--- 要約版 ---

67 アカイカ 北太平洋

Neon Flying Squid, Ommastrephes bartramii

                                                                       
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図2

アカイカ冬春生まれ群と秋生まれ群の分布域(漁場は索餌域に形成される)


図3

アカイカの成長曲線
(左)親の成長(Yatsu 2000)、(右)生息する表面水温に依存する稚仔期の成長曲線(酒井ほか 2004)


図1

北太平洋アカイカ国別漁獲量。中国の漁獲量は、Chen et al..(2008a)による冬春生まれ群のアカイカ漁獲量およびNPFC条約の作業部会SWGの報告(Anon 2015)を用いた。台湾及び韓国のアカイカ漁獲量は、FAO(2014)の統計値における北西太平洋におけるその他のイカの値をアカイカと見なした。


図5

東経170度以東のアカイカ秋生まれ群の我が国の漁獲量(2015年までの全漁連集計より)と調査流し網CPUE(10反当たりの採集尾数)の経年変化(1999年までの調査流し網データは北海道大学の北星丸による)。破線は1979〜2015年までの調査流し網のCPUEの最低値(0.1、2011年)と最高値(63.0、1998年)の差を3等分した水準、低位、中位、高位を示す。


図7

東経170度以西の我が国のアカイカ冬春生まれ群の漁獲量(全漁連集計1〜3月の水揚量から原魚換算)と調査船CPUE(尾/釣り機台数/時間)の経年変化(2007年を最後にそれ以降の調査はなくなった)、調査流し網CPUE(東経144度及び155度における10反あたりの採集尾数)による加入量予測値及び中国の漁獲量(2006年以降はChen et al..(2008a)による冬春生まれ群のアカイカ漁獲量及びNPFC条約の作業部会SWGの報告(Anon 2015)漁業情報からの推計値)。破線は2006〜2015年までの調査流し網のCPUEの最低値(4.0、2011年)と最高値(76.7、2007年)の差を3等分した水準、低位、中位、高位を示す。



アカイカ(北太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位(秋生まれ群)・低位(冬春生まれ西部系群)
資源動向 増加傾向(秋生まれ群)・減少傾向(冬春生まれ西部系群)
世界の漁獲量
(最近5年間)
4.7万〜7.2万トン
平均:6.0万トン(2009〜2013年)
FAO統計及びNPFC条約漁業情報からの推計)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
0.3万〜1.3万トン
平均:0.4万トン(2010〜2014年)
(全漁連水揚げ統計の原魚換算)
最新の資源評価年
次回の資源評価年

管理・関係機関
北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約(北太平洋漁業資源保存条約)
北太平洋漁業委員会(NPFC)

最近の動き
2015年9月にNPFCが発足し、2016年に本資源についての科学委員会が予定されている。

生物学的特性
  • 体長・体重:最大外套長約60 cm・体重約8 kg
  • 寿命:1歳
  • 成熟開始年齢:約10か月
  • 産卵期・産卵場:秋〜春、南西諸島〜小笠原諸島、ハワイ諸島
  • 索餌期・索餌場:春〜冬、亜寒帯境界〜移行領域
  • 食性:橈脚類、魚類(ハダカイワシ類中心)、頭足類、甲殻類
  • 捕食者:メカジキなど

利用・用途
冷凍ロールイカ、総菜

漁業の特徴
1970年代中頃から我が国のいか釣り漁業が漁獲を開始した。1970年代後半には我が国の流し網漁業も漁獲を開始し、1979年からは東経170度以西を釣り漁場、以東を流し網漁場とする規制が実施された。1980年代にはいか釣り漁業は縮小したが、流し網漁業は重要となり、韓国と台湾も参入した。しかし、公海域における流し網漁業が国連決議により1992年末をもって操業停止となった。これを受けて我が国のいか釣り漁業が近海で復活し、その後、東経170度以東にも出漁するようになった。また、この頃、中国のいか釣り漁船が多く操業するようになった。2000年頃から、我が国のいか釣り漁業は縮小し、数百隻と言われる中国漁船を中心に台湾及びわずかの韓国いか釣り漁船が夏から秋にかけて東経170度の沖合から日本近海にかけて操業してきた。最近年では、我が国以外では中国のいか釣り漁船のみが、我が国200海里付近で操業している。我が国のいか釣りの漁期は、日本近海における冬春生まれ群(西部系群)を対象とする冬漁(1〜3月)と、北太平洋中央部における大型の秋生まれ群と小型の冬春生まれ群を対象とした夏漁(5〜8月)に分けられる。

