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17 メバチ 中西部太平洋

Bigeye Tuna, Thunnus obesus

                                                                               
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最近の動き

2015年の総漁獲量は13.4万トン(予備集計)で、1996年以降最も低い値であった。本種の最新の資源評価は2014年に太平洋共同体事務局(SPC)の科学専門グループにより行われ、資源は過剰漁獲状態であり、乱獲状態でもあると評価された。同年のWCPFC科学小委員会は、SPCの評価結果を承認するとともに、漁獲死亡率の削減(2008〜2011年平均水準から36%、2001〜2004年水準から26%)を勧告した。2016年12月に開催されたWCPFC第13回年次会合において、措置の見直しが議論されたが、現行措置が継続されることとなった。

また、近年のWCPFCにおいては、長期的な管理枠組みとしての漁獲戦略の導入の議論が進んでいる。


利用・用途

はえ縄の漁獲物は生鮮(刺身)、まき網の漁獲物は缶詰をはじめとする加工品として主に利用される。


図1

図1. 太平洋におけるメバチの分布域と索餌域


図2

図2. 中西部太平洋におけるメバチの漁法別漁獲量(上図)と国別漁獲量(下図)


図3

図3. 主要漁業によるメバチの漁獲量分布(1990〜2015年)及び2014年の資源評価に用いられた海区区分(Williams and Terawasi 2016)
緑がはえ縄、青がまき網、黄がその他の漁業を表す。


表1

表1. 中西部太平洋におけるメバチの各四半期齢時の体長(尾叉長cm)と体重(kg)(Harley et al. 2014)


図4

図4. 中西部太平洋におけるメバチのF/FMSYとSB/SBF0の経年的プロット(WCPFC 2014)
SB/SBF=0は、漁業がないと仮定して推定した現在の産卵資源量を1.0としたときの実際の産卵資源量。


表2a 表2b

表2. WCPFCにおける漁獲管理方策、管理基準値に関する検討状況(WCPFC 2016)


図5

図5. 中西部太平洋におけるメバチのSpawning potential(上図、WCPFC 2014)と Spawning Biomass ratio(下図、Harley et al. 2014)の推移
上図:縦軸はSpawning potential(産卵資源量、性比、年齢別成熟率、一回あたりの産卵量、産卵回数の情報を考慮した、産卵可能指数)、横軸は年で示す。黒実線がレファレンス・ケース。緑実線は標識魚群の混合する度合いが違う設定。赤と水色実線は親子関係が異なる設定(黒実線と同じ推定値のため見えない)。
下図:縦軸は漁業がないと仮定して推定した現在の産卵資源量を1.0としたときの、実際の産卵資源量の割合。赤丸は2012年の状況を示し、0.16。


図6

図6. 中西部太平洋におけるメバチの加入量(WCPFC 2014)
縦軸は加入量(10,000個体)、横軸は年で示す。黒実線がレファレンス・ケース。緑実線は標識魚群の混合する度合いが違う設定。赤と水色実線は親子関係が異なる設定(黒実線と同じ推定値のため見えない)。


図7

図7. 中西部太平洋におけるメバチの漁獲死亡係数(年)の推移
黒:親魚、赤:未成魚。


図8

図8. 中西部太平洋における漁業ごとのメバチ産卵資源へのインパクト(Harley et al. 2014)
縦軸は漁業が資源を減少させた割合(%)を示したもの。はえ縄(緑)、竿釣り(赤)、まき網流れもの操業(青)、まき網素群れ操業(水色)、その他(黄)を表す。


図9

図9. 中西部太平洋におけるメバチ産卵資源の将来予測(Pilling et al. 2014)
2012年の漁獲の強さ、加入が親子関係式のばらつきの範囲(左図)あるいは、2002〜2011年の範囲(右図)で将来の加入があると仮定。縦軸は、漁業がないと仮定して推定した現在の産卵資源量を1.0としたときの、実際の産卵資源量の割合。黒実線:中央値。2種の加入の仮定について、それぞれ200回の将来予測を行い、その結果の範囲を等値線と青色のグラデーションで示してある。緑破線:SBMSYに相当。赤破線:20% SBF=0(2002〜2011年)に相当。


付表1 付表1 付表1 付表1

付表1. 中西部太平洋におけるメバチの年別国別漁獲量(単位:トン)


