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14 キハダ インド洋

Yellowfin Tuna, Thunnus albacares

                                                           
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最近の動き

2016年11月にインド洋まぐろ類委員会(IOTC)熱帯性まぐろ作業部会で実施された資源評価(前年実施のアップデート)に基づき、12月の同科学委員会において、資源は前年に引き続き過剰漁獲、乱獲の状態にあることが確認された。また、2015年の資源評価結果・勧告に基づき、2016年5月のIOTC年次会合ではキハダの漁法別漁獲量制限を含む管理措置を採択した。過剰漁獲の原因は、2012年以降ソマリア沖の海賊活動がなくなり、それに伴い全漁業の漁獲量が急増したことによる。


利用・用途

刺身や缶詰原料などが主な利用用途である。


図1a

(a) EUまき網漁獲努力量分布図、円グラフの赤、緑、青、紫はそれぞれ第1〜第4四半期を表す。

図1b (b) まぐろはえ縄漁場の変化


図1. ソマリア沖海賊問題がまぐろ漁場に与える影響(海賊問題がなかった2007年(黄枠)、海賊の影響が見られる2008〜2011年(赤枠)、海賊の影響がなくなった2012〜2014年(緑枠))
(a) 上図:まき網漁場 (b) 下図:はえ縄漁場図、緑色の影は海賊活動が多いと考えられる場所。


図2

図2. インド洋キハダの国別漁獲量(1950〜2015年)(IOTCデータベース:2016年9月)


図3

図3. インド洋キハダの漁法別漁獲量(1950〜2015年)(IOTCデータベース:2016年9月)


図4

図4. インド洋キハダのFAO海域別漁獲量(1950〜2015年)(IOTCデータベース:2016年9月)
西インド洋(FAO海域51)、東インド洋(FAO海域57)


図5

図5. インド洋キハダの漁法別漁獲量の分布(2015年)(IOTC 2016a)
LL:はえ縄、FS:まき網素群れ、LS:まき網付き物、BB:竿釣り、OT:その他


図6

図6. インド洋キハダの漁法別漁獲重量組成(縦軸は割合、横軸は年)


図7

図7. インド洋キハダの国別漁獲重量組成(縦軸は割合、横軸は年)


図8

図8. 日本のインド洋まぐろはえ縄漁業におけるキハダの四半期別平年漁況(1994〜2002年)(西田ほか 2010)
【HSI: Habitat Suitability Indexによる推定】


図9

図9. インド洋西部EUまき網漁業におけるFADs操業と素群れ操業で漁獲されるキハダの体長分布(1982〜2001年)(Fonteneau et al. 2002を一部改変)


図10

図10b

図10. ダイポール現象がない平年の場合(左)と正のダイポール現象(右)における水温躍層水深・クロロフィル量(+ 増加、- 減少)の状態とキハダ分布変動の関係。下表は、ダイポール現象と漁海況(カツオも含む)の関係のまとめ(Marsac and Nishida 2007改変)。
(*)負ダイポール現象の場合には、平年における海況及び漁況がより顕著になる。


図11

図11. 気候変動(正負ダイポール現象・エルニーニョ現象)が、西インド洋のまぐろはえ縄・まき網漁業のキハダ漁況に与える影響(Marsac and Nishida 2007)まき網漁業(左)、はえ縄(右)。


図12

図12. 西部熱帯インド洋においてキハダ大量漁獲があった2003〜2006年に、大量発生した2種の餌生物(左:シャコ類と右:ワタリガニ類の一種で、それぞれまき網・はえ縄で漁獲されたキハダの胃内容物に多く見られた)


表1

表1. 最新(2016年)の資源評価で使用された体長−体重関係
A: Montaudoin et al.(1990)
B: Multilateral catch monitoring Benoa(2002-04)(IOTC database)
C: ICCAT(1990) ICCAT. Field Manual(Appendix 4: Population parameters for key ICCAT species. Product Conversion Factors)


図13

図13. インド洋キハダの主要な分布域


図14

図14. キハダ資源評価で使用された成長曲線(Fonteneau 2008)


図15

図15. 第18回熱帯まぐろ作業部会(2016年)に資源評価で使用された年齢別自然死亡率(M)(黒実線)(X軸は四半期スケール)(Langley 2015)
Baseは資源評価ベースモデル用、MlowはSS3感度解析に用いられた低い値。


図16

図16. SS3に使用された4海域における四半期別標準化CPUE(日台韓複合CPUE:赤線)


図17

図17. SS3による資源評価結果(神戸プロット)(IOTC 2016)


