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26 ニシマカジキ 大西洋

White marlin, Tetrapturus albidus

                                        
PIC

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最近の動き

2012年5月に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)によって資源評価が実施され、資源は乱獲状態ではあるが、現在は漁獲圧も減少し乱獲は進行していない可能性が高いことが示された。この結果を基に、ICCATでは、2013〜2015年の間のTACを400トンとし、スポーツフィッシングや沿岸漁業を含めた全ての漁業を対象にする新たな管理方策を策定した。2015年のICCATでは、2016〜2018年の各年のTACを引き続き400トンとすることが合意された。


利用・用途

刺身、寿司、切り身(ステーキ)、マリネ等で消費される。


図1

図1. ニシマカジキの国別漁獲量(ICCAT 2016)


表1

表1. 近年の国別漁獲量(2015年の値は暫定値)(ICCAT 2016)
漁獲量には、いずれもラウンドスケールスピアフィッシュが混入していると考えられる。


図2

図2. ニシマカジキの海域別・漁業種類別漁獲量(ICCAT 2016)


図3

図3. 1990年代(左)及び2000年代(右)の漁業種別漁獲量分布図(ICCAT 2014)
青:はえ縄漁業、灰色:その他の表層漁業による漁獲量を示す。円の大きさは漁獲量の相対的な比を表す。凡例の丸は上から1,000トン、2,000トン。


図4

図4. ニシマカジキの分布


図5

図5. 漁業別資源量指数(ICCAT 2013)
破線は個々の資源量指数を、黒実線はそれらを1つに併せた資源量指数を示す。


図6

図6. 推定された相対資源量(青線)及び相対漁獲死亡率(赤線)の歴史的推移(ICCAT 2013)
上図はプロダクションモデルの、下図は統合モデルの結果を示す。資源量及び漁獲死亡係数はMSY水準に対する相対値として示してある。資源量は、プロダクションモデルでは漁獲可能資源量、統合モデルは産卵親魚量の推定値。上図はプロダクションモデルの、下図は統合モデルの結果を示す。資源量及び漁獲死亡係数はMSY水準に対する相対値として示してある。相対資源量は、プロダクションモデルでは総資源量、統合モデルでは産卵親魚量に基づく推定値。


漁業の概要

本種を主対象として漁獲している漁業は米国、ベネズエラ、バハマ、ブラジル等のスポーツフィッシングとカリブ海諸国やアフリカ西岸諸国の沿岸零細漁業であるが、漁獲量の大部分は台湾、日本、ブラジル等のはえ縄漁業の混獲によるものである。近年、ベネズエラ、トリニダード・トバゴ等のカリブ海諸国やブラジルの零細漁業の漁獲の割合が多い(図1、表1)。日本の漁獲量は、1990年代前半までは100トンを上まわっていたが、それ以降減少を続け、近年では30〜40トン前後である(表1)。

最近本種に外見が極めてよく似たラウンドスケールスピアフィッシュ(roundscale spearfish, Tetrapturus georgii)という新種の存在が確認され、ニシマカジキの報告漁獲量の中に本種の漁獲が含まれていることがわかった。今後はニシマカジキとラウンドスケールスピアフィッシュの漁獲を分けて報告することがICCATで奨励されている。しかしながら、ICCATのニシマカジキの漁獲統計は現在までのところこの2種を一緒に計上している。

本種の総漁獲量は1960年代に約5,000トンまで達した後、1970年代に2,000トン前後に急減し、2000年までの間に1,000〜2,000トンの間で推移した。その後総漁獲量は緩やかな減少傾向を示し、2009年までは700トン前後で推移していたが、2010年以降再び減少し、2015年は暫定値で457トンと報告されている(表1)。1980年代半ば以降は南大西洋での漁獲が北大西洋を上回っていたが、2010年からは北大西洋の漁獲量がやや多くなっている(図2)。


生物学的特徴

本種は主として西大西洋の熱帯・亜熱帯域及びそれに隣接する水域に広く分布している(図3、図4)。本種は、インド洋・太平洋に分布しているマカジキとは、外部形態が明確に異なっており、平均漁獲サイズは20〜30 kgでマカジキよりも小型である。大西洋の熱帯・亜熱帯域に分布するクチナガフウライ及びラウンドスケールスピアフィッシュとは外部形態が極めてよく似ているが、これら3種は、吻の長さ、胸鰭の形状及び肛門の相対的な位置で区別される(ICCAT 2012)。ラウンドスケールスピアフィッシュは2006年に新種として記載されたため、これ以前に行われた本種の生物学的研究は、ラウンドスケールスピアフィッシュの標本混入により混乱していると考えられる。

産卵は大西洋熱帯域で、北半球域では4〜7月に、南半球域では12〜3月に行われている。外洋の表層混合層内が主たる分布水深帯であるが、100〜200 m層への潜水行動を頻繁に行うことが確認されている。潜水行動には、深層域に一定時間止まるU字型と、すぐ浮上するV字型が認められるが、どちらの潜水行動をより多く行うかについては、個体や海洋環境による変異が大きく特定の傾向は認められていない。


