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07 ビンナガ 北太平洋

Albacore, Thunnus alalunga

                                                           
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最近の動き

2017年4月に北太平洋ビンナガ資源評価が、2014年から3年振りにISCビンナガ作業部会によって実施された。前回から変更した留意点として、@資源評価期間の短縮(今回:1993-2015、前回:1966-2012)、A雌雄別年齢別自然死亡係数の適用(前回:雌雄年齢で一定)、B親魚豊度指数である日本のはえ縄CPUEの改善、が挙げられる。今回の資源評価結果に基づくと、北太平洋ビンナガは過剰漁獲を経験しておらず、乱獲状態ではないとされた。この結果は、同年7月のISC本会合で承認された後、同年8月のWCPFC科学委員会で報告された。同年9月の北委員会において現行の管理枠組が微修正され、同年12月の年次会合で採択された。また、北太平洋ビンナガを対象としたMSEワークショップが開催され、これまでに議論されてきた本種に関する管理目標をレビューし、管理基準値と漁獲制御ルールについて議論し、その候補を挙げ、取りまとめた。

利用・用途

日本において、本資源は生鮮及び加工品として利用されている。1990年代頃から生鮮用ビンナガの中で特に脂がのったものを「ビントロ」や「とろびんちょう」と称して販売されている。生鮮以外では、缶詰や生節に加工される。ビンナガの肉はホワイトミートと呼ばれ、カツオやキハダよりも高級な缶詰材料となる(魚住 2003)。米国では、ビンナガは缶詰原料として古くから「海の鶏肉(シーチキン)」として賞味されている(久米 1985)。


表1

表1. 北太平洋ビンナガの国別漁獲量(トン)(ISC 2017)
その他にはミクロネシア連邦、キリバス、バヌアツ、中国が含まれている(WCPFC Yearbook 2017aを集計)。


図1

図1. 北太平洋ビンナガの漁法別漁獲量(上図)、国別漁獲量(下図)


図2

図2. ビンナガの分布と主な漁場(上柳 1957、久米 1985、西川ほか 1985)


図3

図3. 北太平洋ビンナガの雌雄別の年齢と尾叉長の関係(ISC 2014)


図4

図4. モデルの入力データとなった日本のはえ縄操業データに基づいた標準化CPUE(ISC 2017)
縦軸:CPUE、横軸:年、青:標準化CPUE、 赤:nominal CPUE。


図5

図5. 北太平洋ビンナガの(A)雌の産卵資源量、(B)雌の産卵資源量の減少率(SSB/SSB0)、(C)加入量(ISC 2017)
(A)と(B)の点線、(C)の縦棒は推定値の95%信頼区間。


図6

図6. 北太平洋ビンナガ資源への雌雄別、年齢別の漁獲係数(赤:雌、青:雄)


図7

図7. 北太平洋ビンナガ資源への各漁業のインパクト
縦軸:漁業が無かったと仮定した場合の産卵資源量を100として、各漁業のインパクトを示している。青色:竿釣り+ひき縄+まき網、緑:はえ縄、赤:現在の産卵資源量。


図8

図8. 北太平洋ビンナガ資源の将来予測結果
A: 漁獲圧一定シナリオでの雌の産卵親魚量(a)と漁獲量(b)、B: 漁獲量一定での雌の産卵親魚量(a)と漁獲係数(b)。青と赤の範囲は95%信頼区間を、A(a)、B(a)の点線、A(b)、B(b)の赤線は採択された限界管理基準値(20%SSBF=0)を示す。


図9

図9. 資源評価期間(1993-2015)のF20%に対するF(2012-2014)を基準とした漁獲係数の相対値(F/F20%)と2015年の産卵親魚量に対する限界管理基準値の相対値(SSB/20%SSBcurrent F=0)の経年変化(ISC 2017)
縦軸の1.0は20%SSBcurrent F=0を、横軸の1.0はF20%を示す。黒点と縦横棒は2015年の推定値と95%信頼区間を示す。

