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27 クロカジキ 太平洋

Blue Marlin, Makaira nigricans

                                       
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最近の動き

2016年に、全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)と中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の協力の下で北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)カジキ類作業部会は、本種のアップデート資源評価を実施した。資源評価の結果、資源は乱獲されておらず、乱獲状態までは至っていないものの、ほぼ満限まで利用されているとされた。また、作業部会は、本種の漁獲の大半が混獲によるものであり、漁獲量の直接管理が難しいことを考慮して漁獲死亡率は近年の水準から上げるべきではないと勧告した。資源評価の結果は、同年のISC本会合及びWCPFC科学委員会で承認された。


利用・用途

生あるいは冷凍で港へ運ばれ、切り身や冊、ステーキ用の切り身の状態で流通する。刺身、粕漬け、味噌漬け、惣菜原料、ステーキ、練り製品、あるいは味噌煮等の缶詰として食用とされる。


図1

図1. 太平洋におけるクロカジキの漁獲量の推移(ISC 2016)
JPNEarlyLL:日本の遠洋・近海はえ縄(1971〜1993年)、JPNLateLL:日本の遠洋・近海はえ縄(1994〜2014年)、JPNCLL:日本沿岸はえ縄、JPNDRIFT:日本大目流し網、JPNBait:日本その他の釣り、JPNOth:日本その他漁業、HWLL:ハワイのはえ縄、ASLL:アメリカンサモアのはえ縄、HWOth:ハワイその他漁業、TWNLL:台湾のはえ縄、TWNOth:台湾その他漁業、OthLL:その他はえ縄、PYFLL:フレンチポリネシアのはえ縄、EPOPS:東部太平洋まき網、WCPFCPS:WCPFCまき網、EPOOth:東部太平洋その他漁業。


図2

図2. 太平洋におけるクロカジキの分布


図3

図3. 資源評価で使用した雌雄別成長式 (Chang et al. 2013)
赤実線は雌、青実線は雄の成長、破線はそれぞれのCV(変動係数)を表す。縦軸は体長(眼後叉長)、横軸は年齢を示す。


図4

図4. 資源評価に提出された資源量指数(CPUE)(ISC 2016)
S1_JPNEarlyLL:日本のはえ縄CPUE(1975〜1993年)、S1_JPNLateLL:日本のはえ縄CPUE(1994〜2014年)、S3_HWLL:ハワイのはえ縄CPUE、S4_TWLL:台湾のはえ縄CPUE、S5_TWLL:台湾のはえ縄CPUE、S6_TWLL:台湾のはえ縄CPUE。


図5

図5. Stock Synthesis 3によるベースケースの結果(ISC 2016)
(a): 1歳魚以上の資源量。(b): 雌の産卵資源量。(c):加入量(×1,000尾)。(d): 2歳以上の魚に対する平均漁獲強度。赤線は前回の資源評価結果、青線はアップデート資源評価によって得られた結果。実線部分は推定値を、赤青それぞれの半透明部分は95%信頼限界を示す。


図6

図6.ベースケース設定を使用した将来予測結果(2015〜2024年)(ISC 2016)
(a): 推定された雌の産卵資源量。(b): 期待される総漁獲量。4種類のシナリオで将来の資源状態を推定した。シナリオ1: 2003〜2005年の漁獲強度(F16%)で漁業を続けることを想定。シナリオ2: MSYレベルの漁獲強度(F18%)で漁業を続けることを想定。シナリオ3: 最近年(2012〜2014年)の漁獲強度(F23%)で漁業を続けることを想定。シナリオ4: F30%の漁獲強度で漁獲を続けることを想定。


漁業の概要

本資源を主対象とする漁業は、熱帯・亜熱帯域の一部の小規模沿岸漁業で、我が国でも沖縄のひき縄漁業が漁獲している。また、米国や中米諸国、オーストラリア、ニュージーランド、日本等のスポーツフィッシングにおいても主要な対象魚となっている。しかしながら、漁獲量の大半は、まぐろ類を対象としたはえ縄漁業やまき網漁業の混獲として漁獲されている。

従来、本資源の漁獲の大半は日本の遠洋近海はえ縄漁業によるものであったが、その漁獲量は1990年代後半からは一貫して減少傾向を示している(図1)。その一方で、1980年代より台湾等諸外国による漁獲が徐々に増えはじめ、台湾の漁獲は2000年以降、我が国の漁獲を上回るようになった。また、中国、インドネシア、韓国等の漁獲も近年増えている。