資源状態

2012年5月に行われた資源評価では、まずICCATのニシマカジキ水揚げ統計に混入しているラウンドスケールスピアフィッシュの情報を取り除く手法の検討が行われた。本種の分布の中心である西大西洋域では、ラウンドスケールスピアフィッシュに対するニシマカジキの割合は、季節や水域で変化するものの全体としては、23〜27%程度であることが判明した。その一方で東大西洋域では情報が少なく、混入率の推定はできなかった。このため、資源評価ではニシマカジキとして報告されている漁獲量を用いることとなった。

2011〜2012年のカジキ類作業部会には多くの資源量指数が報告されたが、解析手法作業部会で新たに合意されたCPUE標準化のガイドラインに照らして、このうち7つの標準化CPUEが資源量指数として資源解析に用いられた(図5)。これらを統合したCPUEは全般的に、1961〜1991年の間は大きく減少しているがその後は比較的安定したトレンドを示している。資源解析はプロダクションモデルと統合モデル(Stock Synthesis 3)を用いて行ったが、資源解析に用いた漁獲量には、他種の混入という問題に加えて、報告漁獲量の減少が指摘された。2002年から、生存個体の放流規制が導入され、結果として2002年以降報告漁獲量が減少した。これにより、漁獲死亡係数は減少したが、生存放流個体の一部は放流後に死んでしまい、これらの死亡は資源解析に反映されないと考えられるので、資源解析結果は2002年以降の死亡率を低く見積もっている可能性が高いと推測されている。

上記に示されるような不確実性が高いものの、資源はこれまで高い漁獲圧を受けてきたが、現在は漁獲圧も減少し、現在の漁獲死亡係数の水準はFMSYよりも低くなっている可能性が高いが、資源量はいまだにBMSYよりも低くなっていると考えられる(図6)。また、プロダクションモデルと統合モデルでは資源の生産性の推定値が異なり、後者の方が前者と比べて資源の回復が早いという結果になったが、現有の情報ではどちらの結果も同程度の確率で起こりうるとされた。これらの結果は、報告された漁獲量がニシマカジキの漁獲死亡を正しく反映している仮定によっているが、生存放流個体の死亡率が高かったと仮定した場合は、推定される資源状況は悲観的になり、現在でも過剰漁獲の状態にあることを示した。


管理方策

2012年に行われた資源評価結果を受けて、大西洋のニシマカジキ資源に対しては、2013〜2015年の各年のTACを400トンとすることが合意された(ICCAT 2012)。日本の割当量は年間35トンである。また、割当量の消化が近づいた場合には、生きて漁獲された個体をできるだけ放流後の生存率が高くなるように放流することが勧告された。また、資源解析・評価の実施に当たって問題となった生存放流及び死亡投棄個体数の推定方法の報告、スポーツフィッシングについてはオブザーバーの乗船(カバー率5%)、サイズ規制と売買の禁止が勧告されている。2015年のICCATでは、2016〜2018年の各年のTACを引き続き400トンとすることが合意されるとともに、放流後の死亡率を最小化するよう取り組むことが勧告された。


ニシマカジキ(大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 低位微増
世界の漁獲量*
(最近5年間)
371〜537トン
平均:444トン(2011〜2015年)
我が国の漁獲量*
(最近5年間)
13〜42トン
平均:25トン(2011〜2015年)
管理目標 MSY
目標値 874〜1,604トン
資源の現状 おそらくB2010<BMSY
おそらくF2010<FMSY
管理措置 2016〜2018年のTACを400トンとする(日本の割当量は各年とも35トン)。
スポーツフィッシングについてオブザーバー乗船(5%)、サイズ規制、漁獲物の売買禁止。
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2012年
次回の資源評価年 2018年
*漁獲量には、いずれもラウンドスケールスピアフィッシュの漁獲が混入していると考えられる。

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

甲斐 幹彦


参考文献

  1. ICCAT. 2012. REPORT OF THE 2012 WHITE MARLIN STOCK ASSESSMENT MEETING (Madrid, Spain May 21-25, 2012). SCRS/2012/012. http://www.iccat.int/Documents/CVSP/CV069_2013/n_3/CV069031085.pdf
  2. ICCAT. 2013. 8 Executive summaries on species..8.7 WHM-WHITE MARLIN. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, September 30 -October 4, 2013). 136-147 pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2013-SCRS-REP_ENG.pdf
  3. ICCAT. 2014.10. REPORT OF THE STANDING COMMITTEE ON RESEARCH AND STATISTICS (SCRS) (Madrid, Spain September 29- October 3, 2014). 130pp. http://www.iccat.es/Documents/Meetings/Docs/2014-SCRS-REP_ENG.pdf
  4. ICCAT. 2016. 8 Executive summaries on species.8.7 WHM-WHITE MARLIN. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, October 3 to 7, 2016). 137-146 pp.