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68 アルゼンチンマツイカ 南西大西洋

Argentine Shortfin Squid, Illex argentinus

                                                                       
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最近の動き

我が国いか釣り漁船のアルゼンチン200海里水域(EEZ)内への入漁は、2002年以降の裸用船契約(船舶所有者が船体だけを用船者に貸与する契約)が2006年で切れたこともあり、2007年から引き続き本漁期もなかった。また、公海や英国領フォークランド(マルビナス)諸島周域150海里の暫定保護海域(FICZ)への入漁もなかった。2004年には資源量が激減して資源の枯渇が危惧された。しかし、2005年にアルゼンチン政府の要請を受けて実施した水産庁調査船「開洋丸」による若齢イカの資源調査では資源の回復が示唆され(Sakai et al. 2007)、実際、2005年から急速に資源は回復し、2008年まで極めて高い資源水準を維持していた。2009年漁期には前兆なしに資源水準が急激に悪化したが、2010年漁期以降は増加し、資源は最高水準にある。


利用・用途

漁場が遠隔地にあるため活魚での利用はないが、その他の点では基本的に日本のスルメイカと同様である。肉質がスルメイカよりやや堅いため、刺身の需要は少なく、多くが干したスルメ、さきいか、塩辛等の加工品となる。DNAを用いて量販店及びコンビニエンスストアで販売されている製品を解析した結果、胴肉は一夜干しや乾燥珍味、鰭や足は主に乾燥珍味として利用されていた(若林ほか 2009)。食用以外では、まぐろはえ縄の餌としても利用されてきた。


図1

図1. 各国のアルゼンチンマツイカ漁獲量の変遷(1981〜2013年)(FAO 2015)


表1

表1. アルゼンチンマツイカ主要漁業国の漁獲量(万トン)の変遷(出典:FAO 2015)
チャーター制度が開始された1993年から2006年までのFAOのアルゼンチンの漁獲量には日本船による漁獲量が含まれているため、アルゼンチンの漁獲量は日本船の漁獲量を引いた値とした。2014年以降の総計は推定値(アルゼンチンはSAGPyA 2015より、空欄は未データ)


図2

図2. 漁場の季節的な分布(赤が主分布、黄色が分布可能範囲)


表2

表2. アルゼンチンマツイカの日齢と体長


図3

図3. 夏季産卵群の雌の成長曲線
各点は生まれ月及び幼稚仔期(◇)を示す(Brunetti et al. 1998aより)


図4

図4. アルゼンチンマツイカの分布図


図5

図5. アルゼンチンEEZ及び英国領フォークランドFICZ内での漁獲量と総漁獲量の変遷


図6

図6. 日本のいか釣り漁船のCPUE(トン/日)の経年変化とアルゼンチン調査船による秋冬生まれ群(南パタゴニア系群)の加入量(トン)の経年変化


図7

図7. アルゼンチンマツイカの秋冬生まれ群(南パタゴニア系群)の再生産関係


図8

図8. 表中層トロールで採集された若齢マツイカ


図9

図9. 若齢マツイカの分布と量
左図:2005年の開洋丸調査、右図:1989年の旧開洋丸調査


図10

図10. アルゼンチンの月別漁獲量の変遷(SAGPyA 2015)


図11

図11. 南緯41.5度、西経57.5度における5月の表面水温と翌年の日本のいか釣り漁船CPUEの変動(左図)及びその相関関係(右図)(Sakai et al. 2008)


図12

図12. 本種の季節発生群(系群)と南緯44度を境とした資源分割管理


図13

図13. 実際の相対逃避率(%)及び絶対逃避量(万トン)の年推移
青の横棒は相対逃避率40%のライン、赤色の破線は絶対逃避量4万トンラインを示す(Brunetti et al. 2003より)


