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05 大西洋クロマグロ 東大西洋

Atlantic Bluefin Tuna, Thunnus thynnus

                                                           
PIC

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最近の動き

本資源を管理する大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)に報告された2016年の合計漁獲量は20,098トンであった。ICCATの科学委員会(SCRS)は、2017年9月に資源評価を実施した。2017年のSCRSは、東西両系群とも長期的な将来の加入量推定の不確実性が大きいことから、漁獲死亡係数Fのみに基づくKobeマトリックスを作成した上で、東資源について現状は過剰漁獲ではないと判断し、2022年まで管理目標を維持することのできる3.6万トンの総漁獲可能量(TAC)を勧告した。ただしTACを増加させる際には段階的な増加とすることを勧告した。また2017年の資源評価は、2014年(前回)から多くの新しい知見やデータを取り込み、生物学的パラメータも再検討したため、委員会への管理勧告は以前より信頼できるものであるとした。SCRSのこれらの管理勧告を踏まえ、2017年11月の委員会会合では、2018〜2020年のTACを2.82万トン、3.24万トン、3.6万トン(日本は2,279トン、2,528トン、2,801トン)と定めた。


利用・用途

ほぼ、全てが刺身やすし用途に用いられている。ヨーロッパでは、卵巣の塩漬け(からすみ)や背肉の塩漬けとしても利用される。


図1

図1. 大西洋クロマグロ(東系群)の漁法別海域別公式漁獲量の推移(1950〜2016年)(ICCAT 2017a)
漁獲量には投棄分も含まれる。灰色は資源評価に用いた地中海まき網による未報告漁獲量(1998〜2007年)を示す。


図2

図2. 大西洋クロマグロ(東系群)の年齢あたりの体長(青線)と体重(赤線)(ICCAT 2017b)
図中の矢印は成熟体長を表す。


図3

図3. 大西洋クロマグロの分布域(赤)と主要漁場(青)、産卵場(黄)
縦太線は東西の系群の境界。索餌場は産卵場を除く分布域。


図4

図4. 大西洋クロマグロ(東系群)の資源評価に用いたCPUE(ICCAT 2017a)


図5

図5. 大西洋クロマグロ(東系群)の親魚資源量の経年変化
資源評価モデルで推定した親魚資源量(ICCAT 2017a)。


図6

図6. 大西洋クロマグロ(東系群)の加入尾数(1歳魚)の経年変化
資源評価モデルで推定した加入尾数(ICCAT 2017a)。


図7

図7. 大西洋クロマグロ(東系群)の2〜5歳(左図)及び10歳以上(右図)の漁獲死亡率係数F(ICCAT 2017a)


付表1

付表1. 大西洋クロマグロ(東系群)の海域別・漁法別漁獲量(2006〜2016年、ICCAT 2017a)(単位:トン)
漁獲量には投棄分も含まれる。


付表2

付表2. 大西洋クロマグロ(東系群)の海域別・国別漁獲量(2006〜2016年、ICCAT 2017a)
0は、0.5トン未満を表し、空欄は、未報告であることを表す。漁獲量には投棄分も含まれる。


付表3

付表3. 大西洋クロマグロ(東系群)の各年齢時の体長(cm)と体重(kg)


漁業の概要

主な漁業国は、最近の漁獲量の多い順にスペイン、フランス、イタリア、モロッコ、日本、チュニジア及びトルコである。日本の漁獲は全てはえ縄による。スペインは定置網と竿釣り漁業とまき網、フランス及びイタリアは地中海でまき網によって漁獲する。東大西洋のビスケー湾と地中海では小型魚(2〜5歳)を漁獲している(Fromentin 2004、Santiago et al. 2016)。地中海では、1990年代半ばより蓄養を目的としたまき網漁業が盛んになったが、2007年までのまき網漁獲量統計値の精度には疑問がある(ICCAT 2009)

遺跡の発掘調査から、地中海においてクロマグロが紀元前7000年から獲られていたことが明らかになっている(Desse and Desse-Berset 1994)。フェニキア人、その後、ローマ人によって西地中海一帯でクロマグロが手釣りと様々な種類の地引き網で漁獲されていた(Farrugio 1981、Mather et al. 1995、Doumenge 1998)。クロマグロ漁業は中世に至っても盛んに行われていた。16世紀頃には、地引き網が次第に定置網に置き換わっていった(Doumenge 1998、Ravier and Fromentin 2001)。定置網では、およそ3000年から4000年前よりクロマグロの漁獲が行われており、17世紀以降、20世紀半ばまで年間1.5万トンから2万トンの漁獲があった(Fromentin 1999、Fromentin et al. 2000)。