漁業の概要

本種は日本の竿釣り、流し網、日本と台湾のはえ縄及び米国とカナダのひき縄で漁獲されている。はえ縄は、冬季には北緯30度の東西に広がる帯状水域で中・大型魚(尾叉長70 cm以上)を漁獲対象としている。同漁業は、北緯10〜25度の海域では大型魚を漁獲しているが、この大型魚は産卵に関与する魚群で量的には多くない。春から秋の期間は北西太平洋で日本の竿釣り、北東太平洋で米国のひき縄の対象となる。竿釣りが対象とするのは小型・中型(尾叉長45〜90 cm:2〜5歳)である。

北太平洋ビンナガの総漁獲量は1950年代〜1960年代に約5万〜9万トンであったが1970年から増加し、1972年に最大(14.2万トン)となった。その後、漁獲量は減少し、1991年には3.7万トンまで減少した(表1、図1)。この減少は主として日本の竿釣り及び米国のひき縄の漁獲量の減少によるものであった。その後、著しい増加に転じ、1999年には11.9万トンに達し、史上2位を記録した。その後は減少したが、2009年以降、増加傾向を示し、2016年の漁獲量は5.7万トンで2012年から継続した減少を示している。なお、2016年の漁獲量は暫定値であり、統計値は2017年7月のISC年次会合での資料(ISC 2017)及びWCPFC Yearbook 2016(WCPFC 2017a)に基づく。

日本の竿釣りの漁獲量は、1999年に過去20年間で最高の漁獲量5.0万トン、2002年にも同2位の4.8万トンを記録した。近年は年変動が大きく、2016年は1.5万トンであった。日本のはえ縄の漁獲量は1990年代始めから増加し、1997年(3.9万トン)にピークを迎えた後、2004年には1.7万トンまで減少した。2005年以降は2万トン前後で推移し、2016年は1.6万トンであった。日本の漁業による本資源の漁獲量は、他国漁業の漁獲量を大きく上回り、総漁獲量の6〜9割を占める。上述の竿釣りとはえ縄のほかに、流し網、まき網及びひき縄がある。流し網による漁獲量は1980年代に1万トンを超えたが、国連決議による公海操業の停止により、1993年以降は概ね数十から数百トンとなった。まき網による漁獲量は年変動が大きく、近年は数百トンから0.7万トンで推移している。ひき縄は数百から0.1万トン前後で推移している。

台湾のはえ縄の漁獲量は1995年に急増し、その後増加を続け、1997年にはピークの0.9万トンであったが、操業の主体が熱帯域のメバチへシフトしたため減少し、2014年には0.3万トンとなった。米国のひき縄の漁獲量は、1990年代初めから増加し始め1996年(1.7万トン)にピークを迎えた。その後は0.8万トンから1.4万トンの間で変動し、2016年は1.1万トンであった。カナダのひき縄の漁獲量は1960年代後半から1970年代前半にかけて1万トンを超え、1972年には3.9万トンとなり過去最高を記録した。1980年代中頃まで減少した。その後、着実な増加傾向を示し、2004年には0.8万トンを記録した後、0.5万〜0.6万トンを維持している。2012年にはカナダ船の米国海域へ入漁ができない事態を反映して、0.3万トンと減少したが、2013年、2014年には米国海域での操業が行われ、0.5万トンが漁獲された。2016年の漁獲量は0.28万トンであった。


生物学的特性

太平洋においてビンナガは、北緯50度から南緯45度の広い海域に分布する(図2)。この海域には北太平洋と南太平洋の2系群が存在するとされている。これは太平洋の南北間で形態学的な差異があること、太平洋の赤道付近ではビンナガがほとんど漁獲されず赤道の南北をまたぐ標識再捕がほとんどないこと、産卵場が地理的に分離すること及び産卵盛期が一致しないことに基づいている。

北太平洋のビンナガは、高緯度域において東西を渡洋回遊することが標識放流調査によって実証されている。漁場の大部分は北緯25度以北の海域(索餌域に相当)である。

産卵は、台湾・ルソン島付近からハワイ諸島近海において水温が24℃以上の水域で周年(4〜6月盛期)行われていると推定されている(西川ほか 1985)。

上柳(1957)は、卵巣の成熟状態を調べ、成熟卵巣の発達した卵粒数が1個体(体長95〜103 cm)あたり80万〜260万粒であり、雌の最小成熟体長は尾叉長約90 cm(5歳)であろうとしている。また、5歳で50%が、6歳で100%が成熟すると推定している。