漁業の概要

本種は、南西大西洋のアルゼンチンEEZ内、公海域及び英国領フォークランドFICZ内にまたがって主漁場を形成する資源(ストラドリングストック)である。近縁種のアメリカオオアカイカ、スルメイカと並び世界最大のイカ資源の一つであり、日本、韓国、台湾、アルゼンチン、さらに最近では中国が主要な漁業国である。1970年代には、沿岸国であるアルゼンチンとウルグアイによって年間数千トンが漁獲されていたにすぎず、その大半はアルゼンチン北部の大陸棚上でメルルーサ類を目的としたトロール漁業の混獲物であった。1980年代に入ると本種を対象とした漁業は急速に発達し、ポーランド、日本等の遠洋漁業国のトロール船による本格的な操業が開始され、漁獲量は20万トンから30万トンへと増加した。1984年には台湾、1985年には日本と韓国のいか釣り漁船が操業を開始し、1987年には十数か国の漁船が操業することになり、総漁獲量は50万トンを超えた(図1)。この1987年には、日本の漁獲量も前年比で約3倍の19万トンに増加した(表1)。この年以降、各国による本種の総漁獲量は、90万トン近くに急増した1997年までは40万〜60万トン前後で比較的安定していた。日本の漁獲量も1990年代は約10万トン前後を維持しており、1999年にはこれまでで4番目に高い漁獲量を記録した。しかし、それ以降は各国における総漁獲量の減少とともに日本の漁獲量も減少に転じ、2005年にはわずか約6,000トンへと激減した。一方、沿岸国のアルゼンチンの漁獲量は1990年代中頃から急増を始め、1997年には30万トン弱に達したが、2002年以降10万トン前後に減少した。その後漁獲量は増加し、2006年から再び20万〜30万トンに達したが、2009年に7.3万トンと激減し、それ以降は10万トン以下で推移していたが、2013年より急激に増加し、今年度まで高い水準を継続している。

いか釣り漁船による本種の主漁場は、英国領フォークランドFICZ内、アルゼンチンEEZ内及び水深200 m等深線が公海に張り出した南緯45度付近の大陸棚縁辺のわずかな海域である。FICZ内における我が国を初めとする遠洋漁業国のいか釣り漁船による操業は、フォークランド政府に入漁料を支払って許可されてきた。一方、アルゼンチンEEZ内での操業は、1993年からチャーター制度によって入漁料・漁業振興負担金・現地水揚げ割合等の条件付で入漁が許可されてきたが(酒井 2001)、2002年以降は、我が国を含めた外国いか釣り漁船のアルゼンチンEEZ内での操業は厳しい制約を受ける裸用船契約による入漁制度となった。2006年漁期の入漁は、アルゼンチンのフラッグでの形式用船方式でわずか5隻のみとなり、2007年以降の入漁はない。

本種の盛漁期は、南半球の夏から秋(2〜6月頃)で、漁場は季節とともに南北に移動する。漁獲対象となる親イカは、春には南緯36〜45度の大陸棚縁辺部とその斜面にかけて分布し(図2)、しだいに南方へと回遊する(Hatanaka 1988)。夏は南緯45〜52度の大陸棚上に分布が見られ、大陸棚斜面への分布の移動が観察されている。秋には南緯38〜52度の南北に広い範囲の大陸棚縁辺部とその斜面にかけて分布し、しだいに大陸棚斜面から深みにかけての北東方向への移動を開始する(Hatanaka 1986)。冬は南緯37〜42度の縁辺部及び大陸棚斜面に分布し、北東への移動が示唆される。