20世紀の漁獲量はICCATの公式漁獲統計によれば(図1、付表1)、1950年から1965年には、主に北東大西洋における定置網やまき網で年間3万トン前後であった。地中海におけるまき網やはえ縄などの漁業は、1960年代に開始された。地中海における主な漁業は、まき網及びはえ縄であり、特にまき網の漁獲量が全体の6割から8割を占めている。北東大西洋における主な漁業は、はえ縄、定置網、釣り漁業である。

大西洋におけるクロマグロを対象とした日本のはえ縄漁業は、カリブ海からブラジル沖の熱帯域で1963年頃から開始され、年間数万トンを漁獲していたが、その漁場は数年間で消滅した。この漁場に分布していた魚群が大西洋の東西どちらの系群に属していたかは不明であるが、現在の水域区分では主に西大西洋となる。その後は地中海及びジブラルタル海峡付近が主要な漁場となった。漁期は地中海が4〜7月(6月は禁漁)、ジブラルタル海峡付近では3〜6月であった。1990年以降、冬季の西経35〜45度、北緯35度以北(北大西洋中央部)の新たな漁場が開発された。さらに1998年以降にはアイスランドやフェロー諸島付近に8〜11月にかけて漁場が形成され、年間千トンを超える漁獲が記録されており、現在も日本のはえ縄の主要漁場となっている。

地中海西部におけるスペイン及びモロッコの定置網では3〜7月が盛漁期である。地中海における現在のまき網の漁期は5月26日〜6月24日に制限されているが、規制強化前にはフランス、イタリアでは6〜9月、トルコでは10〜2月、チュニジアでは1〜5月が盛漁期であった。

本資源のICCATへの公式報告漁獲量は1990年代以降、1996年の約5万トンまで急増し、それ以降ICCATが設定したTAC(2万〜3.6万トン)前後で推移してきた。増減の大部分は地中海での漁獲によるものである。しかしながら2008年にSCRSは、1998〜2007年の公式報告漁獲量には深刻な過少報告が存在することを指摘し、(ICCAT 2009)地中海で操業する漁船数とCPUEに基づいて未報告漁獲量を含む全体の漁獲量を推定した。推定された漁獲量は、1998〜2006年には約5万トン、2007年には約6.1万トン(公式報告漁獲量は3.5万トン)であった(図1)。2017年のSCRSでは、未報告漁獲量は地中海におけるまき網によるものと仮定し、これらの推定値を公式報告漁獲量として扱うこととした(ICCAT 2017a、2017b)。なおSCRSでは、2008年以降の漁獲量はより正確な報告がなされているとしている。

2009年のSCRSでは、2008年より詳細なデータを用いて未報告漁獲量を含む全体の漁獲量の推定が行われた。新たに入手可能になったデータには貿易統計、登録漁船の名簿、漁船からの毎週の漁獲報告、蓄養生け簀の登録情報、VMSのデータが含まれていた。それによれば、2008年の漁獲量について、公式報告漁獲量が23,862トンであった(図1)のに対して、最も確からしい推定値は25,760トンであり、また漁船の潜在的な漁獲能力からの最大推定値でも34,120トンであった。一方、2008年の漁獲量を、2007年漁獲量推定に用いた同じ方法で推定した場合には約68,600トンにもなった。2008年に推定した、2007年の推定漁獲量約6.1万トンが過大なものであった可能性が示唆される(ICCAT 2010)。

ICCATは、大西洋クロマグロ東西両系群の国際取引を禁止するCITES(ワシントン条約)附属書Iへの掲載提案(2010年3月にCITES締約国会議において否決)を機に、2010〜2014年のTACを約1.3万トンとし、管理措置の強化に取り組んだ。そのため漁獲量は約1万〜1.3万トンで推移し、2011年には過去最低水準(9,774トン)を記録した(ICCAT 2017a)。2015年以降はSCRSにおいて本資源の資源回復が確認されたため、TACを増加させた結果、2015および2016年の公式報告漁獲量は16,201トンおよび20,098トンであった(ICCAT 2017a)。なお今後の漁獲量はさらなるTACの増加に伴い、2020年の3.6万トンまで徐々に増加する見込みである(ICCAT 2017c)。日本の漁獲量は、2010年以降1,100トン前後で推移したが(付表2)、漁獲枠が増加したため2015年および2016年の漁獲量は1,386トンおよび1,578トンであった。なお、日本はこの漁獲枠管理に、8月〜翌7月の漁期年を用いている。


