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09 ビンナガ インド洋

Albacore, Thunnus alalunga

                                                           
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最近の動き

2016年7月のインド洋まぐろ類委員会(IOTC)第6回温帯性まぐろ作業部会にて資源評価が実施された。その結果に基づき、同年12月の第19回科学委員会は、資源は乱獲状態ではなく漁業も過剰漁獲状態ではないが、資源評価の不確実性を考えて、漁獲量はMSY推定値を上回らないようにする必要があるとした(IOTC 2016c)。


利用・用途

刺身及び缶詰として利用されている。


図1

図1. インド洋ビンナガの国別漁獲量(1950〜2015年)(IOTCデータベース:2016年9月)
NEI:Not Elsewhere Included、FR、CEはそれぞれ冷凍、生鮮を意味する。


図2

図2. インド洋ビンナガの漁法別漁獲量(1950〜2015年)(IOTCデータベース:2016年9月)


図3

図3. インド洋ビンナガのFAO海域別漁獲量(1950〜2015年)(IOTCデータベース:2016年9月)
東インド洋(FAO海域57)、西インド洋(FAO海域51)


図4

図4. インド洋ビンナガの分布とはえ縄漁場


図5a 図5b 図5c

図5. 台湾(上図)、日本(中図)(いずれも年別)及び日台韓複合(下図)(四半期別)はえ縄標準化CPUE(いずれも南部主漁場)(IOTC 2016b)


図6

図6. SS3による資源評価(Kobe Iプロット)の結果(IOTC 2016b)
縦軸と横軸はそれぞれ漁獲死亡係数、産卵親魚量(SS3)のMSYレベルに対する比。


表1

表1. 資源量・漁獲死亡係数に関するリスク解析結果(現漁獲量を増加、減少させた場合、3年後(2017年)及び10年後(2024年)において資源量・FがMSYレベルを維持できなくなる確率)
縦軸と横軸はそれぞれ年、現状(2014年)漁獲量からの増減率。SS3による資源評価結果に基づく。
*現漁獲量(2014年)


附表1

附表1. インド洋ビンナガの国別漁獲量(1950〜2015年)(トン)(IOTCデータベース:2016年9月)
*** 操業なし、NEI:Not Elsewhere Included、FR、CEはそれぞれ冷凍、生鮮の意味。


附表2

附表2. インド洋ビンナガの漁法別漁獲量(1950〜2015年)(トン)(IOTCデータベース:2016年9月)
*** 操業なし


附表3

附表3. インド洋ビンナガの海域別漁獲量(1950〜2015年)(トン)(IOTCデータベース:2016年9月)
西インド洋(FAO海域51)、東インド洋(FAO海域57)


漁業の概要

本資源の漁業は、1950年代前半、日本のはえ縄船により開始した。その後、台湾、韓国のはえ縄船が、それぞれ1954年、1965年から参入した(図1、附表1)。また、1982〜1992年の11年間、台湾は流し網漁業を行ったが、国連の公海大規模流し網漁業禁止決議により1992年で停止した。本資源の漁業では、流し網の行われた11年間と1950〜1951年を除き、漁獲量の9割以上ははえ縄漁業による。台湾のはえ縄漁業の漁獲量は1970年以来、流し網漁業の全盛期(1987〜1993年)及び最近年(2003〜2012年)を除き、総漁獲量の5〜9割を占める。また、2003年以降はインドネシア(大部分ははえ縄)の比率も2013年を除き20%以上と高くなっている(図1〜2、附表1〜2)。

はえ縄漁業の総漁獲量は操業開始以来緩やかに増加し、1958年までは1万トン以下、1997年までは1万〜3万トンであった。1982〜1992年の11年間は、台湾の流し網漁業で最大2.6万トン漁獲され、総漁獲量は3.6万トンまで達したが、流し網漁業を停止した1993年には総漁獲量は2.1万トンにまで減少した。その後、はえ縄漁業の漁獲量が徐々に増加し、2001年には4.6万トン(過去最大)に達したが、その後減少し2003年には2.9万トンになった。2006年から総漁獲量は再び増加し2010年には4.4万トンとなったが、2011〜2013年には3.3万〜3.4万トンと減少した。2014年には4.0万トンに増加したが、2015年(2016年9月現在の暫定値)には3.5万トンに減少した(図2、附表2)。また、1983年からは西インド洋でEUを中心とした大型まき網漁業による漁獲が始まり、1992年に最大3,300トンの漁獲があった(附表2)。西インド洋(FAO海域51)と東インド洋(FAO海域57)における漁獲量の平均的割合は、それぞれ63%及び37%(2015年)である(図3、附表3)。


