--- 詳細版 ---

66 日本海の漁業資源(総説)


[HOME] [詳細版PDF] [戻る]


日本海は太平洋の縁海であり、隣接する海とは対馬、津軽、宗谷及び間宮の4海峡で接続している。これらの海峡はいずれも比較的浅くて狭い。日本海の表面積は105.9万km2、全容積は168.2万km3である。最深部の水深は3,700 mを超え、平均深度は1,588 mで広さの割にはかなり深い海である。

隣接する海から日本海に流入する海水は、対馬海峡を通じて流入する対馬暖流が殆どであり、津軽、宗谷及び間宮海峡から流入する海水は微々たるものであると言われている。流入する暖流水は表層に薄く分布し、その下層には海域内で生成された日本海固有水といわれる1℃以下の海水が全容積の85%を占める形で分布している。

海底地形は南北両半域で著しく異なり、北半域の朝鮮半島北部及び沿海州に沿った水域では、狭くて単調な陸棚で縁どられ、陸棚に続く海底地形も概して変化に乏しい。これに対して南半域の中央部から本州にかけては、多数の堆、礁、島々が分布し、起伏に富んだ複雑な地形をしている。この地形的な特徴は底魚漁場としての意義だけでなく、表層の海況や漁況にも重要な影響を及ぼしている。また、沿岸漁場として有用な200 mより浅い陸棚の面積は27.2万km2で、日本海全体の約1/4を占めている(図1)。(以上、長沼(2000)から引用)


図1

図1. 日本海の概要 (長沼 1992)


表1

表1. 新潟県沖合水域における底生生物群集構造(尾形 1980)


図2

図2. 日本海の日韓暫定水域(http://www.pref.tottori.lg.jp/44943.htm)


図3

図3. マイワシの分布(対馬暖流系群)


図4

図4. マイワシの漁獲量(対馬暖流系群)


図5

図5. マサバの分布(対馬暖流系群)


図6

図6. マサバの漁獲量(対馬暖流系群)


図7

図7. マアジの分布(対馬暖流系群)


図8

図8. マアジの漁獲量(対馬暖流系群)


図9

図9. ブリの分布


図10

図10. ブリの漁獲量


図11

図11. スルメイカの分布(秋季発生系群)


図12

図12. スルメイカの漁獲量(秋季発生系群)


図13

図13. ズワイガニの分布(日本海系群)


図14

図14. ズワイガニの漁獲量(日本海系群)


図15

図15. ベニズワイガニの漁場(日本海系群)


図16

図16. ベニズワイガニの漁獲量(日本海系群)


図17

図17. ホッコクアカエビの分布(日本海系群)


図18

図18. ホッコクアカエビの漁獲量(大和堆を除く)


図19

図19. アカガレイの分布(日本海系群)


図20

図20. アカガレイの漁獲量(日本海系群)


図21

図21. ハタハタの分布(日本海西部系群)


図22

図22. ハタハタの漁獲量(日本海北部系群)折れ線は沖合底びき網の資源密度指数。


図23

図23. ハタハタの漁獲量(日本海西部系群)折れ線は沖合底びき網の資源密度指数。


図24

図24. 大和堆の地形(海洋水産資源開発センター 1989, 1992)


図25

図25. 大和堆のホッコクアカエビの沖合底びき網による漁獲量


日本海の漁業資源と漁業

地形的な特徴と制約を受けて日本海の生物相は成立しているが、その生物相は種数の面から貧弱であると言われている。魚類について見ると、日本海に分布する種数は全体で500種余であるが、西部の山陰沿岸海域で多く、北部で少ない傾向がある。

日本海の主な漁獲対象魚種は、マイワシ、マサバ、マアジ、ブリ、スルメイカ等の浮魚類、ヒラメ、マダイ、カレイ類、スケトウダラ、マダラ、ハタハタ、ズワイガニ、ベニズワイガニ、ホッコクアカエビ等の底魚類が挙げられる。日本海の底魚類は、水深200 mをおよその境界として、浅海域の「おか場」と深海域の「たら場」に区分され、それぞれに生息する魚種が特徴付けられる。すなわち、「おか場」には対馬暖流の影響下にある種類が、「たら場」には日本海固有水の影響下にある種類が分布している(表1)。日本海には、1999年に発効した日韓漁業協定において定められた「日韓暫定水域」が設定されている(図2)。


