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67 アカイカ 北太平洋

Neon Flying Squid, Ommastrephes bartramii

                                                                       
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最近の動き

日本沖合の冬春生まれ群を対象とする冬漁(1〜3月)は、近年は不漁が続き、前年漁期はやや回復したが、2015年漁期は再び不漁となった。一方、北太平洋中央部における大型の秋生まれ群と小型の冬春生まれ群を対象とした2015年の夏漁(5〜8月)の漁獲量を原魚換算すると5,998トンで、近年では比較的好漁に恵まれた前年よりさらに約5%増加した。2015年7月に実施した調査流し網による秋生まれ群の資源豊度は前年に比べて2.8倍に増加したと推定された。一方、同様の調査流し網での予測される冬春生まれ群の2015年7月時点の加入群豊度は前年に比べて80%に減少した。


利用・用途

大型のアカイカは肉厚で柔らかく、美味である。内臓・足・皮を除去して冷凍ロールイカ、惣菜、さきいか、燻製、イカ天ぷら等の加工原料になる。


図1

図1. 北太平洋アカイカ国別漁獲量。中国の漁獲量は、Chen et al.(2008a)による冬春生まれ群のアカイカ漁獲量及びNPFC条約の作業部会SWGの報告(Anon 2015)を用いた。台湾及び韓国のアカイカ漁獲量は、FAO(2014)の統計値における北西太平洋におけるその他のイカの値をアカイカと見なした。


表1

表1. アカイカの成熟外套長と最大外套長(谷津ほか1998)


図2

図2. アカイカ冬春生まれ群と秋生まれ群の分布域(漁場は索餌域に形成される)


図3

図3. アカイカの成長曲線
左)親の成長(Yatsu 2000)、(右)生息する表面水温に依存する稚仔期の成長曲線(酒井ほか 2004)


図4

図4. アカイカに超音波発信器(Pinger)を付けたバイオテレメトリー手法によるイカの日周鉛直行動


表2

表2. アカイカ170°E以東の秋生まれ群のMSYレベル


図5

図5. 東経170度以東のアカイカ秋生まれ群の我が国の漁獲量(2015年までの全漁連集計より)と調査流し網CPUE(10反当たりの採集尾数)の経年変化(1999年までの調査流し網データは北海道大学の北星丸による)。破線は1979〜2015年までの調査流し網のCPUEの最低値と最高値の差を3等分した水準、低位、中位、高位を示す。


図6

図6. 北太平洋秋季におけるアカイカ稚仔の分布量(15分間の2 mリング表層曳きでの採集個体数)。上の図は2013年の開洋丸調査による結果を示し、その下は俊鷹丸による2001年(11〜12月)、2002年(11月)及び2003年(10〜11月)の調査結果を示す。黄緑色の表示は想定されるアカイカ産卵適水温である表面水温21〜25oCの範囲を示す。西経160〜180度にかけてのハワイ諸島海域からミッドウェー諸島にかけての緑線で示した枠は世界遺産パパハナウモクアケア米国海洋保護区(MPA)を示す(水産庁 2015)。


図7

図7. 東経170度以西の我が国のアカイカ冬春生まれ群の漁獲量(全漁連集計1〜3月の水揚量から原魚換算)と調査船CPUE(尾/釣り機台数/時間)の経年変化(2007年を最後にそれ以降の調査はなくなった)、調査流し網CPUE(東経144度及び155度における10反あたりの採集尾数)による加入量予測値及び中国の漁獲量(2006年以降はChen et al.(2008a)による冬春生まれ群のアカイカ漁獲量及びNPFC条約の作業部会SWGの報告(Anon 2015)漁業情報からの推計値)。破線は2006〜2015年までの調査流し網のCPUEの最低値と最高値の差を3等分した水準、低位、中位、高位を示す。


漁業の概要

1970年代初頭に激減したスルメイカ漁獲を補うために、1974年頃から三陸・道東沖合でアカイカ釣り漁業が始まり、1977年には最高漁獲量(12万トン)をあげた。一方、流し網漁業は1978年に三陸・道東沖で始まったが、アカイカ釣り漁業と競合したため、1979年から東経170度以西を釣り漁場、以東を流し網漁場とする規制が実施された。その後、釣り漁業は縮小したが、流し網漁業は1980年代には毎年12万〜22万トンを供給する重要な漁業となり、韓国と台湾も参入した(図1)。しかし、公海域における流し網漁業は、国連決議により1992年末をもってモラトリアム(操業停止)となった。

