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67 アカイカ 北太平洋

Neon Flying Squid, Ommastrephes bartramii

                                                                       
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最近の動き

日本沖合の冬春生まれ群を対象とするアカイカ冬漁(1〜3月)は、近年は不漁が続き、2014年漁期はやや回復したが、2015年、2016年漁期2年続けて不漁となった。一方、北太平洋中央部における春夏漁(4〜9月)の2016年の漁獲量は3,878トンで、近年では好漁に恵まれた前年とほぼ同様であった(前年比105%)。2016年7〜8月に実施した調査流し網による秋生まれ群の資源豊度は前年比77%となり、昨年よりやや減少したと推定された。一方、同様の調査流し網で予測される冬春生まれ群の2016年7〜8月時点の加入豊度は、前年比92%となり2年連続で低い状態となった。北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約(北太平洋漁業資源保存条約)が2015年7月に発効し、2016年4月に開催された北太平洋漁業委員会(NPFC)第1回科学委員会において各国等によるアカイカ漁獲データが報告された。


利用・用途

大型のアカイカは肉厚で柔らかいため、内臓・足・皮を除去して冷凍ロールイカ、惣菜、さきいか、燻製、イカ天ぷら等の加工原料として広く利用されている。


図1

図1. 北太平洋アカイカ国別漁獲量
中国の漁獲量は、Chen ら(2008a)による冬春生まれ群のアカイカ漁獲量及びNPFC条約の報告(Anon 2016)を用いた。台湾及び韓国のアカイカ漁獲量は、FAO(2015)の統計値における北西太平洋におけるその他のイカの値をアカイカと見なした。


図2

図2. アカイカ冬春生まれ群と秋生まれ群の分布域(漁場は索餌域に形成される)


図3

図3. アカイカの成長曲線
左)親の成長(Yatsu 2000)、(右)生息する表面水温に依存する稚仔期の成長曲線(酒井ほか 2004)


表1

表1. アカイカの成熟外套長と最大外套長(谷津ほか 1998)


図4

図4. アカイカに超音波発信器(Pinger)を付けたバイオテレメトリー手法によるイカの日周鉛直行動


図5

図5. 東経170度以東のアカイカ秋生まれ群の我が国の漁獲量(2016年までの全漁連集計より)と調査流し網CPUE(10反当たりの採集尾数)の経年変化(1999年までの調査流し網データは北海道大学の北星丸による)。破線は1999〜2016年までの調査流し網のCPUEの最低値と最高値の差を3等分した水準、低位、中位、高位を示す。


図6

図6. 上:東経170度以西の我が国のアカイカ冬春生まれ群の漁獲量(全漁連集計1〜3月の水揚量から原魚換算)と1974〜2007年までの調査船CPUE(尾/釣り機台数/時間)の経年変化及び中国の漁獲量(2006年以降はChen et al. 2008a及びAnon 2016より)。中:冬春生まれ群を対象としたいか釣り船の漁獲成績報告をもとに標準化されたCPUE(トン/日/船)。1995〜2014年までのCPUEの最低値と最高値の差を3等分した水準、低位、中位、高位を示す。下:調査流し網CPUE(東経144度及び155度における10反あたりの採集尾数)による加入量予測値破線は2006〜2015年までの調査流し網のCPUEの最低値と最高値の差を3等分した水準、低位、中位、高位を示す。


図7

図7. 冬季の水産庁調査船『開洋丸』による表層トロールによるアカイカ分布量
上:2015年1〜2月におけるアカイカCPUE(kg/曳網1時間)。背景は2015年2月8日時の表面水温、白丸はトロール調査が実施されたがアカイカの採集がなかった地点。下:2011年1-3月におけるアカイカCPUE(kg/曳網1時間)。背景は2011年2月14日時の表面水温、白丸はトロール調査が実施されたが、アカイカの採集がなかった地点を示す。


表2

表2. アカイカの国別漁獲量(万トン)の変遷(出典:FAO 2016、Chenら2008及びAnon 2016)


漁業の概要

1970年代初頭に激減したスルメイカ漁獲を補うために、1974年頃から三陸・道東沖合でアカイカ釣り漁業が始まり、1977年には最高漁獲量(12万トン)をあげた。一方、流し網漁業は1978年に三陸・道東沖で始まったが、アカイカ釣り漁業と競合したため、1979年から東経170度以西を釣り漁場、以東を流し網漁場とする規制が実施された。その後、釣り漁業は縮小したが、流し網漁業は1980年代には毎年12万〜22万トンを供給する重要な漁業となり、韓国と台湾も参入した(図1)。しかし、公海域における流し網漁業は、国連決議により1992年末をもってモラトリアム(操業停止)となった。

