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24 メカジキ 南大西洋

Swordfish, Xiphias gladius

                                                                                   
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最近の動き

2013年に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の科学委員会(SCRS)で資源評価が実施され、本系群は乱獲状態でないことが示された。SCRSは、データ不足による不確実性を低減する十分な調査研究が実施されるまでは、本資源の年間漁獲量を2009年の資源評価で推定されたMSY(15,000トン)以下に抑え、小型個体の漁獲量制限を継続するよう勧告を出した。これを受けて、ICCATでは2014〜2016年の間、各年の総漁獲可能量(TAC)を15,000トンと設定した。2016年のSCRSでは漁獲量データの更新のみ行われ、2017年のTACは引き続き15,000トンとされた。


図1

図1. 南大西洋におけるメカジキの漁法別漁獲量(1950〜2015年)(ICCAT 2016)


図2

図2. 南大西洋におけるメカジキの国別漁獲量(1950〜2015年)(ICCAT 2016)


図3

図3. 大西洋における漁法ごとのメカジキの累積漁獲量(2010〜2014年の合計)の分布図(ICCAT 2016)
青がはえ縄漁法、灰色がその他の漁法による漁獲量を示す。円の大きさは漁獲量の相対的な比を表す。凡例の丸は上から32,500トン、65,000トン。南北の系群は北緯5度(太線)で仕切られている。


表1

表1. 南大西洋におけるメカジキの近年の国別漁獲量(ICCAT 2016)


図4

図4. 大西洋における日本のメカジキ漁獲量(1950〜2015年)(ICCAT 2016)


図5

図5. 国別の標準化されたCPUE(1950〜2012年)(ICCAT 2013)
平均値でスケール化されているため単位はない。


図6

図6. ASPICで推定された相対資源量(B/BMSY:赤線;上図)及び相対漁獲係数(F/FMSY:青線;下図)(ICCAT 2014)点線は80%信頼区間。


図7

図7. BSPMで推定された相対資源量(B/BMSY:上図)及び相対漁獲係数(F/FMSY:下図)(ICCAT 2014)
赤線は推定値、緑線・青線はそれぞれ上側・下側90%信頼区間。


漁業の概要

南大西洋のメカジキは、1980年代末まで主に日本、台湾、韓国のはえ縄の混獲物として漁獲されており、総漁獲重量は10,000トン未満と少なかった(図1、図2)。1989年からメカジキを目的にはえ縄の浅縄操業を行うスペインの船団が参入し、1995年の総漁獲量は21,930トンへと急増した。これは、スペインの漁場が徐々に北大西洋及び他の大洋から南大西洋へとシフトしたことによるが、加えて、ブラジル、ウルグアイ等の沿岸国が漁獲を伸ばしたことも影響している。近年これらの国々のメカジキ漁獲量は減少傾向にある。大西洋における2010〜2014年のメカジキ累積漁獲量の分布図を図3に示す。2015年の漁獲量は1995年より約50%減の10,277トンであり、前年の漁獲量(9,911トン)より増加した(表1)。これは主にスペインの漁獲量が増加したためである。しかし、ブラジルとウルグアイの努力量は近年減少している。また、ウルグアイは近年ビンナガの漁獲枠が増加したため、近い将来混獲によりメカジキに対する努力量が増加する可能性が高い。

大西洋で行われる我が国の漁業において、メカジキは主に熱帯・亜熱帯域で操業するメバチを対象としたはえ縄操業の混獲物である。1995年以降メバチの漁場がそれまでの南大西洋から徐々に北大西洋に移行したため、南大西洋の我が国のメカジキ漁獲量も減少した(図4)。2013年の漁獲量は466トンと過去最低を記録した。