日本海の浮魚類主要種の生物学的特徴と資源動向

【マイワシ】

日本海で漁獲の対象となっているマイワシは、対馬暖流系群であり、北海道日本海側の沿岸から九州鹿児島沿岸にかけて分布する。資源の高水準期には薩南海域をはじめとする広域で産卵場が形成されていた(図3)。産卵期は1〜6月、寿命は7歳程度、成熟開始年齢は資源の低水準期では1歳、高水準期では2歳である。

対馬暖流域における我が国のマイワシの漁獲量は、1983〜1991年には100万トン以上で推移した。その後は急速に減少し、2001年には1,000トンまで落ち込んだ。2004年以降は増加し、2013年は8.5万トンと2000年以降で最も多かった。2014年には漁獲量が急減し、9,000トンであった(図4)。

日本の他に韓国もマイワシを漁獲している。韓国の2014年の漁獲量は0.3万トンであった。ロシアの漁獲量は1991年まで20万トンを超えていたが、1992年には7万トンとなり、それ以降は漁獲されていない。

コホート解析によれば、対馬暖流系群の資源量は1970年代から増加し、1988年には1,000万トンに達した。その後減少し、2001年には1万トンを下回り、過去最低水準であったと推定される。2004年以降は増加し、2014年の資源量は18.8万トンと推定された。2014年の資源水準は中位、動向は増加と判断された。


【マサバ】

日本海で漁獲の対象となっているマサバは、対馬暖流系群であり、本州北部から山陰、九州、東シナ海に至る海域に広く分布する(図5)。産卵期は1〜6月、産卵場は山陰、九州沿岸、朝鮮半島沿岸、東シナ海中部、中国沿岸等である。寿命は6歳であり、成熟開始年齢は1歳である。

対馬暖流域での我が国のマサバ漁獲量は、1970年代後半は30万トン前後であったが、1990年代初めに15万トンほどに落ち込んだ。その後、1996年に41万トンまで増加したが、2000 年以降、概ね8〜12万トンの低い水準で推移している。近年の漁獲量は、2010年から減少傾向にあり、2013年に6万トンと1973年以降で最も低い 値となったが、2014年は9万トンに増加した(図6)。韓国は2014年に13万トンを漁獲した。

対馬暖流系群の資源量は1973〜1996年は100万トン前後で比較的安定していたが、2000年以降は50万トン前後に留まっている。2014年の資源量は57万トンと推定された。2014年の資源水準は低位、動向は横ばいと判断された。


【マアジ】

日本海で漁獲の対象となっているマアジは、対馬暖流系群であり、日本海の北部から山陰、九州、東シナ海南部に至る沿岸に広く分布する。産卵期は1〜6月で、南の海域ほど早く、盛期は3〜5月である。主産卵場は東シナ海にあるが、日本海にも産卵場が形成される(図7)。寿命は5歳で、1歳で半数の個体が成熟を開始し、2歳で全ての個体が成熟する。

対馬暖流域での我が国のマアジの漁獲量は、1970年代後半に減少し、1980年に4万トンまで落ち込んだ。1993〜1998年には20万トンを超えたが、1999〜2002年は14〜16万トンに減少した。2003年から漁獲量は再び増加し、2004年には19万トンになったが、2006年以降はほぼ横ばいで、2014年は12万トンであった(図8)。韓国はアジ類を毎年数万トン漁獲しており、2014年は2.4万トンで、ほとんどはマアジであると推定される。

対馬暖流系群の資源量は、1970年代後半に低水準だったが、1980〜1990年代前半に増加して2005年以降は40万トン前後で経過しており、2014年の資源量は45万トンであった。2014年の資源水準は中位、動向は横ばいと判断された。


【ブリ】

日本海では、北海道から九州に至る沿岸各地に来遊してきたブリが漁獲対象となる。ブリの産卵期は1〜7月であり、東シナ海の陸棚縁辺部を中心に、九州から能登半島周辺以西及び伊豆諸島以西の沿岸各海域で産卵する(図9)。寿命は7歳以上である。2歳で半数の個体が成熟を開始し、3歳で全ての個体が成熟する。

