--- 要約版 ---

55 スナメリ 日本周辺

Narrow-ridged Finless Porpoise, Neophocaena asiaeorientalis

                                                       
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図2

日本におけるスナメリの主分布域(Shirakihara et al. 1992を改変)
仙台湾〜東京湾、伊勢湾・三河湾、瀬戸内海〜響灘、大村湾、有明海・橘湾。


図3

スナメリの成長曲線(長崎県・関門海峡周辺の個体より)(Shirakihara et al. 1993を改変)


図4

航空目視調査に使用される小型飛行機


図5

飛行機から見たスナメリ(撮影 南川真吾)



スナメリ(日本周辺)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位(大村湾系群は低位)
資源動向 横ばい
(東日本大震災の影響が懸念される仙台湾から房総半島東岸にかけての海域及び資源量推定値の小さい大村湾では要注意)
世界の捕獲量
(最近5年間)
詳細は不明
各地で混獲あり
我が国の捕獲量
(最近5年間)
商業捕獲はないが混獲あり
(14.0頭/年:2006〜2013年の国際水産資源研究所とりまとめによる)
最新の資源評価年
次回の資源評価年

管理・関係機関
農林水産省

最近の動き
商業捕獲は行われていない。混獲が報告されている。従来、世界各地に分布するスナメリは1種からなると考えられていたが、主として背面隆起部の形状の違いによりNeophocaena phocaenoidesN. asiaeorientalisの2種に分かれるとの説が提唱された。本報告では日本周辺のスナメリをN. asiaeorientalisとして扱う。

生物学的特性
  • 体長・体重 :体長は最大で2 m程度
  • 寿命:不明(推定30歳を超える飼育記録あり)
  • 性成熟年齢:雄3〜9歳:雌4歳以下(太平洋岸・瀬戸内海の個体)、雄4〜6歳:雌5〜9歳(西九州沿岸の個体)
  • 出産期・出産場:春〜夏(太平洋岸・瀬戸内海の個体)、秋〜春(西九州沿岸の個体)
  • 索餌期・索餌場:周年、日本の沿岸海域
  • 食性:イワシ類、イカナゴ、コノシロ、イカ類、タコ類、エビ類など
  • 捕食者:ホホジロザメ、シャチ

利用・用途
試験研究等

漁業の特徴
商業捕獲は行われていない。水産資源保護法に基づく保護対象種である。

漁獲の動向
戦後の一時期、油を採取する目的で捕獲されたことがあった。また、水族館での展示に供するため、まき網による捕獲が行われたこともある。橘湾では、かつて小型定置網で多くの個体が混獲されていたが、漁法が変化して混獲は減少した。しかし、その後も混獲は続いており、大村湾、有明海・橘湾では資源量推定値の1%程度が1年間に混獲されていると考えられている。2004年11月に伊勢湾において、学術研究及び教育展示を目的に9頭の特別採捕が行われた。

資源状態
本種には日本周辺に少なくとも5つの系群が存在する。国際水産資源研究所が実施した航空目視調査による最新の資源量推定値は、仙台湾〜東京湾系群のうち仙台湾〜房総半島東岸:2,251頭(CV=39.1%、調査年は2005年)、伊勢湾・三河湾系群:4,620頭(29.0%、2014年)、瀬戸内海〜響灘系群のうち瀬戸内海:9,177頭(CV=19.9%、2006年)、大村湾系群:168頭(39.3%、2012年)、有明海・橘湾系群:3,000頭(24.5%、2012年)であり、我が国周辺には少なくとも19,000頭程度は生息しているものと見込まれる。瀬戸内海では1970年代から2000年にかけて資源の減少と生息域の縮小が報告されたが、近年の航空目視調査結果によると、この傾向は止まった可能性がある。資源量は1970年代の水準にまで回復はしていないと考えられるものの、資源量推定値は1万頭弱と他海域に比べ高い水準にあることから、他の海域も含め、現在の資源水準を中位とした。大村湾については、資源量推定値が数百頭程度と小さく、生息環境の変化の影響を受けやすいと考えられることから低位とした。

管理方策
商業捕獲は行われていないが、漁網への混獲が起こっている。混獲数の把握に努めるとともに、混獲を減らす努力が必要である。本種の生息域はいずれも人間活動の盛んな場所であり、海砂の採取などが過度に行われれば、生息域の縮小や分断を招く恐れがある。瀬戸内海では海砂の採取による生息域の分断化の可能性が指摘されている。また、仙台湾から房総半島東岸にかけての海域では、生息域の環境変化に加え、東日本大震災の影響も懸念される。目視調査を通じ、資源量・分布状況の変化等について情報を収集する必要がある。

資源評価のまとめ
  • 日本周辺に少なくとも5つの系群が存在。
  • 資源量は、仙台湾〜東京湾系群のうち仙台湾〜房総半島東岸で2,251頭(CV=39.1%、調査年は2005年)、伊勢湾・三河湾系群で4,620頭(29.0%、2014年)、瀬戸内海〜響灘系群のうち瀬戸内海で9,177頭(CV=19.9%、2006年)、大村湾系群で168頭(39.3%、2012年)、有明海・橘湾系群で3,000頭(24.5%、2012年)。
  • 仙台湾〜房総半島東岸では東日本大震災にともなう生息域の環境変化が懸念。
  • 瀬戸内海では1970年代から2000年にかけて資源の減少と生息域の縮小が報告されたが、近年の航空目視調査結果によりこの傾向は止まった可能性あり。
  • 資源水準は中位(資源量推定値が数百頭程度と小さく生息環境の変化の影響を受けやすい大村湾系群は低位)。
  • 資源動向は横ばい(仙台湾〜房総半島東岸では要注意)。

管理方策のまとめ
  • 商業捕獲はないが混獲が発生(14.0頭/年:2006〜2013年の国際水産資源研究所とりまとめによる)。
  • 当面の目標は、現状の維持(仙台湾から房総半島東岸にかけての海域ではもとの水準への回復)。
  • 目視調査で資源量と分布状況をモニタリング。