--- 詳細版 ---

43 その他外洋性さめ類 全水域

ヨゴレ Oceanic Whitetip Shark, Carcharhinus longimanus

ミズワニ Crocodile Shark, Pseudocarcharias kamoharai


                                                    PIC PIC
                                                        ヨゴレ                                                                         ミズワニ

[HOME] [詳細版PDF] [要約版PDF] [要約版html] [戻る]

まえがき

谷内(1997)は、日本のまぐろはえ縄で混獲されるさめ類として26種を挙げ、よく混獲される種をミズワニ、アオザメ、バケアオザメ、ハチワレ(オナガザメ類)、ヨシキリザメ、クロトガリザメ、ヨゴレの7種としている。中野(1996)は、地方公庁船の調査資料から北太平洋に分布する外洋性板鰓類15種の漁獲組成を報告している。ヨシキリザメはいずれの海域においても出現頻度が最も高く、これを除くと亜寒帯域ではアブラツノザメ、ネズミザメが、温帯域ではアオザメ、熱帯域ではミズワニ、ヨゴレ、クロトガリザメ、ハチワレの割合が高いことが示されている。また、松永・中野(1996)は、海洋水産資源開発センター調査資料と地方公庁船調査資料から南半球に出現する板鰓類として25種をあげ、ヨシキリザメ、ニシネズミザメ、アオザメ、ヨゴレ、クロトガリザメ、オナガザメ類、ミズワニ等の種が多く漁獲されていることを報告している。このうちヨシキリザメ、アオザメ、ネズミザメ、クロトガリザメ、オナガザメ類については本編とは別に紹介されていることから、本編ではヨゴレ、ミズワニの2種を、前掲種以外にまぐろはえ縄で頻繁に混獲される種として紹介する。


最近の動き

現在、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)、全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)、インド洋まぐろ類委員会(IOTC)の全て三大洋のまぐろ類地域漁業管理機関(RFMO)においてヨゴレの船上保持が禁止されている。


利用・用途

ヨゴレについては、現在全てのまぐろ類RFMOにおいて保持が禁止されているほか、ワシントン条約(CITES)附属書Uへ掲載され、国際取引が規制されている。ミズワニは、サイズも小さく肉も利用には不向きとされていることから、利用されていない(Compagno 2001)。


表1

表1. 水産庁調査委託事業「日本周辺高度回遊性魚類資源調査委託事業(平成12〜18年度)」及び「日本周辺国際魚類資源調査(平成19年度〜)」で収集された主要港におけるさめ類種別水揚量(単位:トン)


図1a 図1b

図1. 外洋性さめ類の分布(Last and Stevens 1994)
(上)ヨゴレ、(下)ミズワニ


表2

表2. 栄養補給から見た板鰓類の繁殖様式


表3

表3. ヨゴレ、ミズワニの繁殖様式、産仔数、出生時の体長


図2

図2. ヨゴレの成長曲線(Seki et al. 1998、Lessa et al. 1999)


表4

表4. ヨゴレの体長測定部位間の換算式


図3

図3. ミズワニの成長曲線(Lessa et al. 2016)


日本における漁獲状況

水産庁では、「日本周辺高度回遊性魚類資源調査委託事業(平成12〜18年度)」及び「日本周辺国際魚類資源調査(平成19年度〜)」において、日本の主要水揚港におけるまぐろはえ縄等によるさめ類の種別水揚量を調査している(表1)。それによると、まぐろはえ縄等で漁獲される主要な種類とそれぞれ1992〜2015年の合計値に占める割合は、ヨシキリザメ(68.8%)、ネズミザメ(18.6%)、アオザメ(6.1%)、オナガザメ類(2.1%)、メジロザメ類(0.2%)であった。日本におけるさめ類水揚げの主体は近海まぐろはえ縄で、特に宮城県の漁港へほとんどのさめ類を持ちかえることから、漁獲に占める種組成をある程度正確に反映していると考えられる。ヨゴレについては、以前はメジロザメ類にまとめられていると考えられるが、現在では各海域のまぐろ類RFMOにおける船上保持禁止規制により水揚げはされていない。また、商品価値のないミズワニは利用されていない。