東シナ海から日本海にかけての海域における漁獲量は、1950〜1980年には2万〜4万トンであったが、1990年以降増加し、2014年には8.4万トンとなった。韓国の2014年の漁獲量は1.1万トンであった(図10)。日本周辺全域の資源量は、2014年は32.0万トンであった。漁獲努力量が比較的安定していると考えられる定置網の漁獲量から2014年の資源水準は高位、資源量の変動から動向は増加と判断された。


【スルメイカ】

スルメイカは、日本の周辺に広く分布する(図11)。日本海で漁獲の対象となっているスルメイカは、秋季発生系群の漁獲が多い。秋季発生系群の産卵場は、北陸沿岸から山陰、東シナ海にかけての海域である。産卵期は10〜12月で、産卵場から成長しながら北上する。寿命は約1年である。

我が国のスルメイカ秋季発生系群の漁獲量は、1970年代半ばには約17万トンに達していたがその後減少し、1986年には5.4万トンとなった。1987年以降は増加に転じ、1990年代は11万〜18万トン程度であったが、2000年以降は再び減少し、2014年の漁獲量は3.9万トンであった(図12)。韓国の2014年の漁獲量は7.2万トンであった。

スルメイカ秋季発生系群の資源量は、1980年代前半は減少傾向にあったが、1980年代後半以降は増加し、2000年前後には概ね150万〜200万トンとなった。2015年の資源量は118.6万トンであった。2015年の資源水準は高位、動向は横ばいと判断された。


日本海の底魚類主要種の生物学的特徴と資源動向

日本海の底魚資源を対象にした漁業は、底びき網、船びき網、刺網、はえ縄、一本釣り、かご網、定置網等の多種類にわたっているが、中でも底びき網が基幹漁業である。底びき網は、沖合底びき網漁業と小型底びき網漁業に区分される。底びき網の漁獲物の主要なものは、スケトウダラ、ホッケ、ハタハタ、アカガレイ、ソウハチ、ムシガレイ、ニギス、ズワイガニ、ホッコクアカエビ等である。


【ズワイガニ】

ズワイガニ日本海系群は、本州沿岸から朝鮮半島東岸の大陸棚斜面(水深200〜500 m)に分布する(図13)。初産雌は春から秋、経産雌は2〜3月に産卵抱卵し、初産雌の卵は1年半余り後、経産雌の卵は1年後の2〜3月に孵化する。寿命は10歳以上であり、成熟開始の年齢は脱皮の回数で雌11齢、雄9齢である。

ズワイガニ日本海系群の漁獲量は、1970年以前は1.5万トンに達したが、1990年代初めには2,000トン以下に減少した。その後増加傾向を示し、2007年には5,200トンになったが、再び減少し、2014年は3,600トンであった(図14)。日韓暫定水域の漁獲が含まれる韓国の漁獲量は2007年をピークに減少し、2014年は2,400トンであった。

富山県以西のA海域のズワイガニの資源量は、1993年以降増加傾向にあり、高豊度の年級群が複数加入したことにより、2002年以降、中位に回復した。しかし、2008年に大きく減少し、その後は増加と減少を繰り返している。2015年の資源量は2014年より若干増加し、資源水準は中位、動向を横ばいと判断された。新潟県以北のB海域では1990年代中頃から高い水準にあり、2015年の資源水準は高位、動向は減少と判断された。


【ベニズワイガニ】

ベニズワイガニ日本海系群は、日本海の沖合域の水深500〜2,700 mに広く分布する(図15)。主産卵期は2〜4月であり、隔年産卵で抱卵期間は約2年である。寿命は10年以上である。

ベニズワイガニ日本海系群の漁獲量は、1984年には5.4万トンまで増加したが、以後は急速に減少した。2003年が1.5万トンで最低となり、その後はやや増加したものの、2014年の漁獲量は1.6万トンであった(図16)。2014年の資源水準は中位、動向は横ばいと判断された。


【ホッコクアカエビ】

ホッコクアカエビ日本海系群は、北海道から鳥取県沿岸の水深200〜600 mに分布し、底びき網、かご網で漁獲される。日本海中央部の大和堆にも分布し、底びき網で漁獲される(図17)。産卵期は2〜4月であり、雄から雌に性転換し、雌の成熟は6歳である。寿命は11歳と推測される。