漁業の概要

WCPFCが管理する中西部太平洋は、西経150度以西の太平洋である(図1)。はえ縄、まき網及び竿釣りが主な漁業である。はえ縄は1950年代にキハダを主要対象種として発展したが、1970年代半ばにメバチを主要な対象とするようになった。まき網は、カツオを主対象としつつ、キハダも漁獲する漁業として1970年代半ばに始まった。1970年代までは、はえ縄が漁獲の9割を占めていたが、その後、まき網による漁獲量が増加した。2015年の総漁獲量は13.4万トン(予備集計)で、内訳は、まき網が37%、はえ縄が48%、竿釣りが4%、そのほか11% である。そのほかには、フィリピン及びインドネシアにおける多様な漁業(ひき縄、小型のまき網、刺網、手釣りなど)が含まれている(図2、付表1)(Williams and Terawasi 2016)。なお、付表1の値とこれに基づく図2は、WCPFCの個人情報保護のルールにより、ある年のある国の漁獲実績がある船舶数が3隻未満の場合は公表されないため、全ての国を足し上げても、上記の総漁獲量の記載と一致しないことがあるが、2015年の場合は、付表1の合計は13.4万トンと総漁獲量(13.4万トン)とほぼ同値である。

まき網漁業について、日本近海、とくに三陸沖で、季節的にかつお・まぐろ類を対象とした操業は第二次大戦前より行われていた。熱帯域における大規模なまぐろまき網漁業の先駆者は日本である。マッカーサーラインが廃止された1952年から試験的に太平洋熱帯域への出漁がみられ、1969年に自然流木に蝟集する魚群を対象とする漁法が開発され、また、素群れへの操業方法開発の努力も続けられた結果、1970年代半ばに、現在の熱帯域で周年操業する形態が確立した(海外まき網漁業協会2004)。1980年代には台湾船、韓国船が参入し、かつ東部太平洋の不漁によって一部の米国まき網船が中西部太平洋に漁場を移し、メバチの漁獲量が増加し始めた。1990年代に入ると、集魚装置(FADs)を使用した操業が発達した。これは、人工的に流れもの(人工筏とも呼ばれる。典型的には、フロートになる筏部分と、海中にあって蝟集効果を高めると考えられる網(中古のまき網の身網)及び位置を知らせるブイで構成される)を海に投入し、しばらく待って(数週間から数か月)、魚群が蝟集した場合、これを明け方に漁獲する漁法である。近年、FADsに魚群探知機と衛星ブイを装着し、魚群の蝟集状況を、FADsに赴いて点検せずとも把握できる工夫が行われている。点検時間が短縮することにより、FADs操業の漁獲効率が高まっている可能性がある。これらの装置は、大西洋では、ほぼすべてのFADs(ICCAT 2016)に、東部太平洋ではおおよそ1/3のFADs(Hall and Román 2016)に装着されているとの報告がある。数年前より、世界的にまぐろ類の地域漁業管理機関において、FADsに関する調査の気運が高まっている。具体的な調査項目として、FADs操業のまぐろ類資源や生態系へのインパクトを推定する目的で、海上にある総FADs数の推定、FADs寿命の推定、生分解性のFADs素材の開発、生物が絡まりにくいFADsの開発、FADsに関する情報収集項目の標準化作業などがある。FADs操業では主として、小型魚が漁獲される。メバチ資源に中西部太平洋内では、東部の方が西部よりメバチが多獲される傾向があり、かつ東部でFADs操業が盛んである。したがって、主として東部海域でのFADs操業によるメバチ漁獲がもたらすメバチ資源への影響が懸念されている(Harley et al. 2015、Kawamoto and Nakamae 2016)。漁場は、北緯10度から南緯10度の熱帯域で東西に幅広いが、特に東経160度付近で漁獲が多い(図3)。近年10年(2006〜2015年)で、まき網の漁獲量の多い国は、米国、台湾、パプアニューギニア、韓国、スペイン、フィリピン及び日本などで、2015年には、これら7カ国でまき網漁獲量の70%を占めた(付表1)。日本船の漁獲量は、2000年以降は5,000トン前後であり、2015年は4,000トン(予備集計)であった。まき網全体の努力量は近年、上昇傾向にあったが、2015年は2014年より若干減少した。操業方法により、主として漁獲される魚のサイズが異なり、素群れ操業は尾叉長50〜100 cmに分布する。流れもの操業(FADs操業含む)は50 cmを主体に、90 cm未満が多い(Williams and Terawasi 2016)。