生物学的特徴

本種の寿命は、他のスルメイカ類と同じく1年であり、成熟して産卵した後には死亡する。魚の耳石に相当する平衡石には輪紋が観察され、この輪紋は日輪であることがわかっている。本種の成長は、日齢と外套長との関係で表される。孵化後、およそ100日目以降から急速に成長し、成長した親イカは外套長がおよそ25 cmとなり(図3)、35 cm以上に達するものもある。加入前の外套長5〜10 cmの幼イカの日齢は150〜200日で、漁獲対象となる親イカの日齢は200日から寿命近くの350日までの範囲に及ぶ(表2)。本種は、産卵期と産卵場及び回遊分布経路の違いにより3〜4の季節発生群が想定されている。このうち、南半球の秋〜冬に産卵孵化する秋冬生まれ群は国際漁業にとって最も重要であり、索餌回遊期にはアルゼンチン沖の大陸棚上の南部に広く分布する。この南部海域の大きな資源をアルゼンチンでは「南パタゴニア系群」と呼び、その他の比較的小さな資源で北部に出現する「北ブエノス系群」、「春季産卵群」及び南緯46〜48度の沿岸寄りの陸棚上に出現する小型の「夏季産卵群」とは区別して扱っている(Brunetti et al. 1998b)。

本種の産卵に関しては、孵化間もない幼生が秋〜冬(3〜8月)に南緯35〜36度の大陸棚斜面域に出現分布することから(Brunetti and Ivanovic 1992)、主産卵場は同海域で、主産卵期は秋〜冬であると考えられている。このことは、南部海域で漁獲対象となる秋冬生まれ群(南パタゴニア系群)の平衡石を用いた日齢分析で推定された生まれ月からも検証されている。また、これ以外にも南緯43度の沿岸から沖合で12〜3月に仔稚が出現し、夏季産卵群の産卵場となっている。マイクロサテライトマーカーを用いた雌に植え付けられた雄の精莢(精子の入ったカプセル)の個体識別結果から、夏季産卵群は多い個体では5個体もの雄の精莢を持っており、精莢の植え付けられた状態から、多回産卵することが示唆されている(若林ほか 2007)。

本種の食性は、北に分布する群(北ブエノス系群等)ではハダカイワシ等、中深層性魚類を主体とするのに対して、南に分布する群(南パタゴニア系群等)ではオキアミ類や端脚類が主体となり、魚食は稀である(Ivanovic and Brunetti 1994)。

本種は、若齢時にメルルーサ(アルゼンチンヘイクMerluccius hubbsi)、ノトセニア(オオノトセニアPatagonotothen ramsayi)等の底魚に捕食されている(Brunetti et al. 1998)。また、ワタリアホウドリ(Diomedea exulans)等の海鳥による親イカの捕食が報告されているが、多くが漁船から投棄されたものであると考えられる(Xavier et al. 2003)。

本種の食性は、北に分布する群(北ブエノス系群等)ではハダカイワシ等、中深層性魚類を主体とするのに対して、南に分布する群(南パタゴニア系群等)ではオキアミ類や端脚類が主体となり、魚食はまれとなる(Ivanovic and Brunetti 1994)。

本種は、幼イカ時にメルルーサ(アルゼンチンヘイクMerluccius hubbsi)、ノトセニア(オオノトセニアPatagonotothen ramsayi)等の底魚に捕食されている(Brunetti et al. 1998b)。また、ワタリアホウドリ(Diomedea exulans)等の海鳥による親イカの捕食が報告されているが、多くが漁船から投棄されたものであると考えられる(Xavier et al. 2003)。

本種は索餌場が主な漁場となり、主な産卵場と漁場とは分布が異なる(図4)。


資源状態

1980年代後半から1997年までのマツイカ総漁獲量は50万トン前後で安定していた(図5)。しかし、1999年にこれまでの最高水準となる99.9万トンに達してから総漁獲量は急激に減少に転じ、2004年には17万トンと激減した。その後資源は急速に回復し、2008年までは高水準を維持していたが、2009年に資源水準は急激に悪化し、総漁獲量は26万トンにまで減少した。アルゼンチンEEZ内の正確な漁獲量が把握されるようになった1993年以降では、同国EEZ内と英国領フォークランドFICZ内でのマツイカ漁獲量は常に前者の方が高いが、漁獲量の毎年の増減傾向はほぼ同様であった。2009年以降のアルゼンチンEEZ及び英国領フォークランドFICZの漁獲量は、2009年に7.1万トンにまで激減した後、2013年には33.9万トン、2014年には48.1万トン、2015年には現在までで27.6万トンと増加傾向にあり、この値から推定した総漁獲量も増加している(図5)。アルゼンチンEEZ及び英国領フォークランドFICZの漁獲量を指標として資源水準と動向を見た場合、1993〜2014年の20年間の最高漁獲量(45.5万トン)と最低漁獲量(6.8万トン)の範囲を3等分し低位、中位、高位とすると、2014年の資源水準は48.1万トンと過去最高にせまる高位であり、過去3年間の漁獲量の動向から、資源の動向は増加と判断した。

