014年2月24日)
  3. ICCAT. 2014. Report for biennial period, 2012-13 PART II (2013) - Vol. 1. https://www.iccat.int/Documents/BienRep/REP_EN_12-13_II_1.pdf(2015年3月9日)
  4. ICCAT. 2016. Report of the 2016 ICCAT North and South Atlantic albacore stock assessment meeting. http://www.iccat.org/Documents/Meetings/Docs/2016_ALB_REPORT_ENG.pdf(2016年11月23日)
  5. ICCAT. 2017. Executive summaries on species. ALB-Albacore. In ICCAT (ed.), Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain, 2-6 October, 2017). 465 pp. http://www.iccat.org/Documents/Meetings/Docs/2017_SCRS_REP_ENG.pdf(2017年11月24日)
  6. Lee, L.K., and Yeh, S.Y. 1993. Studies on the age and growth of South Atlantic albacore (Thunnus alalunga) specimens collected from Taiwanese longliners. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 40(2): 354-360.
  7. Lee, L.K., and Yeh, S.Y. 2007. Age and growth of South Atlantic albacore - a revision after the revelation of otolith daily ring counts. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 60(2): 443-456.
  8. 西川康夫・本間 操・上柳昭治・木川昭二. 1985. 遠洋性サバ型魚類稚仔の平均分布, 1956-1981年. 遠洋水産研究所Sシリーズ12. 遠洋水産研究所, 静岡. 99 pp.
  9. Penney, A.J. 1994. Morphometric relationships, annual catches and catch-at-size for South African caught South Atlantic albacore (Thunnus alalunga). Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 42(1): 371-382.