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10 ビンナガ 北大西洋

Albacore, Thunnus alalunga

                                                           
PIC

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最近の動き

2016年10月に大西洋まぐろ類保存委員会(ICCAT)の科学委員会(SCRS)が開かれ、各国から2015年の漁獲量が報告された。2015年の漁獲量は25,450トンであった。(ICCAT 2016a)。SCRSでは資源状態のアップデートについても報告され、1980〜1990年代にMSYを下回る水準まで減少した資源はその後回復傾向が続いており、最新年(2015年)の資源状態は過剰漁獲ではなく、乱獲状態でもないとされた(ICCAT 2016a)。


利用・用途

主に缶詰原料となっているほか、近海で漁獲されたものは鮮魚としても販売される。また、近年日本のはえ縄船が高緯度域で漁獲したものの多くは、日本において刺身用として利用されている。


図1

図1. 北大西洋におけるビンナガの漁法別漁獲量(ICCAT 2016a)


表1

表1. 北大西洋におけるビンナガの主要国別漁獲量(過去25年分・トン)


図2

図2. 大西洋におけるビンナガの分布と主な漁場


図3

図3. 北大西洋ビンナガの年齢と尾叉長(cm)の関係(Bard and Compean- Jimenz 1980より)


図4

図4. 資源評価に用いられた北大西洋ビンナガの標準化されたCPUE(ICCAT 2016b)
Japan LL:日本のはえ縄(後期)、Ven LL:ベネズエラのはえ縄、Chinese Taipei LL:台湾のはえ縄(後期)、US LL:米国のはえ縄、Spanish BB:スペインの竿釣り


図5

図5. Biodynベースケースモデルから得られた北大西洋ビンナガの1930〜2014年の資源量(上段)、漁獲圧(中段)及び漁獲量(下段)(ICCAT 2016b)
青線はモデルの推定値、赤帯は信頼区間を示す。


図6

図6. Kobe plotで表す北大西洋ビンナガのMSYを基準とした相対親魚資源量(B/BMSY)と相対漁獲係数(F/FMSY)の1930〜2015年における推移(ICCAT 2016b)
黒線:資源状態の軌跡、黒点;年別の資源状態(数字は西暦下2桁を示す)、白点;2015年の資源状態の不確実性を示す。



漁業の概要

北大西洋のビンナガは、ビスケー湾でスペインのひき縄及び竿釣りによって、またアゾレス海域でスペイン及びポルトガルの竿釣りによって古くから漁獲されてきた。はえ縄による漁獲は表層漁業による漁獲よりも小さく、多くを台湾が占める(図1)。これら伝統的な漁法以外にも、1980年代後半以降から、新しい表層漁業である流し網や中層トロールによっても漁獲されるようになった。

北大西洋における年間の総漁獲量は1960年代中頃(約6万トン)をピークに、短い周期の増減を繰り返しながら徐々に減少している(図1)。これらの減少は主としてひき縄、竿釣り及びはえ縄といった伝統的な漁法の努力量の減少による。総漁獲量は1999〜2002年にかけて減少し、2.3万トンまで減少した。その後、表層漁業による漁獲量が増加して、総漁獲量は2006年に3.7万トンにまで回復した。しかし、2007年から表層漁業及びはえ縄の両方の漁獲量が大きく減少し、2009年には1.5万トンとなった。これは1950年以降で最低の漁獲量であった。2010年以降、漁獲量は増加傾向に転じ、2014年には最近5年間で最も多い2.7万トンを記録した。

スペインは北大西洋ビンナガの最大の漁獲国であり、古く(1950年代以前)からひき縄及び竿釣りで利用してきた(表1)。1950〜1980年代に1.5万〜3.5万トン、1990年代には1.3万〜2.6万トンを漁獲した。2000年代には2006年に2.5万トンを記録したが、2001、2002、2009、2011年において漁獲量は1万トンを下回った。2015年は1.2万トンを漁獲している。

フランスのひき縄及び竿釣りは、かつてはスペインと同程度を漁獲していたが、漁獲量は徐々に減少し、1970年代には約1万トンになり、1980年代に漁業が衰退した。フランスは1990年以降それら漁業の代替として流し網及び中層トロールを行い、それぞれ0.2万〜0.3万トンを漁獲した。2005年の漁獲量は過去25年間で最高の0.7万トンを記録したが、2005〜2009年の間、漁獲量は減少傾向を示した。2010年以降は再び漁獲量は増加傾向を示し、2014年は0.6万トンとなったが2015年には0.3万トンに再び減少した。

アイルランドは1998年以降流し網から中層トロールへ漁法を転換し、1999年には0.5万トンを漁獲したが、その後減少し、2003年以降は2か年の例外を除き漁獲量は0.1万トン以下で継続していたが、2011年以降再び増加し、2015年には0.2万トンを漁獲している。

日本のはえ縄は1960年代に1万数千トンを漁獲したがすぐに大きく減少し、1970年以降はクロマグロやメバチの混獲として0.02万〜0.1万トンを漁獲しているに過ぎなかった。2013年における漁獲量は約0.2万トンと過去25年で最も多い漁獲量となったが、翌年以降0.1万トンを割り込み、2015年は283トンを漁獲している。

