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28 クロカジキ 大西洋

Blue Marlin, Makaira nigricans

                                                           
PIC

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最近の動き

2011年に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)によって実施された資源評価に基づき、ICCATでは、2013〜2015年の各年のTACを2,000トンとし、スポーツフィッシングや沿岸漁業を含めた全ての漁業を対象とする新たな管理方策を2012年に策定した。2015年のICCATでは、2016〜2018年の各年のTACを引き続き2,000トンとすることが合意された。


利用・用途

刺身、寿司で生食されるほか、切り身はステーキやソテーにされる。


図1

図1. 大西洋におけるクロカジキの漁法別漁獲量(データ:ICCAT 2016)2015年は暫定値。


図2

図2. 大西洋におけるクロカジキの国別漁獲量(データ:ICCAT 2016)2015年は暫定値。


表1

表1. 近年の国別漁獲量(トン)(データ:ICCAT 2016)*

*日本の漁獲量は、IATTCの正式統計とは異なる。現在修正を依頼中。
図3

図3. クロカジキ(大西洋)の分布


図4

図4. 1956〜2000年の四半期別の平均漁獲重量分布(ICCAT 2004a)
赤丸:はえ縄の漁獲量、黄緑丸:はえ縄以外の漁業の漁獲量
この図は、本種の季節別分布状況を良く表している。


図5

図5. 資源量指数(ICCAT 2011)
3つのトレンドは各国のはえ縄データを同じ重み付けで標準化したCPUE(青線)、エリア毎に重み付けした場合(赤線)及び漁獲量で重み付けした場合(緑線)を示す。


図6

図6. Stock Synthesis 3による資源解析結果 (ICCAT 2011)
青実線は産卵親魚量のMSY水準比(SSB/SSBMSY)、青破線はその±10%信頼限界を示し、赤実線は漁獲死亡係数のMSY水準比(F/FMSY)、赤破線はその±10%信頼限界を示している。


図7

図7. 将来予測結果(ICCAT 2011)
TACを0〜4,000トンに固定した時の将来予測結果。結果はSSB/SSBMSYで示してある。予測の開始は2010年とし、2010年及び2011年の漁獲量は3,341トンと仮定した。


漁業の概要

本種を主対象としている漁業は米国、ベネズエラ、バハマ、ブラジル等のスポーツフィッシングとカリブ海諸国やアフリカ西岸諸国、ブラジル等の沿岸零細漁業であるが、近年の漁獲は、日本や台湾等のまぐろ類を対象としたはえ縄漁業の混獲及びカリブ海諸国やアフリカ西岸諸国の沿岸漁業によるものである(図1)。本種の漁獲量は1979〜1998年に増加傾向を示した後、2000年代中旬まで減少し、その後以降は再び増加したが、2009年以降は減少傾向を示している。1990年代半ば〜2000年代半ばには便宜置籍船によるはえ縄の漁獲等が増加した。また、沿岸零細漁業等が大きく漁獲をのばし、1996年以降からはガーナ、コートジボアールといった沿岸零細漁業国がまとまった漁獲を揚げる等、近年は新しい漁業国による漁獲が増えている(図2)。日本の漁獲量は、2007年以降増加し2008年に1,000トンを上回ったが、その後減少しつつも2015年は295トン(ICCATの公式統計とは異なる。現在修正を依頼中。)を記録し、漁獲量は国別で最多となっている(表1)。本種の総漁獲量のトレンドは、おおよそはえ縄の漁獲量のトレンドと一致していたが、近年はそれ以外の漁業による漁獲が無視できない量となっている(図1)。

これまでの報告によって、アンチル諸島の人工浮き漁礁(FADs)を利用した沿岸零細漁業がクロカジキの漁獲を大きくのばしていることが知られている。しかし、この漁業からの漁獲量の報告は不完全であることが指摘されている。また、最近の調査により、西アフリカのまき網船団でもクロカジキの混獲が報告されているが、多くはFADs操業によるものである。


生物学的特徴

本種の分布域は大西洋の熱帯域を中心に温帯域まで広がる。大西洋の西側ではカナダ沖〜アルゼンチン沖、東側ではアゾレス諸島〜南アフリカ沖で漁獲されている(図3、4)。分布域は広大で、大西洋の東西を横断したり、南北を縦断するような回遊を行う個体も存在する。一方、その分布形態は、群泳するサバ科魚類などと異なり、個々の個体は薄く広く存在している(Jones and Prince 1998)。

本種は、平均重量が100〜175 kgに達する大型魚類で、海洋生態系における上位捕食者である。若齢個体の成長は硬骨魚類の中でも最も早いものの一つであると考えられており、1歳で30〜45 kgに達する。雌は雄よりも成長が早く、最大体長も大きい。本種は2〜4歳で成熟し、熱帯及び亜熱帯水域で夏から秋にかけて産卵し、夏には水温の低い温帯域にも出現する。本種の産卵域としては、カリブ海中部〜北部域及びバハマの北側域が知られているが、コートジボアール沿岸域でも産卵している可能性が報告されている。成長や産卵生態に関しては、十分な情報はまだ得られていない。