表2

表2. Fと産卵親魚資源量(SSB)に関するリスク解析結果(Kobe II)
(2015年の漁獲量を増減させた場合3・10年後にF・SBの各MSYレベルを維持できなくなる確率(%)、SS3解析に基づく)


附表1

附表1. インド洋キハダの国別漁獲重量(1950〜2015年)(トン)(IOTCデータベース:2016年9月)
*** 操業なし


附表2

附表2. インド洋キハダの漁法別漁獲重量(1950〜2015年)(トン)(IOTCデータベース:2016年9月)
*** 操業なし


附表3

附表3. インド洋キハダの海域別漁獲重量(1950〜2015年)(トン)(IOTCデータベース:2016年9月)
西インド洋(FAO海域51)、東インド洋(FAO海域57)


漁業の概要

インド洋キハダの国別・漁法別・FAO海域別漁獲量(1950〜2015年)を図2〜4及び附表1〜3に示した。インド洋におけるキハダの主漁場は、南緯10度以北、モザンビーク海峡付近及びアラビア海である(IOTC 2004)(図5)。西インド洋でフランス及びスペインのまき網漁業が本格的に開始する前の1983年までは、キハダ総漁獲量は最大9.2万トンであり、はえ縄漁業による漁獲が50%以上であった(図6)。まき網漁業が本格的に開始した1984年から総漁獲量は急増し、1988年には20万トンを超えた。1993年にはアラビア海で台湾による大量漁獲があったため40万トンに達し、その後2002年までは32万〜37万トンと比較的高いレベルで推移した。

また、2003〜2006年にかけて、西インド洋熱帯域においてまき網漁業(主に素群れ操業)、はえ縄漁業及び小規模漁業による大量漁獲があり、2004〜2005年にはアラビア海で台湾のはえ縄漁業による2度目の大量漁獲があった。これにより、キハダの総漁獲量は2003〜2006年に40万〜50万トン台へと急増し、2004年に53万トン(過去最大漁獲量)を記録した。しかし、その後2007〜2011年には漁獲量が27万〜33万トンへと急減した。この漁獲量急減の主な原因は、ソマリア沖海賊の活動範囲が拡大したことにより、まき網船・はえ縄船が操業を他の大洋もしくはインド洋の別の海域へ移動したためである。2012年には海賊活動がなくなり漁獲量は40万トンと、2011年(33万トン)より大きく増加し、その後はほぼ横ばいである。2012年の増加は全ての漁法によるものである(図1)。

最近5年間(2011〜2015年)の漁法別漁獲量は、EU(主にスペイン・フランス)によるまき網漁業(西部インド洋)が35%、台湾、インドネシア、日本によるはえ縄漁業が16%、流し網漁業(主にイラン、オマーン、スリランカ)が16%、竿釣り漁業(主にモルディブ)が5%、そしてその他の漁業が28%となっている(図6)。また、総漁獲量の約半分(49%)は、沿岸国・島嶼国における小規模漁業(流し網・竿釣りなど)で漁獲されている。1994年以来、中近東諸国(イラン、オマーン、イエメン、パキスタン)のまき網及び流し網による漁獲量が増加している。海域別では、西インド洋(FAO海域51)と東インド洋(FAO海域57)における平均漁獲量の割合は77%及び23%である(図4、附表3)。

2003〜2006年の西部熱帯インド洋域及びアラビア海におけるキハダ大量漁獲の原因としては、次の4点が考えられ、それらが複合的に絡みあって発生したとみられる(Nishida et al. 2005、西田ほか 2006)。(a)強い季節風により特定海域で湧昇流が強くなり、基礎生産量(クロロフィル量)が急増し、キハダの餌生物(まき網漁業ではシャコ類、はえ縄漁業ではワタリガニ類など)が大量に発生した(図12)。(b)湧昇流によりその海域の水温躍層が浅くなりキハダが浅い水深に集中した。(c)好漁の情報を入手したはえ縄、まき網船が集中した(過剰な漁獲努力量の発生)。(d)卓越年級群による加入量が増加した。しかし、卓越年級群の影響は少ないという報告もある(藍ほか 2007)。


【はえ縄漁業】

はえ縄漁業の漁獲量は1950年から徐々に増加したが、1991年までは9万トン以下であった。1992年に漁獲量が急増し14万トン弱となった。1993年にはアラビア海における台湾船による大量漁獲で過去最大の20万トンを記録した。その後は漁獲量が急減し、1994〜2003年には9万〜13万トンで推移している。西部熱帯インド洋で大量漁獲のあった2004〜2006年は11万〜16万トンとなり、2005年には過去2番目に高い16万トンとなった。しかし、2007年より急減し2010年には5.1万トンとなり、1988年以来23年間で最低レベルとなったが、それ以降増加し、2015年には6.8万トンとなった(附表1)。。