台湾のはえ縄も日本と同様で、1970〜1980年代に1万〜2万トンを漁獲したが、対象種の変化により減少し、1990年代は0.2万〜0.6万トン、2000年代に入っても減少傾向は続き2007年以降は0.08万〜0.1万トン台の漁獲量となっている。2013年の漁獲量は0.2万トンであり日本同様に過去5年間の平均漁獲量を上回ったが、2014年は0.1万トンと前年を下回った。しかし2015年には0.3万トンと再び増加している。

  

生物学的特徴

大西洋のビンナガは、大型魚の漁獲される海域及び稚魚の分布海域が南北で明瞭に分かれていること、また、標識放流結果においても南北交流の記録がないことから、南北で別々の系群が存在すると考えられている。ICCATでは、北緯5度線を南北両系群の境界として、それぞれを資源管理しており、北大西洋のビンナガはおよそ赤道〜北緯50度の広い海域に分布している(図2)。表層漁業(ひき縄、竿釣り、流し網)は、夏季にビスケー湾を中心とした海域及びアゾレス諸島海域で、索餌群(尾叉長50〜80 cmが多い)を対象としている。これらの魚群は、夏季に表層域を北東方向または北方へ回遊し、冬季には南西方向へ回遊する。近年ビンナガを主対象としたはえ縄は行われていないが、かつては北緯15〜25度で周年にわたり産卵群を、北緯25〜40度で秋冬季に索餌群を漁獲していた。産卵域ははっきりしないが、西部では北緯25〜30度で、中部から東部では北緯10〜20度で稚魚が出現している(西川ほか 1985)。なお、地中海でも産卵が見られる。索餌域は北緯25度以北と考えられる。

食性に関しては、胃内容物から魚類、甲殻類が多く出現しており、そのほかに頭足類も出現している(Ortiz 1987)。捕食者についてははっきりしないが、さめ類、海産哺乳類のほか、まぐろ・かじき類によって捕食されているものと思われる。

資源評価には、第一背鰭棘に見られる年輪を用いた年齢査定(Bard and Compean- Jimenz 1980)によって得られた成長式がよく用いられる(図3)。

     L(t)=124.7(1−e-0.23(t+0.9892))
         L: 尾叉長(cm)、t: 年齢

これによれば3歳で尾叉長75 cm、5歳で93 cm、7歳で104 cmに達する。尾叉長90 cmで50%が成熟するとされている。体長体重関係はSantiago(1993)により示されている。寿命は少なくとも10歳以上と思われる。
     w=1.339×10-5×l3.107
         w: 体重(kg)、l :尾叉長(cm)


資源状態

本資源の資源評価はICCATで行われている。2016年4〜5月にビンナガの資源評価会合が行われた(ICCAT 2016a)。以下に、2016年10月のSCRS全体会合でとりまとめられた報告書(ICCAT 2016b)を中心として資源評価の内容を示す。


【資源評価】

前回2013年の資源評価ではMultifan-CLをベースモデルとし、その他にVPA、ASPIC、Stock Synthesisを比較対象のモデルとして用いたが、今回は新たに親魚資源量動態モデル(Biodyn)を用いて資源評価が行われた(ICCAT 2016b)。資源評価には1930〜2014年のデータを用いた。

前回の資源評価ではCPUEの漁業間での不整合が問題となっていたため、今回の資源評価では、漁業のデータの良質さ(カバーする海域・期間の多さや精度)を考慮し、かつCPUEトレンドの相関から歴史的に類似のCPUEトレンドを示す5種類の漁業(台湾のはえ縄, 日本のはえ縄(1988〜2012年), スペインの竿釣り, ベネズエラのはえ縄、米国のはえ縄)を抽出して用いた。

Biodynの結果では、1930年代から1990年代にかけて資源量は減少し、1980〜1990年代にMSYレベルを下回ったが現在はMSYを上回っている(図5)。また、漁獲圧も1990年代初頭にF/FMSYが1.4と、MSYレベルを上回っていたが1990年代にはMSYを下回った(図5)。ベースケースモデルより推定されたMSYの中央値は37,082トン、B2015/BMSYの中央値は1.36、F2014/FMSYの中央値は0.54であった。過剰漁獲でありかつ乱獲状態である確率(F/FMSY>1、B/BMSY<1)は0%、過剰漁獲ではないが、乱獲状態である確率(F/FMSY<1、B/BMSY<1)は3.2%、過剰漁獲・乱獲状態にない確率(F/FMSY<1、B/BMSY>1)は96.8%と推定された(図6)。