流し網が禁止になった1993年以降、アカイカの強い需要を反映して日本近海でアカイカ釣り漁業が復活し、1994・1995年にはともに約7万トンを漁獲した。東経170度以東の旧流し網漁場においても、いか釣り漁船が出漁するようになり、1995年以降0.2万〜2万トンを漁獲して重要度が増している。東経170度以西の漁業の主体は中型いか釣り漁業である。1994〜1998年は6万トン以上の漁獲量を示したが、資源が急減した1999年以降は1万〜3万トンまで漁獲量が減少した。最近は漁業の主力である中型いか釣り船の減少及びスルメイカ等との兼業もあり漁獲量は多くない。

これまで、我が国以外では台湾、韓国もアカイカを漁獲していた。しかし、近年では出漁隻数も減少し、台湾は2005年に3隻のいか釣り船が操業したが、その後は操業の実態が不明であり(酒井ら2014)、FAO統計でのアカイカと思われる漁獲量は少ない。その一方で、中国の釣り漁船が我が国200海里付近でアカイカを漁獲しており、中国船の隻数は1996年には年間約350隻、その後は約400〜600隻に増加した(一井 2002)。しかし、その後、資源水準の低下に伴い出漁隻数はやや減少した。北太平洋漁業委員会(NPFC)での報告によると、ここ数年は160〜220隻程度が出漁していると考えられる。これらの外国船による漁獲は、1995〜2005年には8〜11月にかけて冬春生まれ群を対象に7〜13万トンが報告(Chen et al. 2008a)されている一方で、秋生まれ群を対象とする漁獲は少ない。Chen et al.(2008a)の報告による1998〜2002年までのアカイカ漁獲量とFAO統計の同期間における北東太平洋の不明イカ漁獲量は、ほぼ完全に一致している。これらの集計を基にした北太平洋での総漁獲量は1998年にピークを記録したが(約23万トン)、それ以降2014年までに減少傾向にある(5万トン以下)。一方、FAO統計における中国の北東太平洋における不明イカ漁獲量は、2003年以降にそれまでの10万トンレベルから50万トンレベルへと急増した。この値をただちにそのままアカイカの漁獲量と考えるには過大推計である。また、漁業が行われている台湾や韓国漁船の集計もアカイカとしての記載がなく、FAO統計に示される集計海域(北太平洋中央部など)や頭足類の仕分け名(種々のイカ、普通のイカなど)から推測するしかない状況にあった。ロシアも自国200海里内でわずかにアカイカを漁獲しており、FAO統計には記載がある。


生物学的特徴

アカイカは外洋性種で、季節的な南北回遊を行う。漁業が行われている北太平洋では、稚仔の出現から推測されるアカイカ産卵場は日本(南西諸島〜小笠原諸島)や米国(ハワイ諸島)の200海里水域を含む表面水温21〜25℃の範囲の亜熱帯海域であり(森ら 1999、Ichii et al. 2004)、索餌場は亜寒帯境界〜移行領域である(図2)(村田 1990、村田・中村 1998、谷津 1992)。最近、アカイカの人工ふ化飼育実験によって正常なふ化に至る最適な産卵水温は18〜25℃の範囲であることが確かめられた(水産庁 印刷中)。北太平洋における系群は、発生時期、外套長組成、稚仔の分布及び寄生虫相により、秋生まれ中部系群、秋生まれ東部系群、冬春生まれ西部系群及び冬春生まれ中東部系群の4系群に分けられる(谷津ほか 1998、長澤ほか 1998)。ただし、秋生まれ中部系群と秋生まれ東部系群は、流し網CPUEの経年変化が酷似しており、同一系群である可能性がある。

寿命は1年で、北太平洋では最大外套長は雌で60 cm、雄で45 cm程度であり(図3左、Yatsu et al. 2000)、秋生まれ群が大型となる。成長は発生時期や海域により異なるが、雌は生後6か月程度で外套長30 cmになり生後約10か月で成熟に達する(表1)。ふ化稚仔は表層に分布し、表面水温に依存した指数関数的な成長をする(図3右、酒井ほか2004)。最近報告された粒子追跡実験によるシミュレーション研究によると、アカイカ秋生まれ群のふ化稚仔がふ化してから1か月間に経験する水温は冬春生まれ群のふ化稚仔が経験する水温よりも1oC高いことが示された(Kato et al. 2014)。上述した水温依存の初期成長を考慮すると、この1oCの環境水温の差は、秋生まれ群と冬春生まれ群との間に大きな成長の違いを生じさせることを示唆する。

