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58 さけ・ます類の漁業と資源調査(総説)

                              
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図1.生産量の多いさけ・ます類

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図2

図2. 世界のさけ・ます類魚種別漁獲量(1950〜2014年)(データ:FAO 2016a)


図3

図3. 世界のさけ・ます類魚種別養殖生産量(1950〜2014年)(データ:FAO 2016b)


図4

図4. 世界のさけ・ます類国別生産量(1950〜2014年)(データ:FAO 2016c)


図5a
図5b

図5. さけ・ます類の国別輸出量(上)及び輸入量(下)(1976〜2013年)(データ:FAO 2016d)


図6

図6. 日本の種別水域別さけ・ます漁獲数(1870〜2015年)


図7

図7. ロシア沿岸におけるサケ漁獲量(1952〜2015年)


図8

図8. ロシア沿岸におけるベニザケ漁獲量(1952〜2015年)


図9

図9. ロシア沿岸におけるカラフトマス漁獲量(1952〜2015年)


付表1

付表1. 世界のさけ・ます魚種別漁業・養殖業生産量(1950〜2014年)(単位:千トン)


世界のさけ・ます漁業

さけ・ます類(サケ属及びタイセイヨウサケ属)のうち、北大西洋沿岸に天然分布するのはタイセイヨウサケ及びブラウントラウトの2 種であり、北太平洋沿岸に天然分布する種は、ベニザケ、カラフトマス、サケ(シロザケ)、ギンザケ、マスノスケ、ニジマス(スチールヘッドトラウト)、サクラマス及びカットスロートトラウトの8 種である。これら10種のうち、カットスロートトラウトを除く9 種が海面でも漁獲対象となっている。世界の主要さけ・ます類漁獲量の経年変化を見ると、1980年代以降高い水準で推移している。2014年の漁業生産量は、北太平洋全体として見た場合のカラフトマスが不漁年にあたることから2013年よりも減少し、88.1万トンであった。カラフトマス、サケ及びベニザケの太平洋さけ・ます類の主要3 種が漁獲の9割以上を占めている(図2)。

さけ・ます類を代表とする溯河性魚類に関しては、1993年に発効した「北太平洋における溯河性魚類の系群の保存のための条約(NPAFC条約)」により、原則として北緯33度以北の北太平洋公海におけるさけ・ます類の漁獲が禁止されている。さらに、北大西洋では「北大西洋におけるさけの保存のための条約(NASCO条約)」により、原則として領海基線から12海里以遠の水域ではタイセイヨウサケの漁獲が禁止されている。また、国連海洋法条約では、溯河性魚類資源の母川の所在する国は、当該資源について第一義的利益及び責任を有することが規定されている。

さけ・ます類の漁業による漁獲量は1970年代半ばから増加し、2000年代半ば以降は歴史的に見ても高い水準を維持しているものの、近年では養殖によるさけ・ます類の生産量が著しく増加しており、2014年の世界のさけ・ます類の養殖生産量(淡水を含む)は332.6万トンと漁業生産量の3.5倍以上になっている。養殖生産量が多いのはタイセイヨウサケ、ニジマス(サーモントラウト)及びギンザケの3 種で、特にタイセイヨウサケの海面養殖生産量は1980〜1990年代に急速に増大し、2001年以降100万トン台となり、2012年以降は200万トンを超えている(図3)。

世界のさけ・ます類の国別生産量(漁業生産+養殖生産)を見ると、1990年以前は北太平洋沿岸の漁業生産国である日本、米国、ソ連(ロシア)、カナダ等が主体であったが、それ以降は急激に養殖生産を増やしたノルウェー、チリ等が大きな割合を占めている(図4)。また、さけ・ます類の国別輸出入量は、米国、カナダ等の漁業国からの輸出量が微増もしくは横ばいであるのに対して、ノルウェー、チリ等の養殖生産国からの輸出は1990年代以降ほぼ右肩上がりで年々増加している(図5)。輸入は従来より日本、ヨーロッパ、北米等の先進国で多く、流通や冷蔵・冷凍技術の発達に伴って貿易量が増加してきた。また、近年では中国を含むその他の国の輸入量も増加傾向にあり、市場規模の拡大と多様化が進んでいる。このように、養殖生産されたさけ・ます類に対する需要が最近数十年で世界的に増大していることから(FAO 2016e)、さけ・ます類の流通は国際化が急速に進展すると同時に中身も変化し、1970年代にはウエイトの高かった缶詰の比率が低下する一方で、冷凍製品の割合が増加し、さらに近年では生鮮・冷蔵等が主体となってきた。需給の伸びが著しい養殖さけ・ます類であるが、最近では2015年11月に遺伝子組換えしたタイセイヨウサケの生産・販売を米国食品医薬品局が承認したこと(FAO 2016e)、2016年2〜3月にチリで発生した有害藻類のブルーム(大増殖)により養殖さけ・ます類の20%あまりが大量死したことが話題となっている(GLOBEFISH 2016)。