将来予測の結果より、将来の漁獲量が最近5か年(2.4万トン)以上またはTAC(2.8万トン)であった場合、資源量は2014年レベルより増加すると予測された。


【勧告】

2015年の年次会合で採択された勧告では、「Kobe plotの緑の領域,(即ち F/FMSY<1、SSB/SSBMSY>1の状態)に少なくとも60%で資源を維持しつつ、長期間の漁獲量を最大化すること」及び「資源評価によって産卵親魚量がMSY(SSBMSY)を下回っているとSCRSが評価した場合、遅くとも2020年までの可能な限り早い段階で少なくとも60%の確率で資源をMSY水準以上の状態に回復することの2点を設けた。2016年のSCRSでは、この勧告及び2016年の将来予測の結果を受け、漁獲規制ルールに用いる管理基準値としてFMSYを下回るFtarget, BMSYを上回るBthresholdの値を設定することで2015年の委員会勧告の目標を達することができると勧告した(ICCAT 2016b)。


管理方策

1998年までは努力量規制やTACによる規制等の管理措置は講じられてこなかったが、1999年から当該資源を漁獲対象とする漁船を登録し、入漁隻数が1993〜1995年の平均隻数に制限された。さらに2001年からTAC及び国別クォータが設定されるようになった。2013年に行われた資源評価の結果を受け、2014〜2016年のTACは2.8万トンに設定されている。日本については、北大西洋ビンナガの漁獲量が大西洋全体におけるはえ縄によるメバチの漁獲量の4%以下になるよう努力するという規制が課せられている(ICCAT 2014)。2015年の年次会合において、北大西洋ビンナガに漁獲決定ルール(HCR)を導入する勧告が採択された。具体的には管理目標として「Kobe plotの緑の領域,(即ち F/FMSY<1、SSB/SSBMSY>1の状態)に少なくとも60%で資源を維持しつつ、長期間の漁獲量を最大化すること」及び「資源評価によって産卵親魚量がMSY(SSBMSY)を下回っているとSCRSが評価した場合、遅くとも2020年までの可能な限り早い段階で少なくとも60%の確率で資源をMSY水準以上の状態に回復することの2点を設けた。

2016年の年次会合において、2017年及び2018年のTACは現行のTACと同じとするが、2018年の年次会合において2019年及び2020年のTACを検討することとなった。なお、我が国に対しては、メバチ漁獲重量の4%以内に収める努力義務が引き続き適用された。


ビンナガ(北大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 増加*
世界の漁獲量
(最近5年間)
20,039〜26,651トン
最近(2015)年:25,450トン
平均:24,490トン(2011〜2015年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
267〜1,745トン
最近(2015)年:283トン
平均:606トン(2011〜2015年)
管理目標 MSY:37,082トン
資源の状態 B2015/BMSY=1.36 [1.05〜1.78]
F2014/FMSY=0.54 [0.35〜0.72]
管理措置 入漁隻数の制限
TAC:2.8万トン(2017〜2018年)
2019〜2020年のTACは2018年年次会合で決定
日本については漁獲量を大西洋全体におけるはえ縄によるメバチの漁獲量の4%以下とする努力義務
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2016年
次回の資源評価年 2019年
資源の状態における[]は95%信頼限界を示す。

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

越智 大介

国際水産資源研究所 業務推進部 国際海洋資源研究員

松本 隆之


参考文献

  1. Anon. (ICCAT) 2014. Report for biennial period, 2012-13 PART II (2013) - Vol. 1 https://www.iccat.int/Documents/BienRep/REP_EN_12-13_II_1.pdf (2015年3月9日)
  2. Anon. (ICCAT) 2015a. Executive summaries on species. ALB-Albacore. In ICCAT (ed.), Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain, September 28-October 2, 2015). 351pp.  https://www.iccat.int/Documents/Meetings/SCRS2015/SCRS_PROV_ENG.pdf (2015年12月22日)
  3. Anon. (ICCAT) 2015b. Recommendation and resolutions adopted at the 24th regular meeting of the commission. https://www.iccat.int/Documents/08240-15_ENG.PDF(2015年12月22日)
  4. Anon. (ICCAT) 2016a. Report of the 2013 ICCAT north and south Atlantic albacore stock assessment meeting (Madeira, Portugal - April 28-May 6, 2016). 100pp. http://www.iccat.es/Documents/Meetings/Docs/2016_ALB_ REP_ENG.pdf(2016年6月13日)
  5. Anon. (ICCAT) 2016b. Executive summaries on species. ALB-Albacore. In ICCAT (ed.), Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain, October 4-7, 2016). 425pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2016_SCRS_ENG.pdf(2016年10月14日)
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  7. 西川康夫・本間 操・上柳昭治・木川昭二. 1985. 遠洋性サバ型魚類稚仔の平均分布, 1956-1981年. 遠洋水産研究所Sシリーズ12. 遠洋水産研究所, 静岡. 99 pp.
  8. Ortiz de Zarate, V. 1987. Datos sobre la alimentación del atún blanco (Thunnus alalunga) juvenil capturado en el Golfo de Vizcaya. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 26(2): 243-247. http://www.iccat.es/Documents/CVSP/CV026_1987/no_2/CV026020243.pdf (2005年11月10日)
  9. Santiago, J. 1993. A new length-weight relationship for the North Atlantic albacore. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 40(2): 316-319.