体長体重関係は、北太平洋をほぼカバーする日本、米国及び台湾のデータ (1989〜2004年)から、雌雄込みで、四半期ごとに以下のとおり推定されている(Watanabe et al. 2006a)。

     W = 8.7*10-5 L2.67 (第1四半期:4〜6月)
     W = 3.9*10-5 L2.84 (第2四半期:7〜9月)
     W = 2.1*10-5 L2.99 (第3四半期:10〜12月)
     W = 2.8*10-5 L2.92 (第4四半期:1〜3月)
     (W:体重 (kg)、L:尾叉長(cm))

成長は、雌雄別の成長式(Chen et al. 2012)、耳石日輪を用いた成長式(Wells et al. 2013)によって示されている。2014年資源評価で採用された成長式(ISC 2014、Xu et al. 2014)が、2017年資源評価でも適用された(図3)。寿命は、長期の標識再捕記録から、少なくとも16歳以上であると考えられている。
     Lt = 106.57 + (43.504 - 106.57)exp(-0.29763*(t-1))    雌(tは年齢。1歳以上に適用)
     Lt = 119.15 + (47.563 - 119.15)exp(-0.20769*(t-1))    雄
     Lt = 112.379 + (45.628 - 112.379)exp(-0.2483*(t-1))     雌雄込み

主要な餌生物は魚類、甲殻類及び頭足類である。そのほかにも尾索類、腹足類など多くの生物種が胃内容物として出現しており、日和見的な摂餌をしているものと考えられている(Clements 1961)。ただし、胃内容物組成の重量比では魚類が卓越する場合が多く、海域や季節によって異なるが、カタクチイワシ、マイワシ、サンマ及びさば類などを主に摂餌していると思われる。捕食者についてははっきりしないが、さめ類、海産哺乳類及びまぐろ・かじき類によって捕食されているものと思われる。Watanabe et al.(2004)は2001〜2003年に漁獲したビンナガの胃内容物を調べた結果、カタクチイワシが多く出現したこと、その原因が近年のカタクチイワシ資源の増加であることを報告している。


資源状態

最新の資源評価は、2017年4月にISCビンナガ作業部会で実施された(ISC 2017)。解析には統合モデルSS3が使用され、日本(はえ縄、竿釣り等)、米国(はえ縄、ひき縄)、カナダ(ひき縄)、台湾(はえ縄)等の漁獲量データ(重量または尾数)及びサイズデータ(利用可能な漁業について)が用いられた(いずれも四半期別)。2017年の資源評価で留意すべき点として、@資源評価期間の変更、A年齢別自然死亡係数の適用、B親魚豊度指数である日本のはえ縄CPUEの改善(図4)、が挙げられる。

生物パラメータである成熟年齢、体長体重関係式、スティープネス(0.9)は、それぞれ上柳(1957)、Watanabe et al.(2006b)、Brodziak et al.(2011)とIwata et al.(2011)に基づいた。

統合モデルによる解析の結果、雌の産卵資源量の推定値は増減を繰り返し、1995年にピークを示した後、2000年まで減少し、その後横ばいで推移している(図5A)。資源減少の度合い(漁業がなかった時点の産卵資源量との比)は、近年は0.4?0.6の範囲で推移し(図5B)、2015年は0.47であった。加入量は、平均値周辺で横ばいに推移している。近年も大きな変化は見られないが(図5C)、推定値の不確実性も大きく、確かなところは不明である。近年(2012〜2014年)の漁獲の強さが雌雄別年齢別に推定されており(図6)、若齢魚では雌雄に違いは見られないが、高齢になると雄の推定値が大きい結果となった。なお、若齢魚を漁獲する漁業のほうが、高齢魚を対象とする漁業よりも資源への影響が大きい(図7)。