生物学的特性

本系群の年齢は背鰭棘の輪紋から推定されており、大西洋クロマグロ西系群と同様に、成長につれて雄が雌より大きくなる。2015年のSCRSにおいて、従来の体長体重関係式(ICCAT 1984)は、主要な漁業国の科学オブザーバーによる14万個体以上のデータから推定した関係式に更新された。成長式と各年齢の体長(尾叉長)及び体重(全重量)を図2と付表3に示す。各関係式は以下のとおりである。
      Lt=318.85 (1-e-0.093(t+0.97))     (Cort 1991)
     体重=0.0000350801体長2.878451    (Rodriguez-Marin et al. 2015)

最大体長は330 cm、最大体重は725 kg、寿命は約40歳である。各年齢時の体長及び体重は、1歳で53 cm(3 kg)、3歳で98 cm(18〜19 kg)、5歳で136 cm(45〜51 kg)、10歳で204 cm(146〜176 kg)である(Cort 1991)(図2)。近年、上記の年齢-体長関係は耳石の輪紋を用いて再評価され、従来よりも遅い成長であることが示唆されていた。しかし、これは暫定的結果であることから、資源評価では従来通りの背鰭棘を用いた成長式が使用されている。

本種の卵は分離浮性卵で、受精卵の直径は約1 mmである。従来、マジョルカ島からシチリア島にかけての地中海で6〜8月に産卵すると考えられてきたが、近年、地中海東部海域でも本系群の卵稚仔の分布が確認されていることから(Karakulak et al. 2004、Oray and Karakulak 2005)、より広範囲に産卵場が形成されているものと考えられる。全ての雌が産卵を開始する年齢は5歳(130 cm)と考えられており、これは大西洋クロマグロ西系群に比べてかなり若い。産卵数は尾叉長200〜250 cmの成魚で2,000万〜3,800万粒と報告されている(Rodriguez-Roda 1967)。

主な分布域は北緯30〜45度の海域で(図3)、他のまぐろ類に比べて沿岸にも来遊する。地中海で孵化した稚魚は成長しながら地中海に広く分散する。一部はジブラルタル海峡を経てビスケー湾などの東大西洋に回遊する。ビスケー湾からは西大西洋の北米沖へ移動した例が通常型の標識放流結果から示されている。

現在まで20年以上にわたり、大西洋クロマグロは西経45度線で東西2つの区域の別系群として分けて管理されてきた。しかし、1990年代以降に行われた通常標識や電子標識の放流再捕結果から、東西系群は北大西洋において混合して広く回遊を行うことが示された(Block et al. 2005)。また、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を指標として用い、地中海生まれの東系群は2〜3歳までに米国東岸へ回遊することが報告されている(Dickhut et al. 2009)。さらに、耳石中心部分の酸素安定同位体比を用いた最近の研究(Boustany et al. 2007、Carlsson et al. 2007)によると、地中海で漁獲されたクロマグロ大型魚はほぼ全て東系群であった一方、西系群の漁場とされる米国東岸沖の索餌場で漁獲された未成魚(69〜119 cm)の62%は地中海生まれの東系群であり、大型魚(>250 cm)はほぼ全てがメキシコ湾生まれの西系群であったことが報告されている(ICCAT 2011)。2012年に発表された研究では、標本数が限定的ではあるが、西大西洋での漁獲物(2〜6歳魚)に占める西系群の割合が年々低下していることが示された(Secor et al. 2013)。これらの結果は、西大西洋での漁獲物には東系群の魚が含まれている可能性を示唆しており、西経45度で東西2つの系群に分けて管理する現在の方法を改善するためには、東西の混合率の推定が必要とされる。

本系群の胃内容物には魚類や甲殻類、頭足類等幅広い種類の生物が見られ、特定の餌料に対する嗜好性はないようである(Ortiz de Zarate and Cort 1986、Logan et al. 2011)。仔稚魚期には、魚類に限らず多くの捕食者がいるものと思われるが、あまり情報は得られていない。遊泳力がついた後も、まぐろ類を含む魚食性の大型浮魚類により捕食されるが、体長50 cm以上に成長すると、捕食者は大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に限られるものと思われる。


