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56 シャチ 北西太平洋

Killer Whale, Orcinus orca

                                                              
PIC
図1. シャチの群れ(撮影:金治 佑)
雄の背鰭は直立して高い。

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最近の動き

東シナ海で実施した鯨類目視調査において、目視発見情報の収集と個体識別用写真撮影を実施した。


利用・用途

本種の主要な需要は水族館展示用である。捕獲されたものは、鯨肉が食用として利用されるほか、かつては鯨油が工業用原料となった。本種の歯牙は割れやすいため工芸用としての需要はない。また、北海道(標津から羅臼沖、釧路沖)ではホエールウォッチングの対象となっている。


図2

図2. 我が国のシャチ捕獲頭数の推移


漁業の概要

本種の捕獲は、小型捕鯨業及びイルカ追い込み漁業で行われてきた(図2)。小型捕鯨業による捕獲は、主に房総〜三陸沖(47.6%)と北海道周辺(36.9%)であり、春から初夏にかけて北海道オホーツク海沿岸と道東、夏から初冬にかけて道東と三陸沖において行われていた。イルカ追い込み漁業による捕獲は、和歌山県太地で行われており、捕獲は2〜5月に集中していた(Nishiwaki and Handa 1958)。

小型捕鯨業による捕獲は、戦後1960年代半ばまでは年間数十頭で推移してきたが、1966年から3年間で年間100頭以上を捕獲して以降、急激に少なくなり、1972年以降は年間多くても数頭程度で推移してきた(Ohsumi 1972, 1975)。1991年からは小型捕鯨業に対し本種の捕獲枠は与えられておらず、事実上捕獲が禁止されている。イルカ追い込み漁業による捕獲は、1963年以降合計87頭である。イルカ追い込み漁業による捕獲には水族館用の生け捕りも含まれる。現在は、学術目的の特別捕獲のみ認められており、1997年にこれにより5頭が捕獲されている。

 

生物学的特徴

本種は北太平洋を含む世界中の海域に広く分布する。マイルカ科最大の種類であり、体長は雄が9.5 m、雌は8 mに達し、体重は雄8トン、雌4トンになる。

本種の繁殖生態は個体識別による研究により多くの知見が得られている(Bigg 1982)。それによると、雌の平均余命は50.2歳、平均14.9歳で初産、平均5.35頭出産し、約40歳で繁殖を終了する。

寿命はモデル計算から雌が80〜90歳、雄が50〜60歳と推定されている。観察された出産時期は、10〜3月である。雄は15.0歳で性成熟に達し、社会的成熟には21.0歳で達する(Bigg et al. 1990、粕谷 1990)。

本種はイカ類、硬骨魚類、軟骨魚類、海亀類、海鳥類、アザラシ類、アシカ類、鯨類など多様な生物を捕食する。集団で、ミンククジラ、コククジラ、ザトウクジラなどのヒゲクジラ類やマッコウクジラも襲うことが知られている。アカウミガメを攻撃する様子が観察されている(Anon. 2006)。

本種の仔鯨を捕食する可能性としてサメがある。


資源状態

本種は背びれ後方の鞍状白斑や背びれの傷を手がかりにする個体識別により、生物学的パラメータの推定や個体数推定が可能である。本手法による調査はカナダ・バンクーバー島周辺で1973年から開始された。また、目視調査による資源量推定も行われている。捕獲があった時代には、CPUEによって資源動向を見ることもできた(Ohsumi 1975)。

1965年から2004年にかけての目視データから、北西太平洋における目視発見率(単位調査距離当たりの発見頭数)の動向を5年単位で検討した結果、北緯40度以北では1970年代以降増加傾向が見られ、北緯20〜40度では近年低位安定していることがわかった(宮下 2007)。

西部北太平洋(北緯20度以北、東経130〜170度の太平洋とオホーツク海)における本種の生息頭数は、1992〜1996年の8〜9月の目視調査の解析から、北緯40度以北で7,512頭(CV=0.29)、北緯20〜40度で745頭(CV=0.44)と推定された(宮下 2007)。北西太平洋における本種系群の情報は全くないが、米国側の情報から類推すると複数の系群があることは十分予想される。今後、本海域の系群構造を明らかにして、系群単位の資源量推定とその動向を検討する必要があるだろう。


管理方策

現在、学術目的以外での捕獲は禁止されている。


シャチ(北西太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準
資源動向 調査中
世界の捕獲量
(最近5年間)
不明
我が国の捕獲量
(最近5年間)
0頭
管理目標 継続的な個体数モニタリングを実施中
資源の現状 北西太平洋で1,600頭(うち房総から北海道周辺で900頭)、オホーツク海で721頭と推定
管理措置 商業捕獲は禁止、学術目的の特別採捕のみ
管理機関・関係機関 農林水産省
最新の資源評価年
次回の資源評価年

執筆者

外洋資源ユニット
鯨類サブユニット
国際水産資源研究所 外洋資源部 鯨類資源グループ

金治 佑

外洋資源ユニット
国際水産資源研究所 国際海洋資源研究員

宮下 富夫


参考文献

  1. Anon. 2006. 表紙写真解説、遠洋リサーチ&トピックス 2006 No.1.http://fsf.fra.affrc.go.jp/enyor&t/r&t1.pdf (2007/11/09)
  2. Bigg, M.A. 1982. An assessment of killer whale (Orcinus orca) stocks off Vancouver Island, British Columbia. Rep. Int. Whal. Commn., 32: 655-666.
  3. Bigg, M.A., Olesiuk, P.F., Ellis, G.M., Ford, J.L.B. and Balcomb, K.C., III. 1990. Social organization and genealogy of resident killer whales (Orcinus orca) in the coastal waters of British Columbia and Washington State. Rep. Int. Whal. Commn., (Sp. Is,) 12: 383-405.
  4. 粕谷俊雄. 1990. 歯鯨類の生活史. In 宮崎信之・粕谷俊雄 (編), 海の哺乳類. サイエンティスト社, 東京. 80-127 pp.
  5. 宮下富夫. 2007. 日本近海におけるシャチ資源の動向.シンポジウム「シャチの現状と繁殖研究に向けて」、2007年11月23日、東京海洋大学、講演要旨.
  6. Nishiwaki, M. and Handa, C. 1958. Killer whales caught in the coastal waters off Japan for recent 10 years. Sci. Rep. Whales Res. Inst., 13: 85-96.
  7. Ohsumi, S. 1972. Catch of marine mammals, mainly small cetaceans, by local fisheries along the coast of Japan. Bull. Far Seas Fish. Res. Lab., 7: 137-166.
  8. Ohsumi, S. 1975. Review of Japanese small-type whaling. J. Fish. Res. Board Can., 32: 111-1121.