生物学的特徴

メカジキの資源構造については、1990年代中期から2000年代中期にかけて分子遺伝学的手法による研究が精力的に行われ、2006年にはICCATでメカジキの資源構造に関するワークショップが開催された(ICCAT 2006a,b)。これまでの研究結果は、ミトコンドリアDNA・核DNAの塩基配列の違いに基づき、地中海、北大西洋、南大西洋、太平洋の4つの独立した系群の存在を示唆している。大西洋におけるメカジキの南北の境界線については、便宜的に北緯5度線が境界として定められているが(Miyake and Rey 1989)、この境界よりも北であるとの指摘がある(Chow and Takeyama 2000)。また、Chow and Nohara(2002)は、本系群はアフリカ沿岸では北緯15度付近まで分布する可能性を示唆している。2006年のワークショップでは、同様な指摘が複数報告されたが、どの研究もカバーする水域や時期が限られており、境界を変える判断を下すに不十分であるとされた。その後、北緯10〜20度において広く標本が収集・分析され、境界線が北緯15度付近にあることが示された(Chow et al. 2007)。最新の遺伝解析による知見(Smith et al. 2015)では、南北大西洋の境界線が北緯20〜25度、西経45度付近にあり、地中海と大西洋の境界線が西経10度にあることが示されたが、資源の境界線については、資源分布の季節的な変化の影響を十分に調べる必要があるため、現在の境界線を維持することとなった(ICCAT 2015)。

メカジキの産卵場は熱帯及び亜熱帯域にあり、成長したメカジキはアフリカ沿岸方面やウルグアイ沖合水域に摂餌のために回遊すると考えられている(ICCAT 2014)。南大西洋のメカジキの年齢、成長、成熟に関して本格的な研究はまだ行われていない。


資源状態

最新の資源評価は2013年にICCATのSCRSにおいて実施され、2011年までのデータについて、非平衡プロダクションモデル(ASPIC)とベイジアンサープラスプロダクションモデル(BSPM)を用いて資源解析が行われた。両モデルともに資源量指数として、日本、台湾、スペイン、ブラジル、ウルグアイ、南アフリカのはえ縄の資源量指数を使用した(図5)。各国のCPUEトレンドが大きく異なるうえに変動も大きいため、ブラジルを除いた一本のCPUEとブラジルと台湾の両方を除いた一本のCPUEが使用された。 

ASPIC及びBSPMの資源評価結果は、個々のCPUEトレンドが互いに相反する傾向を示しており、また多くのCPUEが漁獲量との整合性が悪く、通常の解析を行うと両モデル共に収束しなかった。その結果、資源の生産性やMSYの推定値への信頼性が低くなった。これらのモデルは、定量的な推定は困難であるが、資源状態を示唆する上で有用であるため、リファレンスケースとして使用された。両モデルの漁獲係数と資源量の傾向は似ていたが、絶対的な水準とMSYの相対的な推定値が異なっていた(図6、図7)。そのため、両モデルの結果は異なる。ASPICの推定では、資源は乱獲状態(B2012/BMSY=0.98)にあるが過剰漁獲(F2012/FMSY=0.84)ではなかった。BSPMの推定では、資源は乱獲状態(B2012/BMSY=1.38)でも過剰漁獲(F2012/FMSY=0.47)でもなかった。

上述の解析結果には不確実性が大きく伴うことから、両モデルで推定された結果と補助的な情報から資源状態を推定した。南大西洋資源の分布範囲は北大西洋資源よりも広いが、1960〜2011年の投棄を含む漁獲量は、北大西洋メカジキの同時期の漁獲量の73%と少ない。また、南大西洋メカジキの平均体重は北大西洋メカジキより重い。同じ生産性と仮定すると、これらは北に比べて南の方が、漁獲係数が低いことを示唆する。これらにより、資源は乱獲状態にないと結論付けられた。次回の資源評価は2017年7月に行われる予定である。

なお、下記の漁獲量規制の導入に伴って、混獲されるメカジキの水揚量を調節するために、生きて漁獲されたメカジキを放流する動きが出てきたが、一部の国では放流個体数等についての情報収集が十分にされていないこと、過少報告の可能性があることが指摘されている(ICCAT 2013)。データの質・量の低下は資源評価の信頼性を落とすことに繋がるので、今後改善が必要である。


管理方策

ICCATは2014〜2016年の間、各年15,000トンのTACを設定していたが、2016年の年次会合において、2017年(次回の資源評価実施年)まで現在のTACを延長した。日本の割当量は901トンである。国別割り当て分を超過もしくは余った場合には、2年以内であれば差し引き・上乗せを行い調整することができる。ただし、調整分は前年の割り当て量の30%を超えない範囲とする(ICCAT 2013)。

