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31 カツオ インド洋

Skipjack, Katsuwonus pelamis

                                                           
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最近の動き

総漁獲量は2006年の62万トンをピークに2012年(34万トン)まで減少を続けていたが、2013年(43万トン)には前年より増加し、2014年(42万トン)もほぼ同じ水準であったが、2015年(39万トン)はやや減少した。2012年までの減少の原因は主として、ソマリア沖の海賊の活動範囲が広がり、EUまき網船及び沿岸国の漁船が操業を自粛し、EUまき網船が大西洋またはインド洋の別の海域へ移動し漁獲努力量が減少したことである。直近の資源評価結果によると、現状(2013年:資源評価時最新年)の漁獲量では短期・中期的に暫定的な限界管理基準値(初期資源量の40%)を割り込む可能性は低いが、資源評価の不確実性、人工浮き魚礁(FADs)操業による低い漁獲率及び増大している努力量を考えると、漁獲量はMSY推定値の下限(55万トン)を上回るべきではないと勧告された。さらに、2016年5月の年次会合では、漁獲決定ルール(HCR;Harvest Control Rule)に関する決議が採択された。


利用・用途

缶詰、かつお節、乾燥品などの加工品の原料として利用される。


図1

図1. ソマリア沖EUまき網努力量(1度区画)分布図(海賊問題がなかった2007年(黄枠)、海賊の影響が見られる2008〜2011年(赤枠)、海賊の影響がなくなった2012〜2014年(緑枠))
円グラフの赤、緑、青、紫はそれぞれ第1〜第4四半期を表す。


図2

図2. インド洋カツオの国別漁獲量(1950〜2015年)(IOTCデータベース:2016年9月)
(NEI:Not Elsewhere Included、PS:まき網)


図3

図3. インド洋カツオの漁法漁獲量(1950〜2015年)(IOTCデータベース:2016年9月)


図4

図4. EUスペインまき網漁業群れ別(F.SCHOOL:素群れ操業、LOG:付き物操業)漁獲量(千トン)(Soto and Fernández 2015)


図5

図5. インド洋カツオの海域別漁獲量(1950〜2015年)(IOTCデータベース:2016年9月)
東インド洋(FAO海域57)、西インド洋(FAO海域51)


図6

図6. インド洋カツオの分布域、産卵域及び漁場


図7a 図7b 図7c

図7. モルディブの竿釣り(上図)、フランスのまき網(中図)、EUのまき網(下図)漁業のカツオ標準化CPUE(IOTC 2014)


図8

図8. インド洋におけるカツオの年齢別自然死亡率係数(Sharma and Herrera 2014)
Grid 1〜Grid 3は2014年の資源評価で用いられた3種の値。


図9

図9. SS3で使用されたカツオの成長式(Sharma and Herrera 2014)
左:ベルタランフィー2 stanza曲線、右:Richards曲線


図10

図10. SS3で使用したカツオの体長別成熟割合(Sharma and Herrera 2014)


図11

図11. SS3による資源評価-結果(神戸プロット:stock trajectory)(IOTC 2014)


附表1

附表1. インド洋カツオの国別漁獲量(1950〜2015年)(トン)(IOTCデータベース:2016年9月現在)
***: 操業なし


附表2

附表2. インド洋カツオの漁法別漁獲量(1950〜2015年)(トン)(IOTCデータベース:2016年9月現在)
***: 操業なし


附表3

附表3. インド洋カツオの海域別漁獲量(1950〜2015年)(トン)(IOTCデータベース:2016年9月現在)
西インド洋(FAO海域51)及び東インド洋(FAO海域57)


漁業の概要

総漁獲量は1950年から年々微増し、1983年には7万トン弱となった。西インド洋でまき網漁業が本格化した1984年に総漁獲量は11万トン台、1988年に20万トン台、1993年に30万トン台、1999年に40万トン台、2005年に50万トン台、2006年に60万トン台と急増し続けた。しかし2007年以降は、ソマリア沖海賊の活動範囲が拡大したため、多数のEUまき網船、沿岸国のまき網船及び流し網船が操業を自粛し(図1)EUまき網船が大西洋もしくはインド洋の別の海域へ移動した。そのため、漁獲量は急減し、2012年には34万トンとなり、1994年以来最低レベルとなった。ただし、2012年に海賊活動がなくなった後には漁獲量が増加し、2013年には43万トン、2014年(42万トン)もほぼ同じレベルであったが、2015年は39万トンとなりやや減少した(2016年9月までに報告された漁獲量、以下同様)(図2、附表1)。

最近5年間(2011〜2015年)の平均漁獲量は39万トンと推定されている。漁獲量の多い上位6か国は、インドネシア(5年間の平均漁獲量:8.2万トン)、モルディブ(6.5万トン)、スリランカ(6.2万トン)、スペイン(6.0万トン)、イラン(3.1万トン)、セーシェル(3.1万トン)となっている(図2、附表1)。。