資源水準の経年変化を見ると、日本のいか釣り漁船のCPUE(トン/日)は、1980年代中頃から毎年の多少の変動を含みながら増加傾向にあり(図6)、2000年漁期には漁船あたり1日30トンを超える高いCPUEを記録した。しかし、その後CPUEは急激に減少し、2004年漁期には統計の整備された1986年以降で最も低い水準(漁船あたり1日0.6トン以下)にまで低下した。なお、2005年漁期、2006年漁期にはCPUEは連続して増加しており(図6)、日本漁船のCPUEの変化から資源の回復がうかがわれた。後述するように、国際連合食糧農業機構(FAO)の統計資料やアルゼンチンの漁獲統計から、この回復の予測は正しかったことがわかった。

いか釣り漁業は、パッチ状となるイカの群を探索するため、そこから推定される資源量指数と呼ばれるCPUE値は、漁場形成と密接に関連する海洋構造に影響される。さらに、探索技術や漁獲の年々の進歩も考慮しなければならない。したがって、商業データによるCPUEの値では本当の資源量や変動の傾向を正しく把握することが難しい。そこでアルゼンチン政府は、最も重要な資源である南パタゴニア系群の毎年の加入量を漁業と独立した方法によって推定するため、1992年から自国EEZ内で英国と共同で着底トロールを用いた掃海面積法による調査を始めた。一方、英国FICZ内では比較的古くから同海域で許可されて入漁して操業する全てのいか釣り漁船から週単位で報告される日別操業データのCPUEを用いて、Leslie-DeLury法によって加入量の推定を行っている。

英ア共同の着底トロール調査結果によると、毎年の漁期初めの加入量は、1992年には比較的高い水準にあったが、その後減少し、1994年から1996年にかけて低水準となった(図6)。そして、資源水準は急速に回復に転じて1999年にピークに達した。しかし、翌年には急激に資源量は減少を始め、最近では1994〜1996年と同様にきわめて低い水準期にあり(酒井 2004)、特に2004年には南方資源の加入量は激減し、夏季産卵群を含めた加入尾数は2.1億尾と推定され、翌年の資源のために取り残された産卵親イカ量も計算上はゼロと見積もられた(Brunetti et al. 2004)。

秋冬生まれ群(南パタゴニア系群)の産卵親イカ量と翌年の加入量との間には、周期的な変動が観察され、一定の再生産関係(親子関係)は見られない(図7)。1998年漁期には産卵親イカ量及び加入量ともに高い水準にあったが、1999年漁期には産卵親イカ量は高い水準にあるにもかかわらず、翌年の加入量は低い状態(産卵成功率が低い)へと移行している。2005年までは、産卵親イカ量及び加入量とも低い水準期にあった(酒井 2004)。2004年漁期には翌年に残された産卵親イカ量が4.8万トンと推定され(Brunetti et al. 2003)、今後この低水準にとどまるのか、あるいは回復に向かうのかが注目された。結局、上述したように2004年漁期の加入量は極めて低く、これまでにない危機的な水準に陥った(図7)。翌2005年には若干の資源の回復を見せ、秋冬生まれ群の加入量は12.1万トン(4.7億尾)と推定されたが(Brunetti 2005)、低水準の危機は続いた。