はえ縄漁業について、我が国漁船は1938年頃に漁場は赤道付近まで拡大し、キハダを主要な漁獲対象種としていた(岡本 2004)。マッカーサーラインが廃止された1952年から、漁場が急速に拡大し、1960年には中央アメリカ沿岸に達した(Suzuki et al. 1978)。その後も南北両半球の温帯域に操業域を広げ、1960年代には、地理的に最も広く操業が行われた。この頃は缶詰等の加工品原料としてキハダとビンナガを漁獲していたが、1970年代半ばには、刺身需要の増加と冷凍設備の改善によって、主たる漁獲対象魚種がメバチに変更されたため、はえ縄のメバチ漁獲量が増加した。漁場は、北緯15度と南緯15度熱帯域で東西に幅広い。南北30〜35度付近の温帯域に、それぞれの冬場を中心にメバチの好漁場が形成される。これらの魚体は小さく未成熟なので摂餌回遊と考えられる(図3)。近年10年(2006〜2015年)で、はえ縄の漁獲量の多い国は、日本、韓国、台湾、中国、インドネシア及び米国などで、2015年には、これら6か国ではえ縄漁獲量の73%を占めた(付表1)。日本船の漁獲量は、1978年と1990年に2回のピーク(それぞれ5.1万トン、5.0万トン)を記録した。1990年以降は減少傾向にあり、2015年は1.2万トン(予備集計)であった。はえ縄船の漁獲サイズは、主として尾叉長90 cmから170 cmである(Williams and Terawasi 2016)。

竿釣り漁業は、日本のカツオ竿釣り漁業で漁獲されるメバチが1950年代から記録されている。1970年代半ばまで、年1,000〜2,000トンの漁獲であった。その後、インドネシアの漁獲が増加し、近年10年(2006〜2015年)で、竿釣りの漁獲量が多いのはインドネシアで、2015年には、インドネシア一国で竿釣り漁獲量の87%を占めた(Williams and Terawasi 2016)。

そのほかの漁業は、フィリピンとインドネシア東部における多様な漁法(ひき縄、小型のまき網、刺網、手釣りなど)が含まれる。漁獲サイズは、尾叉長20〜50 cmが多い(Williams and Terawasi 2016)。これらの漁業の水揚地が多いことから、漁獲量の把握が十分ではなく、特にインドネシアの漁獲量は不確定要素が大きいと考えられている。


生物学的特性

メバチは、三大洋の熱帯域から温帯域にかけて広く分布する。若齢で小型のメバチは、似たような大きさのカツオやメバチと群れを作ることがあり、これらはもっぱら表層に分布する。成長するにつれて、メバチ単独の群れとなり、より水深の深い層にも分布するようになる。産卵は水温24℃以上の水域で周年行われると考えて良いが、季節性もみられ、赤道の北側で4〜5月、南側では2〜3月である(二階堂ほか 1991)。このような産卵期の違いは、中西部太平洋内に系群が存在する可能性を示唆する。近年、西経140度、155度、170度、180度の赤道を放流点として、放流点と再捕点のみが分かる標識と、移動経路が分かる標識を用いた大規模な標識放流調査が行われた(Schaefer et al. 2015)。東西方向に、隣の放流点にまで移動する例は多数みられたが、それ以上の長距離移動は少なかった。これらは系群の存在を補強する証拠となり得る。いっぽうで、はえ縄やまき網の漁獲状況をみると、中西部太平洋内では明瞭な漁獲の切れ目がないこと分かる(Williams and Terawasi 2016)。このように系群の存在については異なる見解が得られるため、判断が難しいものの、2016年の資源評価の場合も含めて、中西部太平洋のメバチの資源評価では、中西部太平洋で一つの系群と見なし、東部太平洋とは西経150度で分離されている。メバチは多回産卵型で、産卵期にはほぼ毎日産卵し、産卵は夜間(19 時から真夜中;二階堂ら 1991。19時から朝4時;Schaefer et al. 2005)に行われ、一回当たりの産卵数はハワイ南西沖のサンプルから体長150 cmで約220万粒であると考えられている(二階堂ほか 1991)。本種の寿命は、放流後14年経過してから再捕された例(SPC 未発表データ)から10〜15年であろうと考えられている。胃内容物からは魚類や甲殻類、頭足類等、幅広い分類群が出現し、種特異性はないようである。しかし、他のまぐろ類に比べてハダカイワシやムネエソ等の中深層性魚類が多い。仔魚期、稚魚期には多くの捕食者がいると思われるが情報は少ない。さらに遊泳力が付いた後は大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に外敵は限られてくるものと思われる。生物学的最小型は90〜100 cm、14〜20 kg(満2歳の終わりから3歳)と報告されており(Kikawa 1953)、雌の50%は92 cmで成熟し、135 cmの雌では50%が成熟している(Schaefer 2005)。