日本海での漁獲量は1982年の4,155トンをピークに減少したが、1995年以降はおおむね2,000〜2,200トン台で推移し、2013年は1,733トンであった(図18)。2013年の資源水準は高位、動向は減少と判断された。


【アカガレイ】

アカガレイ日本海系群は、北海道から島根県沿岸の水深150〜700 mに分布する。産卵場は粟島北方、経ヶ岬西部、隠岐諸島東側等に形成される(図19)。産卵期は2〜4月であり、雌は2歳、雄は1歳から成熟が始まり、雌は25 cm、雄は17 cmで半数が成熟する。寿命は20歳以上である。

日本海での漁獲量は、1990年代前半から増加して2000年代前半は3,500トン程度で推移した。2008〜2010年は5,500トン前後、2014年は5,637トンであった(図20)。2014年の資源水準は高位、動向は増加と判断された。


【ハタハタ】

日本海に分布するハタハタには、秋田県の産卵場を中心とする日本海北部系群と山陰から朝鮮半島東岸にかけて分布する日本海西部系群がある(図21)。日本の山陰沿岸は索餌場となっている。産卵期は12月、寿命は5歳であり、成熟は1歳から始まる。

日本海北部系群の漁獲量は、2万トン以上あった1970年代の多獲期から1980年代に急激に減少し、1984年には206トンとなった。1995年から徐々に増加し、2004年には5,405トンに達したが、2014年には2,573トンとなった(図22)。2014年の資源水準は低位、動向は減少と判断された。

日本海西部系群の漁獲量は、ごく数年での大幅な変動を伴いつつ、長期的にも大きく変動してきた。2003年には過去最高の9,475トンとなった。2003年以降も、多い年は9,000トン前後、少ない年は4,000トン前後であり、2014年は3,614トンであった(図23)。2014年の資源水準は中位、動向は増加と判断された。


大和堆の漁業資源

大和堆は日本海のほぼ中央に位置し、北緯39度20分、東経135度を中心として、全体的に東北東−西南西の方向に、長さ約230 km、中央部の幅は約55 kmの長い紡錘状の形を呈している(図24)。水深400 m付近から頂部に平坦面がみられ、最浅部は246 mに達する。水深1,000 m以浅の地域の面積は約7,900 km2である(海洋水産資源開発センター 1992)。

大和堆では、いか釣り漁業によるスルメイカ、かご漁業によるベニズワイガニ及び沖合底びき網漁業によるホッコクアカエビの漁獲が多い。この海域では、ズワイガニは全面的に禁漁とされている。

大和堆におけるホッコクアカエビの漁獲は、底びき網により夏季を中心に行われている。1996〜2003年での大和堆におけるホッコクアカエビの推定資源量はほぼ横ばいであった。近年は本州沿岸でホッコクアカエビが好漁であるために、2001年以降大和堆への出漁が減少し、その結果、大和堆での漁獲量は低い水準にとどまっており2014年は166トンであった(図25)。


執筆者

東アジアユニット
日本海区水産研究所 資源管理部

銭谷 弘


参考文献

  1. 海洋水産資源開発センター. 1989. 昭和63年度沖合漁場総合整備開発基礎調査日本海大和堆海域報告書(本文編) 海洋水産資源開発センター, 東京. (2)+4+269 pp.
  2. 海洋水産資源開発センター. 1992. 平成3年度沖合漁場総合整備開発基礎調査報告書(総括編)日本海大和堆海域. (3+5)+125 pp.
  3. 長沼光亮. 1992. 日本海の成り立ちと海況. In 新潟大学放送公開講座実行委員会(編)新潟の生物誌-海から山まで. 新潟大学放送公開講座実行委員会, 新潟. 1-13 pp.
  4. 長沼光亮. 2000. 生物の生息環境としての日本海. 日本海区水産研究所研究報告, 50: 1-42.
  5. 尾形哲男. 1980. 日本海海域底魚資源. In 青山恒雄 (編)底魚資源. 恒星社厚生閣, 東京. 229-244 pp.