日本のさけ・ます漁業

日本では、主にサケ、カラフトマス、サクラマス及びベニザケ(ヒメマス)が河川、湖沼及び沿岸で先史時代から漁獲されてきた。1870年以降の日本によるさけ・ます漁獲数(1993年以降のロシア200海里水域内漁業を除く)を図6に示す。1929年にカムチャッカの沖合域において母船式漁業が開始されると、さけ・ます流し網による沖合域での漁獲が可能となった(田口 1966)。第二次大戦中には沖合漁業は休止となり、戦後しばらくはマッカーサーラインにより制限されていたが、1952年の同ライン撤廃に伴い、沖合さけ・ます漁業が再開された。ほぼ時を同じにして、沖合さけ・ます漁業について、1953年に「北太平洋の公海漁業に関する国際条約(INPFC条約)」が、1956年に「北西太平洋の公海における漁業に関する日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約」が発効し、操業規制の強化が始まった。1970年代以降、沖合域における漁獲量は徐々に減少したが、沿岸域における定置網の漁獲量が増加した。その後、1989年の国連での大規模公海流し網禁止決議の採択及び1993年のNPAFC条約の発効に伴い、北太平洋における沖合さけ・ます漁業は公海域での操業が完全に禁止されることになり、その結果、日本漁船に残された漁場は、日本及びロシア200海里水域内のみとなった。さらに、2015年6月にロシア連邦法「漁業と水棲生物の資源の保全」が改定され、2016年1月よりロシア200海里内で行われてきたロシア及び日本のさけ・ます流し網漁業が全面的に禁止された。したがって、現在日本系サケ、カラフトマス及びサクラマスは主に日本沿岸域で漁獲されている。2015年の日本におけるさけ・ます類の海面漁獲量は前年よりも1.1万トン少ない14.0万トン(海面漁業全体の4.0%)となり、2010年以降20万トンを下回っている(農林水産省統計部 2016)。

太平洋側の日本200海里水域内でサケとカラフトマスを対象とする小型流し網漁業は、ロシアとの政府間交渉に基づき毎年の漁獲量を決定している(永沢 2011)。2016年漁期はサケとその他のさけ・ます類に分けて上限枠を設定し、サケ424トン(上限500トン)、その他のさけ・ます類997トン(同1,550トン)を漁獲した。また、ロシア200海里水域内における漁獲割当量はロシアとの政府間協議によって決定されてきたが、2016年1月よりロシア200海里内におけるさけ・ます流し網漁業が全面的に禁止されたことを受け、2016年は代替漁法を検討するための曳き網によるさけ・ます類の試験操業が2016年7月にロシア200海里水域において実施され、さけ・ます類全魚種で合計4.4トンを漁獲した。

日本のさけ・ます養殖業は、海面では主にギンザケを対象にしている。2005〜2010年の生産量は1万トン超えて推移していたが、東日本大震災により主要産地である東北地方太平洋沿岸の養殖施設が大きな被害を受け、2011年に計上された生産量は僅か116トンとされているが(農林水産省統計部 2016)、データの消失等もあり正確な値は不明である。その後多大な努力により養殖施設はめざましい復旧をとげ生産量が回復し、2013年は約1.2万トン、2014年は約1.3万トン、そして2015年は約1.4万トンと増加した(農林水産省統計部 2016)。また、内水面の養殖ではニジマスが主対象となっているが、生産量は2004年の8,848トンから年々減少して2015年は4,833トン、その他のます類を含む2015年の生産量は7,700トンであった(農林水産省統計部 2016)。