1952年から1968年までは、日本のはえ縄漁業によるキハダの漁獲がインド洋全体の過半数を占めていた。その後の韓国、台湾のはえ縄船の台頭、1980年代後半からのインドネシア及びNEI(Not Elsewhere Included:漁獲国不明)のはえ縄船の増加、さらに1984年からEUのまき網漁業及び1990年代から中近東の流し網漁業の台頭により、最近5年間(2011〜2015年)の日本の漁獲量ははえ縄・まき網を含めて総漁獲量のわずか1.0%にまで落ち込んだ(図7)。キハダの四半期別好漁場域を、日本のはえ縄船CPUEに漁場形成に関係する種々の環境要因を取り入れHSI(Habitat Suitability Index)により推定した(図8)(西田ほか 2010)に示した。


【まき網漁業】

まき網漁業の操業形態は大きく2つに分けられる。1つは主に人工浮き漁礁(FADs)についた魚群を対象とする操業で、カツオやメバチ若齢魚と群れをなす30〜80 cm(体長組成のモードは50〜60 cm)の若齢魚及び80〜160 cm(体長組成のモードは110〜120 cm)の大型魚を漁獲する(図9)。もう1つは素群れを対象とする漁法で、自由に遊泳しているキハダ単一群もしくはカツオとの混合群を漁獲し、80〜160 cm(モードは120〜130 cm)の大型キハダを主に漁獲する(図9)。EUまき網船では、2010〜2014年におけるFADs操業は全操業の63〜79%を占める(Chassot et al. 2015)。

インド洋における日本のまき網漁業は、1957年からまき網船1〜2隻が1980年代半ばまで主に東インド洋で操業していた。1988年以降は、主に東インド洋で漁船数が増加し最大時には11隻(1991〜1994年)となり、キハダの漁獲量は1万トンを超えた。また、1977年から2012年まで、旧:海洋水産資源開発センター及び旧:水産総合研究センター開発調査センターの調査船「(新・旧)日本丸」が、2013年以降は同センター(現:水産研究・教育機構開発調査センター)調査船第一大慶丸が主にインド洋東部で試験操業を行っている。1994年以降まき網漁船数は徐々に減少し、2010〜2014年には日本丸もしくは第一大慶丸の試験操業1隻のみであったが、2015年には当業船も加わり計3隻に増加した。その間(2010〜2015年)のキハダの漁獲量は95〜481トンである。


【気候変動がキハダ及びカツオ漁況へ与える影響】

インド洋において、気候・海洋変動を引き起こすものの一つにダイポール現象(Marsac and Nishida 2007)がある。ダイポール現象がない平年の場合(図 10左)、西インド洋では、ソマリア沖湧昇流により水温躍層が東部に比べ深く、クロロフィル量も多くなり、キハダのよい漁場が形成され、まき網、はえ縄漁業ともによい漁況となる(図 11)。カツオ(まき網漁業)の場合も同様で、平年では西インド洋が東インド洋に比べ漁況がよい。しかし、正のダイポール現象が発生すると、インドネシアのスマトラ沖で東風が強まり、インド洋東部の表層付近にある暖かい海水が西に運ばれ、それを補うように下層から表層にクロロフィルなどの基礎生産量の高い冷たい海水が上昇し、東部で海水温が低くなる。そのため、キハダは生息環境のよい東部へ移動するので、まき網(キハダ)の漁況は東部で良く西部で悪くなる(図 10右)。また、カツオ(まき網)の場合には、東部で冷水が卓越するので漁況は極めて悪くなる。一般に気候変動(ダイポール現象及びエルニーニョ・ラニーニャ現象)は、漁具の深さを調整できるはえ縄漁業(キハダ・メバチ)には影響が少ないが、まき網漁業の場合にはその影響が顕著である(図11)が、インド洋では、過去120年間にダイポール現象とエルニーニョ現象が同時に出現したり、一方のみが独立して出現したりして、両者は不規則に発生しており、その因果関係は未詳であるとしている(Marsac and Nishida 2007)。最近の研究では、エルニーニョ・ラニーニャ現象は、20か月前に発生したインド洋ダイポールモード現象(負・正)にそれぞれ関係していることを示唆している(Izumo et al. 2010)。