本種はニシマカジキ同様、外洋の表層域を主たる分布域としているが、定期的に水深300 m前後まで潜水を行うことが知られている。分布水深帯は、夜間はごく表層付近に留まることが多く、昼間は40〜100+ mと夜間に比べてやや深い場所に多くとどまることが多い。なお、本種の鉛直分布パターンは個体差が大きく、また水温や溶存酸素量といった海洋環境要因にも影響を受けることも報告されている。本種は熱帯〜温帯の外洋域で浅縄を用いてまぐろ類を狙うはえ縄によって最も多く漁獲されている一方で、外洋域で夜縄を用いてメカジキを漁獲したり、深縄を用いてメバチを漁獲するはえ縄によってもまとまった量が漁獲されている。

本種は様々な魚類及び頭足類を捕食するが、さば類を好んで食べることが知られている。


資源状態

資源評価は2011年4月にICCAT資源評価会合で行われた(ICCAT 2011)。本会合では、主に各国のはえ縄データを用いて様々な資源量指数の推定が試みられたが(図5)、近年漁獲量が増加している沿岸零細漁業のデータはほとんど資源量指数の推定に使うことができなかった。今後は、本種を多く漁獲している全ての漁業データを使った資源量指数の推定が必要である。推定された資源量指数は、1960〜1975年に急激に減少した後に長期安定傾向を見せ、1990年代半ばより再び減少傾向を示した(図5)。資源解析は初めて統合モデル(Stock Synthesis 3)を用いて行われ、その結果は資源が依然として乱獲状態にあることを示していたが(図6)、ICCAT科学委員会はこの結果は信頼性が低いとしている。そのため、ICCAT科学委員会は2011年に報告された資源量指数のトレンドから推測して、資源水準は2000年に推定したMSYレベルより低い乱獲状態であり、漁獲死亡係数の水準はMSYレベルよりも高く、過剰漁獲状態であるとしている。


管理方策

2011年に行われた資源評価結果を受けて、大西洋のクロカジキ資源に対しては、2013〜2015年の各年のTACを2,000トンとすることが合意された(ICCAT 2012)。日本の割り当て量は年間390トンである。割り当て量の消化が近づいた場合には、生きて漁獲された個体をできるだけ放流後の生存率が高くなるように放流することが勧告された。また、資源解析・評価の実施に当たって問題となった生存放流及び死亡投棄個体数の推定方法の報告、スポーツフィッシングについてはオブザーバーの乗船(カバー率5%)、サイズ規制と売買の禁止が勧告されている。2015年のICCATでは、2016〜2018年の各年のTACを引き続き2,000トンとすることが合意されるとともに、放流後の死亡率を最小化するよう取り組むことが勧告された(ICCAT 2015)。


クロカジキ(大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
1,325〜2,324トン
最近(2015)年:1,575トン
平均:1,844トン(2011〜2015年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
189〜430トン
最近(2015)年:295トン
平均:319トン(2011〜2015年)
管理目標 MSY
目標値 2,837(2,343〜3,331トン)
資源の現状 SSB2009<SSBMSY
F2009>FMSY
管理措置 ・2016〜2018年のTACを2,000トンとする(日本の割当量は各年とも390トン)。
・スポーツフィッシングについてオブザーバー乗船(5%)、サイズ規制、漁獲物の売買禁止。
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2011年
次回の資源評価年 2017年
*日本の漁獲量は、ICCATの正式統計とは異なる。現在修正を依頼中。

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際資源水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

井嶋 浩貴


参考文献

  1. ICCAT. 2011. Report of the 2011 Blue marlin stock assessment and white marlin data preparatory meeting (Madrid, Spain, april 25 to 29, 2011). 71p. http://www.iccat.es/Documents/Meetings/Docs/2011_BUM_ASSESS_ENG.pdf (2012年1月20日)
  2. ICCAT. 2012. Report of the standing committee on research and statistics (SCRS). PLE-104/2012. 303p. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/SCRS2012/2012_SCRS_REP_EN.pdf (2012年12月27日)
  3. ICCAT 2015. Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, 28 September to 2 October 2015) 351pp. https://www.iccat.int/Documents/Meetings/SCRS2015/SCRS_PROV_ENG.pdf (2016年11月21日)
  4. ICCAT. 2016. Statistical databases Task 1 https://www.iccat.int/Data/t1nc_20161114.rar(2016年11月21日)
  5. JJones, C.D. and E.D. Prince. 1998. The cooperative tagging center mark recapture database for Istiophoridae (1954-1995), with an analysis of the West Atlantic ICCAT billfish tagging program. SCRS/1996/096. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 47: 311-321. http://www.iccat.es/Documents/CVSP/CV047_1998/CV047000311.pdf (2005年12月9日)