生物学的特徴

【分布】

ヨゴレ、ミズワニともは三大洋の熱帯〜温帯域に主に分布する(Compagno 1984、Last and Stevens 1994、Compagno 2001)(図1)。Last and Stevens(1994)の分布図では、ミズワニの分布に多くの疑問符が付されているが、水産庁及び国際水産資源研究所の調査によれば、本種は熱帯海域に広く分布している。ミズワニの系群についてはほとんど知られていないが、近年のミトコンドリアDNAに基づく分子生物学的研究によれば、本種は大西洋とインド洋の間で遺伝的な交流があることが示唆されている(Ferrette et al. 2015)。ヨゴレについては、ミトコンドリアDNAに基づく分子生物学的研究により、大西洋の東西で遺伝的な交流が制限されていること、大西洋東部とインド洋の間には交流があることが示唆されている(Camargo et al. 2016)。


【産卵・回遊】

板鰓類(さめ・えい類)の繁殖様式は多様であり、卵生と胎生に大別される。谷内(1988)は母体からの栄養補給の面から、繁殖様式を定義している(表2)。それによると、胎生はさらに偶発胎生と真正胎生に分かれ、真正胎生は卵黄依存型と母体依存型に2分される。母体依存型はさらに、卵食性・共食い型、胎盤類似物型、胎盤型の3つに分けられる。

繁殖様式は、ヨゴレが胎生、胎盤型(Compagno 1984)、ミズワニが胎生、卵食・共食い型(Fujita 1981)である。それぞれの産仔数は、ヨゴレは1〜14尾(平均6.2尾)(Seki et al. 1998)、1〜10尾(Tambourgi et al. 2013)、10〜11尾(Joung et al. 2016)、ミズワニは平均3.9〜4尾(Compagno 1984、Oliveira et al. 2010、Dai et al. 2012)である(表3)。

出生時の体長は、ヨゴレが40〜55 cm(Seki et al. 1998)、ミズワニが40〜42 cm(全長)(Fujita 1981)、41 cm(全長)(Compagno 1984)、である。なお体長について、特に説明がない場合は、尾鰭前長を表す。

繁殖周期については、ヨゴレでは、出産期は長期間にわたり(Seki et al. 1998)、繁殖周期は2年と推定されている(Tambourgi et al. 2013)。ミズワニでは、明瞭なパターンが認められず、出産も周年にわたって行われると推定されている(Oliveira et al. 2010)。交尾期については、5〜7月に弱いピークが認められるものの、他の時期にも交尾が行われる可能性があること、出産後又は休止期の雌が周年観察されており、休止期は比較的長期にわたることが推定されている(Oliveira et al. 2010)。

電子標識を用いた研究によれば、ヨゴレは特定の場所に留まる、もしくは移動後に特定の場所に回帰するsite fidelityを示すことが明らかとなっている(Howey-Jordan et al. 2013、Tolotti et al. 2015)。また、鉛直行動については明瞭な日周鉛直移動は示さず、99.7%の時間は水深200 m以浅で過ごすこと(Howey-Jordan et al. 2013)、多くの個体は水深が浅く水温20℃以上の温かい場所を好み、70%以上の時間を水温躍層の上で過ごすことが明らかになっている(Tolotti et al. 2015)。


【成長・成熟】

ヨゴレの成長式は太平洋 (Seki et al. 1998、Joung et al. 2016)と大西洋(Lessa et al. 1999)の個体群について報告されている(図2)。成熟体長及び年齢に関しては、ヨゴレについていくつかの推定値が示されており、雌雄ともに尾鰭前長125〜135 cmで4〜5歳(Seki et al. 1998)、雌雄ともに全長180.0〜190.0 cmで6〜7歳(Lessa et al. 1999)、雌が全長170 cm、雄が全長170〜190 cm (Tambourgi et al. 2013)、雌が全長193.4 cmで8.8歳、雄が全長194.4 cmで8.9歳(Joung et al. 2016)と推定されている。体長測定間の換算式については、体長測定部位が研究者によって、尾鰭前長、尾叉長、全長とまちまちであることから、これまで公表されている換算式を表4に引用した。ミズワニの成長式は、南西大西洋(Lessa et al. 2016)で推定されている(図3)。成熟年齢に関しては、雌が3.1歳、雄が5.1歳(Lessa et al. 2016)と推定されている。