このような資源の枯渇が危惧される中で、アルゼンチン政府の要請により水産庁調査船「開洋丸」による若齢イカの分布調査が実施された(水産庁 2007)。アルゼンチンEEZ内の広大な大陸棚と陸棚斜面に高密度に若齢イカ(漁業加入前の外套長5〜10 cm前後)が分布し(図8)、さらに外洋域に形成される北からのブラジル海流起源の暖水塊張り出しと南からのマルビナス海流起源の冷水塊との前線付近にも若齢イカが分布することが明らかになった(図9A)。ほぼ同様な海域で1989年に旧開洋丸による調査を行った時の若齢イカの分布(図9B)と比べても、2005年の若齢イカの分布は外洋域で際立っていた。陸棚と外洋域とでかなり連続的な分布をしていることから、外洋域からの加入もあることが示唆され、1990年漁期に比べて2006年漁期の方が高水準の加入が見込まれるのではないかと予想された(Sakai et al. 2007)。実際に、2006年漁期始めのアルゼンチンによる加入量調査では前年の約3〜4倍の加入量推定値35.1万トン(20.3億尾)が得られ(Brunetti 2006)、さらに2007年には加入量は63.9万トン(26.1億尾)に増加した(Brunetti 2007)。この結果、実際の沿岸国アルゼンチンの漁獲量は2004年(7.6万トン)から2007年(23.3万トン)にかけて着実に増加したことから(表1)、本資源は枯渇の危機を脱して完全に回復したと判断された。特筆すべきは、2007年は漁獲量だけ見ると前年の2006年(29.2万トン)よりも減少しているが、これは大漁貧乏によってマツイカの国際相場が急落してアルゼンチンの漁船が出漁を見合わせたためである。ここ15年間の秋冬生まれ群の加入尾数及び加入量の平均はそれぞれ16.2億尾及び38.4万トンであり、2007年の加入量推定値(26.1億尾、63.9万トン)はここ16年間の平均値を大きく上回った。さらに、2008年の加入尾数は41億尾と推定された(Brunetti 私信)。上記系群のマツイカの再生産関係も、2008年には獲り残した産卵親イカ量(前年)もその子の加入尾数も右上の高い水準にあった(図7)(酒井 2008)。

このように、本資源は2005年以降に順調に回復を示し、2008年まで高水準の状態が続いた。しかし、2009年漁期に一転して資源水準は急激に低下し、アルゼンチンの調査によると加入量は前年の13%まで落ち込んでしまった(Brunetti 私信)(図6)。漁獲量で見ると、特に南方では壊滅的でありフォークランド海域では漁獲量はほとんどゼロであった。

アルゼンチンの月別の漁獲量の変遷をみると(図10)、2015年の漁獲量は例年通りピークが上半期(2〜4月)にあり、2010年以降増加傾向にあることがわかる。

最近の研究(Waluda et al. 1999)によると、フォークランド海域におけるマツイカに関して、7月におけるマツイカ産卵場の衛星データから得られた表面水温と年明けの漁期における資源豊度との間には負の相関関係が見いだされている。産卵期の表面水温とこの関係を用いれば、次年漁期のおよその資源水準が予想可能となる。一方、我が国いか釣り漁船の漁獲資料を用いた解析では(Sakai et al. 2008)、南緯41.5度、西経57.5度の海域の衛星データから得られた5月の平均表面水温と我が国のいか釣り漁船の全入漁海域におけるCPUE(トン/日)との関係において正の相関関係が見いだされた(図11)。すなわちこの海域では、前年の水温が高ければ翌年のいか釣り漁船CPUEが高くなることを意味する。今後、このような海洋環境を用いて単年性のイカ類の資源量水準を予測する手法は、いか釣り漁船の配船計画ばかりでなく、イカ加工業界やまぐろはえ縄業界の原料や餌の調達に関する情報としても貢献すると考えられる。


管理方策

本資源の大部分はアルゼンチンEEZ及び英国領フォークランドFICZ内に分布し、両政府による資源管理が実施されている。前述したように、本種には3ないし4の季節発生群があるが、管理上は便宜的に南緯44度線で区切って南方資源と北方資源とに分けてそれぞれ異なる管理方策をとっている(図12)。