生物学的特徴

Nakamura(1985)は外部形態の観察により、太平洋及びインド洋に分布するクロカジキ(Indo-Pacific Blue Marlin, Makaira mazara)と大西洋に分布するニシクロカジキ(Atlantic Blue Marlin, Makaira nigricans)は別種であるとした。この研究は広く受け入れられていたが、近年行われたmtDNA解析の結果、両者に遺伝的な差がないことが示され(Graves and McDowell 1995、Buonaccorsi et al. 1999)、FAOの統計では両者の名称を英名Blue Marlin、学名Makaira nigricansに統一した。なお、これらの遺伝学的研究は情報量が少なく、標本の形態観察を行っていないなど問題点もある。

太平洋におけるクロカジキの分布は、北緯40度〜南緯40度の広範にわたっているが、主として表層水温が24℃よりも暖かい水域に生息し、北緯20度〜南緯25度付近が分布の中心であり、特に西側ほど豊度が高いと考えられる(図2)。また、漁獲率や体長組成の変化の比較により、季節的に南北回遊を行うことが指摘されており、雌雄の回遊も異なっていると考えられている。しかしながら、今まで行われてきた標識放流での再捕率が他魚種と比較して非常に低く、回遊経路についてはっきりとはわかっていない。活動水深帯は主に表層混合層であり、一日の大半を表層で過ごしている。本種は主として表中層性の魚類・頭足類を捕食し、捕食の際に吻を使って餌生物を攻撃することが知られている。外洋域で成魚の捕食者はほとんど存在しないが、幼魚のうちはカジキ類や大型の歯鯨類に捕食されることがある。

産卵場は、稚魚の分布状況から西経130度以西の赤道を挟む南北20度の海域で、赤道付近では少なく、南北に分かれる傾向が見られる(Nishikawa et al. 1985)。産卵期は、北西太平洋では4〜6月、赤道周辺では周年(Nishikawa et al. 1985)、中部北太平洋で5〜9月(Hopper 1989)、南緯15度のグレートバリアリーフ周辺で11〜3月頃(Skillman et al. 1976)という報告例がある。成熟体長(眼後叉長)については、雄で130〜140 cm(Nakamura 1985)、雌では東部太平洋において170〜180 cm(Uosaki et al. 1999)との報告例がある。

本資源の年齢と成長は、漁獲尾数が少なく、特に小型個体の漁獲が稀であることと耳石が小さいことから推定が困難であると考えられている。本資源の年齢査定には、種として鰭棘に出現する年輪が用いられてきたが、輪紋が不明瞭で年輪と偽輪の区別が難しいという問題がある。


資源状態

資源評価は2013年にISCカジキ類作業部会の先導の下、WCPFC及びIATTCと協力して初めて行われた(ISC 2013)。2016年にはこの資源評価を元にした、アップデート資源評価を実施した(ISC 2016)。本資源評価は、前回の資源評価から、漁獲量、CPUE及び体長組成データのみを更新し、その他のモデル上の設定は変更していない。資源評価の結果は、同年のISC本会合及びWCPFC科学委員会で承認された。。

資源評価では統合モデルの一つであるStock-Synthesis 3が使用された。出生時の雌雄の比率は1対1とし、雌雄で異なる成長と年齢別自然死亡を仮定した。成長に関する指数は、耳石を用いた日齢査定結果から推定した1歳までの成長と、1歳以上の雌雄別成長に関する過去の研究(Shimose 2008, unpublished PhD dissertation)のメタ解析結果を併せて推定した(Chang et al. 2013)(図3)。資源量指数は、日本、台湾のCPUEを標準化して推定したものを用いた(図4)。

解析の結果、資源量は2000年代半ばまで一貫して減少し続けたが、その後若干回復の兆しを見せ、最近年である2011年はMSYレベルをやや上回った。産卵資源量は2000年代半ばまで減少した後若干の回復に転じた。加入水準は、解析を始めた1971年以降ほぼ同じ水準で安定していた(図5)。前回の資源評価の結果と比較すると、全ての推定値について概ね類似した結果となった(図5)。1980〜1990年にかけて、今回推定された資源量が前回よりも高くなったが、これは、台湾の提出したCPUEの不確実性が狭まったためである(図5)。将来予測の結果は、近年(2012〜2014年)の漁獲水準は持続可能であることを示した(図6)。これらの結果を鑑みて、ISCカジキ作業部会は、資源は乱獲されておらず、乱獲状態までは至っていないものの、ほぼ満限まで利用されていると結論付けた。また、ISCカジキ類作業部会は、本種の漁獲の大半が混獲によるものであり、漁獲量の直接管理が難しいことを考慮して漁獲死亡率は近年の水準から上げるべきではないと勧告した(ISC 2016)。