2014年の資源評価では、自然死亡係数は雌雄同じ値が用いられたが、体長が大きいほど雄が多いことを反映するように四半期齢別に設定された。すなわち、0歳で四半期あたり0.5、その後、第5四半期齢で0.2まで減少し、その後、次第に高くなり、再び低くなる(Harley and Maunder 2003、Hoyle 2008、Hoyle and Nicol 2008、Harley et al. 2014)。成長式は、耳石日輪と標識放流調査結果から成長を解析した結果(Lehodey et al. 1999)は、von Bertalanffy成長式を当てはめると、若齢期(体長80 cm以下)を過大推定する傾向がみられたため、2歳までは、耳石日輪や標識放流調査結果に四半期ごとに合致させることとし、その後の成長は、von Bertalanffy成長式に従うものとした。ただし、成長式のパラメータの一つである最大体長の推定値は、不自然な値(非常に大きな値)となるので、これは184 cmに固定した(Harley et al. 2014)。

自然死亡係数(四半期齢)

Harley et al.(2014):0.200, 0.166, 0.134, 0.101, 0.100, 0.100, 0.100, 0.100, 0.100, 0.101, 0.101, 0.102, 0.103, 0.104, 0.106, 0.109, 0.113, 0.119, 0.125, 0.130, 0.134, 0.135, 0.134, 0.133, 0.131, 0.129, 0.128, 0.126, 0.124, 0.123, 0.121, 0.120, 0.118, 0.117, 0.116, 0.115, 0.114, 0.113, 0.112, 0.111

成長(尾叉長cm、四半期齢)

      Harley et al. (2014):21.7, 33.3, 42.9, 50.3, 56.1, 65.5, 75.1, 83.5, 91.0, 97.5, 103.6, 109.4, 114.8, 119.9, 124.7, 129.2, 133.4, 137.4, 141.1, 144.7, 148.0, 151.1, 154.0, 156.8, 159.4, 161.8, 164.1, 166.3, 168.3, 170.2, 172.0, 173.7, 175.3, 176.7, 178.1, 179.5, 180.7, 181.9, 183.0, 184.0

体長体重関係式

      Harley et al. (2014) :W= 2.133 × 10-5 × L3.0099 (L:尾叉長(cm)、W:体重(kg)、t : 年齢)

資源状態

最新の資源評価は2014年にSPCの科学専門グループにより行われた。資源評価モデルはMultifan-CL(Fournier et al. 1998、Hampton and Fournier 2001、Harley et al. 2014)が用いられた。資源量指数として、まき網は用いられていない。はえ縄に関しては、日本船(Hoyle and Okamoto 2011、McKechnie et al. 2014)や台湾船、韓国船をはじめとした複数の国のデータを複合した標準化CPUE(Harley et al. 2014)が用いられた。MSYは10.8万トンと推定された。2008年から2011年の平均の産卵資源量のレベル(SB2008-2011/SBF=0)は0.20であり、限界管理基準値(Limit Reference Point;SB/SBF=0=0.20)と同値であり、WCPFCにおいて、従来、資源が乱獲状態にあるか否かの基準とみなされてきたSBMSYで判断した場合も1.0未満(SB2008-2011/SBMSY=0.94)であった。また、従来過剰漁獲能力の基準と見なされてきたFMSYで判断した場合、2008-2011年の平均漁獲努力は1.0以上(F2008-2011/FMSY=1.57)であった(図4)。これを受け、SPCは、資源は過剰漁獲状態であり、乱獲状態であると評価した。同年のWCPFC科学小委員会は、SPCの評価結果を承認するとともに、漁獲死亡率の削減(2008〜2011年平均水準から36%、2001〜2004年水準から26%)を勧告した。Spawning potential(産卵資源量、性比、年齢別成熟率、一回あたりの産卵量、産卵回数の情報を考慮した、産卵可能指数)は1970年代から減少傾向にある(図5)。また、Spawning Biomass ratio(漁業がないと仮定して推定した現在の産卵資源量を1.0としたときの、実際の産卵資源量の割合)は近年、減少傾向にあり、2012年は0.16(図5)とされ、LRP(0.2)を下回った。加入量は、1950年から1970年にかけて減少した後、2000年あたりまで増加傾向となり、その後、減少した。最近(2011年後半から2012年)の加入量の推定の不確実性は大きく、示されていない(図6)。漁獲死亡は、まき網の漁獲量が増加した1980年頃から若齢魚の漁獲死亡係数が急激に増加し、FADs操業が始まった1990年代半ば以降に、さらに急増した。1980年以降の増加にはフィリピン・インドネシアの漁業の漁獲量増加も一因である。この若齢魚の変化に比較して、成魚の漁獲死亡の増加は緩やかである。大型のメバチがまき網やフィリピン・インドネシアの漁業で漁獲されることが、まれであることがこの違いの原因と考えられる(図7)。各漁業の親魚資源量に与える影響は、近年は、はえ縄とまき網のFADs操業の影響はおおよそ同じと推定された(図8)。将来予測(2012年の漁獲の強さ、加入が2002〜2011年の範囲あるいは、親子関係式のばらつきの範囲で将来の加入があると仮定)を行うと(Pilling et al. 2014b)、2032年までにLRPを下回る確率は、加入量の設定よって大きく異なり、前者が13%、後者が94%。SBMSYを下回る確率は前者が20%、後者が96%であった。漁獲努力がFMSYを上回る確率はいずれの場合も100%とされた(図9)。