2014年に使用した将来予測では雌雄を取り扱うことが出来なかったため、2017年資源評価では雌雄を取り扱うことができる将来予測プログラムを適用した(Ijima et al. 2016)。このプログラムの主な特徴は、@雌雄別資源動態を考慮できること、Aモデルが推定した加入量の不確実性と自己相関を考慮できること、Bモデルの不確実性を表すのにブートストラップ法を使わないこと、である。2017年資源評価ではこの将来予測プログラムを用いて、@漁獲係数一定(F2012-2014)とA漁獲量一定(2012-2014の平均値)の2つのシナリオを設定し、2015年から10年先までの将来予測を実施した。漁獲係数一定シナリオの場合、雌の産卵親魚量は2025年までに6.3万トンに減少し、限界管理基準値(漁業がないと仮定して推定した現在の資源量の20%)を下回る確率は0.01%以下であるが(図8A上)、漁獲量は2010-2014年の平均値を下回った(図8A下)。これは、2011年の加入量が低いことが原因として考えられた。漁獲量一定シナリオの場合、雌の産卵親魚量は2025年までに4.7万トンまで減少し(図8B上)、限 界管理基準値を下回る確率は約30%と漁獲係数一定シナリオより高くなり、漁獲係数も2025年までに増加傾向を示した(図8B下)。2012-2014のFを基準とした資源評価期間(1993-2015)のF20%は0.63、現在の雌の産卵資源量は漁獲がなかったと仮定して推定された産卵親魚量の約2.47倍であった(図9)。

本資源に対する漁獲の強さに関する管理基準値は議論されておらず、原則として資源状態が乱獲であるか否かの判断はできなかった。しかしながら、近年の加入量が平均的であること、2015年の資源減少率は0.47であること、試算した漁獲係数に関する一般的に使われる多くの管理基準値を下回っていなかったことなどから、資源状態は乱獲ではないだろうと作業部会では判断した。資源評価結果とあわせて作業部会は、北太平洋ビンナガ資源への現状(2012〜2014年)の漁獲の強さは過剰ではなく、資源状態はおそらく乱獲ではないとした。この結果は、同年7月のISC本会合で承認されたのち、8月のWCPFC科学委員会に報告された。

2017年10月にはカナダ・バンクーバーにて本種を対象としたISC MSEワークショップが開催された。ワークショプでは、第2回MSEワークショップ(2016年5月開催)で取りまとめられた本種を対象とした管理目標をレビューし、漁獲制御ルールについて議論し、その候補を取りまとめた。この結果に基づき、作業部会ではMSEに適用するOM(オペレーショナルモデル)について議論し、基本的な考え方を整理した。


管理方策

WCPFCにおいては、漁獲努力量を現行水準未満に抑制することが2005年に合意されている(WCPFC 2005)。IATTCにおいても、同様の規制が2005年に合意されている(IATTC 2005)。

2014年9月のWCPFC北小委員会において、限界管理基準値を下回らないよう漁業を管理していくこと等を含む管理枠組案が合意され、同年12月の年次会合で採択された(WCPFC 2014)。2017年9月のWCPFC北小委員会で微修正され、新たに暫定的な予防的管理枠組案が同年12月の年次会合で採択された(WCPFC 2017b)。


ビンナガ(北太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
5.7万〜9.3万トン
最近(2016)年:5.7万トン
平均:7.6万トン(2012〜2016年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
3.5万〜6.2万トン
最近(2016)年:3.5万トン
平均:4.9万トン(2012〜2016年)
管理目標 現在の漁獲レベルの継続を可能とし、資源量が限界管理基準値(漁業がないと仮定して推定した現在の資源量の20%)を下回る危険性を低く抑えるため、妥当な変動を持って現在の水準付近に資源量を維持
資源評価の方法 統合モデル(Stock Synthesis)による解析
資源の状態 SSB2015(メスのみ):8.0万トン
SSBMSY(メスのみ):2.4万トン
SSB2015/0.2SSB0 F=0:2.47
F2012-2014/FMSY:0.61
管理措置 ・漁獲努力量を現行水準未満に抑制(WCPFC、2005年)
・漁業がないと仮定して推定した現在の資源量の20%を下回らないよう漁業を管理(WCPFC、2014年)
・漁獲努力量を現行水準未満に抑制(IATTC、2005年)
管理機関・関係機関 ISC、WCPFC、IATTC
最新の資源評価年 2017年
次回の資源評価年 2020年

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

清藤 秀理


参考文献

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