流し網が禁止になった1993年以降、アカイカの強い需要を反映して日本近海でアカイカ釣り漁業が復活し、1994〜1995年にはともに約7万トンを漁獲した。東経170度以東の旧流し網漁場においても、いか釣り漁船が出漁するようになり、1995年以降0.2万〜2万トンを漁獲して重要度が増している。東経170度以西の漁業の主体は中型いか釣り漁業である。1994〜1998年は6万トン以上の漁獲量を示したが、資源が急減した1999年以降は1万〜3万トンまで漁獲量が減少した。最近は漁業の主力である中型いか釣り漁船の減少及びスルメイカ等との兼業もあり漁獲量は多くない。

これまで、我が国以外では台湾、韓国もアカイカを漁獲していた。しかし、近年では出漁隻数も減少し、台湾は2005年に3隻のいか釣り漁船が操業したが、その後は操業の実態が不明であり(酒井ら 2014)、FAO統計でのアカイカと思われる漁獲量は少ない。その一方で、中国の釣り漁船が我が国200海里付近でアカイカを漁獲しており、中国船の隻数は1996年には年間約350隻、その後は約400〜600隻に増加した(一井 2002)。しかし、その後、資源水準の低下に伴い出漁隻数はやや減少した。NPFCでの報告によると、ここ数年は116(2015年)〜214(2013年)隻が出漁していると報告されている。これらの外国船による漁獲は、1995〜2005年には8〜11月にかけて冬春生まれ群を対象に7万〜13万トンが報告(Chenら 2008a)されている一方で、秋生まれ群を対象とする漁獲は少ない。Chenら(2008a)の報告による1998〜2002年までのアカイカ漁獲量とFAO統計の同期間における北東太平洋の不明イカ漁獲量は、ほぼ完全に一致している。また、最近では、NPFCへの年次報告として漁獲量が報告されている(Anon 2016)。これらの集計を基にした北太平洋での総漁獲量は1998年にピークを記録したが(約23万トン)、それ以降2015年までに減少傾向にある(5万トン以下)。一方、FAO統計における中国の北東太平洋における不明イカ漁獲量は、2003年以降にそれまでの10万トンレベルから50万トンレベルへと急増したが、全てをアカイカの漁獲量と考えるのは過大推計である。また、漁業が行われている台湾や韓国漁船の集計もアカイカとしての記載がなく、FAO統計に示される集計海域(北太平洋中央部など)や頭足類の仕分け名(種々のイカ、普通のイカなど)から推測するしかない状況にあった。ロシアも自国200海里内でわずかにアカイカを漁獲しており、FAO統計には記載がある。


生物学的特徴

アカイカは外洋性種で、季節的な南北回遊を行う。漁業が行われている北太平洋では、稚仔の出現から推測されるアカイカ産卵場は日本(南西諸島〜小笠原諸島)や米国(ハワイ諸島)の200海里水域を含む表面水温21〜25℃の範囲の亜熱帯海域であり(森ら 1999、Ichiiら 2004)、索餌場は亜寒帯境界〜移行領域である(図2)(村田 1990、村田・中村 1998、谷津 1992)。最近、アカイカの人工ふ化飼育実験によって正常なふ化に至る最適な産卵水温は18〜25℃の範囲であることが確かめられた(Vijaiら 2015)。北太平洋における系群は、発生時期、外套長組成、稚仔の分布及び寄生虫相により、秋生まれ中部系群、秋生まれ東部系群、冬春生まれ西部系群及び冬春生まれ中東部系群の4系群に分けられる(谷津ほか 1998、長澤ほか 1998)。ただし、秋生まれ中部系群と秋生まれ東部系群は、流し網CPUEの経年変化が酷似しており、同一系群である可能性がある。

寿命は1年で、北太平洋では最大外套長は雌で60 cm、雄で45 cm程度であり(図3左、Yatsuら 2000)、秋生まれ群が大型となる。成長は発生時期や海域により異なるが、雌は生後6か月程度で外套長30 cmになり生後約10か月で成熟に達する(表1)。ふ化稚仔は表層に分布し、表面水温に依存した指数関数的な成長をする(図3右、酒井ら2004)。最近報告された粒子追跡実験によるシミュレーション研究によると、アカイカ秋生まれ群のふ化稚仔がふ化してから1か月間に経験する水温は冬春生まれ群のふ化稚仔が経験する水温よりも1oC高いことが示された(Katoら 2014)。上述した水温依存の初期成長を考慮すると、この1oCの環境水温の差は、秋生まれ群と冬春生まれ群との間に大きな成長の違いを生じさせることを示唆する。