アカイカは、後述するように餌生物の日周鉛直移動と密接に関わる明瞭な日周鉛直移動を行う。秋生まれ群は春から夏にかけて索餌しながら北上回遊し、秋以降は南下回遊して産卵場に達するが、いずれも昼間は300〜600 m、夜間は0〜50 mの水深を回遊する(図4-A〜C)(酒井ほか2006)。一方、冬春生まれ群は冬季漁場において夜間は表層を回遊し、昼間は上述の秋生まれ群よりも浅く120 m程度である(図4-D)(酒井・加藤 2011)。

春季の北上回遊や夏季の索餌場でのアカイカは、ハダカイワシ類を中心とする魚類、頭足類、甲殻類等を捕食しており、特に前2者が主要な餌生物となっている(Seki 1993、有元・河村 1998、保正ほか 2000、Watanabe et al. 2004)。これらの餌生物は、昼間は300〜600 m、夜間は0〜50 mの水深を日周鉛直移動すると考えられる。一方、アカイカの捕食者として代表的なものはメカジキである(Seki 1993)。


資源状態

【秋生まれ中部系群及び秋生まれ東部系群】

1992年末の公海流し網の操業停止以降、旧流し網漁場における盛漁期(7月)のアカイカ流し網調査の資源量指数(10反当たりの捕獲尾数、CPUE)は、1年間の時間遅れを伴って約6倍に増加した(図5)。これは、流し網漁業(年間10万〜18万トンの漁獲圧があった)により低下していた資源が、流し網の操業停止により急速に回復したと示唆している(Yatsu et al. 2000)。しかし、1997年に一度低水準となり、1998年に高水準に復活したものの、1999年に再び低水準となり、これが2003年まで続いた。2008年に漁獲は増加したが、それ以降2011年まで減少傾向が見られ、大きな変動を繰り返している。秋生まれ群の流し網全盛期1982〜1992年における7月の資源量は、商業流し網データと調査流し網データを用いて3つの方法で推定され、いずれの方法でも類似した推定値(33万〜38万トン)が得られた(Ichii et al. 2006)。

北太平洋中央部における大型の秋生まれ群と小型の冬春生まれ群を対象としたいか釣り漁業による2015年の夏漁(5〜8月)の漁獲量を原魚換算すると5,998トンで、近年では比較的好漁に恵まれた2014年の漁獲量(5,662トン)よりもさらに約5%増加した。漁業と独立した調査では、流し網調査が開始された1979〜2015年までの37年間のアカイカ流し網調査による秋生まれ群の平均CPUE(10反あたりの漁獲尾数)は14.2であり、2015年のCPUEは18.3であり平均より高かった。また、1979年から37年間にわたるCPUEの最低値(0.1、2011年)と最高値(63.0、1998年)の差を3等分し、低位、中位、高位と水準分けすると、2015年の資源水準は中位に相当する。一方、直近の5年間のCPUEで見ると、2011年(0.1)、2012年(3.6)、2013年(3.9)、2014年(6.4)、2015年(18.3)となり、2011年以降、秋生まれ群の資源水準は増加の傾向にあると見られる。最近年、調査流し網による秋生まれ群の資源水準と海洋環境との関係が明らかにされてきた(Ichiiら 2011、Igarashiら 2015)。それによると、秋生まれ群の漁場における資源水準の変動の25〜53%(決定係数)は、産卵期後の2月の生育場における基礎生産と関連する海洋環境データで説明できるとした。

また、2013年10〜12月にかけて、水産庁調査船『開洋丸』によってアカイカ秋生まれ群に相当するふ化稚仔の分布量の調査がハワイ沖米国200海里内(世界遺産であるハワイ諸島北西のパパハナウモクアケア米国海洋保護区を除く)を含めて北太平洋のほぼ全域にわたり実施された(水産庁 2015)。この調査は稚仔を産みだした親イカ量、すなわち逃避親魚量の水準を推定する目的であり、この調査結果を2001〜2003年の秋季にハワイ沖北方海域において3年連続で実施された同様な調査(Ichii et al. 2011)と比較した。その結果、2013年における稚仔の分布量は相対的に少ないことが示された(図6)。


【冬春生まれ西部系群】

本系群は東経170度以西に分布し、釣り漁業の主対象となっている。1970年代後半には10万トン以上の漁獲をあげていたが、その後1990年初めにかけて、我が国の漁獲量及び調査船のCPUE(尾/台/時間)は低下している(図7)。この原因として、@過大な漁獲量(日本の釣り漁業による10万トン以上の漁獲量+韓国・台湾及び東経170度以西での我が国の流し網による漁獲量)及びA環境収容力の低下(親潮域の寒冷化による動物プランクトン現存量の減少;Nagasawa 2001)の可能性が考えられる。