最近5年間の平均漁獲量のうち、40%がEU(スペイン、フランス)とセーシェル等のまき網漁業、26%が流し網漁業(主にインドネシア、イラン、スリランカ)、20%がモルディブなどの竿釣り漁業、14%がその他の漁業という内訳になっている(図3、附表2)。2006年までは全漁法での漁獲量が増加する傾向にあったが、そのうちまき網の漁獲増大の比率が高く、FADsの利用拡大によるところが大きかった。まき網による漁獲のうち、最近では80%以上がFADs操業によるものである(図4)。また、西インド洋(FAO海域51)と東インド洋(FAO海域57)における最近5年間(2011〜2015年)の平均漁獲量の割合は、62%、38%となっている(図5、附表3)。

インド洋における日本漁船によるカツオの漁獲は、ほとんどがまき網によるものである。インド洋における日本のまき網漁業は、1957年からまき網船1〜2隻が1980年代半ばまで操業していた。1988年以降は、漁船数が増加し最多時にはまき網船数は11隻(1991〜1994年)となり、1992〜1993年のカツオの漁獲量は3万トンを超えた。また、1977年から2012年まで、旧:水産総合研究センター開発調査センターおよび旧:海洋水産資源開発センターの調査船「(新・旧)日本丸」がインド洋全域で、2013年以降は同センター(現:水産研究・教育機構開発調査センター)調査船第一大慶丸がインド洋東部で試験操業を行っている。1994年以降まき網漁船数は徐々に減少し2010〜2014年には日本丸もしくは第一大慶丸の試験操業1隻のみであったが、2015年には当業船も加わり3隻に増加した。この間のカツオの漁獲量は500〜2,100トンで推移している。


生物学的特性

カツオは3大洋全ての熱帯〜温帯水域、概ね表面水温15℃以上の水域に広く分布する。インド洋では南緯40度以北に分布するが、紅海・ペルシャ湾には見られない(図6)。インド洋のカツオ資源は他2大洋とは別系群と考えられている(Matsumoto et al. 1984、Stéquert and Marsac 1986、Adam 1999等による)。

インド洋のカツオを対象とした成長研究では確実な年齢形質が確認されておらず、標識魚の放流・再捕データを使っても生活史の限られた期間における成長を推定するにとどまっている。体長組成解析からは満1歳で30 cm台、満2歳で50 cm台、満3歳で60 cm台に達する成長パターンが示されている。また、2012年のインド洋まぐろ類委員会(IOTC)熱帯性まぐろ作業部会において、標識データに基づく成長式が示された。体長−体重関係は、尾叉長50 cmで概ね2.5 kgとされる。寿命は7歳に達すると考えられている(IOTC 2014)。

成熟は尾叉長39〜43 cmで開始し、産卵は表面水温24℃以上の水域で広く行われ、仔魚は南緯30〜36度から北緯11〜15度まで出現する。産卵期は海域によりピークが見られるが、周年と考えられる(IOTC 2014)。

餌は魚類・いか類・甲殻類で、カツオ成魚の捕食者はさめ・かじき類が挙げられている。また、未成魚以下の成長段階における捕食者は、他大洋と同様、カツオ自体を含めた高度回遊性魚類のまぐろ類・かじき類、その他大型の魚食性魚類や海獣、海鳥である。


気候変動がカツオ・キハダ漁況へ与える影響

「14 キハダ(インド洋)詳細版」を参照。


資源状態

インド洋のまき網操業による漁獲量は、エル・ニーニョやダイポール現象の影響を受ける。カツオに対する漁獲努力の変動は、キハダ等の漁況の好・不調とも関連している。さらに、まき網の資源量指標を定義するのが難しいなど、本種の資源評価は困難であった。そのため、最近まで資源評価が実施されなかったが、第13回熱帯まぐろ作業部会(2011年)から竿釣りの標準化CPUEを用いることにより資源評価が実施されるようになった。最新の資源評価は2014年にIOTC第16回熱帯まぐろ作業部会でSS3(統合モデル)により実施された。資源量指数として、これまでに使用されてきたモルディブの竿釣り標準化CPUEに加え、EUまき網の標準化CPUEも用いられた(図7)。また、空間構造は考慮せず、自然死亡率は3通り(0.7、0.8、0.9)(図8)、成長式は、ベルタランフィー2-stanza(変曲点あり)(Eveson et al. 2012)及びRichards成長曲線の2通りを使用した(図9)。資源評価では、5つのパラメータ(自然死亡係数、steepness、成長式、加入変動、CPUEと体長データの重み付け)の組み合わせによる108のシナリオを設定し、中央値の結果で代表させた。図10は、SS3で使用した体長別成熟割合を示している。