2014年8月のWCPFC科学委員会は、上記の結果に基づき、@漁獲死亡率の削減(2008〜2011年平均水準から36%、2001〜2004年水準から26%)を勧告した。また、Aメバチ幼魚を混獲するFADの使用について、セットFAD操業回数を2010年水準以上としないとする2012年の勧告を再確認した(WCPFC 2014)。なお、2015年と2016年には資源評価は実施されず、科学委員会は2014年と同じ勧告を行った(WCPFC 2015、WCPFC 2016)。


管理方策

WCPFCは、メバチ・キハダ・カツオの保存管理措置として、以下を導入している。現在の措置は2013年に合意され、2014年から2017年までの規制が定められている。2016年12月に開催されたWCPFC第13回年次会合において、措置の見直しが議論されたが、現行措置が継続されることとなった。


(a) まき網漁業(熱帯水域)
・2014〜2016年:FAD操業禁止(3か月)+FAD操業禁止1か月延長又は同等のFAD操業回数制限
・2017年:2015、2016年の措置+公海におけるFAD操業禁止・島嶼国以外のメンバーが保有する隻数の凍結

(b) はえ縄漁業
・メバチの漁獲量を2001〜2004年の平均値から40%削減(2014年から段階的に実施)

現在、WCPFCにおいては、長期的な資源管理の枠組みとして、@管理目標(Management ObjectivesあるいはManagement Goal)、A管理基準値(RP;Reference Points)、B漁獲管理ルール(HCR;Harvest Control Rules 資源量の変動に応じて、予め決めておいた管理措置を発動するルール)、C限界管理基準値を下回る許容リスク(acceptable levels of risk)、D管理戦略評価(MSE: Management Strategy Evaluation 候補となる管理戦略(A〜Cで構成)の案を、資源の加入状況や自然死亡率等、正確にはよくわからないことについての様々なシナリオの仮定の下、コンピュータでシミュレーションし、不確実性を踏まえたうえで、それぞれの管理戦略案が目標に対してどのような成果をもたらすか評価するもの)、E監視戦略(monitoring strategy 管理基準値に対する資源の動向を監視するための戦略)、F資源回復行程(メバチのみ)で構成される漁獲戦略の導入に向けた議論が活発になってきている。この背景には、資源評価には大きな不確実性がついてまわるということが広く認識されてきたことがある。実際の観測が難しいとされる親子関係や自然死亡係数などの設定の違いにより、資源評価結果が大きく異なることがある。また、最新の資源評価結果が過去の結果と大きく変わり、議論の余地が大きくなった場合に、管理方策が恣意的に変更されてしまわないように、管理手続きを事前合意する必要性が認識され始めたことも一因にある。WCPFC第11回年次会合で、設立に関する保存管理措置(CMM2014-06)が採択され、第12回年次会合で作業計画が決定された。WCPFCにおける漁獲戦略の検討状況を表2に示す。なお、WCPFCも含む、近年のまぐろ類のRFMOにおけるMSEの進捗状況についてはNakatsuka(2017)が詳しい。


メバチ(中西部太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
13.4万〜16.3万トン
最近(2015)年:13.4万トン
平均:15.4万トン(2011〜2015年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
1.7万〜2.2万トン
最近(2015)年:17.4万トン
平均:2.0万トン(2011〜2015年)
管理目標 検討中
資源の状態 MSY=10.8万トン
SB2008-2011/SBF=0=0.20
SB2008-2011/SBMSY=0.94
C2012/MSY=1.45
レファレンス・ケースの値
管理措置 (a) まき網漁業(熱帯水域)
・FAD操業の段階的な規制強化
・島嶼国以外のメンバーが保有する隻数の凍結
(b) はえ縄漁業
・メバチの漁獲量を2001〜2004年の平均値から40%削減(2014年から段階的に実施)
管理機関・関係機関 WCPFC、SPC
最新の資源評価年 2014年
次回の資源評価年 2017年

執筆者

かつお・まぐろユニット
熱帯まぐろサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

佐藤 圭介


参考文献

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