資源状態

本系群の資源評価は、ICCATのSCRSにおいて、加盟国の研究者の共同作業で実施される。前述のとおり、漁獲魚をより正確に東西系群に分ける方法は確立されていない。2017年9月に実施した資源評価では、東西混合を加味した資源評価も試験的に実施したものの、混合率の情報が限定的でありモデルの改善も必要とされたため、過去の資源評価と同様に西経45度線で東西系群に分けて解析した(ICCAT 2017b)。

2017年9月に実施した資源評価では、東西両系群ともに2014年(前回)の資源評価から多くの新しい知見(標識放流結果や東西混合率など)やデータ(過去の漁獲量や漁獲物サイズ組成など)を取り込み、生物学的パラメータ(自然死亡係数や成長曲線など)も見直したため、SCRSは委員会への管理勧告は以前より信頼できるものであるとした。

一般に管理目標値の推定は、自然死亡係数などの生物学的パラメータに加え、将来の長期的な加入量の設定が必要である。将来の加入量には多くの場合、理論的な再生産関係式が使用される。しかし2017年の本種の資源評価では、推定された再生産関係が逆相関であったり、年代別に加入レベルが異なったり、資源手法間で関係式が大きく異なった。2017年の資源評価ではデータやパラメータなどを大きく改善したが、再生産関係から将来の加入量を仮定すると、管理目標値の推定範囲が非常に広くなった。最終的にSCRSは、将来の長期的な加入量を選択することは適切でないと判断し、管理目標値を推定しなかった。そのため、管理目標値に対する資源状態を示すKobeプロット及びKobeマトリックスは作成せずに、漁獲死亡係数Fのみに基づくKobeマトリックスを作成した上で管理勧告を作成した(ICCAT 2017a)。なお両系群とも、管理目標にはFMSYの代替値として再生産関係を必要としないF0.1を使用することとした。

2017年9月の資源評価では、従来の資源評価手法であるADAPT VPAを含む4つの資源評価モデル(ADAPT VPA、Age Structured Assessment Program(ASAP)、Stock Synthesis 3(SS3)、Statistical Catch-at-Length Model(SCAL))による資源評価結果を比較検討し、SCAL以外の結果の挙動が大きくは異ならないことを確認した上で、最終的な管理勧告には従来の手法であるADAPT VPAを採用した。ADAPT VPAによる資源評価では、1968年から2015年までの年齢別漁獲尾数(1〜10+歳)と、はえ縄CPUE等8種類の資源量指数(図4)を入力データとし、ICCAT公認プログラムであるVPA-2BOX(Porch 2003)を用いて解析した。今回の資源評価から漁業独立指標を解析に取り込んだ。推定された親魚資源量(4歳以上、SSB)、加入量及び漁獲死亡率(2〜5歳及び10歳以上)をそれぞれ、図5〜7に示す(ICCAT 2017a、2017b)。

推定された親魚資源量は1970年代半ばに過去最大(約60万トン)となった後、1990年から2000年代半ばまで横ばい(約28万トン)で推移し、その後近年まで急激な増加を示した。全ての資源量指数は近年の増加を示している。加入尾数(図6)は、1980年代後半以前は比較的低い水準であったが、それ以降は高い水準と推定された。高齢魚の漁獲死亡率は、1990年代半ば以降に急増したが、2008年以降は漁業規制の影響で減少した(図7右図)。また若齢魚の漁獲死亡率は2003年以降に急減し、近年は30 kg未満の小型魚の漁獲制限の影響でさらに減少した(図7左図)。近年(2012-2014年の平均)のFは、F0.1の0.339倍(0.254-0.438:80%信頼区間)と推定され、現状は過剰漁獲ではないと判断された。前述のとおり、2017年のSCRSは現状の資源状態を判断しなかったが、本資料では過去約50年(1968〜2015年)の親魚資源量推定値から資源の水準は高位で、資源の動向は増加傾向と判断した。

2017年のSCRSは、近年(2006〜2011年)の平均的な加入量および選択率を仮定し、2018年から2022年までの短期的な将来予測を行った結果、3.6万トンまでの漁獲であれば、2022年までに60%以上の確率でFをF0.1以下に保つことができると予測された。また2.8万トンまでの漁獲であれば今後も資源量は増加すると予測された。