資源状態

Taniuchi(1990)は、太平洋及びインド洋における日本の地方公庁船の漁獲成績報告書を分析し、1973〜1985年の間で、まぐろはえ縄調査で漁獲されるさめ類のCPUEがほぼ一定であったと報告している。中西部太平洋水域においては、2012年に太平洋共同体事務局(SPC)の専門家グループによりヨゴレの資源評価が行われ、漁獲は過剰漁獲の状態にあり、資源も乱獲状態にあるとされた(Rice, J. et al. 2012)。この結果は同年WCPFC第9回科学委員会において承認された。インド洋においては、いくつかの国がヨゴレの標準化したCPUEを発表しているが、大きな減少傾向は示されていない。ミズワニの資源評価については、いずれのまぐろ類RFMOでも行われていない。


管理方策

ヨゴレは全てのまぐろ類RFMOにおいて船上保持が禁止されており、生きて漁獲された個体については可能な限り生存放流することが推奨されている。また、ヨゴレについては、2013年3月に開催されたCITES第16回締約国会議において附属書Uへの掲載が提案され、投票の結果可決された。この決議は2014年9月から発効し、国際取引が規制されるようになったが、我が国は、商業漁業対象種は、持続的利用の観点から、漁業管理主体であるRFMO又は沿岸国が適切に管理していくべきとの立場等から留保している。

ミズワニに特定した保存管理措置はまぐろ類RFMOで合意されていないが、さめ類に関する一般的な措置として、漁獲されたさめ類の完全利用(頭部、内臓及び皮を除く全ての部位を最初の水揚げ又は転載まで船上で保持すること)等が義務付けられている。


その他外洋性さめ類(全水域)の資源の現況(要約表)

種名 ヨゴレ ミズワニ
資源水準 調査中 調査中
資源動向 減少 調査中
世界の漁獲量 調査中 調査中
我が国の漁獲量
(最近5年間)
1〜40トン* 約10,000尾/年程度
管理目標 検討中 なし
資源の現状 Fcurrent/FMSY=6.5
SBcurrent/SBMSY=0.153
(WCPFC)
調査中
管理措置 船上保持禁止 漁獲物の完全利用等
管理機関・関係機関 ICCAT、IATTC、WCPFC、IOTC、CITES なし
最新の資源評価年 2012年
(WCPFCにて)
次回の資源評価年 2020年(インド洋)
*全水域で保持禁止となった2013年以前(2011〜2012年)の我が国主要水揚げ港における水揚げ量の値。