現在、大西洋全域について、@下顎叉長125 cm/体重25 kg未満の個体の水揚量を15%以下に抑える、またはA下顎叉長119 cm/体重15 kg未満の個体の水揚量を0%にする(投棄量の評価含む)、という2種類の最小体長規制がある(ICCAT 2015)。2006〜2008年の大西洋全体で水揚げされた125 cm以下の個体の割合は24%(尾数)と推定されている(北系群では28%、南系群では20%)(ICCAT 2013)。


メカジキ(南大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 おそらく中位
資源動向 おそらく増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
8,212〜11,455トン
最近(2015)年:10,277トン
平均:10,107トン(2011〜2015年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
661〜1,233トン
最近(2015)年:661トン
平均:943トン*(2011〜2015年)
管理目標 MSY
目標値 15,000トン
資源の現状 おそらくB2012/BMSY > 1
おそらくF2012/FMSY < 1
管理措置
  • 2017年のTACを各年15,000トン(日本の割り当ては901トン)とする。国別割り当てについて、割り当て分を超過もしくは余った場合には、2年以内であれば差し引き・上乗せを行い調整することができる。ただし、調整分は前年の割り当て量の30%を超えない範囲とする。
  • 下顎叉長125 cm/体重25 kg未満の個体の水揚量を15%以下に抑えるか、下顎叉長119 cm/体重15 kg未満の個体の水揚量を0%にする(投棄量の評価含む)。
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2013年
次回の資源評価年 2017年
*この値は日本の近年の漁獲割当量を上回っているが、これは、ICCATの合意に基づいた過去の漁獲割り当ての未消化分の漁獲が含まれているためである。

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

甲斐 幹彦


参考文献

  1. Chow, S., and Takeyama, H. 2000. Nuclear and mitochondrial DNA analyses reveal four genetically separated breeding units of the swordfish (Xiphias gladius). J. Fish Biol. 56:1087-1098.
  2. Chow, S. and K. Nohara. 2002. Further implication on boundary between north and south Atlantic stocks of the swordfish. SCRS/2002/141. ICCAT Col. Vol. Sci. Pap., 55: 1719-1722.
  3. Chow, S. Clarke, S. Nakadate, M. and Okazaki, M. 2007. Boundary between the north and south Atlantic populations of the swordfish (Xiphias gladius) inferred by a single nucleotide polymorphism at calmodulin gene intron. Mari. Biol. 152:87-93.
  4. ICCAT. 2006a. 8 Executive summaries on species. 8.8 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, October 2 to 6, 2006). PLE-014/2006. 83-91 pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/PLE-014%20EN.pdf (2008年10月31日)
  5. ICCAT. 2006b. Report of the 2006 Atlantic swordfish stock assessment session (Madrid, September 4 to 8, 2006). SCRS/2006/015. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/SCI-040%20EN.pdf (2008年10月31日)
  6. ICCAT. 2013. 8 Executive summaries on species.8.9 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, September 30 to October 4, 2013). 161-180 pp.
  7. ICCAT. 2014. 8 Executive summaries on species.8.9 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, September 29 to October 3, 2014). 145-164 pp.
  8. ICCAT. 2015. 8 Executive summaries on species.8.9 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, September 28 to October 2, 2013). 158-176 pp
  9. ICCAT. 2016. 8 Executive summaries on species.8.9 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, October 3 to 7, 2016). 166-186 pp
  10. Miyake, P. M., and Rey, J. C. 1989. Status of Atlantic broadbill swordfish stocks. In Stroud R. H. (ed.), Planning the Future of Billfishes Part I 115-136 pp. National Coalition for Marine Conservation Incorporation, Athens, Georgia., USA.
  11. Smith BL, Lu C-P, García-Cortés B, Viñas J, Yeh S-Y, Alvarado Bremer JR. 2015. Multilocus Bayesian Estimates of Intra-Oceanic Genetic Differentiation, Connectivity, and Admixture in Atlantic Swordfish (Xiphias gladius L.). PLoS ONE 10(6):e0127979. doi:10.1371/journal.pone.0127979