日本漁業に関連するロシアのさけ・ます類資源

ロシア系のさけ・ます類は、主にロシア沿岸で定置網、ひき網、刺し網等により漁獲されるが、その一部は前述のようにロシア200海里水域内や日本EEZ内での流し網漁業の対象としても利用されてきた。ロシアでのサケ沿岸漁獲量は1960 年代から1970 年代にかけて大きく減少したが、1975年以降増加に転じて1980年以降は2万トン以上、2006年以降は4万トン以上と増加を続け、2015年の漁獲量は2014年を上回る14.2万トンで、1952年以降では最も高い値となった(図7)。また、2016年漁期は9月下旬の情報で約10.8万トンと、2013年漁期の漁獲量を既に超えており、引き続き高い水準にある。地域別に見ると、1960年代はオホーツク海北部及びアムール地方の漁獲が多かったが、近年ではサハリン・千島及び東カムチャッカでの漁獲増に加え、かつて低迷していたアムール系の漁獲量の増加が顕著である。アムールの漁獲量は2012年以降に2万トンを超える漁獲となり、2015年漁期は約3.7万トン、2016年漁期は9月下旬で4.1万トンに達している。ロシア側の見解によると秋サケを主体に増加しているとのことである。ロシア系ベニザケの沿岸漁獲量は、1970年代には0.5万トン未満の低水準であったが、その後増加に転じた。2006年以降は、2万トン以上の漁獲量で変動しながらも高位水準・増加傾向を維持している。2013年の漁獲量は約5.1万トンで1952年以降の最高値を記録した(図8)。2015年は約4.5万トンと2013年に次ぐ水準を記録したが、2016年漁期の9月下旬の集計値は約5.0万トンと既に2015年を上回っている。地域別に見ると、アジア側最大規模の産卵場があるオゼルナヤ川水系(クリル湖)やボルシャヤ川水系を含む西カムチャッカ等の沿岸漁獲量が多く、カムチャッカ川水系を中心とする東カムチャッカ沿岸の漁獲も引き続き高水準を維持している。ロシア沿岸のカラフトマスは、1960年以降、奇数年と偶数年間の変動はあるものの、一貫して増加傾向を示し、2009年には東サハリン沿岸のみで22万トンを超え、史上最高の42万トンの漁獲量となった(図9)。2015年の漁獲量は約16.3万トンと1997年以降の奇数年ではもっとも低い値であった。2016年9月下旬時点の漁獲量は26.4万トンと前回の偶数年である2014年(約14.8万トン)を大きく上回っている。地域別に見ると2015年まで偶数年の西カムチャッカ系と、サハリン及び千島地方の漁獲量はともに減少傾向にあったが、2016年9月下旬の漁獲量を見るとこれらの地域の漁獲量に回復傾向が認められる。さらに2016年は東カムチャッカ系、アムール川及び沿海州で1952年以降の偶数年としては最高値を記録する見込みである。このように、これまで好調だったロシア系のカラフトマスの資源は依然として高水準にあるものの、2013〜2015年にかけて漁獲量が大きく減少した地域が認められたことから、資源量の動向には引き続き気を配る必要がある。一方、カムチャッカ半島を中心としたギンザケは近年沿岸での漁獲量が急増し、2013年は約9,800トン、2014年及び2015年漁期はそれぞれ1.45万トンを漁獲したが、2016年漁期(9月下旬時点)の漁獲量は約6,900トンと減少している。

2010年以降のロシア漁船による流し網漁業は、ベニザケとサケを主体に行われ、カラフトマス、ギンザケ、マスノスケを含む合計漁獲量は2010年8,931トン、2011年12,165トン、2012年10,176トン、2013年12,975トンと推移し, 2014年はベニザケ5,821トン、サケ3,164トンを中心に合計10,648トンであった。またロシア流し網漁船の最後の操業となる2015年漁期はベニザケ6,418トン、サケ3,329トンを中心に10,572トンの漁獲量であった。


