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48 イシイルカ 太平洋・日本海・オホーツク海

Dall's Porpoise, Phocoenoides dalli

                                                                              
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イシイルカ型イシイルカ(左)とリクゼンイルカ型イシイルカ(右)(撮影:宮下富夫)
白斑部の長さの割合が異なることが明瞭に見て取れる。両型の分布域の境界付近ではこのように混じった群れが見られることもある。なお、本文中では、以後イシイルカ型およびリクゼンイルカ型と呼ぶ。

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最近の動き

2011年3月11日の東日本大震災で主要な水揚港がある三陸沿岸が被害を受け、操業ができない状況にあったが、2012年から岩手県で操業が再開されている。


利用・用途

小型歯鯨類のうち、いわゆるいるか類には、水族館等の展示用の生体として販売されるものがあるが、本種は外洋種のため飼育が困難である。また、突棒漁業により食用として捕獲されている。筋肉と脂皮が刺身用、煮物用、加工用などに利用される。飼料に用いられたこともかつてはあったが、現在では確認されていない。


付表1

付表1. イシイルカの捕獲頭数(1979〜2015年)(水産庁国際課集計)


図1

図1. イシイルカ捕獲頭数の推移(1979〜2015年)(水産庁国際課集計)


図2

図2. イシイルカ型イシイルカの体側面(笠松・宮下・吉岡(2009)より)


図3

図3. リクゼンイルカ型イシイルカの体側面(笠松・宮下・吉岡(2009)より)


図4

図4. イシイルカ型イシイルカの成長曲線(左:雄、右:雌)(仲松 2000)


図5

図5. リクゼンイルカ型イシイルカの成長曲線(左:雄、右:雌)(Kasuya 1978)


図6

図6. 北太平洋のイシイルカの分布(吉岡・粕谷 1991を改変)
繁殖海域に基づくイシイルカの8系群を示す。1はリクゼンイルカ型系群、2はイシイルカ型の日本海−オホーツク海系群、3〜8はイシイルカ型他系群の各繁殖海域。


図7

図7. 我が国周辺のイシイルカの分布(吉岡 1996)


漁業の概要

本種は、第二次大戦前から三陸の突きん棒によって捕獲されている。1970年代までは冬季に三陸沖で日帰り操業するのが主であったが、1980年頃に他県海域まで遠出する船が現れ、1985年頃から北海道海域での操業が本格化した(粕谷・宮下 1989)。

現在は2011年の東日本大震災の影響で水揚は岩手県に限られている。かつては岩手県、北海道、宮城県及び青森県の漁船(20トン未満)が操業していたが、岩手県船の捕獲頭数が全体の約9割を占めていた。岩手県船の操業パターンは、11〜4月に三陸の地先海域で日帰り操業し、5月半ばから6月末まで北海道の日本海沿岸、9〜10月に北海道のオホーツク海沿岸あるいは道東太平洋沿岸の港を基地に日帰り操業(沖泊まりはしない)を行うものである。イシイルカ漁業者の多くは、時期と海域によってカジキ漁やイサダ漁なども行う兼業者である。

本種は1993年に捕獲枠が設定された。漁場と系群は三陸沿岸においてはほとんどがリクゼンイルカ型でわずかにイシイルカ型が混在し、北海道沿岸ではほぼ全数イシイルカ型である。

この漁業は岩手県においては1989年に知事許可漁業となった。また省令改正により、2002年4月までには他道県においても海区漁業調整委員会による承認漁業から知事許可漁業に移行した。

農林水産省の統計によれば、大型捕鯨業がモラトリアムに入る前(1987年以前)は年間2万頭以下の捕獲であったが、モラトリアム以降は鯨肉の流通不足を補うためか、1988年に捕獲頭数が4万頭以上へ急増した(図1)。この年までの統計では、イシイルカ型とリクゼンイルカ型が区別されていない。捕獲頭数の推移は暦年で示したが、捕獲枠は8月から翌年7月までの1年を単位として管理されているため、見かけ上は捕獲枠を超えている年もある。また、探索は人の視力に依存しているため、捕獲動向は天候・海況に左右される。なお、捕獲統計のうち北海道沿岸における道内船の漁獲物の一部は洋上で製品に処理してから水揚げされている。こうした漁獲物については正肉50 kgをイシイルカ型1頭として換算している(端数切り上げ)。東日本大震災のあった2011年は震災以後捕獲がなかったため、水揚げ頭数はイシイルカ型が89頭、リクゼンイルカ型が1,863頭にとどまった。2012年は、イシイルカ型29頭、リクゼンイルカ型376頭、2013年はイシイルカ型95頭、リクゼンイルカ型1,198頭、2014年はイシイルカ型16頭、リクゼンイルカ型1,620頭と推移している(付表1)。


生物学的特徴

本種は北太平洋及びその隣接海域の固有種である。体側の白斑が背鰭近くから尾側に伸びるのがイシイルカ型で(図2)、胸鰭基部から始まるのがリクゼンイルカ型である(図3)。稀に全身黒い黒化型や、その逆の白化型が見られる。分布域内を冬季に南下、夏季に北上する。本種は大きな群れは作らず、群れ構成頭数は概ね10頭以下である。繁殖は季節が限られており、晩春から夏に出産する(1産1仔)。冬季には成熟雄の精巣に精子が見られず、また成熟雌の排卵もほぼ夏季に限られる。妊娠期間は1年弱である。両型ともに体長85〜100 cmで生まれる。イシイルカ型の雄は4〜5歳、体長190 cm前半、雌は3〜4歳、体長180 cm後半で性成熟に達する。リクゼンイルカ型の雄は5〜6歳、体長190 cm後半、雌は3〜4歳、体長180 cm後半で性成熟に達する。成熟雌は1〜2年に1回出産し、授乳期間は1〜2か月と考えられている。雌は出産後約1か月で交尾できる。したがって、授乳中に受胎することも稀ではない。親子連れにもう1頭の個体が加わって遊泳する例が観察されるが、交尾の機会をうかがう成熟雄と推定される。