アカイカは、後述するように餌生物の日周鉛直移動と密接に関わる明瞭な日周鉛直移動を行う。秋生まれ群は春から夏にかけて索餌しながら北上回遊し、秋以降は南下回遊して産卵場に達するが、いずれも昼間は水深300〜600 m、夜間は水深0〜50 mを回遊する(図4-A〜C)(酒井ら 2006)。一方、冬春生まれ群は冬季漁場において夜間は表層を回遊し、昼間は上述の秋生まれ群よりも浅く水深120 m程度である(図4-D)(酒井・加藤 2011)。

春季の北上回遊や夏季の索餌場でのアカイカは、ハダカイワシ類を中心とする魚類、頭足類、甲殻類等を捕食しており、特に前2者が主要な餌生物となっている(Seki 1993、有元・河村1998、保正ら 2000、Watanabe ら2004)。これらの餌生物は、昼間は水深300〜600 m、夜間は水深0〜50 mを日周鉛直移動すると考えられる。一方、アカイカの捕食者として代表的なものはメカジキである(Seki 1993)。


資源状態

【秋生まれ中部系群及び秋生まれ東部系群】

1992年末の公海流し網の操業停止以降、旧流し網漁場における盛漁期(7月)のアカイカ流し網調査の資源量指数(10反当たりの捕獲尾数、CPUE)は、1年間の時間遅れを伴って約6倍に増加した(図5)。これは、流し網漁業(年間10万〜18万トンの漁獲圧があった)により低下していた資源が、流し網の操業停止により急速に回復したことを示唆している(Yatsuら 2000)。しかし、1997年に一度低水準となり、1998年に高水準に復活したものの、1999年に再び低水準となり、これが2003年まで続いた。2008年に漁獲は増加したが、それ以降2011年まで減少傾向が見られ、大きな変動を繰り返している。秋生まれ群の流し網全盛期1982〜1992年における7月の資源量は、商業流し網データと調査流し網データを用いて3つの方法で推定され、いずれの方法でも類似した推定値(33万〜38万トン)が得られた(Ichiiら 2006)。

北太平洋中央部における大型の秋生まれ群と小型の冬春生まれ群を対象としていか釣り漁業が行われている。2015年の夏漁(5〜8月)の漁獲量は水揚げ報告から原魚換算率1.23(酒井 2012)を用いて算出すると3,878トンで、好漁に恵まれた2014年の原魚換算後の漁獲量(3,482トン)とほぼ同等であった。1979〜2016年にわたり行われている38年間の漁業と独立したアカイカ流し網調査による秋生まれ群の平均CPUE(10反あたりの漁獲尾数)は14.1、2016年のCPUEは12.2で平均よりやや減少した。また、1998/99年に北太平洋でレジームシフトが起こったとされるが(Minobe 2000、Jo and Kim 2013)、それ以降の17年間(調査を行わなかった2000年を除く)にわたるCPUEの最低値(0.1、2011年)と最高値(24.0、2006年)の差を3等分し、低位、中位、高位と水準分けすると、2016年の資源水準は依然中位に相当する。一方、直近の5年間のCPUEで見ると、2011年以降、秋生まれ群の資源水準は増加の傾向にあると見られる。

秋生まれ群の資源水準と海洋環境との関係について、秋生まれ群の漁場における資源水準の変動の25〜53%(決定係数)は、産卵期後の2月の生育場における基礎生産と関連する海洋環境データで説明できた(Ichiiら 2011, 2015、Igarashiら 2015)。


【冬春生まれ西部系群】

本系群は東経170度以西に分布し、釣り漁業の主対象となっている。現存量についてはいくつかの推定値があるが、不確実性が大きく、信頼性のある値は得られていない。まず、1984〜1988年夏季の千島列島南部水域において、夜間の灯火観測点で実施された目視調査では、アカイカの平均密度が337〜1,172尾/km2と推定されている(スロボッコイ 1990)。アカイカの平均体重を500 gとし、この密度を東経170度以西の西部北太平洋に引き伸ばすと、14万〜40万トンとなる。また、村田・嶋津(1982)はDeLury法により、1979年の西部北太平洋(冬春生まれ群)の初期資源量の推定値を最大2億8千万尾(体重500 gとして14万トン)と見積もった。ある時点における現存量と初期資源量は単純には比較できないが、両者は数十万トンと概ね一致している。一方、1983〜1995年の北緯40〜45度、東経140〜165度の西部北太平洋における、表中層トロール調査によりアカイカ現存量が推定され(Belayev and Ivanov 1999)東経170度以西に引き伸ばすと、105万〜300万トンとなる。ただし、表中層トロール調査の場合、現存量の推定値は漁獲効率(曳網した海水中に分布する生物のうち漁獲される割合)の仮定値に大きく影響される。