いか釣り調査の平均CPUEによると、最近の日本近海におけるアカイカの資源変動は下記の通りである。流し網が行われていた期間を含む1979〜1993年までの平均CPUEは低水準(0.7〜9.4)であった(図6)。その後、1994〜1998年までの平均CPUEは1996年を除いて高水準(10.9〜14.9)が続いた。しかし、1999年は顕著に低下し、2000年を除いて2002年まで低水準(0.5〜3.9)であった。そして、2004年前後に高い水準を示したが、その後、調査船のCPUEは調査が終了する2007年まで変動しながら徐々に低下している傾向が見られ、過剰漁獲の影響も示唆される。

現存量についてはいくつかの推定値があるが、不確実性が大きく、信頼性のある値は得られていない。まず、1984〜1988年夏季の千島列島南部水域において、夜間の灯火観測点で実施された目視調査では、アカイカの平均密度が337〜1,172尾/km2と推定されている(スロボッコイ 1990)。アカイカの平均体重を500 gとし、この密度を東経170度以西の西部北太平洋に引き伸ばすと、14万〜40万トンとなる。また、村田・嶋津(1982)はDeLury法により、1979年の西部北太平洋(冬春生まれ群)の初期資源量の推定値を最大2億8千万尾(体重500 gとして14万トン)と見積もった。ある時点における現存量と初期資源量は単純には比較できないが、両者は数十万トンと概ね一致している。一方、1983〜1995年の北緯40〜45度、東経140〜165度の西部北太平洋において、表中層トロールにより、アカイカ現存量が推定されており(Belayev and Ivanov 1999)、その結果を東経170度以西に引き伸ばすと、105万〜300万トンとなる。ただし、表中層トロール調査の場合、現存量の推定値は漁獲効率(曳網した海水中に分布する生物のうち漁獲される割合)の仮定値に大きく影響される。

最近年、東経海域において2000〜2005年にかけて中国いか釣漁船が漁獲した冬春生まれ群についての除去法による資源評価が行われた(Chenら 2008b)。これによると、相対逃避率はこの期間を平均すると一般的な管理目標とされる40%(Beddingtonら 1990)に近いことから、現状の漁獲死亡係数は適正と判断された。しかし、この期間に相対逃避率や逃避量が減少していることから乱獲の可能性も示唆されている(Chenら 2008b、Arkhipkinら 2015)。また、最近年、調査流し網による冬春生まれ群の資源水準と海洋環境との関係が明らかにされてきた(Nishikawaら 2014, 2015)。それによると、冬春生まれ群の冬季漁場における資源水準の変動の約50%(決定係数)を、1年前の2〜5月における産卵場のクロロフィル濃度で説明でき、さらに漁期前10〜11月の索餌場における表層混合に強い影響を与える風の強によって資源水準の変動の64%を説明できるとした。

三陸沖合の冬春生まれ群を対象とする冬漁では、2001〜2014年の漁獲量の平均値は9.6万トンであった。2014年の漁獲量を原魚換算すると3,683トンで、貧漁であった2013 年(90トン)より増加し、これまで2年続いた貧漁状態からやや回復した(図7)。冬漁の漁獲量は2008年に15,600トン、2009年に11,332トンを記録して以降、2013年まで減少傾向にあり資源の悪化が懸念される。これらのアカイカは、夏から秋にかけて黒潮北上暖水や三陸沖・釧路沖暖水渦を利用して北上索餌回遊(為石2002)を行う間に、北西太平洋での中国を中心とする外国船による漁獲圧にさらされる。このため、日本漁船の漁獲は、外国船の漁獲による影響とともに、漁場形成に関係する海洋構造や漁場探索能力に左右される。したがって、必ずしも冬漁の漁獲量が資源水準を表す指標とはならない。2006年から本資源を対象として始めた三陸沖合東経144度ラインでの流し網による加入量調査では、2006〜2015年までの平均CPUE(10反あたりの採集尾数)は23.0であり、2015年のCPUEは5.6と見積もられ、2014年の値(6.6)の80%に減少した。また、この10年間のCPUEを過去の最低値(4.0、2011年)と最高値(76.7、2007年)の差を3等分し、低位、中位、高位と水準分けすると、2015年の資源水準は低位に相当する。調査流し網CPUEで見ると2009年以降の加入量は低い状態が続き、2012年に回復を示したが、2013年以降は再び減少に転じた(図7)。このように、加入量調査の評価と実際の漁獲量の水準には大きな差が見られた。本稿では、調査流し網の実施とその解析が始まって間もなく、更なるデータの蓄積が必要であることから、資源の動向は漁獲量水準に依拠して減少傾向とした。