管理方策

ICCATは2009年に、2022年までに60%以上の確率で最適な資源状態に回復させるという計画を決定した(ICCAT 2010 [Rec. 09-06])。2017年のSCRSによる勧告は以下の通りであった(ICCAT 2017a)。回復目標の設定年である2022年まで60%以上の確率でFをF0.1以下に維持することのできる漁獲量として3.6万トンを勧告した。またTACを現行の23,655トンから増加させる際は、2020年までに3.6万トンへ段階的な増加とすることを勧告した。また委員会は毎年、資源量指標(CPUE等)などに基づくSCRSのアドバイスを受けるべきであるとした。これらの結果に基づき、2017年11月にモロッコで開催されたICCAT年次会合では、TACを2018年に2.8万トン(日本枠は2,279トン)、2019年に3.2万トン(2,528トン)、2020年に3.6万トン(2,801トン)にすると決定した(ICCAT 2017c [Rec. 17-07])。なお次回の資源評価は2020年に実施する予定である。

蓄養魚では活け込み時の体長及びそこから推定される漁獲量に不確実性がある問題が指摘されており、SCRSはステレオビデオカメラによる蓄養魚活け込み時の体長測定技術の実用化を強く勧告している(ICCAT 2012、 2013)。これを受けて委員会では、2013年より全ての生簀においてステレオビデオカメラ、または同等の情報が得られる方法の導入を義務付けている(ICCAT 2014 [Rec. 13-07]、ICCAT 2017c [Rec. 17-07])。

他の規制として、SCRSが資源の回復が困難な状況など、本資源の崩壊の危機を認めた場合、漁業停止の義務化を決定している。はえ縄の禁漁期は6月1日〜12月31日(ただし、地中海及び東部大西洋の一部(西経10度以西、北緯42度以北、及びノルウェーEEZ内)は2月1日〜7月31日)、まき網の禁漁期は5月26日〜6月24日(ノルウェーEEZ内は6月25日〜10月31日以外)が設定されている(ICCAT 2017c [Rec. 17-07])。また、各国の保存管理措置遵守確保の強化のため、漁業国及び蓄養(養殖)国が活け込み時にクロマグロの尾数及び重量を正確に確認してICCATに報告できない場合、クロマグロを放流することを義務付けている。さらに、漁獲証明制度、小型魚を保護するため体重30 kg未満の漁獲・陸揚げ・販売の禁止(ただしビスケー湾の竿釣り、ひき縄、中層トロール、アドリア海の蓄養向けについては体重8 kg未満)、魚群探査のための航空機利用の禁止等がある。

日本は大西洋クロマグロを漁獲する自国はえ縄船に対して毎日の漁獲報告及び個体別重量報告を義務付けている。これによって漁獲した全個体の個体別重量が得られ、また漁獲状況が毎日、即時的に得られるようになっている。さらに科学オブザーバーを乗船させ、詳細な操業データ、生物測定データ、耳石等の生物サンプルの収集を行っている(Japan 2016)。ICCATでの資源評価においてこれらの精度の高い基礎的科学データは重要であり、日本のはえ縄CPUEは主要な資源量指数として重視されている。


大西洋クロマグロ(東大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 高位 1
資源動向 増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
1.1万〜2.0万トン
最近(2016)年:2.0万トン
平均:1.5万トン(2012〜2016年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
1,093〜1,578トン
最近(2016)年:1,578トン
平均:1,264トン(2012〜2016年)
管理目標 2022年までに60%以上の確率で親魚資源量をMSYを与えるレベルに回復
資源評価の方法 VPA
資源の状態 F2012-2014/F0.1=0.339 [0.254-0.438] 2
管理措置 TAC 2018〜2020年:2.82万トン、3.24万トン、3.6万トン
(日本枠:2,279トン、2,528トン、2,801トン)
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2017年
次回の資源評価年 2020年
1 大西洋クロマグロ作業部会では、長期的な将来の加入量が不明であるため、資源量の不確実性の範囲を適切に示すことができないと判断した。本資料では、過去約50年の親魚量推定値から現状を高位と判断した。
2 代表値は、近い将来にも現状の加入量レベルが続くと仮定し、近年6年間(2006〜2011年)の平均加入レベルと仮定した場合を示し、括弧内は500回のブートストラップによる80%信頼区間を示す。

執筆者

くろまぐろユニット
みなみまぐろサブユニット
国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部 温帯性まぐろグループ

木元 愛・伊藤 智幸


参考文献

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