寿命は15〜20歳と言われている(Kasuya 1978、Kasuya and Shiraga 1985、仲松 2000)。しかし本種の場合、歯が極端に小さいため、高齢個体の年齢査定が非常に困難であり、厳密には未解明である。両型の成長様式は、図4、図5のように推定されている(Kasuya 1978、仲松 2000)。

本種の系群は、夏季に親子連れが発見される海域の分離の様子から8系群と数えられる(図6;吉岡・粕谷 1991)。そのうち7系群はイシイルカ型の体色型である。日本の漁業によって捕獲されるイシイルカ型系群のほとんどは、オホーツク海南西部で繁殖する日本海−オホーツク海系群である。この系群は、冬季には兵庫県沖まで南下し、夏季には日本海を北上して繁殖海域に入るほか、道東の太平洋沿岸域にも現れる。一方、リクゼンイルカ型の系群はオホーツク海中部を繁殖海域とする。冬季には三陸沿岸まで南下し、秋には道東太平洋沖合に分布する。道東太平洋においては両体色型が見られるが、混群を作ることは稀であり、上述のように沿岸と沖合に分布海域が分かれている(岩ア・宮下 1992)(図7)。

両体色型間にはミトコンドリアDNAの塩基配列に差異があり、体色型も明確に異なるため、別個の系群として管理されている。日本海−オホーツク海系群のイシイルカ型と東方の太平洋沖合のイシイルカ型系群には、DNA塩基配列に差が認められた(吉田 2002、Hayano et al. 2003)。冬季に三陸沖で捕獲される個体には5%ほどイシイルカ型が含まれる。体色型の比較により、これらは太平洋沖合のイシイルカ型系群に属するものと考えられている(Amano et al. 1996)。このことから、冬季に三陸沖には北太平洋沖合からイシイルカ系群が流入することが示唆される。

イシイルカ型は、北海道の日本海沿岸では1980年代には主にマイワシを捕食していた。しかし、1990年代にはマイワシ資源対馬暖流系群の水準の低下により、スケトウダラを捕食するようになった。一方、リクゼンイルカ型は、三陸沖でハダカイワシ類を主に捕食しており、この傾向には変化が見られない(大泉 2002)。なお、本種の捕食者としてはシャチが挙げられる(洋上での観察例やシャチの胃内容物から本種が報告されている)。


資源状態

オホーツク海を含む海域で2003年夏季に実施した目視調査を基に、イシイルカ型173,638頭(変動係数0.212)、リクゼンイルカ型178,157頭(変動係数0.232)と推定された(宮下ほか 2007)。しかし、オホーツク海のロシア200海里水域が未調査のため過小評価となっている(宮下 2002)。2009年及び2010年の夏季に同海域においてミンククジラを主対象とした目視調査が実施されたが、ロシアによる入域制限海域が広く、イシイルカ及びミンククジラの資源量推定は限定的なものとなった。今後は、オホーツク海へ本種が回遊する前に、日本海及び太平洋側で目視調査を実施し、ロシア海域に入域する調査を回避し、資源量推定を行うことも検討する必要がある。

資源水準については、調査海域の制限及び操業形態等の変化があり、調査継続中である。近年は捕獲頭数が変動あるいは減少しているが、上記経済的な理由や震災の影響もあり、資源動向は依然横ばいと考えられる。


管理方策

鯨類の再生産率は1〜4%と経験的に考えられており、前述のように出産間隔から本種の再生産率は高い(3〜4%)と考えられている。資源量と再生産率に捕獲実績等を加味して1993年に水産庁が捕獲枠を設定した。これは沿岸の漁業資源の一部に生物学的許容漁獲量(ABC)が導入されたのに先んじている。捕獲枠は体色型別、道県別に配分されており、各道県はABCに準じた資源管理責任を有すると言えよう。

現状においても本種は漁期、海域、捕獲枠を含む許可制によって管理されてきた。しかし、合理的かつ科学的な資源管理をさらに推し進めるためには、本種の生態・資源量、漁業の特性などを考慮した資源管理モデルの構築が求められていた(岡村 2002)。このため水産庁は2007年から本種の管理に新たにPBR(Potential Biological Removal; Wade 1998)の概念を導入して、捕獲枠設定を行っている。2014/15年漁期(2014年8月1日〜2015年7月31日)の捕獲枠は、イシイルカ型6,524頭、リクゼンイルカ型6,404頭となっている。2015年(暦年)の捕獲頭数は、イシイルカ型15頭、リクゼンイルカ型1,577頭であった。


イシイルカ(太平洋・日本海・オホーツク海)の資源の現況(要約表)

資源水準 調査中
資源動向 横ばい
世界の捕獲量
(最近5年間)
我が国の捕獲量
(最近5年間)
405〜1,952頭
最近(2015)年:1,592頭
平均:1,376頭(2011〜2015年)
管理目標 現在の資源水準の維持
資源の現状 イシイルカ型イシイルカ系群:17.4万頭
(CV=0.212、2003年)
リクゼンイルカ型イシイルカ系群:17.8万頭
(CV=0.232、2003年)
管理措置 操業海域の道県知事による許可制
(体色型別捕獲枠、年間5〜6か月の漁期、捕獲統計)
管理機関・関係機関 水産庁、漁業道県
最新の資源評価年
次回の資源評価年

執筆者

外洋資源ユニット
鯨類サブユニット
国際水産資源研究所 外洋資源部 鯨類資源グループ

宮下 富夫


参考文献

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