生物学的特徴

【系群】

インド洋・大西洋・太平洋のビンナガは、血清学的見地からはそれらはかなり異質で、それぞれ別系群と考えられている(鈴木 1962)。特に、体長組成、仔稚魚、分布の特性から、インド洋は単一系群とみられている(Hsu 1994)。ただし、太平洋とインド洋のビンナガはオーストラリアの南側で、インド洋と大西洋のビンナガの分布はアフリカ南端で連続しており一部交流している可能性があるとも考えられている(古藤 1969)。


【分布】

インド洋ビンナガの分布範囲は、北緯5度〜南緯40度である。メバチやキハダが赤道海域を中心に分布するのに対し、本種の主要分布域は南半球の中緯度海域で、北緯5度〜南緯25度が成魚分布域、南緯10〜25度に産卵域、南緯30〜40度に索餌海域があり、魚群の密度が高い。分布の南限や北限は季節によってやや異なる(図4)。

海流はビンナガの分布や漁場形成を左右する最も重要な要因と考えられている。赤道反流の南である南緯10度付近に一種の収束線が形成され、ビンナガ好漁場の北限となっている。


【回遊】

ビンナガはよく発達した胸鰭を持ち、索餌または産卵のために大規模な回遊をする。インド洋における回遊の研究は皆無で、経路などは不明である。


【食性】

ビンナガも他のまぐろ類と同様に、魚類・甲殻類・頭足類を主な餌として、生息環境中に多い餌生物を、主として昼間に無選択的に捕食する。したがって、胃内容物組成は海域や季節によってかなり変化する。西部インド洋では、主にギマ科、ミズウオ科、ホウネンエソ科、アジ科、クロタチカマス科、ヒシダイ科などを捕食する(Koga 1958)。


【産卵】

最近、新たな知見が報告された(Dhurmeea et al. 2016b)。西部インド洋においては産卵は南緯10〜30度で10〜1月に行われ、雌の50%成熟体長は85.3±0.7cm、主産卵期における産卵頻度は2.2日間隔、1尾の抱卵数は26万〜209万粒であるとした。

なお、それまではインド洋においては産卵に関する詳しい知見がなかったため、IOTCにおける資源評価でも太平洋の知見が参照された。西部太平洋のビンナガは、卵巣が200 g以上になると産卵すると考えられ、その最小体長は87 cmである。雄では精巣重量150 g以上のものが成熟個体とみなされ、その最小体長は97 cmである。卵巣卵の直径は成熟期では0.6 mm以上となり、卵巣重量は100〜200 gだが、大型の成熟したものは200 g以上になる。体重20 kg前後の魚体で、1尾の抱卵数は180万〜210万粒である(上柳 1955)。1産卵期中に複数回の産卵が推定される。成熟に達する年齢は5歳あるいはそれ以上である。


【体長・体重関係】

以下の体重(W: kg)・体長(尾叉長 L: cm)の関係式が報告されている。
         Lee and Kuo (1988)
         雄 W=(3.383×10-5) L2.8676
         雌 W=(4.183×10-5) L2.8222


さらに、2016年7月のIOTC第6回温帯性まぐろ作業部会にて最新の研究結果が報告され、海域別・雌雄別に合計12通りの関係式を示した(Dhurmeea et al. 2016a)。


【年齢・成長式】

インド洋のビンナガは、鱗の研究により8歳まで確認されている(Huang et al. 1990)。その他に、脊椎骨、体長組成解析及び近年は耳石によるものも含めて以下の成長式の報告がある。L: 尾叉長(cm)、t: 年齢とする。なお、2016年にIOTCにて実施された資源評価ではChen et al.(2012)及びWells et al.(2013)による成長式(いずれも北太平洋)が用いられた。
         Huang et al. (1990) 鱗
             Lt(cm)=128.13[1-e-0.162[t-(-0.897)]]
         Lee and Liu (1992) 脊椎骨
             Lt(cm)=163.7[1-e-0.1019[t-(-2.0668)]]
         Hsu (1991) 体長組成解析
             Lt(cm)=136[1-e-0.159[t-(-1.6849)]]
         Chen et al. (2012) 耳石(北太平洋)
             Lt(cm) = 103·5 [1-e-0.340(t+0.53)] (雌)
             Lt(cm) = 114.0 [1-e-0.253(t+1.01)] (雄)
         Wells et al. (2013) 耳石(北太平洋)
             Lt(cm) = 124.1 [1-e-0.164(t+2.239)]