さけ・ます類の流通

日本ではかつて塩蔵物を主流としてさけ・ます類が流通・消費されて定着していたが、1970年代の日本経済の急成長に伴う核家族化、嗜好の変化、流通や冷蔵冷凍技術の発達、さらには外食産業の発展により、さけ・ますの利用形態は塩蔵物から生鮮・冷凍物主体へと変化した。国際的な資源管理が趨勢となり、日本の北洋漁業が衰退した時期に、孵化放流技術が確立して日本沿岸でのサケ漁獲量が増加した。同じ時期に北洋漁業の代替としてアラスカの天然さけ・ます(特にベニザケなど)が輸入されたため、これらの量的増加の影響を受け国産さけ・ます価格が低下した。1990年代になるとさけ・ますの海面養殖技術が確立され、チリやノルウェーから養殖さけ・ます(ギンザケ、タイセイヨウサケ、ニジマスなど)が輸入された。これらの養殖さけ・ますは高脂質食品への嗜好の変化、外食産業の発展による流通段階での規格製品の需要増大と周年化によって日本に受け入れられた。養殖さけ・ますの輸入増加によって、国産さけ・ますは一部の塩蔵熟成さけ・ますといくら等を除く需要が減少し、価格がさらに低下した。1990年代後半以降、国産さけ・ますの漁獲量(原魚ベース)と輸入さけ・ますの供給量(製品重量)はほぼ均衡していたが、2011年からの秋サケの来遊減により、輸入量が国内生産量を上回る年が続いており、輸入量を原魚換算した上での国内生産量と輸入量の割合は2014年にそれぞれ35.4%及び64.6%となっている(水産庁 2015)。また、1980年代半ばより、国産さけ・ます類の仕向けも塩蔵から生鮮・冷凍への変遷が顕著で、1988年以前は70%以上であった塩蔵の比率が近年では10%未満に低下し、日本における漁獲の主体である秋サケは通年食材から漁期中の旬の生鮮販売を中心とした季節食材に変化してきた。一方、特にチリ産の定塩・冷凍の養殖ギンザケ及びニジマス(トラウトサーモン)がスーパーマーケット等の量販店を中心として周年多量に流通し、近年ではチリ産が我が国に輸入される養殖さけ・ます類で最も大きなシェアを占めている。その結果、チリ産ギンザケがプライスリーダーとなり、他のさけ・ます類の価格形成に大きな影響を与えるようになった。近年では2012年にチリからこれまでの最高となる20.8万トンの養殖さけ・ます類が日本に輸入され、うち冷凍ギンザケが11万トンあまりを占めた。そのため、2012年はギンザケに限らず、その他のさけ・ます類全体が安値となった。その後、チリ産は抑制気味の供給となり、2015年のチリからの輸入は14.9万トンとなっている(北海道定置漁業協会 2016)。

日本でのさけ・ます需要は既に飽和に達していると見られるが、サケの価格はいまだに沿岸漁獲量の増減によって変動する。また、さけ・ます取引のグローバル化により、国際価格の影響も強く受けるようになった(佐野2003)。一方、BSEや鳥インフルエンザ問題で水産物への需要が国際的に高まり、特に食品に対する安全・安心や天然物への関心の高まりを受けて天然さけ・ますの需要が欧米で増加してきた。また、日本のサケを原料として中国の安い労働力で加工した製品を欧米に輸出するビジネスが始まったことにより、1990年代以降国産サケの輸出が増加した。日本のサケが輸出されるきっかけとなった要因には、輸出可能な低価格になっていたこと、国内向けの供給量を減少させて価格低下に歯止めを掛けようとした動きがあったことも背景にあった。2003年から2010年までは、北海道の秋サケ漁獲量が落ち込んだ2008年を除き、毎年6万トン前後(冷凍ドレスが中心)が輸出されるようになり、これらのサケの多くは中国やベトナム、タイ等で加工された後に欧米や中東等、そして一部は日本に輸出されており、日本産サケも国際商品として海外に広く出回っている。しかし、近年は秋サケ漁獲量の減少を反映して2万〜3万トン台の輸出で推移している。2015年も約2万トンの輸出量となっており、その理由として秋サケの漁獲量が好転しなかったことに加え、中国における加工コストの上昇と金融引締め、EU等マーケットの景気後退による影響が指摘されている(北海道定置漁業協会 2016)。