生物学的特徴

【分布】

キハダはインド洋の熱帯及び亜熱帯域に広範に分布するが、はえ縄漁獲データからは、西インド洋において南緯40度付近にまで分布している(図13)。通常は大きな魚群を形成しており、30〜50 cmの若齢魚はカツオや若齢のメバチとの混合群を形成し、熱帯域の表層に分布が限られているのに対し、90 cm以上の個体はより広い海域の表層から水温躍層付近にまで分布する。50〜80 cmの個体は公海域におけるまき網やはえ縄船で漁獲されることは稀であり、その生態は明らかになっていない。しかし、この体長幅(50〜80 cm)の個体がアラビア海の小規模漁業で多く漁獲されることが知られていることから(Ariz et al. 2002)、アラビア海が中型個体の索餌域ではないかと推測され、標識放流やオマーンなどでの体長測定により本種の回遊経路が解明されつつある。

キハダの分布深度に関して、インド洋では直接的な観察例が海洋水産資源開発センター(1985〜1988年)、Mohri and Nishida(2002)、Xu et al.(2006)ほかにより報告されており、表層及び水温躍層付近に多く分布し、また溶存酸素濃度2.0 ml/Lがその分布の限界となっていると推定されている(Marsac 2002、Romena and Nishida 2001)。


【系群構造】

インド洋における本種の系群構造は明らかではない。はえ縄漁業情報の解析によると、本種はインド洋の東西でCPUE時系列変動(日本・韓国・台湾)、成魚CPUE時系列変動(日本)、体長データの変動係数(日本)において統計的に有意な差があるが(Morita and Koto 1971、Nishida 1992)、DNA解析では別系群の存在を示す証拠は得られていない(Nishida et al. 2001)。資源評価を行う際には、単一系群として扱われている。


【産卵】

キハダの産卵は12〜1月に赤道域(赤道〜南緯10度)で行われるが、主な産卵海域は東経75度以西であるとされている(IOTC 2014)。50%成熟体長は100 cm(3歳)と推定されており(IOTC 2014)、当歳魚はまき網による流れ物操業で7月に漁獲され始める。キハダでは大型の個体で雄の比率が高くなることが知られているが、インド洋では140 cm以上でその傾向が認められる(IOTC 2014)。


【食性】

食性に関し、本種の胃中には魚類や甲殻類、頭足類等幅広い生物が見られ、それほど選択性はないようである。仔稚魚期には、魚類に限らず多くの捕食者がいるものと思われるが、あまり情報は得られていない。遊泳力が付いた後も、まぐろ類を含む魚食性の大型浮魚類による被食があるが、50 cm以上に成長すれば、外敵は大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に限られるものと思われる。1990年代後半を境にまき網で漁獲されるキハダなど表層まぐろ類・小型浮魚類の食性が魚類からシャコの一種のNatosquilla investigatoris(図12左)へと大きく変化した(Potier et al. 2007)。これは、西部熱帯インド洋海域で2003〜2006年にキハダ大量漁獲があった時に大量に発生し、まき網で漁獲されたキハダの胃中に多く発見された。一方、はえ縄漁業で漁獲されるまぐろ類の成魚の胃中にも同様な傾向が見られるが、その程度は低い。はえ縄漁業で漁獲されたキハダの胃内容物には、ワタリガニの一種であるCharybdis edwardsi(図12右)がむしろ多くみられた(Nishida et al. 2005、西田ほか 2006)。日本のはえ縄漁師の話では、ワタリガニが大量発生して漁具、漁船にまで付着したほどであったという。同じ漁場でも、まき網、はえ縄漁業で漁獲されるキハダの餌生物の種類は異なっており、それぞれの餌生物の遊泳水深が異なるためと考えられる。まき網漁業では、素群れとFADs(付き物操業)操業で漁獲されたキハダの胃内容物は異なり、後者は空胃の状態が多い。これはキハダがFADsを離れてから索餌行動するのでFADs周りでは索餌しないためと見られる。


【成長・寿命】

成長に関して、2008年のIOTC第10回熱帯まぐろ作業部会で標識再捕データから推定された成長式の拡張モデルを基にした成長曲線が新たに推定され(Fonteneau 2008)、同年及び2012年、2015年、2016年の資源評価に使用された(図14)。また、2012年の第14回熱帯まぐろ作業部会では、耳石日輪及び標識データに基づく新たな成長式も報告された(Eveson et al. 2012)。本種の寿命は正確にはわかっていないが、年齢査定の結果や成長が早いことから、メバチより短い7〜10年であろうと考えられている。


【体重-体長関係】

IOTCの熱帯まぐろ作業部会では、表1にある漁具別体長体重関係(IOTC 2016a)が資源評価などに用いられている。本関係と上記成長式により、体長・年齢別漁獲量が推定され年齢(体長)別資源評価の基礎情報として用いられている。