漁獲の動向
1970〜1990年代初めには主に流し網により漁獲され、毎年の漁獲量は、漁業国の総計では20万〜35万トン、我が国では5万〜22万トンであった。公海流し網操業停止後の1994年以降ではいか釣りにより漁獲されている。流し網操業停止後の我が国のいか釣漁獲量は1995年から1999年にかけて4万〜8万トン前後であったが、2000年代には平均で1.5万トン前後に減少し、近年は、夏漁と冬漁を合わせて1万トンに満たない低水準である。冬漁は、近年は不漁が続き、2014年漁期はやや回復したが、2015年漁期は再び不漁となった。一方、夏漁は、2015年の漁獲量は5,998トンで、近年では比較的好漁に恵まれた2014年よりさらに約5%増加した。台湾の漁獲量は1990年代までは1万〜8万トンであったが、2000年代以降は1万トン以下と少なくなっている。中国の漁獲量は、1990年代後半に増加して1999年にピーク(約13万トン)を記録し、2000年代まで8万〜13万トン程度で推移した。2010年代は減少傾向にあり、 7万トン以下となっている。漁業国の総計では、これら各国の変化を反映し、1998年にピーク(約23万トン)を記録し、2000年代始めには10〜15万トン程度であったが、最近年はさらに減少して4万〜7万トンである。

資源状態
秋生まれ群については、東経170度以東では、1993年以降流し網操業停止により急速に回復したが、1997年に一度低水準となり、1998年に高水準に復活したものの、1999年に再び低水準となって2003年まで続いた。東経170度以西では、流し網調査のCPUE が2015年は18.3尾/10反であり、過去37年平均 14.2尾/10反(1979〜2015年)より高かった。過去37年間のCPUEの最低−最高の差を3等分して低・中・高位の水準に分けると、2015年の資源水準は中位に相当する。直近5年間のCPUEの推移から増加傾向にあると見られる。2015年7月に実施した流し網調査では資源豊度は前年に比べて2.8倍に増加したと推定された。
冬春生まれ群西部系群については、本系群を対象とする三陸沖合の冬漁の漁獲量が2008年に15,600トン、2009年に11,332トンを記録して以降、2013年まで減少傾向にあり、資源の悪化が懸念される。2014年は3,683トンで、2001〜2014年の平均値9.6万トンを大きく下回るが、貧漁の2013 年の90トンより増加し、それまで2年続いた貧漁状態からやや回復した。三陸沖合の流し網加入量調査では、CPUE が2015年は5.6尾/10反であり、過去10年平均 23.0尾/10反(2006〜2015年)を下回り、2014年の6.6尾/10反の80%に減少した。過去10年間のCPUEの最低−最高の差を3等分して低・中・高位の水準に分けると、2015年の資源水準は低位に相当する。2015年7月の流し網調査では冬春生まれ群の加入群豊度が前年の80%に減少したと予測された。
北東太平洋の冬春生まれ群東部系群については、現状の漁獲死亡係数は適正と判断されたがこの期間に相対逃避率や逃避量が減少していることから、乱獲状態も示唆される。

管理方策
北太平洋におけるアカイカの資源単位としての4系群が提案されている。しかし、資源管理上は極めて複雑であることから、NPFC条約の科学作業部会においては東経170度を境にして東西で統計データの集計が進められている。

資源評価のまとめ
  • 流し網調査CPUEや漁獲動向により評価。
  • 秋生まれ群は中位、増加傾向。
  • 冬春生まれ群西部系群は低位、減少傾向。
  • 冬春生まれ群東部系群は相対逃避量の減少による乱獲状態も示唆。

管理方策のまとめ
  • 資源水準の低迷と漁獲の関係についても詳細な調査が必要。
  • 変動する環環境収容力に見合った適正な漁獲量を見積もる必要性。