2016年はロシア200海里における流し網漁業の禁止により、北洋の高価格で良質なさけ・ます類の供給が途絶えることになったが、市場には昨年の原料を使ったと思われる北洋さけ・ます製品が流通した。量的には少なくなってきたものの、北洋のさけ・ます水揚げ物は北海道・東北太平洋の春定置や太平洋小型流し網漁業とともに「春鮭鱒」市場を支えてきたため、「春鮭鱒」市場の縮小による道東を中心とした加工を含む水産業界全体への影響が懸念される。


さけ・ます類の資源管理と資源調査

NPAFC には北太平洋の母川国である日本、ロシア、カナダ、米国及び韓国の5か国が加盟し、さけ・ます類の調査研究を行っている。NPAFC の資源評価作業部会によると、太平洋さけ・ます類の天然及び孵化場産資源は、1990年代以降全体として高水準にあり、特にサケとカラフトマスは良好な状態にある(Irvine et al. 2012) 。

さけ・ますの再生産は、日本及び米国アラスカ南東部では主に人工孵化放流によって行われているが、その他の地域では天然産卵が主である。さけ・ます人工孵化技術は1763年にオーストリアのヤコビーにより開発され、日本では1876年に米国から人工孵化技術を導入した。人工孵化放流事業は北大西洋よりも北太平洋沿岸で盛んであるが、1993年以降の放流は東日本大震災の影響を受けた2011年を除くとほぼ一定である。2015年に放流された太平洋さけ・ます類の幼稚魚の放流数は約51.6億尾となっている(NPAFC 2016)。日本で増殖対象となっている溯河性さけ・ます類は、サケ、カラフトマス、ベニザケ及びサクラマスの4種で、2015年には合計で約18.7億尾の稚魚が放流された(Fukuzawa and Hirabayashi 2016)。そのうちサケが17.5億尾で大部分を占めており、沿岸で漁獲対象となる日本のサケ資源の多くはこの人工孵化放流事業によって維持されてきた。近年では、日本系のサケについてもの無視できない量の自然再生産が行われていることが明らかになってきたが(森田ほか 2013)、再生産の場となる河川を中心とした淡水域は人間活動の影響を受けやすいため、人工孵化放流、自然再生産のいずれにしてもさけ・ます資源の管理に淡水域の産卵・生息環境の保全と修復が不可欠である。日本のさけ・ます類の北太平洋における調査は、沖合漁業の発展とともに実施され、1953年以降はINPFC条約の下で北太平洋におけるさけ・ます資源調査が行われてきた。この間のさけ・ます資源調査は、公海漁業漁獲物の系群組成を推定するための系群識別、資源を適正に管理するための資源動態等に重点が置かれていた。公海におけるさけ・ます漁業が禁止された現在では、NPAFC 条約の下で、日本を含む加盟国はさけ・ます資源の保存のために北太平洋公海域及び各国200海里水域内において系群識別や資源動態解明に焦点を当てた調査を行っている。北太平洋沿岸のさけ・ます資源は、海洋域での成長と分布密度との関連が高いことが報告されているので、海洋域における環境収容力、高次生物生産、種間関係等を明らかにし、索餌域である北太平洋の生物生産を考慮した資源管理方策を開発する必要がある。また、ベーリング海は夏季における日本系サケの主要な索餌・分布海域となっており(Urawa et al. 2005)、2007年から表層トロール網によるさけ・ます類の分布・資源量モニタリングを夏季ベーリング海で実施している。例年モニタリング調査では、海洋年齢1歳のサケ未成魚(尾叉長400 mm未満)が漁獲物の主体となっているが、近年この海域においてサケ未成魚の採集尾数の減少、肥満度の低下等が観察されている。特に2014年及び2015年には、サケ未成魚の単位漁獲努力量当たりの採集尾数(CPUE)が過去の調査に比べて約半分に減少した。今後、これらの年級群が主群として回帰することから、回帰資源の動向が注目される。このように、日本系サケの資源動向を迅速に把握するためにもベーリング海における長期的なモニタリング調査を継続していく必要がある。


執筆者

北西太平洋ユニット
さけ・ますサブユニット
北海道区水産研究所 さけます資源研究部

斎藤 寿彦・本多健太郎・渡邉 久爾・鈴木 健吾


参考文献

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