1974〜2007年の間に実施されたいか釣り調査(8月)によると、平均CPUE(尾/台/時間)は流し網漁業が盛んになる前の1970年代中頃は高い水準(20以上)であった。その後、CPUEは減少し1980〜1993年までの平均は5.9へ減少した(図6上)。この時期の資源水準の低下の原因として、@過大な漁獲量(日本の釣り漁業による10万トン以上の漁獲量+韓国・台湾及び東経170度以西での我が国の流し網による漁獲量)及びA環境収容力の低下(親潮域の寒冷化による動物プランクトン現存量の減少;Nagasawa 2001)の可能性が考えられる。その後、1994〜1998年までCPUEは比較的高い水準(10.9〜14.9)が続いたが、2007年まで変動を伴いながら徐々に低下する傾向が見られた(図6上)。この間に中国の漁獲量が急増し、1995〜2008年まで平均漁獲量は10万トンを超えていた(図6上)。

三陸沖の冬漁を主体としたいか釣り船のCPUE(トン/日/船)を1995〜2014年までの漁獲成績報告をもとに、漁船トン数、月(12-3月)、海区(3海区)の説明変数を用いて一般化線型モデル(GLM)で標準化した(図6中)。いか釣り漁船のCPUEは2004〜2006年にかけて高い水準にあったが、それ以降、変動を伴いながら減少傾向を示した。1995〜2014年までの平均CPUEを過去の最低値(0.04、2012年)と最高値(2.26、2006年)の差を3等分し、高位、中位、低位と水準分けすると、2014年の資源水準は中位に相当する。2015年以降の漁獲成績報告は未集計であるが、ほとんど漁獲がなかったことから直近年(2016年)の資源水準は低位と考えられる。

2006年から本資源を対象として始めた三陸沖合東経144度ラインでの流し網による加入量調査では、2006〜2015年までの平均CPUE(10反あたりの採集尾数)は23.0、2016年のCPUEは5.2と見積もられ、2015年の値(6.6)の92%に減少した。また、この10年間のCPUEを過去の最低値(4.0、2011年)と最高値(76.7、2007年)の差を3等分し、低位、中位、高位と水準分けすると、2016年の資源水準は低位に相当する。調査流し網CPUEで見ると2009年以降の加入量は低い状態が続き、2012年に回復を示したが、2013年以降は再び減少に転じた(図6下)。主たるアカイカ漁業国である中国のいか釣り船による漁獲量は、2008年までは10万トンを超えていたが、2009年以降は急激に低下して4万トン台となっている(図6上)。

これらのアカイカは、夏から秋にかけて黒潮北上暖水や三陸沖・釧路沖暖水渦を利用して北上索餌回遊を行う間に(為石 2002)、北西太平洋での中国を中心とする外国船による漁獲圧にさらされる。このため、日本漁船の漁獲は、外国船の漁獲による影響が考えられるが、それ以外に漁場形成に関係する海洋構造や漁場探索能力に左右される。中国いか釣り漁船が2000〜2005年にかけて東経海域で漁獲した冬春生まれ群について、Chenら(2008b)は除去法で資源評価を行った。これによると、相対逃避率はこの期間を平均すると一般的な管理目標とされる40%(Beddingtonら 1990)に近いことから、現状の漁獲死亡係数は適正と判断された。しかし、この期間に相対逃避率や逃避量が減少していることから乱獲の可能性も示唆されている(Chenら 2008b、Arkhipkinら 2015)。一方、最近年、調査流し網による冬春生まれ群の資源水準と海洋環境との関係から、冬春生まれ群の冬季漁場における資源水準の変動の約50%(決定係数)を、1年前の2〜5月における産卵場のクロロフィル濃度で説明でき、さらに漁期前10〜11月の索餌場における表層混合に強い影響を与える風の強によって資源水準の変動の64%を説明できる(Nishikawaら 2014, 2015)。

2015年冬季に冬春生まれ群アカイカの分布量調査が水産庁調査船『開洋丸』による表層トロールを用いて実施された(水産庁・東北区水産研究所 2016)。この調査では三陸沖合公海上の一部で高いCPUE(kg/曳網時間)の海域が認められたものの、冬季漁場が形成される東経145度以西の海域におけるアカイカ分布量は低かった(図6上)。同様な調査を実施した2011年冬季の結果と比較すると、2015年は全体的に低位であった(図6)。