【自然死亡係数(M)】

インド洋における本種成魚(2歳以上)の自然死亡係数(M)に関し、西田(1991)はHeincke(1913)の方法により0.725と推定した。年齢別のMについて、2016年の第18回熱帯まぐろ作業部会では標識データにより推定されたもの及びWCPFC、IATTCで使用されたものの中間の値が用いられた(図15)。


資源状態

2016年のIOTC第18回熱帯まぐろ作業部会では、SS3(統合モデル)(Langley 2016)及びBiodyn(Biomass dynamic model)(Merino et al. 2016)を用いて資源評価が行われ(SS3は原則として前年実施資源評価のアップデート)、SS3の結果が管理勧告に、Biodynは参考情報(Supporting evidence)として用いられた。SS3では、時間単位は四半期、漁業(fleet)は25種類(はえ縄漁業、まき網漁業付き物操業、まき網漁業素群れ操業及びその他の沿岸漁業をそれぞれ細分化)として資源評価が行われた。資源量指数として、それまで使用されてきた日本はえ縄CPUEに代わって日台韓はえ縄漁業複合標準化CPUE(四半期・エリア別)が使用された(図16)。また、はえ縄選択曲線をフラットトップ型、自然死亡率は2012年資源評価時のものとWCPFC・IATTCで用いられているものの中間とし、標識混合期間(標識魚が非標識魚と混合する期間)を3四半期、steepnessを0.8とした。その結果、資源量は増減を伴う減少傾向で、最近年は減少している。MSYは42.2万トン(80%信頼区間:40.6万〜44.4万トン、前回42.1万トン)、F2015/FMSYは1.11(0.86〜1.36、前回は1.34)、SSB2015/SSBMSYは0.89(0.79〜0.99、前回は0.66)と推定された。なお、Biodynによる結果はSS3によるものと比較的類似していた(乱獲及び過剰漁獲)。

現状の資源状態(2015年)は乱獲及び過剰漁獲にある(図17)。漁獲量は、近年ソマリア沖の海賊の影響の減少により急増傾向にあり、最近年は2000年代半ばのピーク時(53万トン)に次ぐ高レベルにある。現状(2015年)の漁獲量を継続すると、3年後及び10年後にそれぞれSSBFMSY(過剰漁獲)になる確率はともに100%かそれに近いと予測された(表2)。


管理方策

キハダ資源に関し、2016年12月のIOTC第19回科学委員会は、SS3により実施された資源評価及びリスク解析(Kobe II)の結果から、10年後に乱獲及び過剰漁獲になる確率がともに40%以下になるためには漁獲量を15%削減する必要があると報告した(IOTC 2016)。また、2016年5月のIOTC第20回年次会合では、2014年にまき網、はえ縄、その他漁法は5,000トン以上、刺し網は2,000トン以上漁獲した国は2017年以降それぞれ15%、10%、5%、10%削減という管理措置が採択された。さらに、まき網船の支援船の数はまき網船の半数を超えず、FAD数は同時に稼働する数が425基、年間の取得数が850基までとした。

なお、現在IOTCでは熱帯まぐろ(メバチ、キハダ)を漁獲対象とする漁船の隻数を2006年水準に制限している。


キハダ(インド洋)の資源の現況(要約表)(*)

資源水準 低位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
33万〜41万トン
最近(2015)年:41万トン
平均:39万トン(2011〜2015年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
0.3万〜0.5万トン
最近(2015)年:0.3万トン
平均:0.4万トン(2011〜2015年)
管理目標 MSY:42.1万トン(80%信頼区間:40.4万〜43.9万トン)
資源の状態 SSB2015/SSBMSY=0.89(80%信頼区間:0.79〜0.99)
F2015/FMSY=1.11(80%信頼区間:0.86〜1.36)
資源状況は減少傾向にあり、漁獲圧・資源量共にMSYレベルを割り込んでいる。
管理措置 一定量以上漁獲した国・漁業の漁獲量削減、オブザーバープログラム(2010年7月より)、漁獲努力量(漁船数)規制、公海における大規模流し網漁業の禁止。共通漁業管理措置についてはインド洋メバチを参照。
管理機関・関係機関 IOTC
最新の資源評価年 2016年
次回の資源評価年 2018年(予定)
(*) 2015年までのデータを使用した資源評価の結果に基づく

執筆者

国際水産資源研究所 業務推進課 国際海洋資源調査員

松本 隆之

国際水産資源研究所 業務推進課

西田 勤


参考文献

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