北方資源(北ブエノス系群及び春季産卵群)は、実質アルゼンチンのみが管轄し、固定した漁期(5月1日〜8月31日まで)と入漁隻数を制限する努力量管理方策を実施している。一方、資源規模の大きい秋冬生まれ群(南パタゴニア系群)を主体とする南方資源は、英ア二国間の南大西洋漁業委員会(SAFC;South Atlantic Fisheries Commission)に基づき、両国が共同で管理(入漁隻数制限、解禁日2月1日、再生産管理)している。本種は単年性(年魚)であり、世代が重複することがないため、ある年の資源はすべて前年の産卵親イカから生まれてきた子である。このため、いわゆる親子関係(再生産関係)が想定されるが、実際にはある漁期に獲り残された親魚量と翌年の加入量との間の再生産関係は希薄である(Csirke 1987)。

しかし、管理の面ではある程度においては再生産関係が成立すると仮定し、「来漁期の資源にまわすための親魚を一定量確保する施策」が採用されている。これを相対逃避率による再生産管理と呼ぶ。南方資源は、この逃避率が一定の40%(経験値)となるように目標値を設けている。目標値に達すると終漁措置をとる等、南方資源ではリアルタイムで漁業をコントロールする管理施策がとられている。

南方資源の主体である秋冬生まれ群については、英ア両国で相対逃避率による資源管理を実施してきた。しかし、毎年必ずしも逃避率40%が実現されてきたわけではない。1994年から1997年にかけて相対逃避率は40%を大きく割り込み(図13)、特に1996年ではわずか11%であった。この時の相対逃避率より得られる絶対逃避量(獲り残した産卵親イカ量)はわずか2.6万トンに過ぎなかった。

このような秋冬生まれ群の絶対逃避量の減少を避けるため、SAFCは2001年に相対逃避率による制限に加え、最低限の親イカ量の確保するための絶対的な逃避量として4万トンを勧告した。なお英国では、SAFCが設立される以前(1987〜1991年)の漁業データから得られる逃避親魚イカ量と翌年の加入量との再生産関係から、最低限残すべき産卵親イカ量(SSBmin)を3.2万〜6.4万トンと試算している(Basson et al. 1996)。

アルゼンチンのみで管理する北方資源及び同国と英国とが共同管理する南方資源は、ともに漁期を制限する努力量管理方式である。外国漁船の入漁許可隻数等の決定には政治的要素も含まれるが、基本的には1隻のいか釣り漁船が漁獲できる能力は一定と考え、前年の資源量水準から推察して当該漁期の入漁隻数が決められている。


アルゼンチンマツイカ(南西大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
19.0万〜52.6万トン
平均:30.5 万トン(2009〜2013年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
0トン
平均:0トン(2009〜2013年)
管理目標 逃避率一定となる再生産管理:相対逃避率40%(ただし、資源水準が低い近年の場合は、絶対逃避量4万トンを適用)
資源の状態 不明
管理措置 アルゼンチンEEZ及び英国領フォークランドFICZが管理対象(公海は除く)
【南方資源(FICZを含む)】入漁隻数制限、解禁日(2月1日)及び終漁期(逃避率管理によってアルゼンチンEEZ内及び英国領フォークランドFICZ内それぞれリアルタイムに決定)
【北方資源】入漁隻数制限及び漁期制限(5月1日〜8月31日)
管理機関・関係機関 【資源管理】南大西洋漁業委員会(SAFC)
【資源評価】アルゼンチン政府及び英国政府がそれぞれの自国管理水域内で実施
最新の資源評価年
次回の資源評価年

執筆者

外洋資源ユニット
いか・さんまサブユニット
東北区水産研究所 資源海洋部 浮魚・いか資源グループ

加藤 慶樹・酒井 光夫


参考文献

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