【自然死亡係数】

以下2件の報告がある。なお、2016年にIOTCにて実施された資源評価ではLee and Liu(1992)及び南太平洋のもの(0.4で一定)を複合、北太平洋・北大西洋のもの(0.3で一定)もしくは0.25で一定を用いた。
         Lee et al. (1990)     Pauly(1980)の方法により推定。
             M=0.206
         Lee and Liu (1992)     はえ縄データを用い、Z=q*F+Mより推定。
             M=0.2207


資源状態

2016年に開催されたIOTC第6回温帯まぐろ作業部会において、台湾、日本及び日台韓はえ縄漁業複合の標準化CPUEが資源量指数として提示された。台湾と日本のCPUEについて一部期間のトレンドに違いがあり、その原因は本種を漁獲対象としているか否かが関係していると考えられる(図5)。2016年の資源評価では主として複合CPUEを資源量指数として用いて実施した。

資源評価は2014年までのデータを基に、試行された5つのモデルのうち、統合型モデルのSS3(Langley and Hoyle 2016)の結果が採用された(図6)。結果として、F2014/FMSY=0.85(80%信頼区間:0.57〜1.12)、SSB2014/SSBMSY =1.80(1.38〜2.23)及びMSY=3.9万トン(3.4万〜4.4万トン)(資源評価実施時2010〜2014年の平均漁獲量:3.5万トン)であった。これらの推定値から、インド洋のビンナガ資源は乱獲状態及び過剰漁獲状態ではないとされた。また、現状(2014年:資源評価実施時)の漁獲量がこのまま続いても2024年には資源量がSSBMSYレベルを下回る確率は50%以下となった(表1)。


管理方策

2016年12月のIOTC第19回科学委員会は、2016年に実施した資源評価を基に、資源は乱獲状態ではなく漁業も過剰漁獲状態ではないものの、資源評価の不確実性を考えて、漁獲量はMSY推定値を上回らないようにする必要があるとした(IOTC 2016c)。

なお、現在IOTCではビンナガを漁獲対象とする漁船の隻数を2007年水準に制限している。


ビンナガ(インド洋)の資源の現況(要約表)(*)

資源水準 中位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
3.3万〜4.0万トン
最近(2015)年:3.5万トン
平均:3.5万トン(2011〜2015年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
2,276〜3,737トン
最近(2015)年:3,737トン
平均:2,823トン(2011〜2015年)
管理目標 MSY=4.8万トン
(80%信頼区間:2.7万〜7.9万トン)(SS3)
MSY=3.5万トン
(80%信頼区間:2.9万〜3.7万トン)(ASPIC)
資源の状態 資源評価結果によると、資源は乱獲状態及び過剰漁獲状態ではない。現状の漁獲量がこのまま続いても10年後(2024年)には資源量がSSBMSYレベルを下回る確率は40%以下。
資源管理措置 ビンナガを漁獲対象とする漁船の隻数を2007年水準に制限。
管理措置(共通項目) 義務提出データ(15/01漁獲量・漁獲努力量及び15/02漁獲量)、オブザーバープログラム(11/04)ほか。
管理機関・関係機関 IOTC
最新の資源評価年 2016年
次回の資源評価年 2019年(予定)
(*) 2014年までのデータを使用した資源評価の結果に基づく

執筆者

国際水産資源研究所 業務推進課 国際海洋資源研究員

松本 隆之

国際水産資源研究所 業務推進課

西田 勤


参考文献

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  3. Dhurmeea, Z., Chassot, E., Zudaire, I., Cedras, M., Nikolic, N., Bourjea, J., West, W., Appadoo, C., Bodin, N. 2016b. Reproductive biology of albacore tuna (Thunnus alalunga) in the western Indian Ocean. PLoS ONE 11(12): e0168605. doi:10.1371/journal.pone.0168605.
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