執筆者

かつお・まぐろユニット
さめ・かじきサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

仙波 靖子

かつお・まぐろユニット
混獲生物サブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 混獲生物グループ

松永 浩昌


参考文献

  1. Camargo, S. M., Coelho, R., Chapman, D., Howey-Jordan, L., Brooks, E. J., Fernando, D., Mendes, N. J., Hazin, F. H. V., Oliveira, C., Santos, M. N., Foresti, F., Mendonça, F. F. 2016. Structure and genetic variability of the oceanic whitetip shark, Carcharhinus longimanus, determined using mitochondrial DNA. PLOS ONE 11(5) e0155623
  2. Compagno, L.J.V. 1984. FAO species catalog, Vol.4: Sharks of the world; Part 2 – Carcharhiniformes, Fisheries Synopsis No. 125. FAO, Rome, Italy. 655 pp.
  3. Compagno, L.J.V. 2001. Sharks of the world. An annotated and illustrated catalogue of shark species known to date. FAO Species Catalogue for Fishery Purposes No.1 Vol.2. FAO, Rome, Italy. 269 pp.
  4. Dai, X. J., Zhu, J. F., Chen, X. J., Xu, L. X., Chen, Y. 2012. Biological observations on the crocodile shark, Pseudocarcharias kamoharai. J. Fish. Biol. 80(5):1207-1212.
  5. Ferrette, B. L. D., Mendonca, F. F., Coelho, R., de Oliveira, P. G. V., Hazin, F. H. V., Romanov, E. V., Oliveira, C., Santos, M. N., Foresti, F. 2015. High connectivity of the crocodile shark between the Atlantic and southwest Indian Oceans: Highlights for conservation. PLOS ONE 10(2) e0117549
  6. Fujita, K. 1981 Oviphagous embryos of the Pseudocarchariid shark, Pseudocarcharias kamoharai, from the central Pacific. Jpn. J. Ichthyol. 28(1):37-44.
  7. Howey-Jordan, L. A., Brooks, E. J., Abercrombie, D. L., Jordan, L. K. B., Brooks, A., Williams, S., Gospodarczyk, E., Chapman, D. D. 2013. Complex movements, philopatry and expanded depth range of a severely threatened pelagic shark, the oceanic whitetip (Carcharhinus longimanus) in the Western North Atlantic. PLOS ONE 8(2):e56588.
  8. Last, P.R. and Stevens, J.D. 1994. Sharks and Rays of Australia. CSIRO, Australia. 513 pp.
  9. Joung, S. J., Chen, N. F., Hsu, H. H., Liu, K. M. 2016. Estimates of life history parameters of the oceanic whitetip shark, Carcharhinus longimanus, in the Western North Pacific Ocean. Mar. Biol. Res.12(7):758-768.
  10. Lessa, R., Andrade, H. A., De Lima, K. L., Santana, F. M. 2016. Age and growth of the midwater crocodile shark Pseudocarcharias kamoharai. J. Fish Biol. 89:371-385.
  11. Oliveira, P., Hazin, F. H. V., Carvalho, F., Rego, M., Coelho, R., Piercy, A., Burgess, G. 2010. Reproductive biology of the crocodile shark Pseudocarcharias kamoharai. J. Fish. Biol. 76(7):1655-1670.
  12. Rice, J and S. Harley 2013. Update stock assessment of silky shark in the western and central Pacific Ocean WCPFC-SC9-2013/SA WP-1
  13. Seki, T., Taniuchi T., Nakano, H. and Shimizu, M. 1998. Age, growth and reproduction of the oceanic whitetip shark from the Pacific Ocean. Fish. Sci., 64(1): 14-20.
  14. 水産庁(編). 1993-1997. 平成4年度-平成8年度 日本周辺クロマグロ調査委託事業報告書. 水産庁, 東京.
  15. 水産庁(編). 1998-2001. 平成9年度-平成12年度 日本周辺高度回遊性魚類資源対策調査委託事業報告書. (まぐろ類等漁獲実態調査結果). 水産庁, 東京.
  16. 水産総合研究センター(編). 2002-2014. 平成13年度-平成25年度 日本周辺高度回遊性魚類資源対策調査委託事業報告書. 水産総合研究センター, 横浜.
  17. Tambourgi, M. R. D., Hazin, F. H. V., Oliveira, P. G. V., Coelho, R., Burgess, G., Roque, P. C. G. 2013 Reproductive aspects of the oceanic whitetip shark, Carcharhinus longimanus (ELASMOBRANCHII:CARCHARHINIDAE), in the equatorial and southwestern Atlantic Ocean. Braz. J. Oceanogr. 61(2):161-168.
  18. 谷内 透. 1988. 軟骨魚類の分類と進化. In 上野輝彌・沖山宗雄(編), 現代の魚類学. 朝倉書店, 東京. 34-60 pp.
  19. Taniuchi, T. 1990. The role of elasmobranchs in Japanese fisheries. NOAA Tech. Rep. NMFS, 90: 435-426.
  20. 谷内 透. 1997. サメの自然史. 東京大学出版会, 東京. 270 pp.
  21. Tolotti, M. T., Bach, P., Hazin, F., Travassos, P., Dagorn, L. 2015. Vulnerability of the oceanic whitetip shark to pelagic longline fisheries. PLOS ONE 10(10):e0141396.
  22. 中野秀樹. 1996. 北太平洋における外洋性板鰓類の分布. 月刊海洋, 28: 407-435.
  23. 松永浩昌・中野秀樹. 1996. 南半球の外洋域に出現する板鰓類の分布. 月刊海洋, 28: 430-436.