管理方策

本種の管理方策については現時点では確立されていないが、これまでにいくつかの管理方策に向けた報告が行われている。

北太平洋公海におけるアカイカを含む国際的な漁業資源に関する議論が進められている。2015年7月には、底魚漁業資源だけではなく、サンマやアカイカなどの浮魚資源も対象とする北太平洋におけるアカイカの資源単位としての系群は、前述のように秋生まれ中部系群、秋生まれ東部系群、冬春生まれ西部系群及び冬春生まれ中東部系群の4つが提案されている(谷津ほか 1998、長澤ほか 1998)。しかし、資源管理上は極めて複雑であることから、東西で資源管理の単位を分けるのが便宜的である。実際に、2013年に実施した北太平洋における広域調査の結果から、東経170度付近を境に東西で稚仔の分布量が異なり、アカイカ秋生まれ群の分布海域は東経175度以東であることが明瞭に示唆されていた(水産庁 2015)。このため、NPFC条約の科学作業部会においても東経170度を境にして東西で統計データの集計が進められている(Anon 2015)。これらの集計を基にした北太平洋での総漁獲量は1998年にピークを記録したが(約23万トン)、それ以降2014年までに減少傾向にある(5万トン以下)。

最近年、北太平洋のアカイカ資源の両季節発生群について、資源水準の変動要因の多くが産卵生育場や索餌場における海洋生産性で説明できるとされてきている(Ichiiら 2011、Igarashiら 2015、Nishikawaら 2014, 2015)。その一方で、東経海域における冬発生まれ群が減少していることから乱獲の可能性も示唆されている(Nishikawaら 2014, 2015)。いまだ、海洋環境と漁獲の影響について、アカイカの資源変動を説明する上で明瞭な証拠はないが、変動する環環境収容力に見合った適正な漁獲量を見積もる必要がある。

「北太平洋公海漁業資源の保存及び管理に関する条約」が発効し、東京に事務局を持つNPFCが設立された。北太平洋ではこれまで中国船籍と見られるいか釣り漁船が公海で禁止されている流し網を積載し使用したとの疑いや(NPAFC Annual report 2009)、米国沿岸警備隊による中国漁船の拿捕などが発生している(Alaska Report 2007)。また、外国漁船によって日本のいか釣り漁船の操業が妨げられる事態も発生してきた(黄金崎2002)。日本漁船の場合は、始めに魚群を見つけた漁船が優先して、後続の漁船は3マイルの船間距離をおくなど操業ルールを作っているが、中国などの外国船にはこのようなルールはなく、過密や割り込み、集魚灯点灯状態での至近距離通過など、危険を伴う無謀な操業が行われてきた。NPFCの設立により、資源管理だけではなく、操業ルールなどの適切な漁業管理も考慮された持続的な資源利用が徹底されると期待される。


アカイカ(北太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位(秋生まれ群)・低位(冬春生まれ西部系群)
資源動向 増加傾向(秋生まれ群)・減少傾向(冬春生まれ西部系群)
世界の漁獲量
(最近5年間)
4.7万〜7.2万トン
平均:6.0万トン(2009〜2013年)
(FAO統計及びNPFC条約漁業情報からの推計)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
0.3万〜1.3万トン
平均:0.4万トン(2010〜2014年)
(全漁連水揚げ統計の原魚換算)
管理目標 MSY:15.9万トン(秋生まれ群)
相対逃避率40%:10万トン(冬春生まれ西部系群)
資源の状態 秋生まれ群:不明、冬春生まれ西部系群(2001〜2005年):相対逃避率平均値37.2%(ただし、減少傾向にあるので乱獲の可能性も示唆)
管理措置 大規模流し網禁止(国連決議)
管理機関・関係機関 北太平洋北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約(北太平洋漁業資源保存条約)、北太平洋漁業委員会(NPFC)
最新の資源評価年
次回の資源評価年

執筆者

外洋資源ユニット
いか・さんまサブユニット
東北区水産研究所 資源海洋部 浮魚・いか資源グループ

酒井 光夫・加藤 慶樹・ダルマモニー・ビジャイ


参考文献

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