なお、今回の資源評価では、初めて雌雄による成長の違いを取り入れた解析モデルを使用したが、雌雄別のサイズデータはまだ少なく、本資源の雌雄別回遊経路の違いを十分モデルに取り込めていないと考えられる。今後雌雄別サイズデータを充実させることが、資源解析の精度向上にとって重要である。


管理方策

本種の保存管理措置はWCPFC及びIATTCそれぞれにおいて検討されているところである。


クロカジキ(太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 安定
世界の漁獲量
(最近5年間)
18,615〜20,727トン
最近(2014)年:20,357トン
平均:19,749トン(2010〜2014年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
3,139〜4,067トン
最近(2014)年:3,139トン
平均:3,431トン(2010〜2014年)
管理目標 検討中
資源の状態 F2012-2014/FMSY (age 2+) =0.9
SSB2014/SSBMSY=1.2
SSBMSY= 19,853トン
MSY= 19,901トン
管理措置 検討中
管理機関・関係機関 WCPFC、ISC、IATTC
最新の資源評価年 2016年
次回の資源評価年 未定

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

井嶋 浩貴


参考文献

  1. Buonaccorsi, V. P., Reece, K.S., Morgan, L.W. and Graves, J.E. 1999. Geographic distribution of molecular variance within the blue marlin (Makaira nigricans): a hierarchical analysis of allozyme, single-copy nuclear DNA, and mitochondrial DNA markers. Evolution 53: 568-579.
  2. Chang, Y.-J., Brodziak, J., Lee, H.-H., DiNardo, G., and Sun, C.-L. 2013. A Bayesian hierarchical meta-analysis of blue marlin (Makaira nigricans) growth in the Pacific Ocean. Working paper ISC/13/BILLWG-1/02 23pp.
  3. Graves, J.E., and McDowell, J.R. 1995. Inter-ocean genetic divergence of istiophorid billfishes. Mar. Biol. 122: 193–204.
  4. ISC 2013. Stock assessment of blue marlin in the Pacific Ocean in 2013, Report of the billfish working group. International Scientific Committee for Tuna and Tuna-like Species in the North Pacific Ocean. 17-22 July 2013 Busan, Korea. 121p.
  5. ISC 2014. Report of the fortteenth meeting of the international scientific committee for tuna and tuna-like species in the North Pacific Ocean. 16-21 July 2014 Taipei Taiwan. 71p
  6. ISC 2016. Stock Assessment Update for Blue Marlin (Makaira nigricans) in the Pacific Ocean through 2014. Report of the billfish working group. International Scientific Committee for Tuna and Tuna-like Species in the North Pacific Ocean. 13-18 July 2016 Sapporo, Hokkaido, Japan 91p.
  7. Hopper C.N. 1989. Patterns of Pacific blue marlin reproduction in Hawaiian waters. In Stroud, R. H. (ed) Planning the future of billfishes. Research and management in the 90s and beyond. Marine Recreational Fisheries 13. Proceedings of the 2nd International Billfish Symposium, Kailua-Kona, Hawaii. Part 2. Contributed papers. 29-39 pp.
  8. Nakamura, I. 1985. FAO Species catalogue Vol. 5. Billfishes of the world. An annotated and illustrated catalogue of marlines, sailfishes, spearfishes and swordfishes known to date. FAO Fisheries Synopsis, 125 (5): 1-65.
  9. Nishikawa, Y., Honma, M., Ueyanagi, S. and Kikawa, S. 1985. Average distribution of larvae of scombroid fishes, 1956-1981. Far Seas Fish. Res. Lab., S Series (12): 1-99.
  10. Shimose, T. 2008. Ecological studies from the view point of fisheries resources on blue marlin, Makaira nigricans, in the North Pacific Ocean. A Doctoral dissertation for the Graduate School of Engineering and Science, University of the Ryukyus, 143 pp.
  11. Skillman, R.A., and Yong, M.Y.Y. 1976. Von Bertalanffy growth curves for striped marlin, Tetrapturus audax, and blue marlin, Makaira nigricans, in the central North Pacific Ocean. Fish. Bull., 74 (3): 553-566.
  12. Uosaki, K. and Bayliff, W.H. 1999. A review of the Japanese longline fishery for tunas and billfishes in the eastern Pacific Ocean, 1988-1992. IATTC Bull., 21(6): 273-488.