以上、直近(2016年)の実際のいか釣り船によるCPUEや漁獲量、調査流し網による加入量調査のCPUEは、いずれも資源水準が低いことを示し、資源の動向は漁獲量水準に依拠して減少傾向と判断された。


管理方策

本種の管理方策については現時点では確立されていないが、これまでにいくつかの管理方策に向けた報告が行われている。

北太平洋公海におけるアカイカを含む国際的な漁業資源に関する議論が進められている。北太平洋におけるアカイカの資源単位としての系群は、前述のように秋生まれ中部系群、秋生まれ東部系群、冬春生まれ西部系群及び冬春生まれ中東部系群の4つが提案されている(谷津ら 1998、長澤ら 1998)。しかし、資源管理上は極めて複雑であることから、東西で資源管理の単位を分けるのが便宜的である。実際に、2013年に実施した北太平洋における広域調査の結果から、東経170度付近を境に東西で稚仔の分布量が異なり、アカイカ秋生まれ群の分布海域は東経175度以東であることが明瞭に示唆されていた(水産庁 2015)。このため、NPFCの科学委員会においても東経170度を境にして東西で統計データの集計が進められている(Anon 2016)。これらの集計を基にした北太平洋での総漁獲量は1998年にピークを記録したが(約23万トン)、それ以降2015年までに減少傾向にある(およそ3.4万トン)。

最近、北太平洋のアカイカ資源の両季節発生群について、資源変動の要因の多くが産卵生育場や索餌場における海洋生産性の変化で説明できるとされ(Ichiiら 2011、Igarashiら 2015、Nishikawaら 2014, 2015)、一方で、東経海域における冬発生まれ群が減少していることから乱獲の可能性も示唆されている(Nishikawaら 2014, 2015)。いまだ、海洋環境と漁獲の影響について、アカイカの資源変動を説明する上で明瞭な証拠はないが、変動する環環境収容力に見合った適正な漁獲量を見積もる必要がある。

2015年7月には、底魚漁業資源だけではなく、サンマやアカイカなどの浮魚資源も対象とする北太平洋漁業資源保存条約が発効し、東京に事務局を持つNPFCが設立された。北太平洋ではこれまで中国船籍と見られるいか釣り漁船が公海で禁止されている流し網を積載し使用したとの疑いや(NPAFC Annual report 2009)、米国沿岸警備隊による中国漁船の拿捕などが発生している(Alaska Report 2007)。また、外国漁船によって日本のいか釣り漁船の操業が妨げられる事態も発生してきた(黄金崎2002)。日本漁船の場合は、始めに魚群を見つけた漁船が優先して、後続の漁船は3マイルの船間距離をおくなど操業ルールを作っているが、中国などの外国船にはこのようなルールはなく、過密や割り込み、集魚灯点灯状態での至近距離通過など、危険を伴う無謀な操業が行われてきた。NPFCの設立により、資源管理だけではなく、操業ルールなどの適切な漁業管理も考慮された持続的な資源利用が徹底されると期待される。


アカイカ(北太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位(秋生まれ群)・低位(冬春生まれ西部系群)
資源動向 増加傾向(秋生まれ群)・減少傾向(冬春生まれ西部系群)
世界の漁獲量
(最近5年間)
3.4万〜7.1万トン
最近(2015)年:3.4万トン
平均:4.9万トン(2011〜2015年)
(FAO統計及びNPFC条約漁業情報からの推計)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
0.3万〜1.3万トン
最近(2015)年:0.4万トン
平均:0.4万トン(2011〜2015年)
(全漁連水揚げ統計の原魚換算)
管理目標 MSY:15.9万トン(秋生まれ群)
相対逃避率40%:10万トン(冬春生まれ西部系群)
資源の状態 秋生まれ群:不明、冬春生まれ西部系群(2001〜2005年):相対逃避率平均値37.2%(ただし、減少傾向にあるので乱獲の可能性も示唆)
管理措置 大規模流し網禁止(国連決議)
管理機関・関係機関 NPFC
最新の資源評価年
次回の資源評価年

執筆者

外洋資源ユニット
いか・さんまサブユニット
東北区水産研究所 資源海洋部

酒井 光夫

外洋資源ユニット
いか・さんまサブユニット
東北区水産研究所 資源海洋部 浮魚・いか資源グループ

阿保 純一・ダルマモニー・ビジャイ


参考文献

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