結果として、MSYは68万トン(80%信頼区間55〜85万トン)、F2013/FMSY=0.42、SSB2013/SSBMSY=1.59と推定された。以上のことから、インド洋におけるカツオ資源の現状は、漁獲努力量も漁獲量もMSYレベル以下にあり、過剰漁獲や乱獲状態ではないことがわかった(図11)。資源評価の結果を用いリスク解析(Kobe II matrix)を行った結果、2013年の漁獲量(資源評価実施時:42万トン)を2023年まで継続しても、資源量がMSYを割り込む確率は極めて低い(1%)とされた。


管理方策

2014年における第16回熱帯まぐろ作業部会の資源評価結果を受け、第17回科学委員会は、資源管理方策に関し、以下の内容を勧告した(IOTC 2014)。現状(2013年)の漁獲量では短期・中期的に暫定的な限界管理基準値(初期資源量の40%)を割り込む可能性は低い。しかし、資源評価の不確実性、FADs操業によるCPUEの低下及び増大している努力量を考えると、漁獲量はMSY推定値の下限(55万トン)を上回るべきではない。また、データ収集・報告、解析の引き続きのモニター及び改良が必要である。第18回(2015年)及び第19回(2016年)科学委員会でも同じ勧告が引き継がれた。2015年の年次会合では暫定管理基準値に関する決議、FADsワーキンググループの設立及びFADs数制限(1隻あたり550基まで)が決議として採択された(IOTC 2015)。2016年5月の年次会合では、主としてキハダのための管理措置として、支援船の数はまき網船の半数を超えず、FAD数は同時に稼働する数が425基、年間の取得数を850基までとする決議及びHCRに関する決議が採択された。


カツオ(インド洋)の資源の現況 (要約表)(*)

資源水準 高位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
34万〜43万トン
最近(2015)年:39万トン
平均:39万トン(2011〜2015年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
522〜2,153トン
最近(2015)年:2,153トン
平均:1,343トン(2011〜2015年)
管理目標 MSY:68.4万トン(55.0万〜84.9万トン)
資源の状態 漁獲努力量も資源量もMSYレベル以下で過剰な漁獲や乱獲状況には至っていない。
管理措置 資源評価の不確実性、FADs操業による低い漁獲率及び増大している努力量を考えると、漁獲量はMSY推定値の下限(55万トン)を上回るべきでない。全長24 m以上の漁船の総隻数等の制限。FADs数を1隻で同時に稼働する数が425基、年間の取得数が850基までに制限。HCR制定(その他の漁業・漁船管理方策はインド洋メバチ詳細版参照)。
管理機関・関係機関 IOTC
最新の資源評価年 2014年
次回の資源評価年 2017年
(*) 2013年までのデータを使用した資源評価の結果に基づく

執筆者

国際水産資源研究所 業務推進課 国際海洋資源研究員

松本 隆之

国際水産資源研究所 業務推進課

西田 勤


参考文献

  1. Adam, M. S. 1999. Population dynamics and assessment of skipjack tuna (Katsuwonus pelamis) in the Maldives. Doctoral thesis of the University of London. 302 pp.
  2. Eveson, P., Million, J., Sardenne, F., Le Croizier, G. 2012. Updated growth estimates for skipjack, yellowfin and bigeye tuna in the Indian ocean using the most recent tag-recapture and otolith data. IOTC-2012-WPTT14-23 Rev_1. 57pp.
  3. IOTC. 2014. Report of the Seventeenth Session of the IOTC Scientific Committee, December, 2014, 357pp. http://www.iotc.org/sites/default/files/documents/2014/12/IOTC-2014-SC17-RE_-_FINAL_DO_NOT_MODIFY.zip (2014年12月26日)
  4. IOTC. 2015. Report of the 19th Session of the Indian Ocean Tuna Commission, 155pp. http://www.iotc.org/modules/file/icons/application-pdf.png(2017年1月6日)
  5. OTC. 2016. Report of the 19th Session of the IOTC Scientific Committee, December, 2016, 215pp. http://www.iotc.org/sites/default/files/documents/2016/12/IOTC-2016-SC19-RE_-_FINAL_DO_NOT_MODIFY.pdf (2017年1月5日)
  6. Matsumoto, W.M., R.A. Skillman, and A.E. Dizon. 1984. Synopsis of biological data on skipjack tuna, Katsuwonus pelamis. NOAA Tech. Rep. NMFS Circ., 451: 1-92.
  7. Sharma, R. and Herrera, M. 2014. Indian Ocean Skipjack Tuna Stock Assessment 1950-2013 (Stock Synthesis). IOTC–2014–WPTT16–43 Rev_2.
  8. Soto, M. and F. Fernández. 2015. Statistics of the purse seine Spanish fleet in the Indian ocean (1990-2014). IOTC–2015–WPTT17–13. 30pp.
  9. Stéquert, B. and F. Marsac. 1986. La pêche de surface des thonidés tropicaux dans l’Océan Indien. FAO fisheries technical paper 282. FAO, Rome, Italy. xiv +213 pp.